薫とその母親は、浩平の手下に連れられて、私の前に立たされた。目の前の老婆が薫の母親だとは、ほとんど見分けがつかなかった。深い色の服を着て、化粧もせず、目尻には細かいしわが刻まれ、髪は白く、60代か70代のように見えた。薫の顔も憔悴しきっていて、かつての瑞々しさは微塵もなかった。二年も経たないうちに、こんなに痛めつけられるとは。明らかに、ひどい目に遭ってきたのだ。率直に言って、彼女たちの姿を見て、胸がすっとした。けれど、その快感と同時に、どこか切ない気持ちも湧き上がってきた。あの頃、浩平も悠斗も、どれほど薫を溺愛していたことか。悠斗は薫の母親に対しても、どれほど敬意を払っていたことか。私は彼らのえこひいきやかばい立てのせいで、散々な思いをし、苦しめられた。それなのに、私が去った後、彼らはすぐさま矛先を薫とその母親に向けたのだ。彼らの愛憎なんて、本当に安っぽいものだった。正直に言うと、私は薫とその母親を憎んでいる。いや、心底いやでたまらない。目に入れることさえ嫌だったんだ。だが今、私は浩平と悠斗の方が、よほど嫌悪感を覚える。もし薫とその母親が根っからの悪意だとするなら、浩平と悠斗は、その悪に加担している、愚かで独善的な存在だ。私はもう、薫とその母親の惨めな姿を見たくない。そして彼ら二人の顔も見たくない。私は視線をそらした。「会わせたい人には会った。行ってもいい?」悠斗は呆然とその場に立ち尽くしていた。浩平は手下に命じて薫とその母親を連れ去らせた。彼は私を見つめ、力なく笑った。「美咲……たとえお前が俺を恨んでいても、怨んでいても、もう二度と離したりはしない」私は引き留められ、相変わらずホテルに滞在することになった。その後の日々、二人はあの手この手で気に入られようとした。けれど、私はもう何の反応も示さなかった。口を開いて話すことも、一言たりとも発することもやめた。ついには、口を閉ざしたまま食事さえも拒むようになった。結局、悠斗は私の頑なな態度に折れ、浩平と話し合った末、私を行かせることにした。港市に滞在して十七日目、私は帰国の飛行機に乗った。浩平と悠斗も、同じ便に乗っているに違いない、とは分かっていた。十数時間後、飛行機は着陸した。自宅に戻り、私は思い切り眠り
Read more