Semua Bab 『ふたつの鼓動が気づくまで』 双子の妊娠がわかった日に離婚届を突きつけられました: Bab 71 - Bab 80

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第七十一話 親友の妊娠

「それならば、幸恵部長に助けを求めるのはどうだ? 出産してからしばらくは、ほぼ毎日のように様子を見に来てくれたじゃないか───と、言いたいところだが……」 そこまで言って、宗司さんは眉間に皺を寄せると、こめかみに手をあてて深い溜息をついた。 私は宗司さんの溜息の理由を知っていた。 実は私の親友で私の担当産婦人科医でもある幸恵は、宗司さんの会社の秘書さんとお付き合いを始めたのだが、なんと少し前に幸恵の妊娠が発覚したのだ。「まさか俺の秘書が、よりによって幸恵部長と付き合い、そして二人の間に子どもまでできるなんて……」 宗司さんは文字通り頭を抱えた。 それ程の落胆だった。 幸恵と宗司さん、そして私の三人は同じ中高一貫校の同級生で、私は手芸部だったが、宗司さんと幸恵は剣道部で、幸恵は剣道部の部長、そして宗司さんは剣道部の副部長だった。 私たちの中高一貫校は剣道の強豪校だったが、その強豪校で部長を務める幸恵は本当に厳しく、「鬼部長」と恐れられていた。 そして宗司さんはそんな「鬼部長」の幸恵から目の敵にされていた。 というのは、幸恵は学業の成績が優秀で、テストではいつも成績が上位だったが、いつも一位の座を宗司さんに奪われ、毎回、二位の座に甘んじていたのだ。 結局、最後まで学業では宗司さんに勝てなかった幸恵は、剣道でだけは宗司さんに負けまいと、宗司さんと練習をする際は完膚なきまでに宗司さんを竹刀で叩き、こてんぱんにしていたのだ。 その為、宗司さんは幸恵との勝負を避け、部活中はできるだけ幸恵から距離を置いて逃げ回っていたが、そんな宗司さんを幸恵は執拗に追いかけ回したので、宗司さんの幸恵に対する苦手意識はますます深まったのだ。 宗司さんはそんな幸恵と、自分が会社で最も信頼している自分の秘書が交際を始め、そして幸恵が懐妊したことに複雑な思いを抱えてしまっていた。 子どもができたという、とてもおめでたい慶事を祝福したいという気持ちと、その相手が自分が最も苦手な幸恵であること、そしてその幸恵のお相手が自分の最も信頼している秘書であることなどなど、喜びと複雑な思いが同時に押し寄せ、どう処理したらよいのか戸惑っていたのだ。「本当に頭が痛くなる。余りの痛さにまた記憶を失いそうだ」 宗司さんは交通事故に遭い、一時、記憶を失ったが、そうしたことが
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-07
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第七十二話 秘書さんのお名前

 とにかく私の子育てが大変で、幸恵に助けを求めるのはどうかという手段は、幸恵が宗司さんの秘書さんとお付き合いを始め、子どもができたので無理だった。  幸恵は絶賛つわりの真っ最中で、今は見るもの嗅ぐもの聴くもの全てが吐き気の対象で、自宅で溶けたアイスクリームのように項垂れているとのことだった。 そんな幸恵だが「充希はよくこんなつわりなんていう辛い状態を乗り越えたわね。私も何人も妊婦さんを診てきてつわりについて説明とアドバイスをしてきたけど、いざ自分がその状況になるとこんなに辛い状態になるとは思わなかったわ。きっとこれから妊婦さんにつわりのことを話す私の言葉は、今までと重みがまったく違った言葉になるでしょうね」と前向きだった。 さらに幸恵が大変な状況にあるのはつわりだけが原因ではなかった。  幸恵が妊娠したことで、幸恵と秘書さんは結婚をする運びとなったのだが、まだお互いのことをお互いの両親に紹介はおろか、自分たちに恋人ができたという報告さえもしていないとのことだった。 幸恵と秘書さんのご両親は、これから自分の息子、娘に恋人ができたことを知らされ、さらに子どもができ、結婚すると報告をされるわけだが、その驚きたるやいかほどのものだろうか。 そんな大変な状況ではあったが、当の本人たち───とくに幸恵は落ち着いていた。  それは幸恵の恋人である秘書さんが本当に有能で、そうした諸問題の一切を解決に向けて動き出してくれていたからだった。  秘書さんは諸問題をあっという間にリストアップし、優先度と工数を洗い出し、スケジュール表を作って計画を立てていた。「幸恵さんのつわりが治まったら両親への挨拶に行きます。まずは僕が幸恵さんのご両親に挨拶に行きます。僕の両親には僕から事前に報告はしておくけど、幸恵さんが僕の両親と会うのはその後です。  そして結婚式を挙げる式場の候補はこれで、日取りの候補はこれ、そして招待状を送るお世話になった方々や親友、親族のリストはこれで、ブライドメイドは充希さん、ベストマンは宗司社長にお願いをする予定です」 その他にも結婚披露宴の予算や内容、タイムスケジュール、そしてご来場いただくお客様の席の並びに至るまで、秘書さんは事細かに計画をまとめていた。  その
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-08
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第七十三話 宗司が出勤時にすること

とにかく幸恵にも助けを求めることはできない。 私と宗司さんは解決方法が見つからず、頭を抱えたが、そうこうしているうちに宗司さんが出勤する時間が迫っていた。 私は赤ちゃんを抱え、宗司さんを見送りに玄関まで一緒に来た。 「それじゃあ行ってくる。今日は会議の予定があってどうしても遅くなるが、それでもできるだけ早く帰る」 宗司さんは出社する時間が少し過ぎてしまったので、急いで靴を履きつつ、私にそう伝えた。 私は宗司さんの背中に「無理をしないでくださいね」と声を掛ける。 靴を履き終わった宗司さんは私に向き直った。 そして───。 「さあ、それじゃあ」 そう言って宗司さんは両手を広げると、私と、そして私が抱きかかえる双子の赤ちゃんも一緒に包むように優しく抱きしめてくれた。 「それじゃあ、お父さんは会社に行ってくるよ。琴、それに勇、お母さんのことを宜しく頼むぞ」 宗司さんは子どもたちに順番にキスをしてくれた。 まずは姉長女の琴。 そして次に弟長男の勇。 二人の名前は宗司さんが新選組に因んで命名してくれていた。 父親の温かい抱擁を受けた子どもたちは、本当に幸せそうにあぶあぶ、あぷあぷとしていた。 私はその姿を見て心が癒された。 「それじゃあ、充希も───」 そう言って宗司さんは私に顔を近づける。 私は少し顎をあげて宗司さんを迎え入れた。 宗司さんと私の唇が重なり、お互いの愛情を確かめ合う。 その抱擁は長く、私たちはいつまでもお互いを求め合った。 しかし、そうした幸福の一時に、ずっと浸っているわけにはいかなかった。 「宗司さん、会社に行く時間に遅れちゃう」 「大丈夫だ。車を飛ばせばまだ間に合う」 「交通ルールを守って安全運転をしないと、また事故を起こしたら大変よ?」 「そうだな。十分気をつけるよ」 そう会話をしながらも私たちは顔を寄せ合ったままだった。 「宗司さん、もう本当に行かないと」 「わかっている。だが、もう少しだけ頼む。この瞬間がとても幸せなんだ」 そう言われて私はとても嬉しかったが、宗司さんだけに意識を向けるわけにはいかなかった。 私の両手には双子の赤ちゃんが抱きかかえられているのだ。 「宗司さん、子どもたちも私たちを見ている
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-09
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第七十四話 来訪者

宗司さんが会社に行ってしまうと、私は自宅で双子の赤ちゃん───姉長女の琴と、弟長男の勇と三人だけになった。 ───また、付きっきりの子育ての時間が始まる。 私は子どもを授かったことを本当に幸せに思っていたが、そうした思いとは裏腹に、沼地に腰までどっぷり嵌ったような倦怠感を覚えた。 今朝は、宗司さんが家事をいくつか手伝ってくれていたので、私は直ちに何かをしなくてはならないという用事はなかった。 しかし、今から自分の自由が許されなくなるという事実が、重くのしかかるのだ。 因みに、私は宗司さんが家事や育児を行うと「手伝ってくれて、ありがとう」とお礼を言うが、宗司さんはそのことに違和感があるようだった。 「家事や育児は充希の仕事と決まっているわけじゃない。家事や育児は夫婦の仕事だ。だから俺も家事や育児を行う義務がある。だからこれは手伝いではない。充希がお礼を言う必要はない」 こういったことをごく自然に言ってくれる宗司さんは本当に有難かった。 しかし、私は現在、医療事務の仕事を出産をしたことを理由に退職していて、専業主婦となっていた。 その為、夫婦の仕事を分けるなら、宗司さんは会社でお仕事、私は自宅で家事と育児というように分担するというのがつり合いがとれていた。 私がまだ、医療事務の仕事を続けているなら家事と育児も分担しても良さそうだが、今の私はそういう状況ではなかった。 「充希はすでに妊娠と出産という大仕事をしてくれた。その苦労に報いようと思ったら、少しくらい俺が家事や育児を行ったくらいじゃとても足りない。だから気にせず、まだまだ俺に家事と育児をやらせてくれ」 そう言って会社に帰ってくるなり、すぐに腕まくりをして、今度は家の仕事に取り掛かる宗司さんの姿は本当に素敵で、頼もしく、そしてメロかった。 私はそんな宗司さんの言葉に甘えたくもあったが、やはりそれではいけないと自分を戒め、「よし! 頑張る!」と声に出して自分を鼓舞し、腰まで嵌った沼地から這い出した。 私は赤ちゃんたちが生後半年を過ぎたので、今日から離乳食を開始すると決めていた。 その為、まずはよく磨り潰したゆるいお粥から始めようと、初めての離乳食作りに取り掛かった。 お粥を作ること自体は難しい調理ではなかった。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-09
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第七十五話 義父と義母

「いやー、しかしうるさいな。赤子の鳴き声は一人でもうるさいのに、それが二人もいると煩わしさが倍増するな」 杵島 巧三氏───つまり、私のお義父さんにそう悪態をつかれ、私は子どもたちを泣かしてしまっている自分を不甲斐なく思い、なんとか双子を泣き止ませようと懸命にあやした。「ちょっと、充希。アンタは何をしているの? 食器がひっくり返って、お粥が床に散らばっているじゃない。本当に汚いわね。ちゃんと掃除をしなさいよ」 義母・篠原 真紗代は、そう私を責めたてた。 私は気持ちが焦ったが、しかし、今は子どもたちが泣き止んでくれないことには、他には何もできなかった。「赤子の世話は大変だろう。ワシも宗司が乳呑児の頃は面倒をかけさせられたものだ。何せ、赤子は口で言っても言葉がわからんから言うことをきかん。泣くなと言っても泣き止まないし、それどころか泣くなと言えば余計に泣き声をあげる始末だ。本当に手が付けられん」「それにしてもよく泣く赤ちゃんたちね。充希も泣き虫だったけど、お母さんに似ちゃったんじゃない? 可哀そうに。そんな弱虫じゃ世の中を渡っていかれないわよ」 我が物顔でリビングに居座った二人は、てんてこ舞いの私などお構いなしに言いたい放題だった。 私はなかなか泣き止んでくれない赤ちゃんに気持ちが焦りながらも、なんとかお二人にお茶をお出しして、くつろいでいただくように勧めた。「この家に来るのは久しぶりだな。宗司の奴はなかなかワシを家に呼ぼうとせん。避けておるんだ。まあ、仕方がない。今、ワシと宗司は会社の経営方針で意見が対立していてな。少し関係がギクシャクしておるんだ。宗司も昔は聞き分けが良く、ワシが命じるままに、アメリカの小学校に留学したり、言うことをきいておったんだが、最近は、むしろワシが黒と言えば白と言い、ワシが白と言えば黒という。まるで反対するための反対をするようで、本当に煩わしいわ」 お義父さんは心底困ったと言った様子で、イライラとした溜息をついた。「ちょっと充希。アンタ、巧三会長のお話をちゃんと聞いているの? アンタの旦那のことを言っているのよ。アンタはお坊ちゃん社長(=宗司)の妻なんだから、妻のアンタがしっかりお坊ちゃん社長に注意しなさいよ」 義母・|篠原 真紗代
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-11
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第七十六話 ベビーシッター

彩寧は私と目も合わさず、一言も喋りもしなかったが、私が自宅に招き入れると、黙ってリビングに進んだ。「おお。彩寧さん、やっと来たか。どうだ、ワシが言った通りだろう。ワシが言えば充希さんは必ずベビーシッターを受け入れる。玄関の外で呼ばれるまで待つ必要なんてなかったんだ」「そうよ、彩寧。充希に会いたくなかったのかなんだか知らないけど、手間をかけさせないでちょうだい」 彩寧は二人に色々言われたが、二人から離れた椅子に黙って座った。「彩寧さんには今、会社でワシの秘書をしてもらっているんだ。但し、ワシには秘書がたくさんいるのでな。一人くらいいなくなっても問題はない。そこで彩寧さんには子育てが大変そうな充希さんのベビーシッターを会社の業務としてやってもらうことにしたんだ」「一応、充希は巧三会長の会社の社長の妻だから、社長の奥さんの育児を会社が手伝うのは理由になるわよね。奥さんがしっかり社長を支えないと会社の経営に支障がでるからよ。充希も頼りないけどお坊ちゃん社長(=宗司)も頼りないから、そんなアンタたちが育児で手を取られたら余計に物事がうまく行かないでしょうから、しっかり彩寧に手伝ってもらうのよ」 それだけ言うと義父と義母は挨拶もそこそこに帰っていった。 突然やってきて突然帰っていく。 まさに一陣の嵐のようだった。 そしてその嵐の後には彩寧だけが残された。「…………」「…………」「……………………」「……………………」「………………………………」「………………………………泣いているわよ」「え───?」 気まずい沈黙が続いていたが、静寂を破ったのは彩寧だった。 といっても、私と彩寧が押し黙っている間も、ずっと琴が泣いていたので、家の中は静寂ではなかったかもしれないが。「赤ちゃんってそんなに泣くものなのね」 彩寧は無感情に感想を述べた。「おむつも濡れていないし、眠いわけでもないだろうから、琴が泣いているのは、きっとさっき食べたお粥がもっと欲しいからね」 私はさっき琴がひっくり返した食器を元に戻し、散らばったお粥を拭き取ると台所に向かった。 そしてお粥の残りをお椀によそってリビングに戻った。「ねえ、彩寧。彩寧が琴にお粥をあげてみる?」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-12
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第七十七話 会社命令①(side:彩寧)

 巧三会長の秘書となった私は、それまで在籍していた総務部から秘書室に異動になった。  総務部にいたころ、私は宗司社長の社長夫人ではないかと噂をされた。  私もそのことを明確に否定せず、むしろ少し思わせぶりな言動をしていた。  その為、私が社長夫人でないとバレると周囲の目が冷たくなり、私は居心地が悪くなった。  そんな矢先の秘書室への異動は、まさに渡りに舟だった。  私は是非もなく秘書室に異動したが、そうすると今度は私が巧三会長の秘書となったことで別の噂が騒がれ始めた。 それは私が宗司社長の夫人ではなく、愛人。  もしくは宗司社長の愛人ではなく、巧三会長の愛人ではないかという噂だった。 くだらない噂話だったが、私はそのゴシップネタを利用してやることにした。 愛人らしく振る舞ったのだ。    化粧を濃くし、服装を派手にし、会社員として───秘書として、あまりふさわしくない服装で会社に出社をしたのだ。  巧三会長には他にも秘書がいて、その人たちからは白い目で見られたが、私のことを噂している連中に対しては効果覿面だった。  私が宗司社長の愛人、または巧三会長の愛人であるという噂は、信ぴょう性を増したようにますます盛んに騒がれるようになったのだ。  こうなると他の先輩秘書も私には何も言ってこなくなる。  むしろ私に擦り寄り、媚びを売る先輩秘書も現れる程だった。  こうして私は社内での地位を回復した。 私は巧三会長に感謝した。 思えば、巧三会長は私が宗司先輩の会社を面接で受けに来たときから良くしてくれていた。  私は宗司先輩の会社の求人に応募しようと履歴書等を送ったが、すぐに面接に呼ばれ、しかもそれは一次面接ではなく、巧三会長も同席する最終面接だった。  巧三会長は盛んに私を持ち上げ、丁度、私のようなスキルセットを有した人材が欲しいと思っていたのだと賞賛してくれたが、私は、自分がそんなに大した経験もスキルもないことをわかっていたのでとても不思議に思った。  しかし、巧三会長がそこまで私を賞賛するので、他にも同席していた面接官は何も言えず、私の採用はあまりにもすんなりと決まってしまった。 とても嬉しかった。  これで中高一貫校時代から想いを寄せていた憧れの宗司先輩の会社で働ける。  さ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-13
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第七十八話 会社命令②(side:彩寧)

それは屈辱───。 とてつもない屈辱だった───。「わ、私が宗司社長の奥さん───充希のベビーシッターをやる……」 私が中高一貫校時代、ずっと想いを寄せ、憧れていた宗司先輩。 そして家同士が決めた政略結婚とはいえ、一時は交際していた宗司先輩。 その宗司先輩と私の後に交際し、まんまと妻の座に納まり、子どもまで儲けた充希。 その憎むべき相手の充希に仕え、しかも自分の想う宗司先輩が充希に産ませた子どもの面倒を私にみさせるなんて───。 到底受け入れられない命令だった。 まだ今すぐこの場で服を脱ぎ、ワシに抱かれろと求められる方が受け入れられる命令だった。 ───嫌だった。 ───絶対に嫌だった。 ───その命令だけは死んでも首肯することはできなかった。 ───しかし……・「巧三会長がやりなさいっておっしゃっておられるんだから、言うことを聞きなさい。断るなんてもってのほかですからね」 母・真紗代だった。 ───どうしてお母さんが巧三会長と一緒に? ───どうしてお母さんも私に充希のベビーシッターを強いるの? 様々な疑問と、ベビーシッターをやりたくないという想いが渦巻いたが、巧三会長と母・真紗代に言われ、私は拒絶することができなかった。 そうして充希の家───宗司先輩が充希と結婚して構えた新居───私にとっては見たくもない二人の愛の巣───そんな充希の家に来たけど、家の中にはどうしても入れない。 ───この家の中に充希がいる。 ───この家の中には充希と宗司先輩の夫婦生活がある。 ───この家の中には充希が宗司先輩と儲けた双子の赤ちゃんがいる。 そんな家に足を踏み入れたくもなければ、中を覗くことも嫌だった。 私はどうしても家の中に入れなかった。 そして私が家の中に入れずにいると、業を煮やした巧三会長と母・真紗代は二人だけで先に家の中に入っていった。 充希が玄関から現れた時、咄嗟に私は身を隠した。 充希は私に気付かなかったようだが、私は充希の姿をしっかりと見た。 宗司さんとの間に儲けた子どもを二人抱え、少し───いえ、かなり疲れた様子でやつれているけど、ぬくぬくと宗司先輩と一緒に暮らして子育てをしている充希の姿。 怒りが沸き上がったが、それ以上に悲しみが重
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-14
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第七十九話 会社命令③(side:彩寧)

───嫌い。 ───充希のことが大嫌い。 そしてそんな大嫌いな充希が、私の大好きな宗司先輩と結婚生活を送っている家に入るなんて、毒ガスが充満する廃墟に足を踏み入れる心境だわ。 私は息を止め、目と耳、そして口を閉ざし、リビングの席に座る。 ここが充希と宗司先輩の結婚生活の場───。 ───苦しい。 ───悔しい。 すべてを破壊して焼き尽くしてやりたい。 充希も、そして宗司先輩も、何もかも壊してなくしてしまってやりたい。 ───そして、うるさい。 ───本当に、うるさい。 特に気に障るのがさっきから泣き続ける充希が宗司先輩との間に儲けた子どもたち。 何をそんなに泣きわめいているのよ。 本当にうるさい。 でも赤ん坊はいいわよね。 鳴けば親が気にかけてくれるんだから。 でも覚悟することね。 ある日、どんなに泣いたって誰も助けてくれなくなる日が来るの。 むしろ泣けば泣くほど、自分から人が遠ざかっていく日が来るの。 なぜなの? どうしてなの? どうしてこんなにも私は泣いているのに誰も助けてくれないの? そう気付いたときにはもう手遅れだから。 暗い穴の底に落ちたら最後───そこから這い出ることは不可能なの。 もう一生、深淵の暗闇で泣き叫ぶことしかできなくなるんだから。 それにしてもよく泣くわね。 充希も泣き虫だったけど、可哀想に、お母さんに似ちゃったの? 充希もなんとかしてあげなさいよ。 泣いているのは自分の赤ちゃんでしょ? まさか自分の子どもが泣いていることに気付いていないんじゃないでしょうね? 「………………………………泣いているわよ」 「え───?」 え───? じゃないわよ。 自分の子どもが泣いているって言っているのよ。 でもそう言われた充希は赤ちゃんのお尻に顔を近づけて匂いを嗅いだり、様子をうかがって異変がないかを調べたり、手際よくお母さん業をこなしている。 まあ、そうは言っても数ヵ月は子育てをしているんだから、それくらいできて当たり前か。 私はベビーシッターをやれと言われている。 でも充希がこれくらいできるなら、私が育児に関わることは少なそうだ。 充希と宗司先輩の家に通うのは嫌だけど、今の私は巧三会長と母・真紗代
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-15
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第八十話 宗司さんの心配①

「大丈夫なのか?」 宗司さんは心配そうだった。 私は、もちろん不安もあり、断言し難いところもあったが、きっぱりと返事をする。 「ええ。大丈夫よ」 私の毅然とした態度に、宗司さんも幾分、信頼をしてくれたようだ。 もし私が少しでも自信がない素振りを見せていたら、宗司さんの不安はますます大きくなってしまったことだろう。 しかし、それでも宗司さんの不安は完全に払拭されたわけではなかった。 「しかし、相手は彩寧だろ? 充希は嫌じゃないのか?」 「確かに私と彩寧は色々あって、関係はギクシャクしているけど、それでも姉妹───といっても異母姉妹だけど───であることに変わりはないわ。血の繋がりはなかったことにはできない。私と彩寧は、ずっとお互いを無視し続けることはできないの。だからいつかどこかで向き合わなくちゃいけない。今回のベビーシッターの件は、そんな私と彩寧にとって絶好の機会になるんじゃないかしら? 私は、何か彩寧との関係を修復するきっかけが得られるんじゃないかと思うの」 私はそう訴えたが、宗司さんは腕を組んで「うーん」と唸った。 即断即決の敏腕社長の宗司さんでも、この件は悩ましい案件のようだ。 そこで私はもう一押しをする。 「それにベビーシッターを頼んだらどうかと私に奨めたのは宗司さんじゃない」 「それはそうだが───……」 宗司さんはその点は認めつつも、尚も不安感に苛まれていたようだった。 しかし、宗司さんは私の目を見て気付いたようだ。 もう私が彩寧にベビーシッターを頼むことを決めていることを。 「……わかった。充希がそう言うなら充希に任せる。但し、くれぐれも注意してくれよ。彩寧を送り込んだのは俺の親父だ。親父のような「古狸」が、ただの親切心でベビーシッターを手配したとは思えない」 宗司さんが彩寧がベビーシッターをすることを了承してくれて私は喜んだが、それと同時に、宗司さんが心配をする点も気になった。 「確かに、宗司さんのお父様はタフな方で、警戒に値する相手だと思う。その点はもちろんだけど、私はさらに、そんな宗司さんのお父様と私の義母・篠原 真紗代が行動を共にしていたことの方がとても気になるわ」 私はこの点が本当に不可解だった。 「確かに、ど
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-16
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