景凪は、その阿鼻叫喚を冷ややかな目で見つめた後、ふいと視線を外した。バッグの中のカメラに、ちらりと目を落とす。……本当の特大スクープは、まだここにある。景凪は踵を返し、その場を離れようとした。その時、前方から一台のバイクが近づいてくるのが見えた。鋭い勘が、瞬時に危険を告げる。バイクは突如として車線を変え、猛スピードで彼女めがけて突っ込んできたのだ。後部座席の男が懐から鉄パイプを引き抜き、景凪の頭を狙って振りかざす――!景凪の瞳が、恐怖で限界まで見開かれた。ドンッ――!鈍い衝撃音が轟いた。後方から疾風のごとく現れた黒塗りの高級車が、景凪を襲おうとしたバイクに背後から激突し、弾き飛ばしたのだ。バイクに乗っていた二人は十数メートルも吹き飛ばされ、激しく地面を転がった。しかし彼らは、激痛に耐えて素早く起き上がると、路地裏で待機していた仲間のバイクに飛び乗り、瞬く間に夜の闇へと消えてしまった。あまりに一瞬の出来事だった。ショックで凍りついた全身の血液がまだ解けないうちに、横に停車したマイバッハの後部ドアが開く。聞き覚えのある男の声がした。その声には、深い安堵と、まだ消えやらぬ焦燥が入り混じっていた。「景凪」恐怖で強張ったまま振り返ると、そこには渡の姿があった。車内の暗がりに沈む彼が、彼女へと手を差し伸べている。柔らかく降り注ぐ月明かりだけが、救い出すように伸ばされたその手を、白く浮かび上がらせていた……なぜだか急に、目頭が熱くなった。あふれそうになる感情に突き動かされ、景凪は差し出された渡の手をギュッと握り返す。その瞬間、強い力で引かれ、彼女の華奢な身体は車内へと滑り込んだ。そのまま勢いよく、渡の胸に抱き留められる。背後で重厚なドアが閉ざされ、マイバッハは滑らかに走り出した。外の喧騒は遮断され、静寂が二人を包む。渡の胸元に顔を埋めるような格好になり、景凪の全身は彼特有の香りに包まれた。耳元では、上質なスーツの生地越しに、男の心音が直接響いてくる。ドクン、ドクン、ドクン……重く、力強いリズム。近すぎる。頭上から降りかかる彼の吐息が、髪を揺らすのを感じる。景凪は顔を上げる勇気もなく、慌てて彼の腕の中から身を起こそうとした。だが運悪く、車が大きくカーブを切った瞬間だった。半身を起こしかけた体
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