「宗司さん、あなたの会社の机から持ってきました。宗司さんが机に置いてくれていた御守り───私が作って渡した御守りを持ってきました。 宗司さん、ありがとう。この御守りをずっと大切に持っていてくれてありがとう。 写真も見ました。子どもの頃に出会った時の写真を置いてくれていたのね。 中高一貫校に入学した時、宗司さんも同じ学校に入学していることを知って、私は本当に嬉しかった。でもお互いあまり話をしなくて、宗司さんは私のことをあまり気に留めてくれていないのかと思ったけど、そうじゃなかったのね。私も───そして宗司さんも不器用なだけだったのね。 私はもう迷わない。自分の気持ちに素直になります。宗司さん、あなたが好きです。子どもの頃からずっとずっと好きです。偽装結婚でもなんでもいい。宗司さんと一緒に居られるならなんだっていい。そう思って偽装結婚という提案に応じました。今でも宗司さんと一緒にいられるならなんでもいい。どんな条件だって受け入れます。そういう思いでいるけど、でも今は前と少しだけ違います。宗司さんと本当の夫婦として一緒にいたいと思っています。偽装や契約ではなく、お互いに本心から愛し合う夫婦として一緒にいたいです。 だからお願いです。どうか戻ってきてください。私を知っている宗司さんに戻ってください。お願いします」 私は宗司さんの手を取り、御守りを握らせると、宗司さんの手を両手で包んだ。 そして「どうか戻って……」と祈るように願った。 その思いが伝わったのか、宗司さんは薄っすら目を開いてくれました。 宗司さんが目覚めたことに気付いた幸恵と母・碧も、宗司さんのベッドに駆け寄る。「そ、宗司さん、気分はどうですか? まだ頭が痛みますか? き、記憶はどうです? 記憶は戻りましたか?」 私が心配すると、宗司さんは周囲を見渡し、それから深い溜息をつきました。「……しまったな。どうやらオレは地獄に落ちたようだ。幸恵部長がいるなんて地獄の中でも最も奥底の過酷な場所に落ちたに違いない」 一瞬、宗司さんが何をいっているのかわからなかったが、その言葉の意味には幸恵が一番初めに気付いた。「……な、なんですって!? 宗司! 許せない! 私がどんな苦労をして、その御守りを持ってきてあげたのかも知らないで!」 幸恵は顔を真っ赤
Last Updated : 2025-09-29 Read more