プライベートジェットが気候穏やかな小さな島に降り立った。この島は浩平の私有地だ。今や島のあちこちは、薫の好みに合わせて整えられている。午後、薫を伴って海釣りに出た時のこと。浩平は何気なくスマートフォンを開き、東の都のニュース記事をひとつ目にした。報道によれば、東の都の南地域の高級別荘地にある一棟が火災に遭ったという。深夜のことだったため、消防隊が駆けつけた時には、別荘はすでに焼け落ち、残骸と化していた。火勢が激しく、現場の状況が複雑で危険なため、遺体の収容は叶わなかった。警察が周辺の防犯カメラ映像を確認したところ、その別荘から誰も出てきた形跡はなかった。初期段階の判断として、建物内にいた人物は死亡した可能性が極めて高いと見られていた。浩平の指が微かに動き、そのニュース記事をスクロールさせた。一瞬、思考が途切れる。「浩平さん、こっち向いて、ハイ、チーズ!」薫が自撮り棒を手に、彼に近づいてきた。ほのかなジャスミンの香りが鼻先に漂う。浩平は流れに任せるように薫の肩に手を回し、一緒に写真に収まる。「この写真、なかなかいい感じじゃない?」薫が顔を上げると、その柔らかな唇がふと浩平の顎にかすった。二人の唇が重なり、空気はますます甘く濁っていく。別荘のバルコニーでは、悠斗がスマートフォンを握りしめ、心が揺らいでいた。しばし躊躇った末、彼は美咲の電話番号を探し出し、発信ボタンを押した。「おかけになった電話は、ただいま通話中となっております……」二度繰り返しても同じ応答。ようやく悠斗は気づいた。自分は美咲の着信拒否リストに入れられているのだ。苛立ちから、彼はスマートフォンを机の上に叩きつけた。しかし、同時に得体の知れない不安が心をよぎる。あの数々の電話。そして今のニュース。胸の奥に沈んでいた不穏な予感が、重くのしかかってきた。だが、次の瞬間、この数日間の美咲の身勝手な振る舞いが頭をよぎる。そして、あの夜の炎。彼の表情は再び険しくなった。そろそろ本気で懲らしめてやる時だ。そうしなければ、これから先、ますます好き放題に振る舞いかねない。
Read more