「ここまでわざわざ本気で来るなんて、バカすぎない?」 通天閣の足元に来た瞬間、ある人物が待ち構えていた。 都波裏学園の制服、肩辺りまで伸びた艶のある黒髪、きりっとした目付き、俺と同じくらいの体型。 それは道頓堀商店街で見失ったもう一人、コウキだった。 「⋯⋯はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯邪魔すんな、コウキ」 「そんなに全力で走ってまで、あの3人は助ける価値ある?」 「当たり前だろうがッ! いいから早く退けッ! お前には関係ねぇだろッ!!」 「あるけど、関係。そうじゃなきゃ、ここにいちいち来ないって」 「はぁ?」 「君は中学生の時に習った"イーリス・マザー構想"を覚えてる?」 「⋯⋯んだよ急。だとしたらなんだってんだ」 「あの道頓堀商店街に突如作られた、"新感覚の性交体験"を目的としている城。一部のProtoNeLTを使用した、今までに無い快感を得られる場所と表のウワサでは謳ってるけど、あの場所はそれだけのために作られたわけじゃない。そもそも、それだけのためだったら、もっと分かり易く店前に明記すればいいだけの話だ」 そして、コウキが真剣な眼差しで俺を見てくる。 まるで獰猛な動物に睨まれたように、目を逸らす事が出来ない。 「かつて行われた"変異体受精卵"の禁忌生成、そこへ"世界初の虹成分を注入する"という禁忌人体実験。後に調査が入った時には、"失敗の跡"だけを残したもぬけの殻の謎施設。いつ思い出しても理解不能なのに、何年もこびりついて離れない」 「⋯⋯何ぶつぶつ言ってんだよお前。時間がねんだよ俺にはッ! いいから早くそこを」 「残り時間は止めてある。ちょっとは確認しなよ」 コウキの言うようにタイムリミットを見ると、確かに制限時間は進まず止まっていた。 どうしてこいつが⋯⋯? 大井さんと手を組んでいる事は分かっているけど、まさかこいつも"オーナーの一人"を任されているってのか? 「だからって、そんなどうでもいいこと」 「まだ分からない? 君も学園で成績優秀者の一人として選ばれたのに、大したことないんだね」 煽って来るコウキは、不敵な笑みを浮かべた。 何を企んでいるのか、未だにピンと来ない。 全速力で来て、疲れがあるせいもあって、情報が上手く整理できない。 「ただ単にProtoNeLTとの性交や、妊娠させる確率が高い
最終更新日 : 2025-11-29 続きを読む