詩織は、心の底から絵里を憎んでいた。四年前、絵里に命を救われたあの日から、運命は大きく動き始めた。その現場に北斗も駆けつけた。彼は端正な顔立ちで、何千万もする高級車に乗っていて、一目で金持ちだと分かった。その瞬間、詩織は彼に強く惹かれた。そして、あらゆる手を使い、どうにかして北斗の腕の中に転がり込み、ついには彼の子どもまで身ごもった。これで自分も、富と名声に溢れる氷川家に嫁げる――そう信じていた。けれど、絵里のせいで、その夢は無残にも打ち砕かれる。北斗は自ら、詩織のお腹の子どもを奪い、さらにありとあらゆる手段で彼女を追い詰めた。彼女は悪評をばらまかれ、大学を追い出され、ネットでも誹謗中傷の的になった。どこにも就職できず、いい結婚相手も見つからなかった。もともと贅沢な暮らしに慣れていた彼女にとって、貧しさは耐えがたい苦しみだった。やがて彼女は、年配の金持ちの愛人として生きるしかなかった。そんな生活は屈辱にまみれていたが、それでも耐えていた。しかし、ある日年配の男の子どもを身ごもった直後、その男の裏社会の妻に路上で襲われ、激しく暴行されて流産し、二度と子どもを産めない身体になってしまった。その妻は彼女の命まで狙っていると公言し、詩織は、本当に殺されるのではないかと恐れていた。なぜこんなにも不幸になったのか――こんな目に遭ったのは、全部絵里のせいだと、彼女は心の底から思い込んでいた。もう後がない、死ぬ前に必ず絵里を道連れにしてやる――絵里が帰国したと知ると、詩織は彼女のマンションの周辺でずっと機会をうかがっていた。そしてついに、絶好のチャンスが訪れた。怒りと憎しみで目を真っ赤に染めながら、彼女は果物ナイフを握りしめ、ありったけの力で、絵里の胸めがけて突き立てた!「お姉さん!」晶哉は、こんな突発的な事件になるとは思いもしなかった。反射的に絵里を腕の中にかばう。もともと身のこなしがいい彼は、一瞬で詩織を蹴り飛ばしてしまうこともできた。けれど、今回は少しだけ作戦を変えた。絵里の心をもっと自分に向けたくて、あえて詩織の果物ナイフを自分の背中で受け止めたのだ。「晶哉さん……!」詩織にとって、晶哉は「憧れの人」だった。その彼が、命がけで絵里をかばった姿に、胸が締めつ
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