「志保なんて、放っておけばそのうち反省して、自分から謝りに来るだろう」――翔太はずっとそう思い込んでいた。だが、どれだけ待っても志保は現れなかった。ようやく時間を作って彼女と陽向を探しに行ったときには、すでに一か月が過ぎていた。由紀は心配そうな顔で、翔太にやさしく声をかけた。「翔太、これから志保さんに会うなら、ちゃんと話してね。志保さんは私と違って気が強いんだから、また怒らせたら大変よ!」「もともと悪いのはあっちだ。俺が頭を下げてまで謝る義理なんてない。まだ反省しないっていうなら、もう俺の妻でいる必要なんてない!」翔太は不機嫌そうに鼻を鳴らした。志保がこれだけいろいろなことをしたのに、自分は何もなかったように水に流して、できる限り由紀のためにも償おうとしてきた。本当に彼女のためを思ってやってきたのに――その志保が、まるで自分を拒絶するような態度を取ることが、翔太にはどうしても納得できなかった。まずは志保と陽向が以前暮らしていたホテルへ向かう。「すみません、志保さんとお子さんはひと月ほど前にチェックアウトされました」志保は倹約家だから、こんな高いホテルにずっと泊まり続けることなんてありえない。翔太はそう思い、特に気にも留めなかった。次に、志保が以前働いていたウェディング会社に足を運ぶ。この会社はもともと志保の父が創業したものだ。いくら売却したとはいえ、きっと志保はここに戻ってくるだろう――翔太はそう確信していた。ところが、会社の新しいオーナーが答えた。「志保さんなら、ひと月半ほど前に退職しましたよ。三倍の給料を提示したんですが、引き留められなかったんです。あんなに優秀なウェディングプランナーなのに、本当に惜しいことをしました」翔太は焦って食い下がる。「退職したなら、どうして俺に知らせなかったんだ?」オーナーは眉をひそめて言い返す。「うちは普通の会社ですし、辞めた社員のことをいちいちあなたに報告する義理はありません」「彼女は俺の妻なんだ!」「あなたはあの時、外では志保さんはただの家政婦だと言ってましたよね?それなのに、今になって奥さん呼ばわりされても困ります」オーナーは呆れた顔をしていたが、翔太は気にも留めず、会社を飛び出した。「翔太、志保さん
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