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異常のダイバーシティ のすべてのチャプター: チャプター 91 - チャプター 93

93 チャプター

91. 栖原≪Suhara/Kouki≫

「ここまでわざわざ本気で来るなんて、バカすぎない?」  通天閣の足元に来た瞬間、ある人物が待ち構えていた。  都波裏学園の制服、肩辺りまで伸びた艶のある黒髪、きりっとした目付き、俺と同じくらいの体型。  それは道頓堀商店街で見失ったもう一人、コウキだった。 「⋯⋯はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯邪魔すんな、コウキ」 「そんなに全力で走ってまで、あの3人は助ける価値ある?」 「当たり前だろうがッ! いいから早く退けッ! お前には関係ねぇだろッ!!」 「あるけど、関係。そうじゃなきゃ、ここにいちいち来ないって」 「はぁ?」 「君は中学生の時に習った"イーリス・マザー構想"を覚えてる?」 「⋯⋯んだよ急。だとしたらなんだってんだ」 「あの道頓堀商店街に突如作られた、"新感覚の性交体験"を目的としている城。一部のProtoNeLTを使用した、今までに無い快感を得られる場所と表のウワサでは謳ってるけど、あの場所はそれだけのために作られたわけじゃない。そもそも、それだけのためだったら、もっと分かり易く店前に明記すればいいだけの話だ」  そして、コウキが真剣な眼差しで俺を見てくる。  まるで獰猛な動物に睨まれたように、目を逸らす事が出来ない。 「かつて行われた"変異体受精卵"の禁忌生成、そこへ"世界初の虹成分を注入する"という禁忌人体実験。後に調査が入った時には、"失敗の跡"だけを残したもぬけの殻の謎施設。いつ思い出しても理解不能なのに、何年もこびりついて離れない」 「⋯⋯何ぶつぶつ言ってんだよお前。時間がねんだよ俺にはッ! いいから早くそこを」 「残り時間は止めてある。ちょっとは確認しなよ」  コウキの言うようにタイムリミットを見ると、確かに制限時間は進まず止まっていた。  どうしてこいつが⋯⋯?  大井さんと手を組んでいる事は分かっているけど、まさかこいつも"オーナーの一人"を任されているってのか? 「だからって、そんなどうでもいいこと」 「まだ分からない? 君も学園で成績優秀者の一人として選ばれたのに、大したことないんだね」  煽って来るコウキは、不敵な笑みを浮かべた。  何を企んでいるのか、未だにピンと来ない。  全速力で来て、疲れがあるせいもあって、情報が上手く整理できない。 「ただ単にProtoNeLTとの性交や、妊娠させる確率が高い
last update最終更新日 : 2025-11-29
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92. 新知≪New-Hy-SmartGlass≫

 刹那、"白と黒の小波を纏った弾丸"が俺の額に目掛けて放たれた。  それと同時に、周りの動きが一気に遅く感じた。  遅延世界の中、こめかみの真横を白黒の小波が通り過ぎて行く。 「なにッ!? ⋯⋯いや、こんなのはありえないッ!!」  コウキが叫ぶと、後ろへ飛んで行ったはずの弾丸は、白と黒の小波羽を携え、もう一度こっちへと向かってきた。 「雑魚が何度避けようが意味は無いッ!! この銃の名の通り、"運命≒再運命"として登録され続けるッ!!」  避ける度に常に同速でホーミングしてくるという、異常に狂ったコウキの弾丸。  しかも1発じゃない。あいつがトリガーを引いた分、追加されて襲ってくる。 「ッ!! ⋯⋯卑怯な野郎がッ!」 「好きに言え、避けるという運命はここには無い。さっさと諦めて貫かろ、喜志可ザイッ!! そして成績優秀者として選ばれるのは、僕と大井リンカ、この二人だけになるッ!!」 「⋯⋯ちッ!」  ヤツの飛び回る白黒の小波弾を狙って撃ち落とそうにも、俺の海銃で最低3発以上を消費する。  つまり、これを繰り返されるだけで、残弾数でも圧倒的に負けてどうしようもなくなる。  ここだと"アマの階銃の効果"を受ける事も出来ない。あれはアマの近くにいて、かつ撃たれた者にしか得られない。  それに身体だっていつまで持つか分からない。  ここまで全力で走って来た分、思った以上に足へ響いてる。  たぶんコウキはそれも分かった上で、俺に挑んできたんだ。  ⋯⋯何もかも読まれていたんだ⋯⋯ごめんスア⋯⋯俺には⋯⋯  激しく息切れしながら汗を噴き出す俺に、複数の白黒の小波弾が迫った時だった。 ―― 1枚の羽がポケットから飛び出した ⋯⋯これって、大阪駅3階手前で拾ったあの機械巨竜の⋯⋯?  それは"白黒赤青の4色のハイスマートグラス"へと変形し、左手の上に落ちる。  さらに、隣から"あの人の声"が聞こえた。 (⋯⋯連れて行ってくれ喜志可くん⋯⋯わたしの愛した車も⋯⋯再びその運命に乗せて) "亡くなったあの人"らしき霧姿が消えていく。  咄嗟に新たなハイスマートグラスを銃のように構えると、左半身が白、右半身が黒だけではない、下左半身がメタリックワインレッド、下右半身がメタリックブルーの小波が覆いかぶさり、虎の顔を模した小波羽が各々から舞い上がる
last update最終更新日 : 2025-11-30
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93. 構想≪IrisMother≫

「⋯⋯間違えたら1分ロックするってなんだよ⋯⋯分かる訳ねぇだろこんなの⋯⋯ッ!!」  悩んでいる間にもタイムリミットが迫り、全身に冷や汗と緊張感が走る。  コウキのメッセージには、変わらず"IrisMother21"としかない。  どれだけ血眼に探そうが、ヒントになりそうなものは何処にも見当たらない。  伝った緊張で息遣いもより荒くなり、心臓の鼓動も耳に入る僅かな音も聞こえなくなっていく。 「⋯⋯どうしたら⋯⋯スア、モア、エンナ先輩⋯⋯ッ!! 俺⋯⋯俺はどうしたら⋯⋯分かんねぇよこんなのッ⋯⋯!!」  【02:30】、【02:29】、【02:28】。  自暴自棄になりそうな自分さえも神は見てくれない。  決まった制限時間は、無慈悲に俺と彼女たちを蝕んでいく。  これが0になった瞬間、あの女子3人は"ヤツらと行為"に及んでしまう。  即ち、"ヤツらとの赤ちゃん"を産む事になって―― 「⋯⋯あぁぁぁぁぁぁぁァァァァァッ!!!!」  それを想像するだけで、強烈な頭痛と腹痛に苛まれ、声にもならない声が漏れる。  俺はふらつきながら、金髪ビリケンの傍の壁へともたれ座った。 「⋯⋯何もかも終わりだわ⋯⋯なぁ、俺よくやったよなぁ⋯⋯?」  正面の黒い鉄のような柱に映った俺に話しかける。  その顔に正気は無く、酷くやつれているように見えた。  勝機の無いモノに端へ追い詰められ、全てを諦めたやつの顔だ。 「三船コーチ⋯⋯師斎社長⋯⋯ちょっとだけ褒めてくださいよ⋯⋯。お前はよく頑張った、お前だからここまで来たんだって⋯⋯ねぇッ!!!」  こんな事言ったって何になるかなんて、そんなの知らねぇよ。  もうどうだっていい、だって俺はよくやったんだから。  何が"IrisMother21"だ⋯⋯お前らでやってろ勝手に。  "イーリス・マザー構想"くらいは俺だって分かんだよ。コウキが言っていたように、変異体受精卵の禁忌生成、世界初の虹成分注入、調査が入った時には施設に失敗の跡だけ、そんなの誰でも知ってんだよ。  だって、最近は中学に入ったら誰でも習う授業内容の一つなんだ。  先生はよく言っていた、こんな前代未聞のヤバい事があって、この構想は多くの人に影響を与えたんだって。  だからなんだって話。  2009年頃にあったらしいけど、特に興味も⋯⋯
last update最終更新日 : 2025-12-02
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