雲頂(うんちょう)プライベート会場で開かれたオークションは、厳重な警備に守られ、きらびやかな照明が場内を照らしていた。璃宛は寒夜の腕に甘えるように寄り添い、オークショニアの説明を聞き終えると、目を輝かせた。「このネックレス、すっごく特別……イギリス王室の特注なんだって!」寒夜は何も言わず、開始価格一億六千万円のそのネックレスを一瞥してうなずいた。「落札しろ」すぐに、付き添いのアシスタントが札を上げる。ハンマーが落ちる前に、彼女の視線はもう次のアイテムに移っていた。「わあ、このエナメルのピアスも可愛い!」寒夜は落ち着いた声で応える。「これもだ」そこから先は、璃宛が少しでも目を留めた品はすべて、寒夜が次々と落札していった。場内の他の参加者たちは、もともと狙っていた品があっても、段野家の人間と競る勇気はなく、特に彼が璃宛の隣に座っているとなればなおさらだった。たった十五分の間に、璃宛が気に入ったネックレス、ピアス、アンティークの花瓶……すべてが彼の手に渡った。璃宛は抑えきれない興奮を感じながらも、表情はあくまで上品に、微笑みを浮かべて周囲の視線に応えていた。けれど、無意識に隣の男性の厳しい横顔を見上げてしまう。その潤んだ瞳で見つめられて、寒夜は本来ならば嬉しいはずだった。だが、なぜか胸の奥に、苛立ちのようなざわめきが消えない。表情を変えず、自然と視線は前方の展示台へ。そこには、真珠のような輝きをたたえた宝石の指輪が、静かにベルベットの箱の中に納まっていた。シンプルなデザインなのに、優雅で芯のある光を放っている。その指輪に、寒夜の心がふと動かされた。彼は手を上げて合図を送り、黒い瞳に静かな光を宿し、淡々と言った。「全品、落とせ」場内はざわめきに包まれる。誰もが信じられなかった。寒夜が本当に、ひとつ残らず全てを買い占めるなんて。自分たちはただの添え物だったのだ。璃宛もまた、目を見開き、呼吸が早くなる。何が起きているのか分からないまま、彼女は今夜の本当の主役になっていた。客席の女性たちが、羨望のまなざしを送り、ささやき合う。「璃宛さんって、本当に幸せ……」「まさか丸ごと会場を買い占めるなんて!」「草薙さん、もうほぼ段野家の若奥様じゃない?あんな男、どこで祈れば出会えるの……うぅ……」璃宛は興
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