Semua Bab 隣の彼 じれったい近距離両片思いは最愛になる、はず。: Bab 31 - Bab 40

92 Bab

街頭演説とデモ行進③

土曜日の13:30、高梨小鳥は緊張していた。 先週、小鳥が金沢中警察署の交通課に申請した”道路使用許可証”を利用して、金沢市で一、二を争う香林坊三叉路の百貨店前から、武蔵ヶ辻交差点近江町市場前までの百万石大通りを”ゴミ処理場設置反対”を訴えるデモ行進に参加するからだ。 自主党の狸の田辺五郎議員、藤野建議員は先頭で横断幕を持ち声を上げる。小鳥はその姿をカメラに収める為、白いブラウスと黒いパンツ姿でその列の歩道側に並んだ。(えぇぇぇ、こんな事までするのぉ) そしてその日、その時間帯、国主党の久我今日子議員は近江隆之介が申請した”道路占領許可証”を利用し、金沢市で一、二を争う武蔵ヶ辻交差点百貨店前のゼブラゾーンに停めた街宣車の上で、”ゴミ処理場移設賛成”の演説を行っていた。近江隆之介はその路肩で、公道を行き交う自家用車やタクシーの窓、通行人に愛想良く笑顔で手を振っている。(あいつ大丈夫かなぁ、デモとか初めてだろ) 案の定、小鳥はカメラを構えながら歩道の自転車によろけそうになって平謝りし、田辺議員の真面目な顔や藤野議員の満面の笑みをフレームインしようと後ろ向きに歩き、赤信号で赤い棒を振りデモ行進を誘導する警察官の背中にぶつかり尻餅を突いていた。「い、イタタタた」 ところが問題はその10分後に起きた。国主党の支持者と自主党のデモ行進参加者で小競り合いが起き、歩道側で言い争いが始まった。そこに丁度カメラを構えた小鳥が現れ、無断撮影だ人権侵害だと彼女はもみくちゃにされ、通行人のスターバックスコーヒーのソイラテトールサイズを頭から被ってしまった。 カメラは無事だったが、小鳥は大惨事。田辺議員と藤野議員はこれから近江町市場側の歩道で、久我議員の街頭演説に対抗する為にチラシ配りを始める。「小鳥くん、大丈夫かね」「小鳥ちゃん、これどうしようか」「先生、家、帰って良いですか?」「勿論」「気を付けてね」 そうは言われたものの、頭からソイラテ女はバスにも乗れず、タクシーも素通りした。「うぅ。ハズカシィ」 小鳥は胸元を隠しながら前屈みでトボトボと裏通りを歩いた。どれくらい歩いただろうか。不意に背中に温かいものを感じた。
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街頭演説とデモ行進④

 そこには額に汗を滲ませた近江隆之介が息を切らせ、小鳥の背中に濃灰に細い黒のストライプのジャケットを掛けていた。「ちょ、おま。おまえ何処ほっつき歩いてんだよ」(お、おま、え?)「これ、被れ」「え、いえ。あの、スーツ。汚れます、よ?」「いい、被ってろ。これから家、帰るんだろ?」(あれ?何で家とか・・・藤野さんとかに聞いたのかな) 近江隆之介は市役所方面へ向かうずぶ濡れの小鳥の背中を見て、あぁ自宅に帰るんだろうと思い、その後を追って来たのだ。不思議そうな顔をする小鳥を他所に、近江隆之介はスラックスのポケットに手を入れ、スタスタと歩き出した。彼は小鳥の手前を歩き、濡れたカッターシャツに透けて見えるブラジャーを通行人に見えないように庇っていた。(あ、見えない様にしてくれてるのか、な) 以前、楠木大吾議会議長にセクシャルハラスメントを受けそうになった時、近江隆之介は声を掛けただけで結局その場所を立ち去ってしまった。やはり彼は噂通りに冷たい人物なのだ、と小鳥は落ち込んでいた。(今日は助けてくれるんだ) 小鳥は近江隆之介の背中を見た。「あ、ありがとうございます」 スーツを脱いだ近江隆之介の背中。全体的に細身だと思っていたが意外と筋肉質で、肩甲骨辺りの窪みが見て取れ、小鳥は少し見惚れてしまった。(あの背中に抱きついてみたいなぁ)「おまえ、デモとか初めてだろ。怖かったんじゃないのか」「はぁ」「頭からスタバとか笑えねぇな」(またおまえ呼び?)「あの」「何」「おまえって、近江さんと私、何処かで会いましたっけ」グホッ「そ、それ・・・は」「高校の先輩、とか?」「い、いやぁ。それ・・は違うと思うけど」 近江隆之介はその疑問に振り返る事も出来ず、目は上下左右へと泳いでいた。(や、ヤッベ。つい)「そう、ですか」「すまん、口癖なんだよ。悪かった」「いえ、大丈夫です」 黒い革靴にペタンペタンとソイラテの足跡が続き、ポプラ並木を真っ直ぐに進んだ。目の前に煉瓦色に黒い格子の金沢市役所が見えて来た。赤信号で止まる。「あ、あの」「何」「私、市役所に戻るんじゃ、ない」「家に帰るんだろ?」「あ、はい」(あれ?何で、分かるんだろ)ピッポーピッポー 機械的な鳥がさえずり青信号を渡る。二人は市役所
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内緒のお仕事

 小鳥はもう何十分も事務職員専用のパソコンと睨めっこしていた。先週に行われたデモ行進とその後のビラ配布の画像の中から、facebookに掲載する画像をあれこれと選択していたのだ。 動きのある被写体の写真撮影には慣れておらず、風景やアングルが良くても狸の田辺議員の顔が半分に切れていたり、爽やかイケメンの藤野議員の目が白目を剥いていたりと散々な出来栄えであった。「やばい、やばい。これじゃ更新出来ないぃ」 すると小鳥がソイラテを頭の天辺に被る直前に、公道に手を振る近江隆之介の横顔が一枚紛込んでいた。顎から頬骨に掛けてのスリムなライン、薄い唇。(このアングルいい!めっちゃ格好いい!) 小鳥はキョロキョロと窓側の議員机を伺い、藤野議員がこちらを見ていない事を確認してパソコンのマウスを右クリックした。(近江隆之介ゲットぉぉぉ!) 小鳥は早速、いそいそと自分の白い携帯電話に近江隆之介を転送し、待受画面に設定してニヤニヤとそれを眺める。にしても、はて。(近江隆之介は何故、私のマンションを知っていたのだろうか) 藤野議員がそんな個人的な事をペラペラ話す事も無いだろうし、万が一話したとしてもGoogleマップも見ずにあれ程真っ直ぐマンションに辿り着くだろうか。(近江隆之介もあの辺りに住んで、るのか、な)まさか、まさか。そんな偶然ある筈ないじゃ無い!有ったら奇跡じゃん!きゃー!もう喜んで押し掛ける!「小鳥ちゃん」 不意に藤野議員に声を掛けられた小鳥はフレームレスの眼鏡をクイッと上げ、平静を装って議員デスクへと向かった。出来る女を演じる。(あぁ、妄想に浸ってしまった。やばいやばい)「小鳥ちゃん、これなんだけど」「はい」「これ、付箋が貼ってある部分を三部づつコピーしてくれないかな」「これを、ですか?」「うん」 手渡されたのはA4版でそこそこ厚みがあるバインダーが三冊。ぎっしりずっしりと重かった。「いつまで、でしょうか」「作業の合間で良いから、七月中旬までにお願い」「はい」「その日仕上がった分は僕に二部、田辺さんに一部、クリアファイルに挟んで15:00に手渡して」「はい」「不在の時は、次の出勤日に宜しく」 次の瞬間、藤野議員のヘラヘラとした笑顔が消えて厳しく小鳥の顔を見上げた。「小鳥ちゃん」「はい」「
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内緒のお仕事②

 小鳥は地下一階の職員食堂でランチB定食を食べていた。と、ここで何やら視線が痛い。いつもの女性職員のイケメン発言かと背後を振り返ったが違う。(何?)  数名の男性職員と目が合った。小鳥のトレードマークだったフレームレスの冷ややかな眼鏡は無く、耳元にはプラチナの台座にムーンストーンの小さな石を嵌め込んだピアスが光っている。小鳥は近江隆之介に振り向いて貰いたいが為に、眼鏡をコンタクトに変えて耳にピアスの穴を開けた。(か、可愛いな)(意外とイケるな)(あ、あぁ、可愛い) 周囲をキョロキョロと見回すが彼らの視界に入る女性は小鳥だけだ。間違いない。その囁き声は小鳥に向けられたものだった。思わず頬が赤らむが心の中ではガッツポーズをし、(おっしゃぁぁぁぁぁ!)と叫んでスキップした。近江隆之介がどう思うかは別として、取り敢えず一般男性は小鳥の外見を”女性”として評価した。イケメン脱却の瞬間。(近江隆之介、どんとこ〜い!) 残念ながら昼休憩中にエレベーターで近江隆之介とすれ違う事は叶わなかった。そこで小鳥は議会事務局と議員控室の間を何往復もした。(会議室の予約に現れるかも) 辺りをキョロキョロと見回し首を傾げる。その仕草は愛らしく恋する乙女と表現しても差し支えはない。議会事務局の男性職員も小鳥の変貌ぶりに目を奪われた。「あ、小鳥ちゃん」 爽やかな笑顔で手を振りながら藤野議員が会議室フロアから爽やかな笑顔で手を振りながら近付いて来た。「コピーありがとう、仕事が早くて助かるよ」「え、は、はい!」 藤野議員が小鳥の顔を覗き込んで微笑む。「小鳥ちゃん、変わったねぇ。驚いたよ」「へ、変ですか?」「いや、そんな事ないよ。すごく可愛い」 その可愛らしさは6階フロアどころか地下職員食堂でももっぱらの噂となり、それは近江隆之介の耳にも届いていた。件の301号室問題など脳裏から吹っ飛び、その変貌ぶりを見てみたく近江隆之介の革靴は禁断の7階自主党フロアに向かった。(マジか、こりゃ見るしかないだろ。) そこで近江隆之介はわざわざ階段を使い、自主党議員控室の前を通り室内を軽く覗いてみたが事務職員の机に小鳥の姿は無く、狸の後頭部が椅子からひょっこり覗いていた。(ちぇっ。居ないのか) 残念に思いふかふかの紺色のカーペットから目を上げた瞬間、小鳥と藤
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内緒のお仕事③

小鳥が想定外の展開に狼狽していると、会議室のフロアから久我今日子が現れた。(く、久我今日子) いきなりの強敵登場に身構えた小鳥だが、久我今日子の妖艶な魅力の前では、眼鏡をコンタクトに変えた程度のイメージチェンジでは太刀打ち出来ない事は明らかだった。小鳥は心の中で悔しく地団駄を踏んだ。(ん?) その隣で、久我議員と藤野議員がすれ違う瞬間、二人の口元が緩んだような気がした。(笑った?まさかね。対立会派の議員が仲良しとか。有り得ないよね) そして小鳥の前を通り過ぎる久我今日子からはグリーンウッドの匂いがした。近江隆之介と同じ香りだ。エレベーターホールに立ち、そのボタンを押す指先は赤く動きも優雅、黒いワンピースに包まれた魅惑的な肢体。(悔しいいい!) 大人の女性の魅力が恨めしく、小鳥がキリキリと唇を噛んでいると、栗色の巻き毛がチラリとこちらを見てふっと笑った。(おのれ)「小鳥ちゃん、如何したの」「え」「物凄く・・・怖い顔してたよ」「え、え?そうですか」「うん」 藤野議員が例えるならば怒ったドーベルマンが鼻に皺を寄せていたとか。いかん、いかん。冷静さを失う所だった。が、我に返ったのも束の間。小鳥の脳裏には久我今日子と近江隆之介が抱き合う姿が浮かんでは消え、再びその怒りが沸々と湧き上がった。(おのれ、久我今日子。不倫、許すまじ)「小鳥ちゃん、顔、怖い怖い」「あ、すみません」 そして藤野議員と共に議員控室に戻った小鳥だったが、コピー機の前に立つとバタンガンと原稿をガイド板に差し込み、無意識のうちにジーコンジーコンガンガンガンと力強くボタンを連打していた。「怖いよ、小鳥くん。壊れちゃうから、ね」「はい」「備品は大切にしてね」「申し訳ありません」
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内緒のお仕事④

 そして近江隆之介といえば、階段を足早に降りると6階個室トイレの戸を閉め、勢いよく鍵を掛けた。指を挟むかの勢いだった。緩いパーマの髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き、ふと手を止める。(くっそ、くそ!) あの夜、小鳥の細い指先はこの髪を握り締めた。酒に酔っていたとはいえ、お互い「好きだ。」と告白し合った夜。にも関わらず、小鳥の白い携帯電話の待受画面はあの藤野。二人の和やかな姿が腹ただしい。(クッソ!) 近江隆之介はトイレットペーパーをカラカラと回すとずずっと鼻をかんだ。ポーン 6階のエレベーターホールに降り立った久我今日子は、男子トイレから赤い鼻を擦りながら出てきた近江隆之介に声を掛けた。「あら、泣いてたの?」「泣いてません!」「ま、いいわ。来なさい」 ふふんと鼻で笑った久我議員は、近江隆之介に議員控え室の扉を閉めるよう促した。そして原稿と思われるコピー用紙が十数枚挟まれたクリアファイルを手渡す。「近江くん、このコピー、同じ字体の領収書があったら青い付箋」「何ですかこれ」「坊やはまだ知らなくて良いの」「そうですか」「あと、同じ印刷会社の領収書のコピーがあればチェック、赤い付箋」「分かりました」ぎしっ 久我議員は回転する椅子で脚を組んだ。「ねぇ、坊や」「その呼び方はやめて下さい」「あなた、自主党の新しい事務員の女の子知ってるわよね?」「え、え。まぁ」「何だか可愛くなったわよね」「そうですか」「あら、興味ないの?」(くそ、藤野) 近江隆之介は先日のデモ行進の際、街頭で配布していた藤野議員のチラシを数枚、藤野建議員支持者の振りをし、入手していた。あれから何枚使っただろう。 近江隆之介は清廉潔白そうな藤野建の鼻の穴に油性マジックで三本の鼻毛を生やし、頬にぐるぐると模様を描き、ぐしゃぐしゃと丸めるとゴミ箱へ渾身の力を込めて投げ入れた。
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6月定例議会

 6月末には6月定例議会が開催される。全議員が市長や副市長を交えて質問、回答、討論し、その始終を金沢市民(市民以外でも可)が傍聴する。その定例議会に向け、高梨小鳥は自主党/市政報告会の準備に追われていた。 14:00の市政報告会開始まであと30分。議会事務局で第一会議室の鍵を受け取りホワイトボードに赤いマグネットを付けた。給湯室のバケツにお湯を張り、ぎゅっとダスターを絞ってせっせと机を拭いている所で声を掛けられた。「すみません、ここ」「ん?」 机の黒いシミ取りに夢中になっていた小鳥が目線を上げるとそこには一人の男性が、ノートパソコンと山ほどの資料を抱えて立っていた。聞き覚えのある声。(高梨小鳥ーーーーーーー!)(近江隆之介ーーーーーー!) 一週間ぶりの顔合わせに、互いの動きが凍りつく。思わず頬が引き攣る。「・・・・な、なんでしょうか」(ま、また睨んでる)「や、ここなんだけど」(か、可愛い)「ここ、が如何しました・・・でしょうか」「うちが使うんだけど」 近江隆之介は一台の長机の上にノートパソコンを置き、資料を手際よく並べ始めた。「えぇ!?」「第一会議室、うちが使うんだけど」「う、嘘」「本当だよ、議会事務局行ってみたら?」「えぇぇ」 小鳥は慌てて議会事務局に走り、会議室予約簿をペラペラと捲った。予約日を一日、間違えていた。「どうしよう。」 その場で頭を抱えていると、議会事務局の女性職員が声を掛けてくれた。「高梨さん、参加人数は何人?」「ろ、60人くらいです」「なら、第三会議室でも机を移動すれば大丈夫よ」「そ、そうなんですか?」「田辺議員にお伺いしてみたら?」「あ、ありがとうございます!」 議員控室で最終打ち合わせをしている狸の田辺議員は『それで良いよ。』と頷き、藤野議員は『これからは気を付けてね。』と笑顔で承諾してくれた。(よ、良かったぁ。)安堵した小鳥は近江隆之介が腕組みをして待つ第一会議室に急いだ。息が上がる。脇の下に嫌な汗が滲んだ。「す、済みません!間違えて居ました!今すぐ移動します!」「おう。そうしてくれ」「ごめんなさい!」 頭を下げた小鳥はペットボトルが入った段ボールをよいしょ、と二段重ねにするとその上に資料の束を乗せ、第三会議室へと向かう長細い廊下をよろよろと歩いた。
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6月定例議会②

突然の事に小鳥も思わず目を瞑った。近江隆之介が藤野議員を壁に押しやり腕を突いた。所謂、壁ドン状態である。「何、やってんだよ」「君こそ、今、何しているのか分かってる?」「何って」「僕にキスでもするのかい?」「な、訳ねぇだろ!」 そこへ手にノートパソコンを抱えた狸の田辺議員が近江隆之介の肩をポンと叩いた。「近江くん、久我議員があちらでお待ちだよ」「田辺議員」 近江隆之介が第一会議室を横目で見ると、その入り口で久我議員が仁王立ちになり、エルメスのスカーフを巻いた首の前で親指を立てて左から右へとスッと横に線を引いた。「如何やら君を首にするって言ってるみたいだね」「はい」「早く行きなさい」「はい」 近江隆之介はヘラヘラと笑う藤野議員の顔を睨みつけ、第三会議室を後にした。(クソ藤野!姉ちゃんだけじゃなく高梨小鳥にも手ぇ付けてんのかよ!)「坊や、楽しそうな事やってくれるじゃない」「申し訳ありません」 その後近江隆之介は久我議員に延々と嫌味を言われ続けた。しかしそれはうわの空。(二股野郎のどこが良いんだよ!) 近江隆之介は本日、二枚目の藤野建のチラシに三本の鼻毛と目から涙と頭に花を咲かせ、グシャグシャに丸めて渾身の力を込めゴミ箱に投げ捨てた。
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6月定例議会③

6月定例議会。 議場は6階、その場所から階段状に左右に分かれた議員席が連なり、一般傍聴席は7階に位置する。その出入り口は小鳥が勤務する自主党議員控室の斜向かいに有り、いつもは静かなこのフロアが賑々しくなる。(議会って、どんな感じなんだろう) 小鳥は議員控室のテレビを議会中継局に合わせて初めての議会が始まるのを待っていた。狸の田辺議員も藤野議員も、小脇に資料やバインダーを抱えて神妙な面持ちで議場へと向かった。(まだ始まらないのかなぁ) 壁に掛けられた白く大きなプラスティック製の時計の秒針とTV画面を見比べ、廊下をキョロキョロと覗いた。その時、一般傍聴席受付辺りで押し問答が始まった。(何、何!?怖っ!) そこには迷彩服に迷彩帽、過激な言葉がプリントされたTシャツに下駄を履いた男性二人組が大声を出し、職員に怒鳴り散らしている。着衣が議会傍聴に不適切だと入場を断られて激昂していた。「何で俺らが中に入れねぇんだよ!」「これか!?表現の自由だろ!」 議員控室の扉から顔を出していた小鳥とそのうちの一人の目が合ってしまった。迷彩服が憤った表情で、安全靴を鳴らして小鳥に向かい歩いて来た。「おい、お前、議員秘書か!?何で俺が中に入れないのか先生に聞けよ!」「え、あの」「聞こえねぇのかよ!」「あ、の」 その時、迷彩服の帽子がフローリングの床に落ちた。男の肩越し、黒いスーツに臙脂のネクタイを締めた近江隆之介が険しい顔で立っている。「済みません、ブンブンうるさい虫が飛んでいたので叩いてしまいました」「はぁ!?」「虫、大丈夫でしたか?刺されませんでしたか?」「何、言ってるんだお前」 迷彩服は憤りお前は誰だと騒ぎ出した。「久我今日子の秘書、近江です。何かご不明な点があればお受けします」 胸のネームタグを手に持って見せた。「俺はこの秘書に聞いてるんだ!」「その女性職員は事務員です」「そうなのか!?」「は、はい」「なら先に言えよ!」「す、済みません。」 近江隆之介は小鳥に詰め寄る男の間に割って入った。「今回の傍聴はご遠慮願えますか?」「何でだよ!」「着帽、下駄、サンダルでの傍聴は出来ません」「なら脱げば良いんだろ!」 二人は帽子と下駄を激しく紺色のカーペットの上に叩き付けた。「迷彩服、過激な内容の書かれたプラカードやTシャツの着
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定例議会お疲れ様の会

 6月定例議会も無事終了した。ただ一つ、小鳥には疑問が残った。「田辺さん、どうして田辺さんも藤野さんも質問しなかったんですか?」 そうなのだ。あれ程、市政報告会を開催したり、毎晩遅くまで議員控室に残り、重要な資料を整理して何かを探しているのに自主党議員が議会壇上に上る事は無かった。不思議そうに湯呑み茶碗をお盆で運ぶ小鳥に狸の田辺議員がズズズとお茶を啜りながらゆっくりと答えた。「人数なんですよ」「人数、ですか?」「議員数が一定数以上でないと代表質問が出来ないんです」「え、そんなぁ」 海苔巻き煎餅を頬張った藤野議員が口元のカスを親指で拭うとパクリと口に含んでゴクンと飲み込んだ。「だから、議員の人数は多ければ多い方が良いんだよ」「そうなんですねぇ、変なの」「変だよね」キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン 終業のチャイムが鳴る。小鳥の足元がソワソワとし始め、心ここに在らずといった雰囲気だ。その様子に気が付いた藤野議員が、空になった湯呑茶碗を差し出した。「小鳥ちゃん」「はい」「今日はもう良いよ」 狸の田辺議員はあぁ、という顔をして頷いた。「今夜は“おつかれさん会“か」「はい」「楽しんでおいで。でも、羽目を外し過ぎないように」 小鳥は前回の大失態が知れて居るのかと内心冷や汗ものだった。そうだ、今夜は気を付けよう。またまたお持ち帰りなんて最悪すぎる。いや、まてよ。もしかしたら前回の彼が接近して来るかもしれない。「はい!では行って参ります!」「小鳥くん、いやに気合いが入ってるねぇ」「これから戦に行きますみたいな顔だよ?」「そ、そうですか?」 小鳥は今夜の為に準備した開襟、七分袖、ウエストをリボンでキュッと調節出来る膝丈のワンピースに着替えた。黒地に細かい白のドット、襟と袖口は白でフェミニンな感じだ。焦茶のショルダーバッグを肩に斜め掛け。黒のパンプス。そして初めての賞与で買ったアクアマリンのピアス。(いざ、出陣!) 会場は前回と同じ、片町の古民家風居酒屋。301号室の彼も参加するに違いない!高梨小鳥は鼻息も荒く、正面玄関の自動ドアを跨いだ。小鳥は間口の狭い古民家風居酒屋の引き戸を開けた。「ヘィ、らっしゃ〜ぁい!」 ジャラジャラした暖簾を潜ると、威勢の良い掛け声。そう
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