───彩寧さんって勤怠が乱れていて……。休みがちで業務が滞るのよね。 ───なんでも宗司社長のお見舞いに毎日いっているんでしょう? ───やっぱり社長夫人だから? ───それが彩寧さんは社長夫人じゃないかもって噂なの。 ───そうなの? それじゃあ、なんでお見舞いに? ───さあ……。とにかくもうちょっとしっかりして欲しいわね。 ───そうね。業務もミスが多くて、フォローが大変なのよ。 ───社長夫人じゃないなら、そうやってフォローしてあげる必要もないんじゃない? ───それもそうね。なんでこんなに頑張ってあの人のフォローをしていたのかしら。 ───なんだか腹が立ってきたわ。「すみません。営業部に書類を届けに行ってきます」 私は席を立ち上がると、逃げるようにその場を去る。 周囲の声が日増しに大きくなっていた。 注意をしないと……。 周囲が私を社長夫人と勘違いしていたので調子に乗って、思わせぶりな言動をエスカレートさせてしまった。 毎日、宗司先輩のお見舞いに行った為に有給休暇も全て使用してしまったし、業務でもミスが続いてしまっている。 しばらくは大人しく業務に勤しみ、周囲の信頼回復に努めなければ……。 でも、その間、病院では充希が宗司先輩の近くに……。 その事を思うと胸が苦しい程にざわつく。 宗司先輩と再会してわかった。 やっぱり私は宗司先輩が好きだ。 宗司先輩以外に考えられない。 宗司先輩と一緒にいたい。 宗司先輩に私を受け入れてもらいたい。 ましてや宗司先輩を充希になんか奪われたくない。 他の誰にも奪われたくはないけど、特に充希は許せない。 充希にだけは……。充希にだけは負けたくない……。 充希はいつもそう。 何もしていないのに私から全てを奪っていく。 何故? どうして? 私の方が充希より優れていて、努力だって何倍もしているのに。 充希はずるい───。充希は卑怯───。 充希は産みの母である忽那 碧が、父・大和田 毅と結婚できなかったから非嫡出子となったけど、その「可哀想な立場」を利用して周囲の同情を巧みに集め、そして利用するの。
Last Updated : 2025-09-19 Read more