All Chapters of 麻雀食堂―mahjong cafeteria―: Chapter 61 - Chapter 70

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その7 第四話 朝のコーンスープ

61.第四話 朝のコーンスープ 朝起きるとマキから "おはよ~(アタシは今から寝るけど)" というメッセージが届いてた。メッセージが来ていたのは15分前。返信はどうしよう。絶妙に時間が経過している。今から寝るって言ってるのに返信したら迷惑になるか? いやでもたった15分だし。ウーム。悩む、が! もし自分なら(返信くるかなくるかな)とワクワクしてなかなか寝付けない可能性まである。ここは1つ、一刻も早く返信しよう。うん、それがいい。 考えた末に今すぐ返信という結論に至り(その結論に達するまでにさらに10分くらいかけた)。"おはよう! もう寝てたらゴメン"とメッセージを送った。すると送信するや否や既読がついて。"大丈夫、今から寝るとこ。ぐんなーい♡(朝)" という返事が帰ってきた。良かった、正解だった。俺はもう仕事に行く時間なのでこれに返信することはなく急いでバタバタと家を出た。返信するしないで悩んでるうちにムダに時間をかけてしまったのだ。布団の中で悩むんじゃなくて朝ごはんでも食べながら悩めばいいのにな。効率の悪い自分に呆れる。(強い雀士の武器は共通して素早い決断力だ。こんなことじゃダメだな、もっと精進せねば。せっかくネギ切ってあったのに。納豆ご飯くらい食べておきたかったな)なんてことを思いながら駅までの何もない住宅街を早歩きで進む。 本当にこのへんは何もない。自販機すらない。駅前まで行けばコンビニとスーパーがあるがスーパーはまだ開いてないし、コンビニは寄る時間があるか微妙だ。 朝の買い物はそこでしか出来ないので出勤時間の駅前コンビニはやたらと混んでる。行列に並んでいるような時間の余裕は今日は無い。 チラリと店内を覗き見て、右手にしてる腕時計と相談する。(うん、無理だな。諦めよう) 空腹のまま俺は改札を抜け、ホームに降りる。自販機で飲み物を買うくらいの時間はあったので冷たいコーンスープを買うことに。少しだけでも腹に何か入れたい。 実を言うと俺は両利きだから仕事に行く時は電子時計を右手首につけている。その方が改札を通る時に楽だから。左手首につけてると改札が全然スマートに通れないからな。 なぜ、通常左につけるものに電子定期券機能をつけたのか。そもそも改札も改札だ。いい加減、電子時計利用者用に左側にもセンサーをつけるべきでは? もうかなり前から
last updateLast Updated : 2025-09-17
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その7 第伍話 新人教育

62. 第伍話 新人教育  髙橋彩乃はヤキモキしていた。原因はもちろん乾春人である。 (ハルト君からメッセージこないなー。昨日は私から『おやすみ』のメッセージ入れたんだから今日は先にあっちからメッセージ送ってきたりしてくれないかなー。『おはよう』だけでもいいのにな)と思っていたが、ふと思い出した。そうだ、契約その3だ! その3 ハルトからのアプローチは嫉妬の原因になるので基本的にハルトは受け身で。と書いた。 (そうか、ハルト君は受け身にならなきゃいけないからそれを忠実に守ってるんだ、きっとそうだ)  それなら仕方ない。という事にすぐ気付けて良かった。朝っぱらからいつまでも連絡を待ってヤキモキするとこだった。 お昼休みあたりでまた私からメッセージでも送っておこう。『こんにちは』だけでもいいわけだし。 (……そっかー。ハルト君が契約書の通りにしてるってことは、なんか「好きです!」とか「付き合って下さい!」みたいな青春イベントは無いまんま私たちの付き合いは既に始まったんだ……。なんか、え? もうこれ始まったの? て感じね。まあ、青春イベントを求めるような年齢ではないわけだけど。……でも、ハルト君はどうなのかしら。こんな始まり方の付き合いでいいのかなー)  ◆◇◆◇  一方、ハルトは特に気にしておらず。契約書に書いてある三人のルールを守ることだけ注意していた。 気にするしないとかよりハルトは仕事で忙しかったのだ。 (はー、新人教育って初めてやるけどかなり大変だな。しかも女子っていうのがまたな。同性にやらせてくれよと思う所だが、まあ、うちの会社は女性社員が極端に少ないからな。1人だけ適任な人はいるにはいるけど、今は産休ときてる。
last updateLast Updated : 2025-09-18
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その7 第六話 美咲の強運

63. 第六話 美咲の強運  俺はその日家の近くのスーパーにある宝くじ売り場にいた。 何か大当たりしたら買いたいものがあるとか、そういう目的があったわけではないが1枚300円のスクラッチくじを3枚買ってみた。別になんとなくだ。そういう時ってあるだろ? まあ、購入の理由は全く無いわけじゃないが。というのも今回のスクラッチくじが『麻雀スクラッチ』というくじだったから。どんだけ麻雀好きなんだよ。  宝くじを買うのは3枚くらいがいいんだ。4枚買おうとすると1000円超えてしまうから。それはちょっと使いすぎな気がする。遊びなんだから、こんなのは。 (この10円玉で削るのが楽しいんだよな。童心に帰れるというか。昔の雑誌の付録で遊んでるみたいで)  俺は削る前に裏面に書いてあることを読んだ。どうせならどれが大当たりかとか理解してから楽しみたい。 (ええと、なになに赤伍萬が3つ暗刻ると大当たり120万円。赤⑤筒3つだと2等30万円。赤5索3つだと3等10万円。4等から7等は東南西北の順ね。これ企画したやつ相当麻雀好きだな。三元牌とかじゃなくて赤牌を1等にもってくるのは本物の雀士の感覚じゃん!)  まず1つ目を削る。 カリカリカリカリ 西 西 (お、いきなりリーチ? 6等1000円)  こういうのは金額の問題以前に『当たりそう』ということだけでワクワクする。  さあ、1000円は当たるのか? 最後の1マスを削る。 カリカリカリカリ 中 「ちゅん! ブハッ!」  
last updateLast Updated : 2025-09-19
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その7 第七話 キャンベラ的な

64. 第七話 キャンベラ的な 「はぁい、600300円。じゃあ気を付けて持ち帰ってね。お兄さんおめでとうございます」「ありがとうございます」  俺は当たった60万円をカバンにしまい、とりあえず銀行ATMへ向かうことにした。  ────  60万円持ち歩くなんてのはソワソワしちゃうので脇目も振らずATMへと直進。真っ先に自分の銀行に入金完了。とりあえずこれで一安心だ。 「いやーしっかし驚いたー。ていうか60万円その場で手渡しで貰えるんだねぇ」「100万円からは銀行手続きが必要だったはず。……しかし、本当に当たるんだな。すげぇな美咲、おい」「当たったお金、どうするの?」「うん、それなんだけど。部屋を借りようかと思ってる」「あ、つまり! 雰囲気だけでも新婚みたいな感じにするってこと? え、お兄ちゃんおうちから出てっちゃうっていうこと?」「ま、まあな……」「嫌だよう〜。それは嫌だ〜」  なんだこいつ、かわいいな。そんなに俺と離れたくないのか。 「ただでさえ少ない家族なんだから人手が減るのは困るよお」  違った。そりゃそうか。 「んー、でもなあ。麻雀食堂までここからだとけっこう遠いからなー」 「あ、分かった。それならさ、あやのさん達の所とウチのそのちょうど中間地点に当たるとこにお兄ちゃんの部屋を借りればいいんじゃない?」 「中間地点だとそれまたド田舎になるけどな。まあいっか。キャンベラ※的な。うん、そうしよう」 ※オーストラリアの首都『キャン
last updateLast Updated : 2025-09-20
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その7 第八話 俺たちの新居

65. 第八話 俺たちの新居  宝くじを当てた日以来、中間地点の物件探しを暇があれば毎日のようにしてた。 それは俺だけじゃなくて、あやのさんもマキも各々チェックをしていた。一応、俺たちの新居っていう感じで借りるつもりだから、全員がある程度納得できる部屋がいい。ちなみに、なんでか美咲も一生懸命に検索してた。これ、おまえんちじゃないからな。  俺はできれば庭付きがいいなと思ってて。庭なしなら広めのベランダが欲しいと考えてる。なんとなく、植物育てたいなと思って。自分で育てたミニトマトとか食べたいじゃん。小さくてもいいから家庭菜園をやってみたいんだよ。 あやのさんのこだわりはキッチンの広さだった。とくに流しの大きさは気になるようで一生懸命画像を見てた。 マキはコンビニが近いかどうかを気にしてた。たしかに、近くにコンビニがあれば有り難いかもしれない。 とくに夜も働くマキにとっては一般人の生活リズムは当てはまらない。24時間開いてる店があることは重要なことなのだろう。  それぞれの理想を取り入れて探すとなるとなかなかハードルが高い。    ──数日後  今日はあやの食堂に3人集合して物件の話し合い。 もう俺は折れようかな。家庭菜園は豆苗でもやって満足すればいいか。そう諦めかけてた時だった。 「あった! あったわよ! コレ、完全にみんなの理想を叶えてくれるやつ!」「本当? あやの」「本当本当! これならOKなはず!」  それは予想していた以上の好条件な上にアパートやマンションではなく一戸建てだった。外壁は赤茶色でそれもまたオシャレに思えた。 「ここにしよう!」  後日、俺たち3人はこの物件を直接見に行
last updateLast Updated : 2025-09-21
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その7 第九話 炎天下で飲むコーラ

66. 第九話 炎天下で飲むコーラ  新居を決めた俺は早速契約を結び引っ越し作業をすることにした。 作業自体は急ぐことないから業者は雇わずに自分でじわじわと物を運ぶことに。今住んでいる家を出ていくわけじゃないからな。焦る必要ない。  今日、俺は休みだ。木曜日だからあやの食堂のやってない日なのだが、あやのさんの荷物を運ぶのを手伝うということで食堂に来ていた。  季節はもう秋なのだが残暑がしつこく、現在の気温は32℃だった。風がないからもっと暑く感じる。 (わざわざこんな暑い日にやらんでも。っていうわけにもいかないかー。あやのさんも俺も同時に休める日ってのは限られてるもんな)   しばらくすると危ない走りをした軽トラがやってきて食堂の前にキキッ! と止まった。 「あやのー! おまたせ! 借りてきたよー!」「ありがとうございますー!」   そこには軽トラの運転席から顔を出して声を上げるジュンコさんがいた。そっか、あやのさんはキッチンをなんとかしたいから運ぶものが多いんだな。そんで免許持ってるジュンコさんにレンタカー屋さんから軽トラを借りてきてもらった、と。 (それはいいとして、一緒に連れてきた助手席の美人さんは誰だろう) 「あやのさん、お久しぶりです。今日はお手伝いにきました」「ありがと〜。助かるわぁ」 「……あの、こちらの方は?」「あー、言ってなかったっけ? 今日手伝ってもらう私の仲間よ」  その人は肩より少し下まである黒髪をなびかせてこちらへ歩いてきた。 年齢はあやのさんと同じくらいかそれより少し若いくらい……いや、女性の年齢を考える
last updateLast Updated : 2025-09-22
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その8『新しい生活 編』第一話 手作りジンジャーエール

67. ここまでのあらすじ  乾春人はスクラッチ宝くじで60万円当てたことをきっかけに新居(借家)を契約して雰囲気だけでも新婚生活にしてみようと試みる。その引っ越し作業の際に財前カオリという女性にはじめましてと挨拶されるが、どこかで見たことがあるような気がした。  【登場人物紹介】 乾春人いぬいはると  主人公。この夏は怒涛の数ヶ月だった。あれよあれよという間に恋人が2人出来て、2人は喧嘩になるでもなく、片方を振るでもなく、双方と付き合うことで解決とするという。考えうる限り最も平和な三角関係が始まり、狼狽するばかり。そんな26歳。  髙橋彩乃たかはしあやの  あやの食堂の店主。爽やかな笑顔で食べてくれるハルトに惚れて積極的にアタック。ハルトのほうもまんざらでもなく付き合う流れになったが、それは奇妙な三角関係であった。得意料理は唐揚げ。今は離婚して独身だが、7才の娘がいる。  犬飼真希いぬかいまき  あやの食堂の近所でカラオケスナック的なものを経営するオーナー。あやのとは親友で、あやの食堂の手伝いもたまにしてる。マキもハルトのことが好きだということなので2人とも愛してもらうということで落ち着いた。  髙橋幸太郎たかはしこうたろう 『メタ』の愛称で呼ばれている中年男性。髙橋彩乃とは3度結婚したことがある(それはつまり3度離婚したということ)。かつては超一流のプロ雀士でもあったが今は色々なものを引退してあやの食堂の手伝いをしながら気ままに生きてる。娘からは割と好かれているようだ。  左田純子
last updateLast Updated : 2025-09-23
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その8 第二話 皮パリパリのチキンステーキ

68. 第二話 皮パリパリのチキンステーキ  今日は元の家に帰ることにした。マメに帰らないと美咲が文句を言うかもしれないし。 三人家族が1人抜けるというのは大きな違いだ。マンパワーが1/3減るというわけだから。 「ただいま~」「あっ、お兄ちゃんおかえり!」「おかえりなさい、春人。丁度いまから晩ご飯にするけど食べる?」「うん。腹減ったし」「お兄ちゃん、食べたら雀ソウルしよーよ」「いいぜ」 ────「「いただきまーす」」 晩ご飯のメインはチキンステーキだった。皮がパリパリで甘じょっぱい醤油系の味付けで、なんていうか、めちゃくちゃ美味い。 「母さん、この皮パリパリさせるのどうやるの? この前作ってみようかなと思って皮を延々と焼いてみたけど出来なかったんだよね」「ああ、これはね皮を下にして焼くだけじゃ出来ないのよ。その上にアルミホイルを敷いて、さらにその上に鍋を乗せて、その鍋にたっぷり水を入れるの」「押しつぶし続けてるってことか!」「そう。それが出来るならなんでもいいんだけど、私はそうやってる」「なるほどねー。今度やってみる。ありがとう! ごちそうさま」「お兄ちゃん食べんの早! 私まだまだなんだけど」「俺は先に風呂入ってるよ。美咲はゆっくり食え」「ふーい(はーい)」 ────  風呂から上がると美咲は先に1人で段位戦を始めていた。美咲のスマホを覗き込む。 「あれ、もう五段なのか。ずいぶんとやり込んでるんだな」「早く『龍王ヒビキ』にしたいからね」「おまえ、大学受験を控えてるってこと忘れるなよ」「わーかってるって! 今はしばらくテストないし、少しくらい遊
last updateLast Updated : 2025-09-24
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その8 第三話 刺身定食へいお待ち!

69. 第三話 刺身定食へいお待ち!  久しぶりの休暇。今日は真っ昼間からあやの食堂に来ていた。マキに呼ばれたからというのもあるが、俺も今日はあやの食堂でメシを食べ、そのあと麻雀をする、そんな休暇にしようと思ってた。さて、何を注文しようかな。 うーん。悩む。こういう時好き嫌いがないと困るな。選択肢が多すぎる。しかもあやのさんが作ったものが口に合わなかったためしがないので正直どれを食べても最高の気分になれるのだ。「うーーーーん。何を食べたらよいやら……」「迷ってるならコレにしたら? 本日のおすすめ」 【本日のおすすめ】刺身定食……1000円 「それにします」「まあコレ、正直素材のおいしさだから私が腕を振るったって感じしないんだけども……。でも、良いものを選んだつもり。おいしいから食べてって」「刺身とか扱うんですね」「いや、たまたま。鮮魚系に力入れてるスーパーで今日は美味しそうな魚が何種も売ってたから今回はコレかなって。レギュラーメニューには入ってないよ。それにそんな大量に仕入れたわけじゃないからあと2食で終わりかな。正直、サービス品だから採算とれないし」「じゃあ食後にコーヒーもいただくよ。それなら少しは売り上げになるだろ? どうせ長居するつもりだし」「ありがと」  あやのさんは柳刃包丁を取り出すとスッ、スッと刺身を切っていった。刺身の切り方も上手だった。 「なんか、普段から切ってるっぽい腕前ですね」「回らないお寿司屋さんでバイトしたこともあるから」「へぇ~」  ──── 「はい、刺身定食お待たせ。……もとい『へい、お待ち!』
last updateLast Updated : 2025-09-25
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その8 第四話 ヒントは刺身定食

70. 第四話 ヒントは刺身定食  俺は今月のクイズに頭を悩ませていた。3面待ちだとどうやっても高め安めは出来てしまう。なんなんだこれ。  「あやのさん。ヒント……もらえますか」「ヒントか……そーね。さっきの刺身定食、材料はカツオ一匹分以上買ってあるけど1つの皿には揃えてない。そんな感じ」「? それはそうでしょ。色々な刺身の盛り合わせなんだからカツオ一匹まるまるにはならない……」「ふふ、これがヒントよ。今月のクイズのね」「ええ?」  マジでわからん。ホントに刺身定食でヒントになってるのか? 悩み過ぎて一口も飲まないうちにアイスコーヒーの氷が溶け切っていた。  わからない…… ──── ガラガラガラ 「あやのー! 唐揚げ定食……いや、やっぱカレーライスに唐揚げ2個トッピングで!」  俺がしばらく長考していたら元気よくマキが登場した。 「おれにもマキと同じのくれー。唐揚げトッピングは3個な」  同時にメタさんもやってきた。一緒にいたのだろうか。マキは現在俺の妻のようなものだ。少しだけ気になった。 「おっ、ハルトー♡ 今日は早いじゃん。珍しいね」「マキちゃんはメタさんと一緒なんだね。何してたの」  その時、俺はちょっと不機嫌そうな表情をしたかもしれない。 すると…… 「うん? いのりを預かることについて2人で相談してたんだよ。これ
last updateLast Updated : 2025-09-26
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