香月はごく自然に和沙の隣に歩み寄った。「ちょうど今から、和沙と一緒に婚約式の会場を見に行こうと思っていたんです。芳賀さんはお帰りになったばかりですし、まずはゆっくりお休みください」翔真は頷いた。「それは大事なことだ。行ってきなさい」和沙は感謝の気持ちを込めて香月を見つめ、ふたりで芳賀家の屋敷を出て車に乗り込むと、ふうっと小さく息を吐いた。「ありがとう」香月は彼女のシートベルトを丁寧に締めてやりながら、穏やかに言った。「和沙、もうすぐ君は僕の婚約者になるんだよ。そんなにかしこまらなくていい」和沙は淡く微笑み、そっと頷いた。婚約式当日、香月は彼女に、まるで少女が夢見るような完璧なセレモニーを用意してくれた。華やかで温かく、心が満ちていくような式だった。式の後、香月は和沙を連れてあちこち旅に出た。ダイビングをしたり、雪山に登ったり、オーロラを見に行ったりした。旅の途中、和沙はいつの間にか写真を撮ることに夢中になっていた。カメラ越しに出会う、偶然の美しさに魅せられた。香月は彼女に一眼レフカメラをプレゼントし、ふたりで街を歩き回っては、最高の光と影を探した。彼女が行きたい場所があれば、どこへでもついていった。やってみたいことがあれば、全力で応援した。ある日、朝焼けを撮るために、和沙は朝の四時に起きた。香月は彼女のそばでずっと待っていてくれた。やがて陽が昇り始めた。納得のいく一枚が撮れた時、和沙は無邪気な笑顔を浮かべた。彼はその姿を優しく見つめ、瞳に惜しみない愛しさを湛えていた。ふと、和沙はかつて宗太に「写真を習いたい」と言ったときのことを思い出した。あの時、宗太は彼女の頭を撫でながら、こう言った。「写真は大変だよ。俺が代わりに撮ってあげるよ」その頃の和沙は、彼に頼り切っていて、自分を見失っていた。だけど香月は、いつもそばにいて静かに支えてくれる。のどが渇けば水を差し出し、写真を見せればじっくりと感想をくれる。決して彼女を子ども扱いせず、勝手に何かを決めたりしない。香月がいつも励ましてくれる。「いいアイデアだね。やってみたら?」彼女は一人の人間として尊重されていると感じた。彼は彼女に挑戦する勇気をくれ、もっと自由に、もっと自分らしくいられるよう導いてくれた。それが、和沙の内面を少
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