ようやく警察が到着した。蒼空は再び遥樹のほうへ視線を向ける。遥樹の下敷きになっている男は、すでに息も絶え絶えで、ほとんど死んだも同然の状態で倒れていた。止めようと手を上げかけたとき、すでに2人の警官が遥樹のもとへ駆け寄り、その腕をつかんで男の上から引き離していた。彼女はほっと息をつく。体をわずかに動かしたそのとき、ようやく自分の体に巻かれていた縄が解かれていることに気づいた。蒼空は振り返る。そこには、はっきりとした顎のラインを持つ顔があった。「......瑛司」瑛司は彼女を見上げ、小さく「ん」と返し、それから尋ねる。「立てるか」言葉と同時に、彼女の体の下に回っていた縄が引き抜かれていく。蒼空はゆっくりとうなずいた。「うん」すると瑛司は、まず体の下の縄を後回しにし、彼女を支えて立ち上がらせる。彼は彼女の手を取り、木の幹に寄りかからせると、自分は片膝をついて残りの縄を解き始めた。蒼空はその頭頂を見下ろし、複雑な表情を浮かべる。「私がやりましょうか。松木社長は休んでください」その声で初めて、彼の後ろに立っていた安莉の存在に気づいた。安莉は一歩前に出て、蒼空に軽くうなずき、それから身をかがめて瑛司の手首をつかむ。「ここは私に」蒼空は無意識に、その手首をつかむ彼女の手へと視線を落とし、すぐに目を逸らした。瑛司は顔を上げ、蒼空を一瞥する。彼女は遥樹のほうを見ていた。その瞬間、彼の目がわずかに陰る。瑛司は安莉の手を振りほどき、短く言った。「いい」安莉は拒まれ、まぶたを伏せたまま黙って彼の手元を見つめる。瑛司は手際よく、あっという間に蒼空の縄を解き終えた。彼女は自由の身になる。警察に制止され、ようやく遥樹も正気を取り戻した。彼は蒼空を振り返る。その表情は重く沈みきっていたが、次の瞬間、迷いなく彼女のもとへ歩み寄る。蒼空が小さく口を開く。「はる――」だが言い終える前に、遥樹は大股で近づき、そのまま彼女を強く抱きしめた。「蒼空」背中に回された腕と、かすかに震える声が、彼の不安をありありと伝えてくる。蒼空の胸は柔らかくほどけ、目を伏せて彼を抱き返す。遥樹は彼女の首筋に顔を埋め、さらに強く抱きしめた。くぐもった声が胸元に響く。「
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