いつも通りの、平穏な日曜日の朝だった。朝ごはんを食べて、倖地君のお母さんが迎えに来るのを待つ。……内心は、やっぱりちょっと落ち着かない。「あはは、鈴、倖地君より落ち着きないね」「いやあ……」これでまたしばらく会えないんだと思うと切ない。倖地君は和巳さんと仲良くタブレットでゲームをしてるけど。「鈴鳴お兄ちゃんは倖地君にずっとここにいてほしいみたいだよ」「か、和巳さん……」もう、余計なこと言わなくていいのに。恥ずかしかったけど、倖地君はゲームをやめて俺の方を向いた。「僕も。まだお兄ちゃんと一緒にいたい……」少しだけ揺れてる瞳見えた瞬間、さらに寂しくなった。そして、どうしようもなく嬉しい。「良かったね、鈴」「うん。あ、そうだ。皆で写真撮ろうよ」二人を定位置につかせた後、カメラを固定してセルフシャッターにした。本当は昨日三人で撮りたかったけど、バタバタして忘れちゃったからな。写真を撮ったあとプリントアウトして、倖地君に手渡す。彼は嬉しそうに「ありがとう」と言った。「鈴、俺にも後で二枚お願い。一枚は保管用で、もう一枚は常に手帳に入れておきたい」「わ、わかった」写真を確認し終わった直後、家のインターホンが鳴った。返答すると倖地君のお母さんだったから、和巳さんと三人で玄関へ行く。「本当にごめんね、和巳君。鈴鳴君もありがとう」「いえいえ、何とかなりました」彼女とは初めて会ったけど、やはりまだ若い人だった。旦那さんも同じぐらい若い人なのかもしれない。「倖地君、元気でね」ちょっと屈んで言うと、彼は俺に抱き着いてきた。俺も驚いたし、和巳さんもお母さんも驚いてる。「お兄ちゃん、また会えるよね」「あ、会えるよ。絶対、会える」今生の別れみたいになってることが可笑しくて、そして、どうしようもなく嬉しかった。「倖地君。俺も、お父さんと仲悪かったんだよ。お父さんのことが怖かった」「そうなの?」ちょっと跳ねてる、彼の髪の毛を手ぐしで直した。「うん。怖いからずっと逃げてた。でも初めて逃げずに話したとき、お父さんの知らなかった所を知ることができたんだ。……だから大丈夫。久しぶりに、お父さんにただいまって言ってあげて」アバウトすぎてアドバイスにもならない気がしたけど、彼は笑顔で頷いた。最後にまた強く抱き締めて、去って行く二人を見送った。改めて振り
Last Updated : 2025-07-31 Read more