電話を切ったあと、星乃はどうにも美琴の言葉が引っかかった。律人から聞いた話では、彼と美琴はとても仲が良く、律人が白石家に戻る前は、姉弟で支え合うように生きてきたらしい。なのに今は、白石家の誰にも任せたくないと言いながら、たった一度しか会ったことがない自分に、律人を託すなんて。そんなに、自分のことを信用しているのだろうか。白石家の内部には複雑な対立があると聞いていたから、それが理由かもしれない。けれど、それでもこんなふうに信頼されるのは、やっぱり少し胸にくるものがあった。星乃は、このあとどうするかを考えた。白石家に連れ戻すのは、論外。では自分の借りている部屋へ?頭に浮かべてみると、狭すぎる光景が目に浮かんだ。しかも、一人掛けのソファではとても寝かせられない。しばらく悩んだ末に、彼女はホテルを選ぶことにした。給料が入ってからは多少余裕ができたが、贅沢する気にはなれない。結局、手の届く範囲で、そこそこ綺麗な三ツ星ホテルを見つけた。律人は潔癖気味で、何かとこだわりが強い。できるだけ清潔で落ち着いた場所を選んだ。ホテルが決まると、星乃は彼の体を支え、どうにかして店を出た。律人の体の半分の重さが自分にかかり、少し歩いただけで肩が痛くなり、腰までずきずきする。しかも、彼の頭が自分の首元にかかっていて、吐息が時おり肌に触れた。微かにお酒の香りが混じった、甘い熱。そこに彼自身のふわりと漂う清らかな匂いが重なる。彼女もさっき少しだけ酒を口にしたせいか、平静を保つのが難しかった。身体の芯が、かすかに熱を帯びていくのがわかる。ちょうどそのとき、店の外で遥生が手配してくれた二人のボディガードが駆け寄ってきた。「星乃さん、私たちが運びます」星乃は軽くうなずいて、彼を預けようとしたが、ふと、思い直して、微笑んだ。「大丈夫。私が連れていくから」遥生のことは信頼している。前に確認したとき、この二人は信用してもいい人間だと聞いていた。けれど、今自分のそばにいるのは意識を失っている律人。美琴は、自分を信じて託してくれた。だからこそ、他の人に任せる気にはなれなかった。それに、もし何起こってしまったとき、彼らが律人の対応に気を取られたら、自分が守りきれない。二人は何も言わずに下がった。これまでもそ
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