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All Chapters of 異常のダイバーシティ: Chapter 91 - Chapter 99

99 Chapters

91. 栖原≪Suhara/Kouki≫

「ここまでわざわざ本気で来るなんて、バカすぎない?」  通天閣の足元に来た瞬間、ある人物が待ち構えていた。  都波裏学園の制服、肩辺りまで伸びた艶のある黒髪、きりっとした目付き、俺と同じくらいの体型。  それは道頓堀商店街で見失ったもう一人、コウキだった。 「⋯⋯はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯邪魔すんな、コウキ」 「そんなに全力で走ってまで、あの3人は助ける価値ある?」 「当たり前だろうがッ! いいから早く退けッ! お前には関係ねぇだろッ!!」 「あるけど、関係。そうじゃなきゃ、ここにいちいち来ないって」 「はぁ?」 「君は中学生の時に習った"イーリス・マザー構想"を覚えてる?」 「⋯⋯んだよ急に。だとしたらなんだってんだ」 「あの道頓堀商店街に突如作られた、"新感覚の性交体験"を目的としている城。一部のProtoNeLTを使用した、今までに無い快感を得られる場所と表のウワサでは謳ってるけど、あの場所はそれだけのために作られたわけじゃない。そもそも、それだけのためだったら、もっと分かり易く店前に明記すればいいだけの話だ」  そして、コウキが真剣な眼差しで俺を見てくる。  まるで獰猛な動物に睨まれたように、目を逸らす事が出来ない。 「かつて行われた"変異体受精卵"の禁忌生成、そこへ"世界初の虹成分を注入する"という禁忌人体実験。後に調査が入った時には、"失敗の跡"だけを残したもぬけの殻の謎施設。いつ思い出しても理解不能なのに、何年もこびりついて離れない」 「⋯⋯何ぶつぶつ言ってんだよお前。時間がねんだよ俺にはッ! いいから早くそこを」 「残り時間は止めてある。ちょっとは確認しなよ」  コウキの言うようにタイムリミットを見ると、確かに制限時間は進まず止まっていた。  どうしてこいつが⋯⋯?  大井さんと手を組んでいる事は分かっているけど、まさかこいつも"オーナーの一人"を任されているってのか? 「だからって、そんなどうでもいいこと」 「まだ分からない? 君も学園で成績優秀者の一人として選ばれたのに、大したことないんだね」  煽って来るコウキは、不敵な笑みを浮かべた。  何を企んでいるのか、未だにピンと来ない。  全速力で来て、疲れがあるせいもあって、情報が上手く整理できない。 「ただ単にProtoNeLTとの性交や、妊娠させる確率が高
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92. 新知≪New-Hy-SmartGlass≫

 刹那、"白と黒の小波を纏った弾丸"が俺の額に目掛けて放たれた。  それと同時に、周りの動きが一気に遅く感じた。  遅延世界の中、こめかみの真横を白黒の小波が通り過ぎて行く。 「なにッ!? ⋯⋯いや、こんなのはありえないッ!!」  コウキが叫ぶと、後ろへ飛んで行ったはずの弾丸は、白と黒の小波羽を携え、もう一度こっちへと向かってきた。 「雑魚が何度避けようが意味は無いッ!! この銃の名の通り、"運命≒再運命"として登録され続けるッ!!」  避ける度に常に同速でホーミングしてくるという、異常に狂ったコウキの弾丸。  しかも1発じゃない。あいつがトリガーを引いた分、追加されて襲ってくる。 「ッ!! ⋯⋯卑怯な野郎がッ!」 「好きに言え、避けるという運命はここには無い。さっさと諦めて貫かろ、喜志可ザイッ!! そして成績優秀者として選ばれるのは、僕と大井リンカ、この二人だけになるッ!!」 「⋯⋯ちッ!」  ヤツの飛び回る白黒の小波弾を狙って撃ち落とそうにも、俺の海銃で最低3発以上を消費する。  つまり、これを繰り返されるだけで、残弾数でも圧倒的に負けてどうしようもなくなる。  ここだと"アマの階銃の効果"を受ける事も出来ない。あれはアマの近くにいて、かつ撃たれた者にしか得られない。  それに身体だっていつまで持つか分からない。  ここまで全力で走って来た分、思った以上に足へ響いてる。  たぶんコウキはそれも分かった上で、俺に挑んできたんだ。  ⋯⋯何もかも読まれていたんだ⋯⋯ごめんスア⋯⋯俺には⋯⋯  激しく息切れしながら汗を噴き出す俺に、複数の白黒の小波弾が迫った時だった。 ―― 1枚の羽がポケットから飛び出した ⋯⋯これって、大阪駅3階手前で拾ったあの機械巨竜の⋯⋯?  それは"白黒赤青の4色のハイスマートグラス"へと変形し、左手の上に落ちる。  さらに、隣から"あの人の声"が聞こえた。 (⋯⋯連れて行ってくれ喜志可くん⋯⋯わたしの愛した車も⋯⋯再びその運命に乗せて) "亡くなったあの人"らしき霧姿が消えていく。  咄嗟に新たなハイスマートグラスを銃のように構えると、左半身が白、右半身が黒だけではない、下左半身がメタリックワインレッド、下右半身がメタリックブルーの小波が覆いかぶさり、虎の顔を模した小波羽が各々から舞い上がる
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93. 構想≪IrisMother≫

「⋯⋯間違えたら1分ロックするってなんだよ⋯⋯分かる訳ねぇだろこんなの⋯⋯ッ!!」  悩んでいる間にもタイムリミットが迫り、全身に冷や汗と緊張感が走る。  コウキのメッセージには、変わらず"IrisMother21"としかない。  どれだけ血眼に探そうが、ヒントになりそうなものは何処にも見当たらない。  伝った緊張で息遣いもより荒くなり、心臓の鼓動も耳に入る僅かな音も聞こえなくなっていく。 「⋯⋯どうしたら⋯⋯スア、モア、エンナ先輩⋯⋯ッ!! 俺⋯⋯俺はどうしたら⋯⋯分かんねぇよこんなのッ⋯⋯!!」  【02:30】、【02:29】、【02:28】。  自暴自棄になりそうな自分さえも神は見てくれない。  決まった制限時間は、無慈悲に俺と彼女たちを蝕んでいく。  これが0になった瞬間、あの女子3人は"ヤツらと行為"に及んでしまう。  即ち、"ヤツらとの赤ちゃん"を産む事になって―― 「⋯⋯あぁぁぁぁぁぁぁァァァァァッ!!!!」  それを想像するだけで、強烈な頭痛と腹痛に苛まれ、声にもならない声が漏れる。  俺はふらつきながら、金髪ビリケンの傍の壁へともたれ座った。 「⋯⋯何もかも終わりだわ⋯⋯なぁ、俺よくやったよなぁ⋯⋯?」  正面の黒い鉄のような柱に映った俺に話しかける。  その顔に正気は無く、酷くやつれているように見えた。  勝機の無いモノに端へ追い詰められ、全てを諦めたやつの顔だ。 「三船コーチ⋯⋯師斎社長⋯⋯ちょっとだけ褒めてくださいよ⋯⋯。お前はよく頑張った、お前だからここまで来たんだって⋯⋯ねぇッ!!!」  こんな事言ったって何になるかなんて、そんなの知らねぇよ。  もうどうだっていい、だって俺はよくやったんだから。  何が"IrisMother21"だ⋯⋯お前らでやってろ勝手に。  "イーリス・マザー構想"くらいは俺だって分かんだよ。コウキが言っていたように、変異体受精卵の禁忌生成、世界初の虹成分注入、調査が入った時には施設に失敗の跡だけ、そんなの誰でも知ってんだよ。  だって、最近は中学に入ったら誰でも習う授業内容の一つなんだ。  先生はよく言っていた、こんな前代未聞のヤバい事があって、この構想は多くの人に影響を与えたんだって。  だからなんだって話。  2009年頃にあったらしいけど、特に興味も⋯⋯
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94. 大井≪Rinka/Ooi≫

 俺は黄金展望台の正面にぶっ倒れ込んだ。もう何も考えたく無いほどに、頭がショートしている。  タイムリミットはというと、【00:01.54】となったままで止まっている。  さっき書いた解答によって、どうにか"正解ライン"に入ったことで、顔認証と指紋認証が完了した。  失敗ラインと正解ラインがあり、失敗ラインへと針が振り切っていれば、全てが終わっていた。  完璧な解答が何かは分からないままに、自分の出した答えに自信を持つしかなかったというわけだ。  金髪ビリケンの真横には新しく、【イーリス・マザー構想は実は成功していて21年間その成功体は隠れて生き続けている】と、先程の俺の解答が深く刻まれている。  言わずもがな、これが真実かどうか定かではない。  とにかく"前提を全て壊した答え"だろうと思ったのだ、あれだけ周到に"あの実験"を用意している様子からして。  もし、ヤツらAI側がイーリスマザー構想を失敗だったと思い込んでいるなら、あんな公な場所で秘密裏に実験なんてリスクを取らず、どこかの隔離施設でこそこそと成功に近付ける実験をするはずだ。  だって、これまでずっと教科書には、"イーリス・マザー構想は失敗の跡だけが残っていた"って書かれてきたのだから。  先入観で失敗だったんだと擦り込まれている、俺たち世代全員。 「さて、これで3人はやっと⋯⋯」  考えるのをやめ、呟きながらゆっくり立ち上がり、通天閣5Fから新世界の夜景を見つめる。  その少し後、なんとアマからいきなり通話が掛かってきた。  どうやら、解答時だけネットが使えないようになっていただけで、もう使えるようになっているみたいだ。 「ザイ君、間に合ったみたいだね」 「いろいろあったが、何とかな。3人はもちろん帰ってきてるよな?」 「それが、中から出て来たのはいいんだけど⋯⋯」  アマの言葉の羽切が悪く、何故かいい答えが返ってきそうな雰囲気を感じない。  と思っていると、瞬く間にこいつはこんな事を口にした。 「⋯⋯落ち着いて聞いて欲しい。今、僕とケン君は銃を突き付けられている。⋯⋯白神楽さんたちに」 「⋯⋯は⋯⋯?」  すると、突如として大井さんに通話が切り替わった。 「はい終了、キーくんとの話し合いはここまで」 「ちょ、おい、どういうことだ!? 約束した事はちゃんとや
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95. 板挟≪Stuck≫

 大井さんの銃に対し、コウキと対峙した時のような衝撃が走る。  またあの通天閣前の時のように、殺り合わなければならないのだろうか、と考えていた時。  不意に、自分の背中に"冷たい何か"がかけられたのを感じたのだ。 「さぁ、これで彼らを殺していいですよ。"あなたがProtoNeLTである"と言うのであれば」  突如として背後からする声に、俺は鳥肌が立った。  この声の正体は、間違いなく"アイツ"だったからだ。 「な、なんでここに9Kがいるウニャか!?」  ウサネッコの反応そのままだった、俺の脳内も。  いつの間にコイツが城内に入って来て⋯⋯。  目の前の大井さんは、顔をしかめ始めた。 「⋯⋯なにこの赤青カボチャ野郎。知らないあんたに指示される覚えないんだけど」  俺とアマとケン、その3人を板挟みにしながら、大井さんと9Kの会話が始まった。  なんとも異様すぎる状況で、余計にこの場から動けそうにない。  一歩たりとも動けば、大井さんか9Kにいつ撃たれるか分からないからだ。  俺だけだったらどうにかなる可能性はあるが、ケンとアマはおおそらく無事では済まないだろう。 「指示などではありません。あなたがしようとしている事、そのままをすれば良いと助言しているだけに過ぎません」  俺の真後ろにいる9Kからは、大井さんに怯える雰囲気を一つも感じず、まるでここにいるのが当たり前かのような喋り様。  見えなくたって分かる、大阪駅地下であれだけ追い詰めたはずだったのに、それでもやられて逃げられたのだから。 「助言だのなんだの、あんたみたいなのに急に言われるのが嫌なんだけど? さっさと出て行ってくれる?」  徐々に大井さんがキレていくのが見て取れる。  これ以上刺激しないでくれと、俺たちは願うしか出来ない。  それかあわよくば、女子3人が元に戻り、9Kをどうにかしてくれたらいいのだが、現実はそうはなってくれない。 「それは受け入れられません。この真ん中の彼が"未だにこっち側"と判定されるのかどうか、ここで見たいのですから」  9Kの言葉に、大井さんは首を傾げる。 「⋯⋯はぁ? 何意味分かんない事言ってんの?」 「なんでもありません、こっちの話なので。ですよね、喜志可ザイ君」  笑みを含むような口調の9Kに、俺の全身から冷や汗が垂れる。
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96. 級友≪ClassMate≫

「ん、あれ」  呟いたスアがゆっくり目を開く。  続くように、エンナ先輩とモアが目を覚ましていった。 「おぉ!? 3人起きたウニャか!?」  一番に驚きながらも、無事を確認するようにうろうろするウサネッコ。  けど、なんでこのタイミングで女子3人は元に戻れた⋯⋯?  ⋯⋯まさか、9Kが何か細工をしていたってことなのか? 「ね、私のせいじゃないって分かったでしょ、キーくん」  考える暇も無く、ふと呟いた大井さんの一言で現実に戻される。  即座に振り向き、彼女へと海銃を構え直したが、様子が先程と打って変わっていた。 「そんな事しなくても、ほら、"いきなり来た変なヤツ"のせいで、こんなんなっちゃったんだけど」  そう言いながら、今度は大井さんの身体がおかしくなっていった。  "ガシャン"という軋む音と共に、なんと身体が凹みだしたのだ。  まるで"見えない機械の手で所々握りつぶされている"かのような、彼女の節々が毎秒ずつ凹まされていく。 「リンカッ!!」  少しずつ潰されていく彼女へと、真っ先にスアが駆け寄ろうとすると―― 「来るなッ! スア、あんたは"こっち側"じゃないでしょ?」 「いまさら何言ってるのッ!? このままじゃ死んじゃうんだよッ!!?」 「見れば分かるってそんなの。ほんと、病院の娘ってお人好しでウザい。ね、キーくん」  皮肉そうにしながらも、どこか最期の優しさを感じるような大井さんの表情。  俺の妄想でしかないけど、きっと心の底から俺たちを憎んでいる訳では無かったはずだ。 「ねぇッ!! どうすればいいの!? 私じゃどうしようも⋯⋯誰か止める方法無いのッ!!? 止めてあげてよッ!!!」  俺たちは首を横に振るしかできない、ウサネッコまでも。  大井さんは、女子3人を"ProtoNeLTと性交させようと加担した一人"な上、コウキと同様で相応の事を仕出かしてきただろう。  同情はしない、それでも⋯⋯。  でも⋯⋯ッ!! 「なんで⋯⋯なんでなんだよ!!! 大井さんも!! コウキも⋯⋯ッ!! 勝手に訳分けんねぇ事するだけして⋯⋯人生から逃げんじゃねぇよッ!!」  やるせない思いを吐き出し、もはや八つ当たりのように大井さんへとぶつける。  もう自分が何言ったかもよく分かってない。  ただ思っただけ、それだけしかない
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97. 敵討≪RetaliatioN≫

「ねぇザイ、なんでリンカはこうなったの⋯⋯?」  正直に言うべきなんだろうか。  曖昧にしても仕方ないと思った俺は、"9Kの持つかいじゅうで撃たれた"と話した。 「あそこにある"人骨"って、そういうこと⋯⋯?」 「⋯⋯スアの思ってる通り、9Kも大井さんのを撃たれた結果があれだ」 「なんでアイツがここに入って来たの? アイツのせいでリンカは⋯⋯アイツさえ来なかったら⋯⋯まだ話し合いで解決できたかもしれないのに」  俺だって知りたい、9Kが急に来た理由を。  想像でしかないが、アイツも何かで知って狙いに来たのかもしれない、ここに置いてある"否定理由の一つ"を。  結局は、アイツも集めている一人だった、と思うしかない。  そもそもの話、9Kについてはまだ知らない事が多すぎる。  ウサネッコと契約成立時に教えて貰った内容だけでは、どうも説明付かない事ばかり。  まず、あの"マントを羽織った銃"には、以下の能力があった事になる。 ・謎の泡立つ液体を放出して殺させて"回避延長"  ・別で"赤と青の軌跡を放つ弾丸"を装填可能  ・スアとモアとエンナ先輩を"操れる能力?"  ・大井さんの身体を"毎秒凹ませるほどの継続スクラップ能力?" こんなに多種多様なのを持っていたって事なのか?  その前に、"9K"という名前にも違和感がある。  この"9K"という文字並びに意味があるとするなら、あの"マント羽織る銃"にちなんで付けた可能性だってあるかもしれない。  "K"が英単語の頭文字だとして、多いとか変化とか、その辺の意味から取ってそうでもある。  一つ思い浮かんだのは"kaleidoscope"だ。  "kaleidoscope"は万華鏡という意味もあるが、"常に変わるとか複雑なパターン"とかの意味も含んでいる。  もしそうだとするなら、"9 Kaleidoscope"と仮定すると、本当は"能力が9個あった"という事実に繋がる。  だからなのか、アイツがあれほど行動的でありつつ、容易に自身で作った宗教団体を見捨てたのは⋯⋯。  実は、"9個の隠し能力があるかいじゅう"だったからこそ、他に無い自信を持てたと言う訳だろう。  まだ確信を得るには早いが、納得できるレベルにはなっていると思われる。  思考の世界から一瞬で戻り、今一度スアの話へ返
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98. 屋城≪CastleTop≫

 広いエレベーター内に短い静寂が訪れ、ふとスアの方から口を開く。 「ごめんね、私のせいで遅くなっちゃって」  申し訳なさそうな彼女だったが、誰だって目の前で知り合いが死に逝く様を見せられれば、あんな風になるに決まってる。  むしろ変なのは俺だ。  今までのせいで慣れてしまっているのか、もう人間じゃなくなっているのか、その感覚すらあるのか怪しい。 「みんな待ってるかな、私たちのこと」 「だとしても、ウサネッコがウニャウニャ言って時間稼いでるよ」 「ふっ、なぁにそれ」  ついさっきまで泣いてたスアが笑いだす。  もう悲観することは無さそうな感じだ。 「にしても、"この道頓堀城の中が実はこんな場所がだった"なんて、気付ける訳ないよね。ゲームみたいに突然入れ替わって現れたし」 「こうなる前に、エンナ先輩とモアとウサネッコとさ、スアは入って行ったけど、元々の中はどんな感じだったんだ?」  俺が聞くと、彼女は考える素振りをし、ちょっと言いにくそうにしながらこう言った。 「簡単に言っちゃうと、エロい感じ?」  あぁ、やっぱそういう雰囲気。  当初見た通り、外観のラブホテル仕様のコンセプトを、中でも保っているのかもしれない。  人間はそういった見た目の方が興奮しやすい、とAIも結論を出したって事なのだろう。  そういえば、スアはさっきまで9Kに操られていた訳だが、この感じだとその間の記憶はなさそうに見える。  目覚めたらいきなりドア外へと、戻って来ていたって感じなんだろうか?  スアが分かりそうな部分のみ聞いてみると、次のように話してくれた。 「なんか急に頭がぼーっとしてさ、気付いたらザイたちがいる入り口に戻ってた。で、横見たらいきなりリンカが⋯⋯」  どうやら俺の想像通りらしい。  考える余裕も無く、急に大井さんのアレだもんな⋯⋯。  久しぶりに再会したのに、話したのはたった1分も無く、救う方法すら無かった。  でも違う場所から期待してくれている、コウキも。  エレベーターが着く頃、夜の道頓堀を360度一望出来る一室が広がり、"小さな赤のミサイル新幹線?と青のミサイル新幹線?"が上部で旋回し続けているようだった。  【道頓堀唯一の屋城駅(おくじょうえき)】と書かれた立体看板式駅名標のようなのもある。  これが"道頓堀立体看板新
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99. 警告≪Warning/Sentence≫

 各々の足元から、"見た事無い不思議なカード"が浮かび上がり、薄暗い室内に不気味な輝きを乱反射させる。 「なぁ、これを取って出たら始まっちまうんだよな?」  言いながら、ケンが俺たちの顔を伺うと―― 「まぁ、24時間ありゃどうにかなるだろッ!」  そして、真っ先に"CDK専用DKO入室カード"を手に取った。 「⋯⋯やる事はこれまでと変わらないはずさ。またこの黒いパンフレットの霧が晴れて示された場所へ、向かうだけだよ」  謎に説得力のあるアマが、次にカードを握る。  ただ、アマの言った"霧が晴れて示された場所"は、未だ出てきてはいない。 「それもそうか。どうせ帰る選択肢はねぇんだし、行きましょうよ、エンナ嬢ッ!」 「え、えぇ、そうね」  ケンの言葉に乗せられ、今度はエンナ先輩が取ると、合わせるようにしてモアとスアもカードを拾う。  残ったのは、俺とウサネッコだけだった。 「なんでお前らは取らないんだよ?」  上半身を器用に動かし、準備万端の様子のケンが、俺とウサネッコへと一言放つ。  別に、俺は特段理由があるわけではなかった。  ただ、なぜかじっとしているウサネッコに、違和感があったからだ。  そんなウサネッコが、妙な感じで呟いた。 「⋯⋯ちょっと待つウニャ。これに書かれている"CDK専用DKO入室"が"何のことで何処なのか"、今調査中なんだウニャ」  ずっと調べてくれていたらしい。  でも、そんなにすぐ出てこない場所って事か? 「んなもんしなくたっていいだろ。どうせこっから出りゃ、このパンフレットに出てくんだからよ。ザイも早く取って行くぞ」  ⋯⋯そうだよな、またいつもみたいに出てくるよな  ケンに急かされるがままに、取ろうとした瞬間だった。  突然、カード上に変な一文が浮かんだのだ。 【このカードを持ったまま退室すると、あなただけ死ぬ可能性が100%です。それでもよろしいですか?】   な、なんだよこれ⋯⋯?  え、これってみんな表示されたのか?  一旦顔を上げると、それぞれが嘘のように平然とした顔をしている。  適当に脅されているだけで気にしすぎか⋯⋯? 「う~ん。これだけ探しても分からないなんて、今回ばかりは、ケン選手に従ってやるしかないウニャねぇ」 「嫌々やるみたいな態度取ってんじゃねえぞ、AIだろ
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