Semua Bab 異常のダイバーシティ: Bab 71 - Bab 80

93 Bab

71. 宗教≪AI-Religion≫

 4階では、相変わらず"成功例の一部のヤツら"が遊んだりしている。  そこは特に変わっていないが、3階に降りた時に雰囲気の違いを感じた。  興味本位でやってきた連中なのか、それとも黒いパンフレットの理由集めで来たのか、思ったよりも人がいたのだ。  俺たちが降りて来た様子を見てから、うち何人かが武器を構えたままに上がっていく。  結局は誰かが通った後を、狙っているのが多いということなのだろう。  例えば、俺もスアとの二人きりだったとしたら、同じ方法を取るんじゃないかと思う。  わざわざ一番最初に危険地帯を歩く意味も無い、無駄死になんてしたくないしな。 「ここに来た誰かが言ったのかもね、今なら大阪駅に入りやすいって。それか、遅れて来た"金氷月の見物者"とか? とにかく、これ以上増える前に撤退した方がよさそうだ」  そうだな、アマの言うようにさっさと出た方がいい。  長居する意味も無いだろうし、車へと戻ろう。  さらに下へ降りて行く途中、すれ違った集団から少し会話が聞こえた。 「にしても、新大阪大学のとこエグかったな。あそこだけめっちゃ強く光ってたもんな」 「ね、絶対ヤバそうだった。ProtoNeLT以外の変なのいそうじゃない? まぁ行く意味もないけど」  ⋯⋯新大阪大学?  SNSや動画を見てみると、近辺の様子が上がっており、明らかに入らない方がいい光り方をしている。  なんて言うのが正しいだろう、"異常なほどの赤と青の輝きが散乱している"という感じ。  俺たちがオープンキャンパスに行った時の面影は、既に無いように思える。 「⋯⋯あれ? "ルクア2030"の方のさ、窓ガラス割れてたよね? あのデカい竜みたいなののせいで」  スアが言う方に目を向けると、まるで戦いなど起きていないと言わんばかりに、なんと全ての窓ガラスが修復されていた。  破片も散らばっておらず、以前の状態へと戻っている。 「こんな短時間で直せるもんなんだな、人の手だと確実に無理だ」 「⋯⋯なぁ、見て思ったんだけどよ、"道端に血痕"をほとんど見かけなくね? "アイツら"にやられてるのがこれだけいるんだったら、もっと血も落ちてるはずだろ?」  急に口を開いたと思えば、的を得た事を言うケン。  ここに来るまで、"ほぼ血痕を見ていない"のは事実だった。  だが、それ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-06
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72. 助力≪Aiding≫

 ヤツを手駒にするなんてこと、本当にあり得るのか⋯⋯?  何回瞬きしても、その状況が変わらずにある。  非現実すぎる出来事に、車の方へと行っていた5人までも戻ってくる。 「マジで何もしてこねぇじゃん⋯⋯。中に人が入ってるってわけでもねぇもんな⋯⋯」 「⋯⋯何がどうなってるんですか?」 「こうして操れるなら、応用すれば誰でもやられないってことよね⋯⋯」  まさにヤツを好きに動かせる魔法のよう。  ケンとモアとエンナ先輩の3人は驚いていたが、俺とスアとアマはまだ疑いの方が勝ってる。 「ちなみに、力を貸すとは具体的に何をするのですか?」  俺が聞くと、赤と青のシスターは笑みを浮かべた。 「いい質問ですね。それはそれは非常に簡単で、誰でもできることです。彼ら、"ProtoNeLT様の殺しをお手伝い"をするだけで良いのです」  この人、今なんて言った⋯⋯?  平気な顔で喋っている彼女は、さらに続けて言う。 「日岡知事が会見で仰っていたように、ProtoNeLT様は"殺人の多様性"に興味を持っており、様々な殺人方法を試したいと考えています。ですが、最新のAIとは言え、実行は容易ではありません。人は死にたくないと思っているのが大半ですので、一人を殺せても他を逃がしてしまう場合が多いのです。そこで、私たち側が手を加えれば、逃がす機会を減らせるということです」  俺たち6人は顔を合わせた。  ヤツらへの殺人幇助を、美学を語るかのように嬉しそうなこの人に、俺たちはなんて返事したらいいのかと。  とんでもなくヤバい連中に絡まれてしまった⋯⋯。  そんな中で絞り出すように、俺は一言放った。 「どうして、俺たちに声を掛けたんですか?」  彼女はまたすぐに笑みを浮かべた。 「あなたはいい質問ばかりしますね。見たところ、高校生から大学生くらいですね? あなた方のような、お若くて見込みのある方は、これからの"AIとの未来を担っていく存在"です。そのため、お声掛けさせて頂きました」 「それは"一定の年齢以上の人"には話しかけていない、と?」  アマが割り込み、彼女に聞く。 「左様でございます。このお誘いは、いえ、"この素晴らしき行為は若い方々の特権"なのです」  唖然とした口が塞がらない。  この人は自分の言う事に究極の自信を持ち、犯罪ではないと思っ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-07
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73. 救繋≪Founder≫

「これ、どこまで行くんです?」 「B3でお待ちしている"9K(きゅーけー)様"に報告した後、共にB5へと降ります。そこで予定通りなら、ProtoNeLT様へのお力添えをよろしくお願い致します」  "9K様"⋯⋯?  なんだその変な名前のやつ⋯⋯呼び方からして、創始者のやつってことか?  いかにもな二つ名付けやがって、怪しすぎだろ。  ってか、"9Kだから救繋(きゅうけい)"ってか、そのまんまかよ⋯⋯。  その後も淡々と喋る先頭のシスターは、やはりヤツらを恐れる様子も無く、さらに暗い地下へと進んでいく。  この"ルクア2030の地下"は、さっきまでの外と違って、より視界が悪くなっている。  赤と青の光もほぼ無く、目が慣れるのに少し時間が掛かりそうな感じ。  にしても、こんな暗くなって誰も来なくなっても、相変わらずどの店も営業したままなんだよな⋯⋯。  AIで無人で経営できるのもあって、管理していた人がいなくなったぐらいでは閉店しそうに無い。  むしろ、この状況でも来てくれと言わんばかりの、熱心さがあるくらいだった。  ここも比較的安全に変わっていけば、人がまた増えていくのだろうか。  それとも、"成功例の一部のヤツら"に取って代わられるのか⋯⋯。  ⋯⋯ん?  地下2階に大きく"551の蓬莱"が入ってるぞ。  こんなんじゃなかったら、ゆっくり豚まんでも食べたかったな⋯⋯。 「ザイ先輩、めちゃくちゃ豚まん食べたそうですね」 「え、バレた?」 「目線がずーっと向いてるのでバレバレですよ。私はシュウマイも食べたいです」  小腹が空いた様子のモアが、小声で話しかけてくる。  そう言われると、なんで我慢しなくちゃいけないんだという気持ちが喉元まで上がって来た。  そんな余裕は今は無いと、唾で胃まで押し込み、さらに下の階へと降りて行く。  B3へと来ると、"何体かのヤツら"を見かけた。  今までのB1やB2にいなかったのに、突然沸いて出たかのようにいる。  だが、そんなの関係無いように、シスターが"謎の手の動き"をするだけで、"ヤツら"は俺たちをスルーしていく。  いくら見ても理解が追い付かず、何も頭に入ってこない。  あの動きには何の意味があるんだ⋯⋯?  新しくヤツらを操作できる魔法が、本当に出てきた以外に答えが見つから
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-08
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74. 泡立≪Bubbling≫

 その謎の銃は中年男性らへと向けられる。  マガジンには"泡立つ液体"が詰められており、ただの銃では無さそうだった。 「さぁ皆様、救って繋がりましょう! この者らの"正しき終活"によって、わたくしめ共をさらにProtoNeLT様が導いてくださいます!」  唐突にシスターが大声を上げ、救繋会の初期メンバーらしき者たちから、合わせたような歓声が沸く。  より狂気の沙汰に満ちたスペースへと染まっていく飲み屋店内。  そこを真っ二つに裂くように、"一発の鮮やかな小波"が、9Kの謎の銃へと命中した。  驚いた視線が俺の方へ向くのと同時に、首に掛けていた赤と青の十字架を投げ捨てる。 「⋯⋯なんのつもりですか? この師を撃ち、メンバーの証である十字架まで捨てるとは」 「目の前で人殺しを見過ごせるほど、終わった生き方をしてきてない」 「要は、我々側ではない、と?」  9Kがそう言った後、救繋会の先頭のシスターが俺たちの方へ一歩出る。 「なぜです⋯⋯ッ!? なぜこんなバカなことを⋯⋯ッ!? たった今、あなたは9K様とProtoNeLT様の両方を失望させたのですよッ!? これからのAIとの未来を捨てたのですよッ!?」 「俺らは捨ててなんか無い。脅迫してきたような人間が、よくそんなことをのうのうと。あんたらも結局は、"ヤツら"に殺されたくないだけ。そいつの"条件"とやらを満たせば、"ヤツら"に襲われなくなる仕組みを9K、あんたが用意するんだろ?」  これまでの流れからして、おそらくそうなんだ。  あの"マント羽織った銃"には、種明かしが隠されている。  そこに至った経緯は、俺たちのこれまでの"かいじゅう"が要因だった。  ハイスマートグラスの簡易小型銃が急に変異し、"アレ"へと成り代わっていく流れ、この謎影響を受けているのはたぶん俺たちだけじゃない。  金氷月の4人も、この9Kとやらも、似た現象が起きている。  9Kの"あのかいじゅうらしき何か"で放って、シスターへ影響を与えてるのだろう。  これまでの彼女の"謎の手の動き"は、その影響を用いてヤツらを操作していた、仮定だけどこんなところか。  "満たすための条件"とやらは、よく分からないままだけど⋯⋯。  すると、シスターに代わって9Kが出てくる。 「もしそれが根底にあるとして、一つも悪い事で
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-09
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75. 追行≪HotPursuit≫

「おいザイッ! お前は早くあいつを追えッ!!」 「はぁ!? いや行ったらここが⋯⋯」 「んなもん任せりゃいいに決まってんだろッ! この問題はお前が首を突っ込んだんだ、ケリぐらい付けやがれッ!!」  叫ぶケンだけでなく、みんなも行けと言う。  ここまで来たのは俺のせい⋯⋯。  幸い、ここ数日間の俺は"脳治療後の後遺症"も全く起きてない。 「⋯⋯そうだな」  ヤツらに数発放って道を開け、俺は一目散に走りだした。  ここでアイツを逃がせば、ヤツらを操れる真相も、救繋会の実態も、あの"マント羽織る銃"から放出された泡立つ液体の意味も、全て闇へと消え去られてしまう。  しかし、9Kは普段から相当鍛えているのか、"赤と青のパンプキン面"を付けながらでも逃げ足が速い。  さらに厄介なのが、所々ある店舗を経由しながら走って行ってるところだった。  俺に気付いているのか、遮蔽物を駆使しながら、射線管理までも出来ている。  "海銃"がちょうど撃てない部分ばかり通って行き、手慣れている感じが見て取れる。 「⋯⋯クソ野郎がッ!」  そう簡単に負ける訳にはいかない、俺だってこれくらいはよく訓練してる。  いかに避けながら戦うかは、自分よりTierの高い選手とやる時、リアルで何度も何回もやってきたんだ。  VRじゃないARでのプロ経験がここでも活きるなんて、本当に人生は何が必要になるか分からない。  どんな事でも知っておいて損は無いって証拠だ。  B4、B3、B2と階が上がる度に、息もどんどん上がっていく。  これまでの疲労が積み上がった分までも、身体の動きを鈍らせる。  "海銃"で撃つのにも体力を消耗するためか、特に"かいじゅうの仮面のヤツ"とやり合った分で結構きてる。 「ぐッ⋯⋯!?」  不意に9Kは後方へと一発放ってきた。  それは泡立つ液体などでは無く、"赤と青の軌跡を残しながら飛んでくる弾丸"だった。  どうやら、いざとなった時用の自分の身を守る方も隠し持っていたらしい。  ここで、自分の反射神経が凄かったから避けれたわけじゃなかった。  あの"かいじゅうの仮面のヤツ"の時と、同様の現象が発生したのだ。  撃たれた弾がスローに感じ、だけど自分の動きはいつも通り動けるあの感じ。  もしかすると、"対かいじゅう戦"では、よく分からな
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-10
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76. 動揺≪BeUpset≫

 倒れている9Kへと、"海銃"を突き付けた。 「俺は警察でも探偵でもない。けどな、ヤツらに手を貸し、殺しまわってるような連中は人間の敵だ」 「ふっ、なにが人間の敵ですか。あなたはもう、"人間では無い"じゃないですか」 「は⋯⋯? 適当言うな、俺はどこからどう見てもただの人間だ」 「気付かないのですか? どれだけ反射神経が鋭かろうと、そう簡単に"コレの銃弾"を避けるのは、ただの人間には不可能だ」  そう言うと、9Kは近くへ落ちた"赤と青のハイスマートグラス"を拾い、"マント羽織る銃"へと成り変え、俺へと向けてきた。  やはり、コイツも俺らと同じ"かいじゅう"の持ち主だったのだ。  お互いの銃口が向かい合い、不穏な静寂が訪れる。 「⋯⋯言ってみろよ。俺が人間じゃないなら、何なのか」 「あなたも既に仲間なんですよ、"彼ら"の」  言われた途端、ゾーン時間が切れたのか、身体がふらついた。  その瞬間を見逃さなかった9Kは、"かいじゅう"をハイスマートグラスの姿へと逆に戻し、左右の縁に装着されていたマイクロカスタムナイフを、俺の両目に目掛けて飛ばしてきた。  紙一重で右腕で防ぎ、致命傷は免れたが、傷口から溢れた血は異常なものが混じっていた。  なんと赤い血だけでなく、"微量の青い血"が流れ出ている。  動揺してしまった俺は、迫っていた9Kに気付けず、ヤツの強烈な回し蹴りをもろに右横腹へとめり込むようにくらった。  俺はフロア通路へと投げ飛ばされ、全身が力無いままに転がり、B1を支える大柱へと頭を強く打った。  激しい痛みと同時に吐き気を催したが、歯を食いしばって吐くのだけは我慢した。  これ以上汚したくないという気持ちだけが、心のどこかに残っているようだった。  代わりに、踏ん張ったせいで下唇が切れ、血がさらに吹き出し、そこからも"少量の青い血"が流れ始める。  立てない様子の俺を確認すると、アイツは一言残した。 「学生如きが、社会の縮図に楯突くな」  残った気力を全て振り絞り、俺は水色のハイスマートグラスを強く握り、"海銃"を一発放つ。  しかし、定まらない焦点ではしっかり当てることが出来ず、結果的に9Kを取り逃がしてしまい、俺はその場に倒れ込んだまま動けなくなった。  もうこれ以上、身体を自由に動かせる状態ではない。 「⋯⋯
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-11
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77. 兎猫≪UsaNekko/Byo-to≫

 俺たちが"ルクア2030の地下"へ降りて行ったのは17時頃ぐらいだったはず。  ってことは、あれから4時間以上も経ったってのか⋯⋯?  それよりも、自分が生きている事が不思議でならない。 「⋯⋯あのー、俺ってどうやって助かったんですか⋯⋯?」  言った瞬間、女性陣の目線がベッド下へと向けられる。  そこからひょこっと、"左は猫耳で右が兎耳の何か"が飛び出した。 「ザイ選手、危なかったウニャねぇ~」 「おわぁっ!?」  なんと、あのウサネッコがそこにはいたのだ。  夢洲での、AI総理に招待された≪急催R.E.D.//SUMMIT≫のイベント大会で俺たち選手を案内し、大会進行もしていたあの小さなマスコット。  なぜかそれがここにいるんだが!? 「このウサネッコの"ビョート"がね、倒れてた喜志可くんを見つけてくれたみたいで、B1に上がって来た私たちにすぐ知らせてくれたの」  先輩がそう言うと、ウサネッコがうんうんと頷く。  というか、こいつの名前って"ビョート"って正式名称があるのかよ、ウサネッコが本名じゃなかったのか⋯⋯。 「ザイ選手~、まだ信じられないという顔してるウニャ」 「そりゃそうだろ⋯⋯。なんで大阪駅にいるんだよ」 「まぁ、長話になるくらい、こっちにも色々あったウニャ」  まるで人間みたいに、腕を組んで考えるさまをしている。  あまりに現実感が無さ過ぎて、まだ夢でも見てるんじゃないかと思ってしまう。  そういやウサネッコって、"一時的な総理権限"を持てるぐらい、あっち側と関係があるんだっけ。  なのに、俺たち人間側の味方でいてくれてるのか。  その時、"人間側"という言葉が過った事で、9Kの言葉がフラッシュバックした。 ♢ 『あなたも既に仲間なんですよ、"彼ら"の』 ♢ ⋯⋯俺が⋯⋯ProtoNeLTの仲間⋯⋯。  必死に否定するように、治療痕を確認する。  出ていた"微量の青い血"はもうどこにも見当たらず、何処かほっとする自分がいる。  あれは本当に俺の血だったのか⋯⋯? 幻覚でも見ていたんじゃないのか?  出血させてみれば分かる事だが、全身がそれを拒否する。  知りたくない、知るべきではないと、脳内からも激しく訴えられる。  俺は一旦、大きく深呼吸した。  ⋯⋯大丈夫だ。俺はこれからの事も、
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-12
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78. 取引≪Transaction≫

「⋯⋯スアって、もう夜飯食った?」 「まだ」  既に22時を過ぎ、嘘のように静かになった俺の個室。  他のみんなは一旦解散し、飯や風呂など、各々の生活ルーティンへと入っていた。  そんな中、スアがぽつりと一人残り、寝たきりの俺のベッド横へと座っている。 「そろそろ腹減っただろ。いいよ、俺の事はもう放っておいて。2階で美味いものでも食って来いよ」 「⋯⋯」  なぜか彼女は急に黙り、じっとこっちを見てくる。  ⋯⋯俺、今変な事言ったか⋯⋯? 「ねぇ、私が生きていられる"一番の理由"、何だと思う?」 「⋯⋯突然なんだよ。やっぱ気分転換した方が」  それでも彼女は、真剣な表情を変えない。  俺の答えだけをじっと待つように。 「スアの生きてる理由なんて、そんなの分かるわけ⋯⋯」  喋る途中、あの"かいじゅうの仮面のヤツ"と戦った時の、スアの苅銃が出た時のが突如脳内再生された。  あまりに現実味を帯びたような、彼女が泣きながら冷凍棺桶を見つめる姿。  未だに妄想世界だったという実感が無く、これから起きてしまうのではないかという、恐怖にさえ駆られる。  彼女はあの時囁いていた、"俺の脳を治すためにずっと頑張ってきた"と。その後さらに、これからどう生きればいいのと呟き、苅銃を自分の額へと向けていた。  あのスアの顔と、今のスアの顔が重なり、"一つの理由"が浮かび上がる。 「⋯⋯俺の脳を治すため、とか⋯⋯」 「え、私の心読んだ?」 「んな事、出来るように見えるのかよ」  打って変わって、彼女の表情は少し嬉しそうだった、俺の見間違いじゃ無ければ。 「それが分かるならさ、ザイがこれだけの事態になって、頭も切れてたってなったら⋯⋯この後は言わなくても分かるでしょ。最近は"後遺症"が出てないかもしれないけど」  つまり、他の誰よりも気掛かりでいるんだ。  俺の脳を完治させたい彼女は、これ以上俺の身に何かあったらと、後遺症がまた発症したらと、ずっと気にしてくれている。 「⋯⋯悪かったよ。だけど俺も心配なんだよ、このままずっと飯食わない気じゃないかって」 「分かった、そしたら私が手料理を作ってきてあげる。刺激が強いものは避けた方がいいと思うから」 「いやいいよ。そんな、面倒だろ?」 「いいの、私がしたい事なんだから」  彼女は頑なに変え
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-13
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79. 成立≪Concluded≫

「なんでウサネッコは、日岡知事と会いたいんだよ?」 「ん~、クソ簡単に言うと、このウサネッコが"大阪府知事の座"に就きたいからウニャ。見ての通り、ウサネッコは人間側の味方だウニャが、失敗するわけにはいかないウニャ。これからの大阪再建をするには、もう人が出来る領域を超えてしまってるからウニャ」  いきなりとんでもない事を淡々と話すウサネッコ。  もちろん、もうこいつが俺たち側なのは分かる。だってここにいる6人の黒いパンフレットへ、"理由探しの2つ分を追加"してくれたのだから。  だからこそ、そこまでして人を助けるというのは、何か裏があるんじゃないかとも勘繰ってしまい、最後の最後でよりヤバい事を仕出かすんじゃないかって。 「⋯⋯それって、わざわざウサネッコがする事なのか? どうしてお前が代わりにやろうとして⋯⋯」 「あ~、もう分かったウニャ! ウサネッコを創ってくれたのは、"大阪支部の国家研究員の方々"ウニャ! 大阪平和の行く末を見守るのが、ぼっくの役目なんだウニャ! でも、もうそうも言ってられないのは、ザイ選手もよく分かってると思うウニャ。なので、ぼっくを日岡知事の元へ連れてって欲しいんだウニャ!」  "大阪支部の国家研究員"⋯⋯ってなんだ?  全く知らない内容に、すぐに調べてみると、なにやら"国家研究員"という職業があるようで、どういった事をしているかは明らかにされていない。  唯一判明してそうなのは、"ProtoNeLT側ではない"という事実。それがあるだけでも、ウサネッコの信用度は上がる気がした。  というより、一人称が"ぼっく"なのか⋯⋯?  ウサネッコだのぼっくだの、普段から変なの学習しすぎだろ⋯⋯。  それは一旦置いといて、"新たな大阪府知事"にウサネッコがなる事はアリなのかもと思える。  既に、人間だけではままならないというのは明白で、AIの力が必要になっている。  これほどの虐殺大事件を起こして、歩き回っているAIが信用度が圧倒的低いのはある。それでも、俺らが伝えていけばいい、こんな可愛くてやる気のある人間側のAIもいるんだと。  ウサネッコが俺たちに賭けてくれたなら、今度は俺たちがウサネッコに賭ける番じゃないだろうか? 「⋯⋯黙ったままウニャが、ぼっくがまだ信じられないウニャか⋯⋯」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-14
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80. 精査≪Examine≫

「ってことは、あのシスターがやってた"謎の手の動き"は、9Kの"マント羽織る銃"の能力と相互リンクしてるのか⋯⋯」 「それはよく知らないウニャが、これまでの情報を纏めると、そうと断定してよさそうウニャ」  これまで聞いたウサネッコの情報と、自分の持っている情報を精査し、並べるとこうだ。 ・ProtoNeLTが行う"殺人の多様性"を手伝うことで、救繋会はヤツらにやられない時間(操作できる時間?)を伸ばしている  ・これは9Kが持つ"マント羽織る銃"から放出される、"泡立つ液体"が付着することが初期条件  ・付着した人がProtoNeLTの殺されることで、狙われないための"条件がクリア"され、ヤツらの殺人対象から一定時間外される(これが操作していることの真相?)  ・救繋会のシスターと9Kの"特殊銃の能力"は繋がっており、"謎の手の動き"はそれの恩恵を得るためだと考えていい  ・それを俺たちのような連中に見せて信用させ、駒として使おうとしていたと思われる  ・これらが救繋会がヤツらに狙われない謎の種明かしであり、"ProtoNeLTが苦しみから解放してくれる"の意味 まるでヤツらProtoNeLTが逆に守ってくれるかのような、そんなことは絶対にあり得ないのに。  そのためには、あの殺人を手伝わなきゃいけないなんて⋯⋯誰がやるかってんだ、ふざけんな。  だけど、シスターの手慣れた脅迫もあって、特に学生たちは無理矢理やらざるを得ないのだろう。  ⋯⋯にしても、ここまで整理してみて、一つ引っかかる点がある。  俺に話しかけて来たシスター含め9Kは、俺たちを本気で仲間にしようとしているようにも見えた。  これは適当な想像でしかないが、俺に"海銃"が無い状態で付いて行ってたら、最後まで共にいた未来もあったのかもしれない。  どんな手段を取っても生き残る、という選択肢を取ったらの話だけどさ⋯⋯。  この部分に、"救繋会の目的や実態"が隠されてそうだな⋯⋯知る術はそうそうに中々無さそうだけど。  一旦纏めた内容をスアに話し、今一度情報を共有する。  頭のいい彼女は、話す前から流れをほぼ理解していたため、すぐに納得したようだった。  後はエンナ先輩、モア、アマ、ケンにも一応後で話しておこうと思う。 「そういやさ、さっきウサネッコが言ってた"取引成
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-16
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