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晴れ間の行方

晴れ間の行方

By:  霜降Kumpleto
Language: Japanese
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幼なじみの浅田浩平(あさだ こうへい)と兄の小林悠斗(こばやし ゆうと)、この二人が、新しくやってきた貧しい転校生、入江薫(いりえ かおる)に心を奪われてしまった。 浩平は私との婚約を反故にした。 「小林美咲(こばやし みさき)なんてお嬢様、俺には荷が重すぎるよ」 そう言い放った。 一方の悠斗は、亡き母の遺言を忘れてしまった。 「薫は本当に可哀想だ。美咲への愛情を少しだけ分けてあげるのは、悪くないだろう?」 そう言うのだ。 私の誕生日には、浩平は薫のもとへ駆けつけた。 母の命日には、悠斗は薫とその母親と、楽しげに食事をしていた。 そして、二人が薫を連れて、港市で開催されるデザインの授賞式に出席している時、私は、三人の思い出が詰まったあの家に火を放った。 死を偽装して、東の都をあとにしたのだった。 けれど、私の死の知らせが港市に届くと、とっくに私を見限っていたはずの二人の男は、狂ったようにその夜のうちに東の都に戻り、焼け跡にひざまずき、声をあげて泣き崩れた。

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Kabanata 1

第1話

私が浅田浩平(あさだ こうへい)との婚約の話を、最後にもう一度口にした時。

居合わせた連中は一瞬、静まり返った。

そして、浩平の苛立った表情を盗み見ると、たちまちどっと笑い出した。

「なんだよ、今どき幼なじみの婚約なんて、時代錯誤もいいとこだぜ」

「小林さんったら、いつも高飛車なくせに、ついに焦り出したか?」

そんな下品な笑い声は無視した。

ただ、ソファに座る浩平を見つめていた。

彼のワイシャツの襟は少し乱れ、首筋や鎖骨に、かすかな痕がいくつか浮かんでいるのが見えた。

心に細い針が刺さったような感覚が走った。

痛みは、後からゆっくりと押し寄せてきた。

「あの頃は子供だったから、そんな馬鹿げた約束をしてしまったんだよ」

浩平は顔を上げ、口元に薄くて皮肉な笑みを浮かべた。

少しだるそうに私を見て、言った。

「美咲、俺たちもう大人だろ?」

「子供の頃の話は、水に流そうぜ」

私は呆然と彼を見つめ、何か言おうとしたその時。

部屋のドアが外から開いた。

入江薫(いりえ かおる)がウェイトレスの制服を着て、トレイを運んできたのだ。

彼女は私を見ると、小さく身を縮めた。

「お姉さん……あ、ち、違います。小林様」

そう呟くと、すぐに涙ぐんだような目で浩平を一瞥した。

「ご、ごめんなさい……お邪魔してしまいましたか?」

震える声でそう言うと、トレイを置いて去ろうとした。

だが、浩平は突然、目の前のテーブルを蹴り上げた。

グラスが割れ、ガラスの破片が飛び散った。

私の腕に破片が当たり、血の粒がにじみ出て、ズキンと痛んだ。

しかし浩平は、私など一瞥もせず。

顔を強張らせて、薫の前に歩み寄った。

そして手を伸ばし、彼女のエプロンのレース飾りを乱暴に引きちぎった。

「薫、言っただろ?もう外で働くなって」

薫は慌てておとなしくうなずいた。

だが、また目を赤くして怯えたように口を開いた。

「だって……ずっとあなたたちからお金をもらうわけにはいかないから……

浩平さんも悠斗お兄さんも、もう十分すぎるほど私に与えてくれました……

自分で働いて、生活費は稼げます……」

「でも、俺は胸が痛むんだよ」

浩平はエプロンを傍らに放り投げた。

「今すぐ俺と帰れ。これから、またお前が働きに出てるのを見かけたらな」

「お前が出た店は、一つ残らず潰してやる」

そう言いかけて、彼は突然、私の方を振り返った。

「それと、これからも誰かが力にものを言わせて嫌がらせでもするなら」

「昔の情けなんて、無いものと思え」

私は血の流れる腕を押さえた。

騒然とした混乱の部屋の中で、無表情のまま浩平と見つめ合った。

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