家を出て五年目。村上莉音(むらかみ りおん)を海外に放置したまま一度も連絡を寄こさなかった父親が、突然人を遣わして彼女を連れ戻した。彼女はついに、家族が自分という隠し子を受け入れてくれたのだと思っていた。だが、彼女を待っているのは恋人の青山涼介(あおやま りょうすけ)が監禁されているという事実だった。莉音の父は、彼を拷問する映像を毎日彼女に送りつけ、江原家の目が見えない御曹司との結婚を強要してきた。両手を縛られ、血まみれになった涼介の姿を見て、莉音はついにそのことに同意した。しかし、ようやく涼介が解放されたその夜。莉音は慌てて彼に「一緒に逃げよう」と言いに来た時、彼の部屋から聞こえてきたのは姉の村上玲乃(むらかみ れの)の声だった。「涼介、ありがとう……莉音は私の父を奪った。彼女の母親は私の母を怒らせて死なせたのよ……彼女があのとき海外に行かなかったら、もしかしたら父は彼女のために私を捨てていたかもしれないわ」「でも彼女、あなたのことをとても好きだね。しかし五年間、彼女のそばでボディガードのふりしていたのは、全て私の復讐のためだった。そんな事実を知ったら、彼女は狂っちゃうじゃない?」五年の付き添い、生死を共にすると思っていた彼の想いは――ただ玲乃に捧げる忠誠の証でしかなかった。……祠堂に閉じ込められて十五日目、莉音はついに口を開いた。「村上さんに伝えて……彼の条件、受け入れるって」そう言い終えると、電話越しから彼女の父の歓喜の声が響いた。「莉音、やっとわかってくれたか!安心しなさい、君は村上家の戸籍には入れないが、それでも娘として認めているさ。江原家には、盛大な式で嫁がせてやるからな……」「娘?」彼女はふっと笑い、震える指先を必死で抑えながら冷たく言った。「私の母はあなたの妻でもないのに、私があなたの『娘』だと?」相手の沈黙を無視して、さらに皮肉めいて尋ねた。「村上さん、『隠し子』も娘なのか?」「莉音!」怒りに駆られた彼の声が低く響いた。「忘れるな、あの男はまだ俺の手の中にあるぞ。あいつの命が惜しければ、結婚するまでは大人しく従うんだ!」涼介の話を聞いた瞬間、莉音の呼吸が止まった。「彼はどこ……彼をどうしたの!私もう江原湧仁(えはら ゆうじん)と結婚すると言ったじゃない、だからお願い、彼を放して!」
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