翔太は、母が自殺未遂のうえ、絶縁まで言い出したことに胸を抉られる思いだった。けれど、母を慰める暇もなく、株主たちからは次々と罵声の電話がかかってくる。「お前、頭でも打ったのか?シズイプロジェクトは全部お前が仕切るって言ってたくせに、なんで仁さんの手に渡ったんだ?」「一体何が社長だよ、女に転がされてるだけじゃないか!」さらには弁護士まで電話してくる。「深津さん、由紀さんからの依頼で、離婚手続きを進めさせていただきます。なお、由紀さんは全財産放棄での離婚をご希望です」翔太はあまりの話に耳を疑い、弁護士がでたらめを言っているのではないかとさえ思った。彼は由紀に会うため、拘置所まで足を運んだ。だが彼女は態度を一変させ、翔太を指差して罵倒した。「私のお父さんは、あなたを助けるために命まで落としたのよ!私はただあなたの妻でいたかっただけ、それがそんなに悪いこと?恩知らずのクズ野郎!私を通報して捕まえさせるなんて、あなたも幸せにはなれないから!」翔太は、彼女の鬼のような形相と、悪意に満ちた言葉を前に、これまで信じていた由紀のイメージが、音を立てて崩れていくのを感じた。「俺はずっとお前に良くしてきたのに、俺が通報したかもってだけで裏切って、離婚で俺に全財産放棄を迫るつもりか?」「お父さんはあなたを救って命を落とした。その借りがあるんだから、私に優しくして当然でしょ!私がバカだったわ、あなたみたいな人でなしに恋して、どれだけ苦労したと思ってるの。あなたにその資格なんてない!」由紀はついに涙をこぼして泣き崩れる。翔太は、彼女の言い分がまったく理解できず、ただただ呆れ果てて拘置所を後にした。本当は、ずっと志保のことだけが好きだったし、一日も早く由紀と離婚したいと思っていた。だが、結婚は本物で、彼は彼女を信用していたから、財産分与の対策なんて、これっぽっちも考えていなかった。そのせいで、由紀が離婚を求めてきた今、彼女に財産を分与されることになり、翔太にはなす術がなかった。彼は離婚に応じず、もし由紀が訴訟を起こしても、絶対に同意しないと決めた。その上、仁の妨害も重なって、翔太は八方ふさがりになった。由紀の件に奔走しながらも、仁の嫌がらせにも対処しなければならず、翔太は忙殺され、志保や陽向に連絡を取る暇
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