「黒石寧々(くろいし ねね)さん、本当に辺境の地の戦場医師に行く気なのか?今回の派遣は、これまでのような交流じゃない。あちらの情勢は不安定だ。二ヶ月前に派遣された医師たちの状況から推測すると、生きて帰れる望みはほとんどゼロ……」院長はリスクをはっきりと説明した。それでも寧々は、しっかりと頷いた。紛争地帯の医師になる――彼女はもう、あの硝煙の立ち込める地で死ぬ覚悟はできていた。少なくとも病に倒れるよりはましだ。それに、少しは役に立てるだろう。病院での夜勤を終えたばかりの寧々に、浦上創太(うらがみ そうた)から電話がかかってきた。「天上人間クラブ、十分で来い」寧々はすぐにタクシーを呼び、胃のあたりを刺すような痛みをこらえながら、個室へと急いだ。ドアの向こうから、女の甘えた声と挑発的な言葉が聞こえてくる。「んっ……そこ、触らないで……創太、本当に意地悪な人なんだから……」寧々にはもう慣れた光景だった。ほぼ毎日、違う女を使って、彼女の目の前でこういう芝居を繰り広げるのだ。創太は若い体を抱き寄せ、彼女たちの若さと美しさを思うままに楽しんでいた。しかし、心のどこかで苛立ちを感じていた。……寧々がドアを開けて入ってくるまで。寧々は心の準備を整えた。ドアを開けると、創太の膝の上にまたがる女の姿が目に入った。背中は大きくはだけ、白い肌を露わにしている。寧々には背中しか見えず、顔はわからなかった。だが、おそらくまた大学生だろう。二人が再会してこの一年、創太の好みはわかっていた。無垢で、誰にも汚されていない、若くて瑞々しい女が好きなのだ。創太は不機嫌そうに言った。「遅いぞ」「場所が遠くて、間に合わなかった」「なら、いつものルールだな」いつものルール――それは、一分遅れるごとに酒を一杯空けるというものだった。個室内のカラフルな照明が、寧々の青ざめた顔色を隠してくれた。寧々はバッグを置き、近づいた。グラスを手に取ろうとした時、初めて創太の膝の上の女が振り向いた。その顔を見て、寧々は息をのんだ。「……あなた、女に困ってるわけじゃないのに、どうして彼女を?」親しい者ほど、どこを刺せば一番痛いかを知っている。創太はよく知っていた。彼女がこの世で一番嫌っているのが、義母の連れ子の妹、黒石遥(くろいし はるか)
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