Semua Bab 異常のダイバーシティ: Bab 81 - Bab 90

93 Bab

81. 柑橘≪Citrus/Shampoo≫

 ん⋯⋯何時だ、今。  すぐL.S.を見ると、≪2030/08/20(水) AM 06:03≫とある。  まだ朝の6時なのかよ。 「⋯⋯え、あれ?」  ふとナイフが刺さっていた右腕の傷跡を確認すると、なんと跡形もなく消えていた。  何回摩(さす)ってみても、された事すらも無かったかのようにも思えてしまう。  そういえば、唇の切れた部分や口内炎があるところも、舌で触ってみたら治っている気がする。  こんな一日で全て治るなんてことあるのか⋯⋯? ってことは、もしかして後頭部も⋯⋯。  ⋯⋯何も無い、どこを触っても何も無い。本ケガしたのかすら怪しく感じてしまうくらいに。  実はまだ寝てるんじゃないか、こんな現実と相違無い世界で。 「ザイ選手、おはようウニャ」  どこかからウサネッコの声が聞こえた。 「見つけられるウニャか?」 「⋯⋯いるならさっさと出て来いよ」 「そう言わず、朝のストレッチだと思うウニャ」  朝から面倒な野郎だが、こいつのおかげで自分がしっかり起きているのが分かった。  仕方なく付き合い、周囲を見渡してみるが、一向にウサネッコの姿が見当たらない。  こんな時は、声の位置に惑わされてはいけない。  と思い、俺は天井を見上げた。 「さすがザイ選手、いとも簡単に見つけたウニャねぇ~」 「なんでそんなとこいんだ、お前は知事より忍者を目指してんのか」  頭上で反重力でも発生したかのように、天井に足を向けて謎に立っていた。 「人間には出来ない体験を見せるのも、AIの面白いとこウニャ」  よく分からない事を言いながら、ウサネッコは俺のベッド横へと、ぼふっと音を立てて降りてくる。 「それはさて置き、"新情報"を入手したウニャ。"理由探し収集用のパンフレット"は、どうやら配布された枚数が1000枚以内ほどに限られているようウニャ」  俺はL.S.のホログラムパネルを複数展開し、改めて"黒いパンフレット"を見る。  これが1000枚以内の限定なんて、早いもの勝ちみたいな状態だったのだろうか?  ヤツらから逃げるのに成功すると誰でも得られる、そう思っていたけど、この大阪内で1000人しか持ってないんだな。  でも、例え持っていたとしても、これまで辿った"あべのハルカス屋上新エリアや大阪駅屋上新エリア"を見るに、そこに行くま
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-18
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82. 破虎≪HaKoReNa≫

「次は⋯⋯道頓堀なのね」  エンナ先輩がL.S.を確認しながら言う。  "24時間後に理由解放"を覆っていた黒い霧が晴れた先、"道頓堀立体看板新エリア"と表記されたのだ。  ここ梅田があるキタではなく、正反対の心斎橋や道頓堀といったミナミへと行かなければならないらしい。 「あっちまで行かなきゃいけねぇのかぁ!? しかも道頓堀って、またアイツらが多い危ないとこじゃねぇかよ⋯⋯」 「だとしても、行かない理由も無い。遅くなればなるほど、ヤツらに大阪を取られていくのだから」 「んなもん分かってんだよ。⋯⋯っつーか思ったんだけどよ、この黒いパンフレットの理由探しを6つ全部埋められる人間が他にいるとして、知事はそれだけ話を聞いてくれんのかって話だわ」  アマとケンの会話が続く中、急に俺の背後から現れた"アレ"が割り入った。 「そうなるのはなるべく避ける必要があるウニャ。なぜなら、"全員が人間側に付くとは限らないから"ウニャ」  その言葉に、背筋に寒気が走った。  ウサネッコは気付いている、最終的に"ヤツらへ賛同するのがいるかもしれない"ことを。  人間関係というのは何年経っても面倒なもの、これを煩わしいと感じ、あえてこのままを維持しようとする輩もいてもおかしくない。  この新ダイバーシティ策終了は"9月17日"と決められてはいるが、異常な死亡数の増加傾向からして、その日までに大阪府民全滅もありえる、"特別な生き残り"を除いて。 「つまりウサネッコが言いたいのは、とにかく一番速く俺らに、知事へ辿り着いて欲しいってことなんだよな?」 「それが理想ウニャ。あの日岡知事の巨大ホログラムは、"私が直に新ダイバーシティ策の是非を問います"と最後に毎回言ってるのを覚えてるかウニャ? これで来庁した時には、もう"是の方"が先に採用されていた場合、もう大阪を再建する術も、ぼっくが新しく知事になる方法も無くなるウニャ」  遅くなっていくと、大阪がヤツらばかりになって詰むだけじゃなく、先に辿り着いたヤツの"是の意見"が通される可能性もあるのか⋯⋯。  ウサネッコに賭けられたのもあって、当初よりも随分と責任感が伴ってきたようだ。  止まっている暇があるなら、ミナミに行くしかないか。 「それじゃ、行先は道頓堀にするわねって言いたいとこだけど⋯⋯」  エンナ先輩は何か
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-20
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83. 要求≪Demand≫

「え!? "551蓬莱"がなんでここに!?」  道頓堀に出る手前、軽食を取ろうと思って2階に上がって来たところ、まさかの新店舗を発見した。  この車内2階の店は時間制で変わる場所もあり、決められた一定時間が経つと、次の小型店舗がそこへ開店する。もちろん、その後にまた前のお店が出ることもある。  その動きを見ているだけでもめちゃくちゃ面白いのだが、そこに意外すぎる"551"が入っている。 「そういや、喜志可くんにはまだ話してないままだったわね」 「うお!? びっくりするじゃないっすか先輩!?」 「ごめんごめん、喜んでくれたら嬉しいなって。だって喜志可くん、豚まん食べたそうにしてたもんね?」 「まぁそうですけど⋯⋯。まさかここで食べられるなんて、"リモート無人展開契約"取れたってことですよね!?」 「うん。大阪駅に行った後、営業をかけて新しく契約を交わしたの。それだけじゃなくて、他にも多くのお店と契約したから、また帰ってきてオープンしてたら行ってみて」 「マジすか、スーパー営業マンですね。いや、今風に言うとスーパーリモート営業マンでしょうか」 「私は女だから、スーパーリモート営業ウーマンになるのかも?」  いや、本当に凄すぎる。  "551"が常に自宅で食えるようなもんなんだぞ!?  人の外出が減ったり、人数自体が減ったりという反面、こういった新事業が裏では生まれやすいのかな。  どちらにしても、豚まんがここで食えるのが最高だ。ちょうど軽食にも持ってこいだし。 「早速、豚まん買ってきますね」 「あ、私も食べるから一緒に買お! にしても喜志可くん、昨日のケガが一日で治るなんて、どういった人体構造なのよ。稀に治る早さがとんでもない人がいるって聞くけど、その一人?」 「さぁ⋯⋯どうなんでしょうね」 「まぁいっか、元気なのが何よりだもんね」  と言った後にエンナ先輩は、"551"の前でいきなり後ろからくっ付いて頭を撫でて来た。 「な、なんですか!?」 「元気になってくれたお礼。次はちゃんと守れるよう、もっと私頑張るからね」  背から伝う、先輩の温もりと優しさ。  ⋯⋯だけじゃなくて大きな胸の柔らかさが  早朝のモアとの"風呂事件"も相まって、よりあっちの気分へと持っていかれそうになる。 「せ、先輩はもう充分頑張ってますって。⋯⋯
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-21
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84. 戎橋≪Ebisubashi≫

 ―― 道頓堀戎橋   もうすぐ17時に迫ろうとしている。  日も少しずつ落ち、周りも少しずつ暗くなってきていた。  ちなみに8月20日の夏真っ只中ではあるが、今の日本は朝も昼も夜も、どんな時間でも暑苦しいというは現象は起きない。  厳密に言うと、つい少し前まではあったのだが、明確に変わった転機がある。  2030年6月1日に総理に就任したAI総理こと"R.E.D."が、素早く行った前代未聞の取り組みである、"第2オゾンクーラーフィルター"と呼ばれるモノが、この日本上空に突如敷かれたからだ。  人間では絶対に為せないと言われているこの"不可視宙膜(ふかしちゅうまく)システム"は、太陽光を季節に応じた熱さへと調節およびカットしてくれるという、未だに信じられないAI技術が施されているらしい。  名の通り、この宙膜は見えないため、何が起こっているのかよく分からないままだが、"地球温暖化から救う"という評価がされ始めていて、世界中の専門家がこぞって研究を続けている。  これはAI等の機械も熱を持つと悪影響だからという、ちゃんと"機械側の理由"もあると考察されており、従って動物や植物のためだけに行われたわけではないとされている。  太陽光に含まれる紫外線や近赤外線といった、シワ・老化・たるみを促進させるものも、今後上手くカットすると言われているそうだが⋯⋯まぁ今の俺らはそれどころじゃない。 「ガチで意味分かんねぇなこれ。なぁ、本当にこの中を行くってんだな?」  人混みが行き交う道頓堀を見て呟くケン。  意外だったのが、これら"全てProtoNeLTでは無く人である"という事実だった。  あべのハルカス屋上や大阪駅改札口に見られた、"成功例の一分のヤツら"が蔓延っていると予想していたのだが、紛れも無い生きている人ばかりだ。 「下にも通る道があるようウニャが、こっちも大混雑しているようウニャねぇ」  この人らは、こんなとこに一斉に集まって何やってるんだ?  疑問に思いながらも、意を決して通ろうとした時だった。 「⋯⋯うぇ!? もしかして、ザイっちか!?」 「え⋯⋯!?」  左横から急に響いた声に向くと、なんとそこには"ミハさん"がいたのだ。  どっからどう見ても間違いない、4日前の夢洲地下アフターバンパクシティで行われた≪急催R.E.D./
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-22
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85. 切端≪BrokenPiece≫

 AIで以前と変わらない様子で稼働している繁華街の中、いろんな人々が店に入っていったり、食べ歩きしたりしている。  まるでここだけ何も起きなかったみたいに、一人も武器を構えてる様子も無い。  徐々に暗くなっていく夜の道頓堀を、ただ楽しんでいる人ばかりだ。  ヤツらが突然現れるかもしれないのに、怖さは無いってのか⋯⋯? 「えっと、どうします? 虱潰しに立体看板のあるお店に入って行くしかないんですかね?」  モアがふと、俺たちへ疑問を投げかける。  "道頓堀立体看板新エリア"を探そうにも、この表記だけでは、どこに否定理由が置かれているかはっきりしないため、彼女の言うようにするのが確実な方法なのかもしれない。  けど、これら全部見て行くなんて途方も無いぞ⋯⋯。 「ちょっと待つウニャ、もう一度パンフレットをよく見るウニャ」  ウサネッコがL.S.を見るように促してくる。  黒いパンフレットを改めて開くと、急に"道頓堀立体看板新エリア"に言葉が書き足され、"道頓堀立体看板新エリア【8月17日(日) 20:00 開店】"へとなったのだ。 「2つの理由を盗んだ時にくっ付いて来た、"意味不明な切れ端"を追加できるようになったウニャ。なんなのかよく分からなかったウニャが、これに使えるウニャね。組み合わせられるということは、"つい数日前に出来たばかりの立体看板がある新しいお店"、と考えられそうウニャね」 「おぉ! やるじゃねぇか! っつうことは、前々からある場所じゃねぇってことか」 「そうウニャ。この新ダイバーシティ策が"始まった直後に出来た立体看板のある店"、を見つけるんだウニャ」 「⋯⋯っておい、なにたこ焼きを呑気に食い始めてんだてめぇッ! AIが食いもん食ってんじゃねぇッ!」 「新商品の味を知っておくのも、知事として大事な務めウニャ」 「まだなってもねぇだろうがッ! っざけんなクソ野郎ッ! おめぇも手伝えやッ!」  ケンとウサネッコが言い争っている中、構わず俺ら5人は周囲の立体看板を見て歩き回っていく。  たこ焼き・焼きそば・串カツ等のいい匂いが漂ってくるが、楽しむのはとにかく終わらせてからだ。 「見た感じさ、たぶんホログラム立体看板のとこにありそうではあるよね。新策開始直後に出来たばかりで、これまであった物じゃないのが前提なら、そっちの方が
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-23
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86. 謎城≪Dotonbori/Castle≫

 ここで立ち止まっている時間も惜しい。  気まずいながらもミハさんに連絡しようと、L.S.のホログラムパネルを展開した時だった。  その隙間から、道頓堀商店街の奥のT字路の方で、"あの二人"が一緒に歩いて行く姿が一瞬だけ見えた。 「え⋯⋯なんでこんなとこに⋯⋯」 「ザイ? 何かあった?」 「⋯⋯スア、すぐに付いて来てくれッ!」 「へっ!?」  俺は歩いている人々を避けるように、なりふり構わず走った。  "あいつら"⋯⋯どうして道頓堀なんかに来て⋯⋯。  そのすぐ後ろを、彼女が理由も知らないままに引っ付いてくる。  説明してたら"あいつら"を見逃してしまう、とにかく全部後回しだ。  人を避けて行った先、奥のT字路を左に曲がり、即座に"あいつら"が向かって行った方へと目を遣る。  しかし、この辺も人の流れが多く、この中へと"あの二人"は紛れて行ってしまったようだった。 「くそ⋯⋯どこへ行ったんだよ⋯⋯」 「ねぇ、誰がいたの?」 「コウキと大井さん。あの二人がわざわざここへ来るなんて、なんか嫌な予感しないか?」 「たしかに⋯⋯。でもここから探すのは大変そうだから、私のドローン飛ばしてみよっか? ここは使えるみたいだし」 「そうだな、頼む」  スアが超小型ドローンを飛ばし、T字路の左方面を探してみるが、どこにもそれっぽいのは見当たらないらしい。  二人は"都波裏学園の制服のまま"だったから、いたらすぐ分かると思うんだけど⋯⋯。  こうなったら、ライブドローンカメラを遡って割り出してみた方が早いか。  そう思い、動画配信サイトで配信中の"道頓堀商店街の様子"のシークバーを、ちょっと前に巻き戻して見ていったところ、なんと二人の姿が映っていない。  ちょっと経つと、俺とスアが駆けて来た部分が流れ始めてしまう。 「⋯⋯その顔、まさかどっちも映ってなかったとか?」 「そうなんだよ、あいつらどうなってんだ⋯⋯?」   刻々と夜が更けていっているため、より二人を見つけ出すのは容易では無い。  しかし、スアだけは前を向いていた。 「でもさ、一つ成果はあったんじゃない?」  彼女の見る先、明らかに"ここへ合わなすぎる建物"があった。  "謎のホログラム立体看板を幾つも張り巡らせた、赤と青の縞々模様の城?"のような、何をするためなのか不
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-24
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87. 待機≪Waiting≫

「ここに入る時の周りの目、見ました? めちゃくちゃ不審者を見る目でしたよ。おいあいつら入って行ったぞ、みたいな⋯⋯」  隣を歩きながら、モアがこそこそ話をしてくる。  誰一人入って行かない場所に、俺ら6人と謎の兎猫AIロボットが1匹入って行ったら、そりゃそう見られるよな。  人の目を何一つ気にしないアマに付いて行くと、まぁこうなるのは受け入れざるを得ない。  ただそうは言っても、アマには"唯一気にしていること"があるという。  今日俺が起きたのは朝6時だったが、16時に"5つ目の理由解放で道頓堀と判明"ということもあって、その判明するまでの10時間は、車内でまったりしていた。  そのまったりしていた昼間頃、梅田周回中のままだった車内でアマに一つ聞いたのだ、なんでAR e-Sportsプロプレイヤーになろうと思ったのかを。  新策が始まってから話せる仲にはなったが、それまでは赤の他人も同然だったから、せっかくだから胸の内を聞いてみたくなったんだ。  するとアマの答えは、やっぱり三船コーチに憧れていたからというのが最初だったが、それと同じくらい"アマチュア"でいたくなかったんだと。  "アマという名前"にコンプレックスがあるらしく、"アマチュア"と呼ばれるのが一番嫌いだそうだ。だから、ずっとプロで居続けなくてはならないんだと。  こいつが心底煩わしいのは、一言のこれくらいという訳だ。他の奴らがどう見てこようが、それ以外は眼中に無いのだ。 「にしても、上下左右どこも赤と青の縞々模様だらけで目がチカチカするね」  先頭を進むアマが話しかけてくる。  1階には名前を記入する欄があり、記入後すると≪2階へと上がってください≫というホログラムメッセージが浮かんだのだ。  結局何をする店なのか、皆目見当が付かない。ちょっとだけケンの言ったラブホが脳裏をちらついてしまう。  ちなみに店前にあったホログラム立体看板には、何が書いてあったかというと、"道頓堀店新規オープン! ご来店お待ちしております!"の羅列だけという、マジで意味が分からない。  たまにある何を売ってるか分からない店、まさにそれの2030年版という感じ。  理解が追い付かないまま、螺旋状に続くエスカレーターを上がって2階に着くと―― 「⋯⋯え? "この時間帯は女性限定の入店になります"
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-25
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88. 半分≪One-Half-Probability≫

「なぁ、行ってから何分経ったんだ?」  時刻を確認すると、≪2030/08/20(水) PM 19:04≫となっている。 「⋯⋯40分くらいか?」  俺が時間を教えると、落ち着かずにうろうろし始めるケン。 「さすがに遅すぎやしねぇか⋯⋯? なんか通話もメッセージも、この訳分かんねぇ城内だけ"圏外"になってるしよぉ。ウサネッコの野郎、しっかりやってんだろうな⋯⋯」  だが、俺たちに出来る事は無く、とにかく待つしかない。  "女性限定"の表記のままで、自動ドアは開かないのだから。 「まぁ冷静になりなよ、ケン君。焦る気持ちも分からなくもないけど、プロの世界でもそういうのが命取りだっただろう? リアルでも同じで、見えなくなった者から"ヤツら"に成り代わっていく。現に、水生さんとウサネッコ以外は"かいじゅう"を持ってる、対抗手段としては最高なはずさ」  アマはどこまでも冷静だ。  いや、今回に限っては最初に入ったが故、少し責任を感じているのかもしれない。  だって、普段かかない手汗をちょっとかいてる。  「分かってっけどよぉ⋯⋯"あべのハルカスの時"が過(よぎ)んだろ。いきなり足元が動いたと思ったら、エレベーターみたいなもんで違う階へ連れてかれるし、何が起こるか分かんねぇんだッ!」  ケンが話し続ける中、ふと1階の様子を見ると、5人ほどの客が入って来ていた。  男が3人、女が2人のグループだ。  その人らは俺たちを見つけると、すぐにこちらへと上がってくる。 「ねぇ君たち、高校生か大学生くらいだよね? ここが何する店か、分かって入ったんだよね⋯⋯?」  一番左のお姉さんが怪訝そうな顔で言ってくる。 「いや⋯⋯分かってないですけど」  そう言うと、彼らは顔を見合わせ始める。 「ここさ、聞いた話なんだけど、"AIとの新感覚な性交体験専門店"とか聞いたよ。ほら、今ってどこも危ないでしょ? もし妊娠なんかしたらって思ってさ、知ってる人は誰も入らないようにしてるんだよね」 「⋯⋯"性交体験"? それってつまり⋯⋯」  さっきから話してくれているお姉さんは、はっきりと"セックス"と言った。  そう、どう見たって分かり易くはっきりと。 「おい、おいおいおい⋯⋯! 俺の言ってたの当たってたんじゃねぇかよ!? やっぱこいつはラブホをテーマにしてんだっ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-26
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89. 所有≪Owner≫

『まだ下を向くのは早い、ザイ』  真っ白になってしまった俺の脳内に、ふと三船コーチの一言が伝った。  おかげで、なんとか正気を取り戻すことが出来た。  ⋯⋯まだだ、俺にはまだ"こいつ"だってある。  水色のハイスマートグラスを見つめ、"海銃の姿"を思い浮かべる。  それにしてもなんなんだ、妊娠率50%って⋯⋯どうしてそんなに確率が高い?  俺の不安さえ理解しているような彼女は、また口を開いた。 「なんでそんなにあるのって顔してるね。この中で受ける快感は今までとは違って、最高級の絶頂を経験出来るそうだよ。そのタイミングで注がれるProtoNeLT製の精子は確率を引き上げるんだってさ。その代わり、疲れ具合を見て1回で強制終了って人も多いみたいだけど」  スアの友達だったはずなのに、大井さんは他人事のように話し続ける、今まで仲良かったのが嘘のように。 「さっきからごちゃごちゃうっせぇなお前ッ!! 話すだけ話して何しに来やがったッ!! ざまぁねぇってかッ!? あぁッ!?」  ケンが叫ぶと、大井さんは溜息を吐いた。 「はぁ⋯⋯。せっかく助ける方法を教えてあげようと思って、まずはここの詳細を教えてあげたのに。そんな態度でいいの? ってか店内でうるさいんだけど」 「はぁッ!?」 「謝ったらギリ許してあげる。あと静かにするのも約束ね」  戸惑うケンに対し、アマが今だけ従うように促した。  終始、ケンは反抗的ではあったが、手段も無い俺たちは大井さんからチャンスを貰うしかなかった。 「す⋯⋯すまん。⋯⋯これでいいんだろ」 「だから昔から嫌いなの、バカっぽいヤンキーって。何も学ぼうともしないし、頭も悪そうだし」  キレそうになるケンを俺が必死に止め、彼女の態度が変わらないようにした。  その間、アマが彼女と話し、気分をよくさせている。 「私ね、このお店の"オーナーの一人"を任されてるの。キーくんとは、学校で会ったらよく話す仲だったから、今回は"オーナー権限の特別対応"ね」  まるで人のように笑う彼女は、"入ってしまった女性陣を救う方法"を提示し始めた。 「いい? 1回しか言わないからね? あと、私の喋る声は録音出来ないようになってるから、そのやり方も無駄だから」  すぐ録音しようとしていた俺を見て
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-27
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90. 最短≪Shortest/Route≫

 道頓堀にそびえ立つ謎城内から飛び出し、最短ルートを確認しながら、俺の足は勢いよく走り出す。  始まってしまった30分というカウントダウン、間に合わなければ女子3人はヤツらと⋯⋯。  ⋯⋯そんな事には絶対ない、俺が止めるんだ  "海銃"として主に利用するようになったハイスマートグラスは、この間だけ普段通りの扱いへと切り替えた。  視線上に表示された、的確な通天閣までのマップ情報を頼りに、一つも間違えないよう辿って行く。  ここからは己の走力だけを信じ、"通天閣5F"へと行くしかない。  それだけでなく、黄金展望台を探して金髪ビリケンに顔認証と指紋認証までしないといけない。  となると、ある程度の余裕を持って着くようにしないと、いざ探す時に場所が変わっていたりなどの、想定外の事が起こった場合にタイムアップになりかねない。  幸いだったのは、道頓堀から新世界に"ヤツら"が現れない状態が続いている事。  "アイツら"をやりながら30分以内に着くとなると、おそらくほぼ無理に等しい。  ⋯⋯ってことは、大井さんはそれを分かった上で提案してきた?  走りながらじゃあまり深く考えられない、というより無駄な体力を使うべきじゃないな⋯⋯。  そして、どうやら道頓堀から新世界は約2.1kmの距離らしい。  特段必要でも無かったため、今まであまり調べた事は無かった。  徒歩でゆっくり行くと30分程度かかり、まぁまぁな速さで走ると15分ぐらいだという。  新策前の平日くらいだったらそれで行けるだろうが、"ヤツら"が来ないというメリットが、この最短で行くという場合に限っては逆に仇になっている。  なぜなら、道頓堀から新世界へ行くには、まず戎橋方面へと戻らなければならない。  要は、あの大人数の戎橋の中をまた通るというのが一つ候補に挙がる。  ついさっきミハさんと会い、話していたあの有名場所へだ。  が、そんな事をしていたら大幅なロスになってしまうため、ここは避けて通る方を行く必要がある。  ありがたい事に、"封鎖中だった戎橋筋のアーケード"が大改良された姿で開いており、ここが開いたおかげで、T字路になってしまっていた道頓堀商店街が十字路に戻り、少しずつ混雑が緩和傾向になっていた点だ。  この"戎橋筋アーケード
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-28
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