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231.何気ない幸せ⑦

「気にかけてるんじゃなくて、ちゃんと好きだから。依那が思ってるより、もっとずっと」慧さんはしっかりあたしにその言葉が伝わるように、あたしの目を見てゆっくりと伝える。その視線も、その言葉の伝え方も、纏う雰囲気からも。気遣う感じでもなく、合わせてくれる感じじゃない、ちゃんと慧さんの意思が伝わる。「……はい」そんな慧さんを見て、あたしは自然にそう呟く。あたしは嬉しくてその言葉を返すだけで、もう胸がいっばいになる。「だから、オレが依那を好きって気持ち、もう少し自覚してもらえたら有難いんだけど」慧さんのその言葉にまた嬉しくなるけど。「はい。でもなんかまだ正直実感なくて」でも、正直そこまで自覚出来るほどの自分でなかったのも確かで。「深い関係にまでなった仲なのに?」「あっ、まぁ、それはそうなんですけど……!」それを言われると何も言えない。そのことを想い出せばただ幸せだったというのと同じくらい、だからこそそれもまた夢みたいに思える。「依那。こっち来て」すると、慧さんがあたしを見つめながら優しくあたしを呼ぶ。そして、慧さんのお仕事の邪魔にならないように、長いソファーの端で座っていたあたしは、少し慧さんに近づいた場所に座る。「なんでそんな離れてんだよ」「いや、慧さんお仕事中ですし……」「ってかオレがお前呼んだんだけど」「まぁ……」「ここ」ソファーのすぐ隣をポンポンと叩いて慧さんが合図をする。そして、あたしは少しずつ近づいていき、隣に座ったと同時に、慧さんが手を伸ばして、あたしを背中から包み込むように抱き締める。「これでも実感出来ない?」「いえ、これはさすがに出来ます……」後ろから包み込むように抱き締めてくれる慧さんをしっかり感じられて、あたしは照れながらも嬉しくなる。「そっ。ならこれは?」そう言ったかと思えば、慧さんの手があたしの顔に触れ、そのまま慧さんの方へと顔を向けられ、隣から唇が重なる。あまりのスマートな早さと手つきに、あたしは抵抗する間もなく、慧さんのその甘い雰囲気に飲み込まれる。慧さんにどこまで好きになってもらえるかは、まだ自分ではやっぱりそこまで実感は出来ないけど。でも今こうやって重なる唇も、あたしを後ろから優しく抱き締めてくれるこの腕と身体も、夢なんかじゃなく今現実で起きてる幸せなのだと、その感触と胸のドキ
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232.何気ない幸せ⑧

「それならやっぱりこうやって伝えていくしかないよな」「こうやってって……?」「オレの気持ちが信じられないんだろ? なら、どんだけオレかお前を求めてるか、こうやって実践してお前の記憶や身体に刻みつけてくしかない」「えっ!?」本気か冗談かわからないような言い方に、あたしは一瞬戸惑う。「お前は今そこまで実感も自信もないかもしんねぇけど、オレはもうこうやって何かあったらお前にちゃんと気持ちを伝えたいって思うし、触れたいって思う」「慧さん……」だけど、そうやってちゃんと伝えてくれるその言葉で冗談じゃないことがわかる。「だから、これからお前が実感ないなら、オレが実感させてやる。そもそもお前がこんなオレにしたんだぞ?」「えっ?」「今までこんな誰かにいつだって触れたくなるとか、自分を見ててほしいとか、この自分の想いをちゃんと知っててほしいだとか、そういうこと思うことなんてなかった。そんなオレにしたのは、お前がまっすぐ気持ちぶつかってきてくれて、オレを好きにさせるって頑張ってくれたからじゃないのか?」「あっ……」そうだ。あの時はただ慧さんに振り向いてほしくて、諦めたくなかった。自信がないだとかそんなこと以上に、自分を少しずつでも知ってもらって好きになってほしかった。何も計算とかなく、ある意味体当たりで自分のままでぶつかっていた。そして今は慧さんが、あたしだけにそんな感情を感じてくれてる。それだけで、あたしも慧さんも最初の頃とは違う、今の二人の感情とお互いへの想いが、もうちゃんと存在してる。「多分あそこでお前が頑張らなければ、オレも恋愛に前向きにもならないままだったし、お前のことも好きにならなかったと思う」「そう……ですよね……」やっぱりそうだったんだ。あそこで、あたしが諦めていたら、慧さんは好きになろうともしなかったし、今の幸せはなかったってことなんだ……。「あの時は自信あったってこと? なんでそんなにお前は頑張れたんだ?」慧さんが優しくあたしに尋ねる。「あの時は……。自信があったとかじゃなくて。ただ慧さんが好きで、その気持ちを知ってほしくて。慧さんにとって、少しでも心を預けられるような、少しでも慧さんの力になれるような、そんな存在になりたいって思いました。……そして、どんなカタチでもいいから、いつかあたしじゃなきゃダメだと思ってもら
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233.何気ない幸せ⑨

「ちゃんとこれからは実感させてやるから。どれだけオレが依那のこと好きかってことを」あぁ、やっぱりあたしが思ってた以上に、きっと今慧さんはあたしをもっと好きでいてくれて必要としてくれている。あたしが慧さんを想ってるのと同じように、慧さんもちゃんとその想いを返してくれる。「だから。これからはお前もちゃんと伝えてくれればいいから」「はい……」「だからお前は自分が望むようにすればいい。どんな時でも」「自分が望むように……ですか?」「そう。別に難しく考えなくていい。依那がただオレを好きだと思ってくれればそれでいいから。そしたらオレはちゃんとお前の気持ちに応えてやる」結局は、こうやって慧さんは全部受け止めてくれる。どんなあたしでも、あたしのままでいいんだと伝えてくれる。「慧さん……」「お前の中では自分の気持ちのが大きいだとか、先に好きになったとかそういうのを気にしてるみたいだけど、実際好きになったらそんなこと関係ないんだよ。今どれだけオレが依那を好きかどうか、どれだけ大切に想ってるかどうかのが重要だと思わないか?」「確か……そうかもしれないです……」「だからお前はもっとお前もオレのことも信じろ」「……はい」それは、きっともう慧さんも同じくらいの気持ちになってるのだと、そう伝えてくれていて。あたしは慧さんの言葉に、ただ頷いて返事をする。「お前がオレを諦めずに頑張ってくれた時から、今のオレらに繋がってんだから」「はい」「だから、これからもお前が心動いたり、やりたいと思ったことがあれば、ちゃんとその気持ちを大事にしろ」「はい……。この先も気持ちのまま動けばいいってことですよね」「そう。遠慮したり躊躇してると、そこで人生が変わるかもしれない」「えっ? そこまでですか?」「そんなの全部タイミングだよ」「タイミング……」「オレとお前が出会った時も、お前が控えめなヤツで躊躇してるヤツなら、そもそも今のオレたちは始まっていない」「そっか……」あの時は、ただ無意識に行動起こしてたことも、今となっては、今の自分だったから、慧さんと今こうしていられるってことだもんね。「だからお前は思うようにやればいい。オレとのことはもちろん、それが仕事上であったとしても」「仕事でも、ですか?」「人生ってさ。どこでどんなチャンスが転がってるかわかんないんだ
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234.新たな世界①

プロジェクトメンバーに選ばれて初めての会議。企画の一つとして新しい提案が持ち上がった。それはそのプロジェクトの中で一つの宣伝としての企画。今回のメンバーの中で元々プロジェクトに参加して慣れてるメンバーは今後の大きな内容に取り掛かることになっているのだけど。今回はまだプロジェクトに初参加のメンバーや今までサポートに回ってたメンバーなど、比較的今までしっかり企画に参加したことないメンバーを中心に一つのグループが組まれることになった。当然あたしは新人なのでそのグループに入るよう指示。社長発案の企画ということで、元々経験あるメンバーと新人メンバーと最終的には力を合わせてプロジェクトを成し遂げる前に、まずはその新人グループに力や自信や経験をつけさせるのが目的になるという企画が別に立ち上がったらしい。まずそれはそのプロジェクトが出来る前に、事前にこのプロジェクトを宣伝する大きなきっかけにもなるらしい企画。その企画会議と説明が今日今からあるらしく、また新しくその新しいグループが集められて、現在企画会議中。「え~と、今回このもう一つのプロジェクトでリーダーを努めます佐原です。こちらのプロジェクトは、本来のプロジェクトと別で、まずは先に動き始める最初のプロジェクトになり、Bプロジェクトとして始動します」そしてこのBプロジェクトを仕切っていくリーダーの佐原さんという少し自分より先輩らしき女性が挨拶をする。「実際私がリーダーと言っていますが、とりあえずこれは最初の肩書と流れを管理する人間という意味でのリーダーです。私は少し皆さんより経験が多い為、このリーダーには選ばれましたが、基本は皆さんとは同じ立場でプロジェクトに関わっていくことになります。詳しい説明は私ではなく、改まって説明していただけるとのことなのですが……、ちょっと前の仕事が長引いてるようなので、少々お待ちください」この佐原さんって人じゃなく、もっと先輩とかで詳しい説明してくれる人が来るってことなのかな。そっか。新人だけで動き出すまた別のプロジェクトとかちょっと緊張するかも。でも、ある意味同じ立場の人たちなら差が出ないかもしれないから、その点ではちょっと安心かもしれない。
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235.新たな世界②

そして、しばらくすると、会議室に入ってきた人物。「悪い。待たせた」え!  慧さん!? 「え? 社長?」「なんで社長が」と、いきなり姿を表した慧さん……もとい社長の姿に新人の皆は動揺する。「ではこのBプロジェクトの詳細は、社長から直接説明していただきます」社長が登場して佐原さんが早速社長へと託す。「えーこのBプロジェクトは、ここに集まった新人である君たちメンバー全員に、まず大きなプロジェクトに入る前に経験と自信をつけてもらうためのプロジェクトだ。近々うちが新店舗としてオープンする予定の店で、君たちにはその店のプロデュースとどう宣伝すればいいかを全員で案を出し合って成功させてほしい」社長が直々にプロジェクトの詳細を伝えていく。「だがプロデュースといっても、君たちが全面的に考えるのではなく、ある人たちの要望を聞いて、その人たちのプロデュースをサポートするという立場だ。基本その人たちのプロデュースという形が表立ったメインになるが、結局その人たちの要望を聞いていかに理想通りの形にするかは君たちの腕次第。それを失敗してしまうと、その人たちの名前にも傷がつく。その人たちの要望も出来ることと出来ないことを判断し、いかにそれ以上の理想を超えた形に出来るかがポイントになってくる。うちの会社は、要望以上の理想を現実するというのがモットー。それをちゃんと意識しながら、うちにもどうメリットが生まれるか、どう利益が生じるのかも同時に考えながら進めて行ってほしい」なんか直接社長から聞くことで、身が引き締まる思いになる。最初はこのプロジェクトに参加出来て嬉しいという気持ちはあったけど、実際どこまで自分の実力を活かせるかもわからないままで、新人の自分はどこまで力になれるのだろうとも思っていた。だけどこういう内容なら、自分たちでも、経験することで何らかの力をつけられるような気がする。「そして、その店でプロデュースするのは、それぞれジャンルが違う世界の人たちとの同時コラボになる。元々はそれぞれの人たちとのコラボ企画の話が上がって、ある飲食店が協力してくれることになったんだが、それぞれのスケジュール的な問題と金銭的な問題、そして話題性をいろいろ考えて、同じ店で同時にすることになった」「その内容については今から皆さんに資料をお配りします」そう言って佐原さんから全員に資料が配布
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236.新たな世界③

そして、このイベント・そのものの本来の素材の魅力・アンバサダーの人物、すべての声価をより良いものとして高めるのも目的。そのすべてのテーマをすべてこのプロジェクトで価値ある意味あるモノにするという、思ってた以上に、すでにしっかりと土台が固まっていたプロジェクトだった。だけど、そのプロジェクトは、全部材料や土台を作ってる状態ではあるけれど、いかにそれを活かして輝かして成功させるか。それがこのチームメンバーの力にすべて懸かっているという、新人メンバーの自分たちにとっては、かなりプレッシャーも大きな内容。だけど、その分やり甲斐もあるし期待もされてるという、自分の実力を試すにはとても意味ある企画だった。そしてカフェのメニューや、店舗の装飾やデザインなど、それぞれの専門は、その道のプロの人が協力。だけど、それはフードコーディネーターにフラワーコーディネーター・インテリアコーディネーターなど、その道ではまだ新人だったり、経験不足だったり、これからいろいろ経験する必要がある人物たちとの合同企画。この会社の自分たち新人と同じように、今回のこのSEIKAプロジェクトは、ある意味それぞれの新人や経験を重ねていない皆で力を合わせて成功させる裏テーマがあると発表された。これは会社でのプロジェクト企画ではあるけど、これは社長発案の企画。社長のこれからの新しい可能性ある人物も育てたいという、このプロジェクトで自分が選ばれた意味も、このそれぞれの世界の同じような境遇の人たちと協力することで、その意図がわかる。そのプロジェクトの内容のすごさに関心していると同時に、慧さんの仕事や関わる人への情熱や想いが伝わってきて、あたしはこんな時でさえも、やっぱりすごく慧さんは素敵な人なんだと心の中で嬉しくなる。新人にこんなチャンスを与えてくれるなんて、普通ではきっとありえないはずなのに、こうやって可能性を信じようとしてくれるのは、やっぱりあたしがずっと尊敬して憧れていたこの人だからだ。そして、ここにあたしがいれることを、ホントに幸せに思う。あたしもそのチャンスを、慧さんが作ってくれたこのチャンスに挑戦出来ることが、何よりも嬉しい。それから、それぞれのコーディネーターと一人ずつ協力して、企画をいろいろと考えていくことになり、第一印象でまずは何がしたいか、何に関わりたいかを考える時間が少
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237.新たな世界④

「え~今追加で配布しましたアンバサダーの方の資料ですが、こちらの内容を簡単にご説明させていただきます」と、佐原さんが、あたしが資料を見てパニックになりそうな状況の中、冷静に告げる。「こちらのアンバサダーの方々は、最近売り出し中の人気のアイドルグループです。最近世間で人気が出てきているグループではありますが、まだ認知度で言いますと、知らない方たちが多いのが現状です。ですが、今回こちらのグループと縁があり、うちのこのプロジェクトのテーマとも一致することが多く、今回アンバサダーとして務めていただくことになりました。このプロジェクトは、うちでしか感じられない絶対的なモノを、一から生み出し、どこにもない存在価値・希少価値・この先長く求められる人気などを確かなカタチにしていくのが、またもう一つのテーマでもありますので、そういう意味でもこちらのEveRの関係者側からも、これからの更なる人気を期待したいので是非にとのことで、参加していただくことになりました。EveRさんとは、これから一緒にこのプロジェクトを盛り上げて成功出来ればと思ってます」確かにEveRは、大々的な国民的アイドルとかそういうのではまだ全然なくて。だけど、いろんな可能性や魅力を秘めているグループ。琉偉が推しではあるけれど、それぞれが持つ実力やグループでいるからこそ際立ち引き立つそれぞれの魅力や歌唱力やダンスやビジュアルのクオリティの高さ。個人メンバーのファンになった人も、すぐにそのグループとしての魅力にも惹かれハマり、箱推しになっていくのがEveR。今回のこのプロジェクトでは、普段のそのアーティスト面で活躍してる部分ではないとしても、このEveRはビジュアルはメンバー皆とびきりイケてるメンバーばっかりだし、MCでも評判のトーク力やユーモアなところ、それぞれが得意とする特技や趣味なんかも、実はいろいろとこのプロジェクトで活かせるんじゃないかと思ってたりして。誰よりこの会社でEveRのことを知っていると自負しているあたしは、さっき驚いたのも忘れて、アンバサダーにEveRが選ばれた嬉しさで、いろんな期待とワクワクが止まらなくなる。「そしてメンバーの中で、元々プロデュースに興味があり、グループのライブやグッズ、イベントなども手掛けて関わっている琉偉さんが代表として、うちのプロジェクトに参加し
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238.新たな世界⑤

そして、多分これはあたしだけしか感じなかったことだけど。その琉偉のプロデュース力を、慧さんが手掛けたらどれほど素晴らしいモノになるだろうと、実は密かに思い浮かべてたことがあった。あたしとしては、自分の夢とは違う、もう一つの密かな夢。琉偉はプロデュース力はあるけれど、やっぱり慧さんほどではなくて。ただグループに関わってることで、ファンもメンバーも喜ぶようなそういうプロデュース力。だけど、慧さんのプロデュースの魅力やすごさをを知ってるあたしは、そんな琉偉を見ながら慧さんがもし手掛けたらどんなプロデュースになるんだろうなぁとか、もっとすごいもの出来るんだろうなぁとか、そういうただざっくりとしたモノだったけど。それぞれの推しの才能に惚れこんでるあたしにしたら、そういうありえない夢みたいなこと想像したりしていた。そして、それがホントに現実になって、しかもそれがあたしも関わるこのプロジェクトで!?身近でそれを感じられるなんて、あたし幸せすぎる……。と、思っていたら。「ちなみに。今回はオレが発案の企画ではあるけれど、オレは一切このプロジェクトには参加はしない」あたしのワクワクを見透かしたように、慧さんが自分は関わらないことを告げる。……え?それって……、慧さんプロデュースではないってこと……ですよね……?えー! じゃあ推しのコラボっていうには、ちょっと微妙!?「今いる君たちメンバーは、ある意味今後に控えているプロジェクトメンバーにしたら、まだまだ経験が足りない」そして慧さんが、また続きを説明し始める。「だけど、これから先、更に活躍出来そうな希望ある新人を、そこに向けてこのプロジェクトで育てるのがオレ的には一つの目的でもある。だから、出来る限りこのプロジェクトで、同じ立場の存在と切磋琢磨しながらアイデアを出して、新人だからこそ出てくる希望や可能性を広げて、その経験を積んで自信をつけてほしい」ということは、今回のこのプロジェクトでは、逆に自分とかの方がそういう立場になるってこと……だよね?「ここに参加するメンバーは、うちの会社のチームメンバー・プロジェクトに参加してくれるメンバー・アンバサダーのメンバー、すべて同じように刺激し合えて切磋琢磨して力を合わせられる、同じ立場の存在ばかりで集まったチームだ。その君たちで最終的には、どこまで力を出せるか
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239.新たな世界⑥

「では、そろそろ皆さんにそれぞれどの担当をしてもらうか、この場で決めたいと思います」しばらく検討する時間をもらっていたあたしたちに、佐原さんが声をかける。「出来るだけ早くプロジェクトに取り掛かる準備をしたいので、今日すべての担当を決めたいと思っています。立候補があればそれを優先します。自分がやりたい担当がありましたら、順番ずつ聞いていきますので、挙手をお願いします」まず最初の仕事の役割として、それぞれの企画の担当になることから開始するとの説明があった。カフェ担当だったり、野菜や花の卸担当だったり、レシピ担当だったり、装飾担当だったり。社長がいうには、経験ない自分たちがわからないのは当たり前。それぞれのプロの人たちと、お互いの情報やアイデアを共有しながら、一つずつカタチにしていけばいいと。まず自分たちが、このプロジェクトでそれぞれ何をしたいかを考えるようにと。なんでもいい。自分たちが興味あること、自分たちが進んで出来ること・やってみたいことの担当になればいいと、社長は最初から自分の出来ることを選べばいいと、そうアドバイスをくれた。それぞれの担当の立候補を募り、一つずつ担当が決まっていく。きっとこのプロジェクトでどの担当になっても、興味深くてやり甲斐があって成長出来ると思う。だから、わかりやすい人気が出そうな担当は、やっぱり立候補も多かったりもして。実際あたし自身も、どの担当になっても頑張りたいとは思うけど、それぞれ立候補していく人たちの様子やこの資料を見ていくと、それはあたしじゃなくても出来る担当で。きっとここにいる誰かがきっと出来る仕事。だから、きっとそれはあたしじゃなくてもいい。「では、次に。アンバサダー担当を決めたいと思います。こちらの担当希望の方はいらっしゃいますか?」その問いかけが出た瞬間。あたしは大きく真っすぐと手を挙げた。あたしが今一番やりたい担当。これは、きっとあたしじゃなきゃ出来ない仕事。絶対あたしが一番誰より成功出来る自信がある。多分今までの自分なら、なんとなくこなせそうな失敗しなさそうな担当を選んでいたかもしれない。だけど、この前、慧さんと話したことを思い出した。“自分が思うようにやればいい”“自分の気持ちを大切にしろ"慧さんのあの時言った言葉は、今にも繋がっているような気がして。今目の前に
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240.新たな世界⑦

そして……。他に立候補がいないということで、担当が自分になった。やった……!  やった!!もっとEveRを、もっと琉偉を、このプロジェクトで有名に出来る!このプロジェクトに関われることだけでも嬉しかったのに、それがまさかこんな嬉しい担当になれるなんて。あまりにも嬉しすぎて笑みが溢れてくるのをこらえる。っていうか、慧さんはきっとこれ全部知ってたよね?だけど、あたしが彼女であっても、しかもあたしの推しだとわかっていても、それを伝えることはなかった。さすがだな。ちゃんとこの場所で、あたしの意思で、あたしがやりたいことを選ばせてくれたんだろうな。チャンスは自分で掴むべきだと、やりたいことは自分で手にしろと、きっと慧さんはそう伝えてくれてるんだろうな。そう思いながら、慧さんの方に視線をやると……。えっ、視線……合ってる……?あたしだけがわかる慧さんのあたしを優しく見つめる表情。少し微笑んでるようにも見えるその表情。思わずそんな慧さんに気付いて、またあたしは嬉しさを隠しきれなくなる。早く話したい。慧さんと早くいろんなことを話したい。慧さんはどこまでこうなることをわかってたのか。どんな風にあたしを見守ってくれてたのか。きっとあたしがこの喜びを報告したら、きっと慧さんはいつものように優しく微笑んで受け止めてくれるような、そんな気がするから。***そして、その日の夜。あたしは、いつも以上にソワソワしながら慧さんが家に帰ってくるのを待つ。ちなみにこの日は慧さんはご飯を家で食べない日で、何時に帰ってくるかもわからない日。ゆっくり話せる時間があるかもわからないけど、ほんの少しだけでもいいから、絶対今日慧さんと話をしたい。ホントならメッセージを送って、何時頃に帰れるかとかまで確認したいとこだけど、さすがに相手慧さんだし、ただあたしが嬉しくて仕方ないってだけで、慧さんにとっては別に関係ないことだし、とにかく家に帰ってくるまでは我慢。だけど帰宅遅くなってから、テンション高くあたしの喜びだけ伝えるのも疲れちゃうかなとかも思いながら待っていると。「ただいま」まだそんなに遅くもなっていない時間に、慧さんが帰ってきた。「おかえりなさい!」リビングのソファーでいつ帰ってきてもいいように待っていたあたしは、慧さんの元へとすぐに駈け寄る。「慧さん
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