宴会場の一角で、誰かが湊の肩に手を置いた。「湊さん、どうしたんだよ、そんな顔して。翠さん見つかったんじゃなかったの?なんでまだそんなに落ち込んでるんだよ?」湊の表情は冴えなかった。彼は隣の男に視線を向けた。「もし、過ちを犯したなら、どうやって償えば、取り戻せると思う?」その問いに、男は一瞬呆気に取られたあと、吹き出すように笑った。「湊さんがそんなこと言う日が来るとはな。翠さん、連れて帰れなかったのか?俺が思うにさ、いっそ強引に連れ帰っちゃえばいいんだよ!もう無理やり……おい」突然、男が驚いたような声を上げた。湊は眉をひそめ、何か言おうとしたが、それより早く男が叫ぶ。「ちょっ、あれ、翠さんじゃねえか」一瞬で振り返った湊は、扉から入ってきた人物を見て、その場に凍りついた。翠は青のロングドレスを身にまとい、シンプルなカッティングが完璧なボディラインを際立たせていた。ストラップ付きのデザインが、白く繊細な鎖骨を美しく露わにし、腰まで届く黒髪がその小さな顔立ちをさらに引き立てている。ノーメイクとは思えないほどの美しさ。その場にいた誰もが、彼女に視線を奪われていた。「うわ、綺麗すぎだろ、湊さん、マジで羨ましいって」隣の男が抑えきれずに声を漏らした。湊は、ようやく現実に戻ってきたかのように目を見開いた。彼はずっと彼女が美しいことは知っていた。だが、これほどまでとは思わなかった。彼は一歩を踏み出す。こんなにも人目を引く彼女を、自分の後ろに隠してしまいたかった。しかしその瞬間、別の男が彼女の隣に現れた。黒のタキシードに身を包んだその男が、翠の手を優しく取り、自分の腕にそっと添えた。二人は目を合わせ、翠は少し照れたように視線を逸らす。「うそだろ、誰だよ。あいつ、なんで翠さんの手を握ってんだ」その声を聞いた湊は、我を忘れ、大股で二人の前に立ちはだかった。翠はちょうど直哉と会場を後にしようとしていたが、突然道を塞がれて足を止めた。顔を上げると、そこに立っていたのは、思いもよらない人物、湊だった。眉間がぎゅっと寄る。湊はその反応を見て、拳を握りしめ、できる限り優しい声を絞り出した。「翠、どうしてここに?食事は?君の好きなスイーツがあるんだ。案内するよ」そう言いながら、彼女の手を取ろうとした。翠はさっと自分の手を背中へ回し
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