遥樹はさらに問いかけた。「小春の方はどうなっている?」後ろの男がすぐに答えた。「すでに警察と連絡が取れています。こちらの位置情報は共有済みで、警察も救出作戦を展開中です。俺たちの30キロほど後方にいますが、すぐに追いついてくるはずです」「松木の方は?」今度は、男が一瞬言葉を詰まらせてから言った。「......あちらからの返答によると、1時間前、松木さんは自ら人質として犯人の元へ向かったそうです。彼は発信機を身につけていたおかげで、彼の部下たちは俺たちよりも早く居場所を突き止めています。あと......5キロほどで現場に到着するとのことです」遥樹は一瞬呆然とした。瑛司がすでに蒼空の元へ向かったと聞き、最初に湧き上がった感情は嫉妬ではなく、安堵だった。蒼空を心から想う人間がそばにいてくれること、そして瑛司の部下たちがより早く彼女を見つけ出し、守ってくれるであろうことへの安堵だ。かつて自分も、身代わりとして連れて行くよう相馬に要求して拒絶された。それが瑛司の時には聞き入れられた。その事実に対しても、彼はただただ、良かったと感じていた。遥樹は短く頷くと、それ以上は何も語らず、一心不乱にペダルを漕ぎ続けた。......吹きつける寒風の中、安莉の表情は凍りついたように動かなかった。体だけでなく、心まで冷え切っていた。「この先は森です。車は入れないので、降りて歩いて捜しましょう」男は黙ってバイクを森の入り口に止め、周囲を見渡したが、人影はなかった。彼はバイクを降りると、安莉が降りるのに手を貸した。男は後に続いてきた仲間たちに視線を送り、一度頷いた。安莉は瑛司の秘書であり、男も彼女にはそれなりの敬意を払っていた。「本当に中へ入るつもりですか?どんな奴らが潜んでいるか分からないんです。やはり外に残ってください。誰かが近づいてきた時、俺たちのことは構わずバイクで逃げてください」それは彼女を思っての提案だった。安莉は細身で、男の拳一つで倒れてしまいそうなほど弱々しく見える。彼女を連れて入れば足手まといになり、衝突が起きた際に彼女を守るために戦力を割かねばならないことを危惧していたのだ。もちろん、瑛司の秘書である彼女にそこまで露骨なことは言わなかったが。良かれと思っての助言だった
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