相馬は手に持ったナイフを弄び、くるりと回すと口を開いた。「お前に手を出すなって、こいつと取引したんだ。だが今、僕は通報された件でイライラしているんだ。で、こいつに付き合ってもらうのが筋だろ?」蒼空の顔色がさっと変わった。彼の手にある刃を凝視し、声を絞り出す。「相手はあの松木瑛司よ。彼に手を出すなんて、正気なの?」相馬は小さく舌打ちし、首のあたりを揉みほぐしながら不機嫌そうに答えた。「その言い草、どうも癪に障るな。だから何だってんだ?結局こうして僕の手に落ちたじゃないか。何をしようと僕の勝手だ」彼は陰湿な眼差しで彼女を射抜いた。「それよりお前、自分の立場をわきまえろ。他人よりも、まずは自分の心配をしたらどうだ?」瑛司は首を巡らせて彼女を見ると、ふっと笑みを浮かべた。「大丈夫だ、蒼空。全然痛くないんだ」蒼空の瞳には複雑な色が混じり合った。それは呆れでもあり、軽蔑でもあり、そして抑えきれない憤りでもあった。相馬が冷ややかに言い放つ。「おい、僕の前でいちゃつくな。反吐が出る」彼がナイフを手に一歩踏み出すと、蒼空は奥歯を噛み締めた。内心は焦燥に駆られていたが、当の瑛司はどこまでも平然としている。その涼しい顔を見ていると、蒼空は彼の顔面に一発食らわせてやりたい衝動に駆られた。相馬が手を振り上げた瞬間、蒼空はついに叫んだ。「彼は関係ないでしょう、なぜ巻き込むの?恨みがあるなら私に直接――」相馬は皮肉な笑みを浮かべて彼女を一蹴した。「何言ってんだ。こいつは『関係ない』じゃない。元凶の一人だ。逃がすはずないだろ」瑛司は相馬の動きなど眼中にないかのように、蒼空だけを見つめていた。焦り戸惑う彼女の姿を、まるで見世物でも見るみたいな目だ。蒼空は深く眉を寄せ、彼を睨みつけた。「......あなた、本当に狂ってるわ」その言葉が終わるか終わらないかの瞬間だった。相馬が迷いなく刃を振り下ろし、瑛司の腕を深く切り裂いた。鮮紅の血が、その場に飛び散る。蒼空は条件反射で目を閉じ、顔を背けた。瑛司は短く呻き声を漏らし、溢れ出す血を無感動に見下ろした。その表情には、痛みを感じている様子など微塵もなかった。相馬は手慣れたもので、一太刀浴びせるとすぐに手を引いた。そして布切れを
Read more