「んっ……」首筋に走る微かな痛みが、桜庭加豆子(さくらば かずこ)の思考をかき乱した。霞む視界の先に見えたのは、頬を紅潮させる一条佑翔(いちじょう ゆうと)の顔だった。そしてその瞳には、濃厚な欲望が宿っていた。「姉ちゃん、ちゃんと集中してくれない?」佑翔の声は低くかすれ、甘く耳元をくすぐった。彼は罰を与えるように加豆子のくびれをつかみ、動きを速めた……深く息を吐くと、満ち足りたように加豆子の胸に顔を埋め、いつものように事後の告白を始めた。「姉ちゃん、俺がどれだけ姉ちゃんを愛してるか、分かってる?姉ちゃんがいなきゃ、俺……死ぬよ」体に残った快感が波紋のように広がっていた。その上に重ねられた告白が、加豆子にわずかに残っていた理性を、容赦なく砕いた。佑翔には母乳への異常な執着があり、加豆子は生まれつき豊満で、思春期からブラは毎日替えなければならないほど早く成長していた。ふたりは、あまりにも相性が良すぎた。加豆子は震える声で、けれどどこか期待を込めて口を開いた。「佑翔……結婚しようよ。私、もうすぐ二十八歳になるの。そろそろ……」だが、その続きを言う前に……胸元に甘えていた佑翔は、突然体を引き離した。立ち上がると、肩幅の広い逆三角形のシルエットがあらわになった。背を向けたまま服を着ていく彼の声は、いつもの冷たく無機質なものに戻っていた。「そんな話、まだ早すぎる、会社も忙しい。結婚式なんて無理だ」加豆子は下に敷いていた服をぎゅっと握りしめ、唇を噛んで、遠慮がちに言った。「式は構わない、籍だけ入れたいの」佑翔の体が微かに硬直した。気まずさの漂う空気の中、彼の携帯が鳴った。佑翔は車を降り、電話に出た。その間に加豆子は着替えを始めたが、足がもつれて近くの草むらに倒れ込んでしまった。そのとき、一筋の赤い光が視界をかすめた。草むらには、小型カメラがあった。加豆子は震える手でそれを拾い上げ、ボタンの掛け違いにも構わず、佑翔のもとへ駆け出した。ようやく彼の姿を見つけ、盗撮されたことを伝えようとしたそのとき……佑翔は冷たい声で、電話の向こうに言った。「映像、届いたか?ちゃんと高画質で撮れてるな?加豆子の顔がはっきり映らないと」その言葉は雷鳴のように耳元で炸裂した。加豆
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