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303

301.社長の過去と真実④

「あぁ……。でも、ちょっと本音、言ってい……?」すると、少し間を開けて、慧さんが何か引っかかったのか、そんな言葉を伝えてくる。「本音、ですか……?」「あぁ……。悪い。ホントはさっきの少しだけカッコつけた」「え?」カッコつけた? え? どれ??「ホントは、この家に帰ってきて、依那がいなくて寂しかった……」そう小さく切なく呟く。慧さんがそう呟いた瞬間、胸がギュッとなる。「ごめんなさい……!」「いや、謝ってほしいんじゃなくて。オレが勝手にちょっと不安になっただけ」「え? 不安って?」「依那がこのまま戻ってこなかったらって……」「え!? そんなことあるわけないじゃないですか!」あたしは身体をグイっと後ろに向けて、慧さんと斜め越しに向き合う。「あぁ、うん……」そう返事はしたものの、なぜか慧さんは少し寂しそうな顔をしているように見えて……。「慧さん。何かあったんですか? 何かあるならちゃんと話してください」あたしはそのまま座ってる身体を少しずつ動かし、横向きに座り直し、身体は慧さんの方へ向け、ちゃんと慧さんの顔を見つめながら伝える。あたしにそんなストレートに寂しかったとか不安だとか伝えてくれるなんて、初めてだよね……?雰囲気も表情もなぜかその言葉通りのように感じて、いつもの慧さんと違う人に思える。「いや……、こうやってちゃんと会って話せたら、大丈夫だって感じられた」「それでも。こうする前は不安だったってことですか? どうしてですか? なんか慧さんを不安にさせる何かがあったってことですか?」「正直さ。早く依那に会いたいって気持ちと、依那がオレから気持ち離れてたらどうしようって気持ちもあって……」「なんでそんなこと……」「オレの過去を知って、こんな状況になって、依那が愛想尽かすんじゃないかって……」「え……? それって、あの報道のことですよね……?」「あぁ……。オレがいない間にこんなことになって、依那すごく傷つけたんじゃないかって心配で……」あぁ……。やっぱそういうことか。慧さんはあたし以上に、あたしを想って苦しんでたんだ。あたしなら大丈夫なのに……。「慧さん。……酷いです……」「え……?」あたしのその言葉に慧さんは顔をあおざめる。「あたしの慧さんの想い。そんな軽く見てたんですか?」「えっ!?」あたしのそ
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302.社長の過去と真実⑤

「あたしは何も気にしてないです。だけど、慧さんがこれまで頑張ってやってきたことや優しさが、そんなくだらない根も葉もない噂で否定されてしまうことが、あたしは何より悔しいです」「依那……。そんな風に思ってくれてたのか……?」「もちろんですよ。あたしは誰が何を言おうと、慧さんの味方です。あたしが慧さんを支えます。だから、慧さんは安心してあたしに気持ち預けてください」「依那……。ありがとう……」そう言って、慧さんがギュッとまた抱き締めてくれる。「ホントはずっと思ってたんです」「何を……?」「あたしはいつも慧さんがいてくれることで支えられて力をもらえて守ってもらってるけど、慧さんがホントに辛い時に、あたしはそういう存在になれるのかなって……」「もちろんなってるよ。そばにいてくれるだけで、依那という存在がいるだけで、十分オレは救われてる」「はい。でも、そういうのだけじゃなく、慧さんが抱えてるものとかそういうのがあるなら、あたしも一緒に抱えたいっていうか……」「え……?」「今の慧さんのそういう存在になれてること、それもホントすごく嬉しいです。だけど、あたしの知らない過去で、もし慧さんが何か抱えていたとしたとして。あたしはそんな過去の慧さんも今の慧さんも、あたしがしてもらってるように、すべて支えたい、守りたいって思ってます」あたしが伝えるその言葉に、慧さんがちゃんと目を見て耳を傾けてくれる。こういうことを今まで言える機会がなくて、ずっと伝えられなかったけど、ホントはずっと伝えたかった。あたしにとって、慧さんがどれほどの存在か、どれだけ大切に想っているかを知っておいてほしかった。「正直、依那がそこまで考えてくれてるなんて思ってなかった……」そして、その言葉を受け止めて、そう言う慧さんは、少し驚いた表情を見せてるような気がするけど、だけどどこか安心したようなそんな表情にも見える。「あたしの慧さんへの想いは、それほど大きいんですよ?」あたしはいつものように、いつものその大きな想いを笑顔で伝える。「ん……」慧さんは、そう呟きながら柔らかく頷いて、穏やかに微笑む。その一言とその微笑みだけで、慧さんがわかってくれてるのだと、なんとなくそんな風に感じる。「依那……。依那に話しておきたいことがある」すると、あたしの目をしっかり見つめて静かにそう伝えて
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303.社長の過去と真実⑥

「報道されてたあの記事。あの中の話は全部が全部嘘ってわけじゃないんだ」「そう……なんですか……?」「正直中途半端に関係を持って、結婚を促した相手もいる」「え……?」いきなり思ってなかったような言葉が出てきて、少し動揺してしまう。「依那と初めてあの店で出会った時もそういう流れだったから、依那も全然知らないことはないとは思うんだけど」「あ、あぁ……。確かに、そんな話でしたね……」そうだ。その頃のこと、今ではすっかり忘れてた。だけど、その時のことを思い返せば、確かにあの時、知らない間に結婚の話になっていたからと言って、あたしは彼女役を頼まれたんだった……。あの時は、ただモテる人の理解出来ないお遊びの世界なんだと、特にそこまで気にはしなかったけど、今思えば、他の女性とそんな話になっていたってことなんだ……。「でもそれはホントに酒に酔った時で。その時はホントに自分の本音が出てしまうんだ……」確かに覚えてないとは言ってたけど、少しはそういう気持ちがあったということなのだろうか……。しかも、本音……?実は結婚したいと思う人がいたってこと……? 「それは、その人たちと結婚をその都度考えるほど好きだったってことですか……?」どんな状況であれ、正直あたしはそんな頃の慧さんだとしても、そんな風に言ってもらえる女性が羨ましいと思ってしまう。「いや……。今まで依那以外こんなにも誰かを好きになったことはなかった」だけど、今の慧さんがそう言ってくれることも嬉しくて。「その反対だったんだよ。結婚とか誰かと真剣に付き合うとか、オレにとってどうでもいいことで価値あることだと感じてなかったから」すると、あたしが気になっていたような答えと正反対の言葉が慧さんから返ってきた。「それは、どうして……ですか?」「オレにとって、好きだの愛だの信じられるものじゃなかった。簡単に口にする女たちほど、オレにとっちゃくだらない存在でしかなかったんだ」そう答える慧さんの言葉からは、決してその時の特定の誰かを愛しく想ってるような、そんな感じの雰囲気は感じられなかった。それどころか真逆な嫌悪感のような、そんな雰囲気に感じるほどで。そこまで嫌悪感を持つほど、慧さんに何があったんだろう。女性に対して、何か慧さんは気にかかることがあったっていうこと……?「オレと出会った女たちは
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