あの日、言弥は病院を飛び出すと、真っ先に美和の親友・小川友里(おがわ ゆり)の家へ向かった。玄関の扉を狂ったように叩き続け、声を枯らして叫んだ。「頼む!開けてくれ!早く開けてくれ!」夜更けを破るその声に、寝起きの友里は苛立ちを隠さず扉を開けたが、言葉を発するより先に、言弥は彼女を押しのけるように中へ駆け込んだ。「美和……美和!出てきてくれ……頼む、俺が悪かったよ……!」息を切らしながら、部屋という部屋の扉を開け放っては中を覗き込み、その度に胸の奥が冷たく沈んでいく。家の中はひっそりと静まり返り、人の気配はどこにもなく、当然美和の姿もなかった。一通り探し終え、脱力したようにリビングへ戻ると、友里が腕を組み、冷たい視線を向けていた。「……気は済んだ?美和の顔を立てて通報しなかっただけ、感謝しなさいよ。一体何を考えてるの!?」言弥は涙をため、震える声で答えた。「美和が……家を出て行ったんだ。今どこにいるのかも分からない……君は彼女の親友だから、きっとここに来てると思って急いできたんだが……何か知らないか?」その言葉に、友里の表情が一瞬固まり、瞳を大きく見開いた。「……美和が家出?そんなはずないわ!あれほどあんたを愛してたのに!一体、何をやらかしたのよ!?」友里の反応で、美和が何も告げずに一人で全てを抱え込み、苦しんでいたことを悟った。言弥は後悔の念で頭を抱え、苦しげに語り始めた。「俺は……彼女を裏切ったんだ。離婚を切り出されて、彼女は家を出ていった……」激怒した友里は言弥の顔を強く平手打ちした。「ふざけないで!結婚したとき、何て言ったか覚えてる!?一生彼女だけを愛して守るって誓ったじゃない!彼女がどれだけの覚悟であんたの隣に立って、どれだけの苦労を背負ってきたか分かってるの!?……なのに、どうして裏切ったのよ!」言弥は反論せず、ただ友里に懇願した。「……お願いだ、美和を探すのを手伝ってくれ。彼女は……妊娠してるんだ。彼女を一人にさせるわけにはいかない。どうか頼む……」その言葉に、友里の怒りはさらに増幅した。「今さら何を言うのよ!?……あんたが浮気してたときは、美和のことなんて考えもしなかったくせに!」言弥は言い返せず、ひたすら頭を下げて謝罪した。「……認めるよ。全部、俺が悪
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