Home / BL / 余計なお世話係 / Chapter 31 - Chapter 32

All Chapters of 余計なお世話係: Chapter 31 - Chapter 32

32 Chapters

いつも通りの、平穏な日曜日の朝だった。朝ごはんを食べて、倖地君のお母さんが迎えに来るのを待つ。……内心は、やっぱりちょっと落ち着かない。「あはは、鈴、倖地君より落ち着きないね」「いやあ……」これでまたしばらく会えないんだと思うと切ない。倖地君は和巳さんと仲良くタブレットでゲームをしてるけど。「鈴鳴お兄ちゃんは倖地君にずっとここにいてほしいみたいだよ」「か、和巳さん……」もう、余計なこと言わなくていいのに。恥ずかしかったけど、倖地君はゲームをやめて俺の方を向いた。「僕も。まだお兄ちゃんと一緒にいたい……」少しだけ揺れてる瞳見えた瞬間、さらに寂しくなった。そして、どうしようもなく嬉しい。「良かったね、鈴」「うん。あ、そうだ。皆で写真撮ろうよ」二人を定位置につかせた後、カメラを固定してセルフシャッターにした。本当は昨日三人で撮りたかったけど、バタバタして忘れちゃったからな。写真を撮ったあとプリントアウトして、倖地君に手渡す。彼は嬉しそうに「ありがとう」と言った。「鈴、俺にも後で二枚お願い。一枚は保管用で、もう一枚は常に手帳に入れておきたい」「わ、わかった」写真を確認し終わった直後、家のインターホンが鳴った。返答すると倖地君のお母さんだったから、和巳さんと三人で玄関へ行く。「本当にごめんね、和巳君。鈴鳴君もありがとう」「いえいえ、何とかなりました」彼女とは初めて会ったけど、やはりまだ若い人だった。旦那さんも同じぐらい若い人なのかもしれない。「倖地君、元気でね」ちょっと屈んで言うと、彼は俺に抱き着いてきた。俺も驚いたし、和巳さんもお母さんも驚いてる。「お兄ちゃん、また会えるよね」「あ、会えるよ。絶対、会える」今生の別れみたいになってることが可笑しくて、そして、どうしようもなく嬉しかった。「倖地君。俺も、お父さんと仲悪かったんだよ。お父さんのことが怖かった」「そうなの?」ちょっと跳ねてる、彼の髪の毛を手ぐしで直した。「うん。怖いからずっと逃げてた。でも初めて逃げずに話したとき、お父さんの知らなかった所を知ることができたんだ。……だから大丈夫。久しぶりに、お父さんにただいまって言ってあげて」アバウトすぎてアドバイスにもならない気がしたけど、彼は笑顔で頷いた。最後にまた強く抱き締めて、去って行く二人を見送った。改めて振り
last updateLast Updated : 2025-07-31
Read more

元不良少年の計画

時が流れるのは本当に早い。けど特に大きく変わったこともなく、平穏な日々を送れている。……少なくとも、自分は思う。「日永さん。今月の決算書作成、そろそろお願いしますね」「承知しました」和巳は会社のデスクで、ひたすらパソコンに向き合っていた。月末作業の為、今日は朝からかなり切り詰めて働いている。「ちょっと飲み物買ってきます」腰をさすりながら席を外し、休憩所へ向かう。パソコンをする時だけ使う眼鏡を外し、目薬をさした。「はぁ~。疲れた……」目が痛い。数字は強い方だけど、漢字の羅列はあまり慣れてない。結構疲れるな……。入社したばかりだからか、現状任されているのは単純作業だ。仕方ないけどどうしても考えてしまう。俺この会社に入る意味あった……?日に日に疑問に思う。死にものぐるいで勉強して大学を卒業した後、ラッキーボーイの俺は運良く大手の会社に就職した。契約ではあるけど、結果を出した分だけ評価される世界は良かった。ところが父から今後の方向性を考えてほしいと言われ、泣く泣く退職して日本に戻り、今に至る。祖父が引退した後、恐らく父が取締役に就任して……これから長い目で見ていけば、この会社で少しずつキャリアを積んでいくのが一番良い。それでも、毎日代わり映えのない入力作業ばかりだと思考が凝り固まる。俺はこの会社の何なんだ。中途入社した社員? ……うん、それだ!でも俺は十七時退社を夢見てる。定時五分前は皆大慌てで帰り支度をしていた、前の職場が懐かしい。……いやいや。卑屈になるのはやめよう。缶コーヒーを買ってベンチに腰掛ける。そしてポケットの中の手帳を開き、中から世界で最も愛する恋人の写真を取り出した。わぁ。可愛いな、鈴。そうだ。お世話になった会社を辞めて帰国したからこそ、また鈴と逢えた。その全てに感謝しなきゃ罰が当たる。現状をあるがまま受け入れるのも順応性のひとつだ。郷に入っては郷に従う。英語が不安なのに留学した時も、何とかなったんだし。何とかならなかったのは寮生活してたときに間違えて女子の部屋に入ったことだ。変態のレッテルを貼られて知らない学生達からdirtyと連呼された時は心が折れそうになった。でもそんなのは大したことじゃない。俺はポジティブ思考だけは誰にも負けないと思ってるから。大学生活は単位をとるのに必死で、血反吐を吐くような缶詰生活
last updateLast Updated : 2025-08-01
Read more
PREV
1234
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status