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All Chapters of おいしい契約恋愛: Chapter 251 - Chapter 260

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251.推しと社長④

「はい。自分がグループでプロデュースを担当することになった時、実は最初はちょっとプレッシャーだったんですよ」「え? そうなんですか?」それ、初耳だ。琉偉は今までどこにもそんなこと話してない。ずっとプロデュースやりたかったから嬉しいとしか言ってなかった。「ずっとプロデュースやりたかったから嬉しかったんじゃ?」「え? あれ? それ資料に書いてありましたっけ」あたしがそう言った言葉に、琉偉は不思議そうに反応する。あっ、マズい。それ資料に書いてなかったっけ。ファンの中では琉偉がそういうのずっと興味あるっていうのは知ってたし、グループでそういうの担当し始めた時は嬉しかったんだけど……。そっか、そこまで資料に詳しく書いてないわ。情報としては、ただプロデュースを担当するのが琉偉ってだけだ……。「あっ、えっと、なんかそういうのかな~と思って~」と、あたしは作り笑いをして、適当に誤魔化す。あっぶね。ファンだってバレちゃ絶対マズい。「あ~そうなんですね。でも、実はそれもそうなんですけど。だからこそのプレッシャーかな。ずっとそういうのやりたい、オレなら絶対グループをもって輝かせられるって思って、そうやって口にしてたんですけど。いざプロデュースを本格的にしてみろって言われたら、そう言って結果出せなかったらどうしようって。そこまで言って全然いいものにならなくてメンバーに迷惑かけたらどうしようって、なんかプレッシャー感じたことあったんですよね」そうだったんだ……。EveRは、グループの仲が良くて、それぞれのメンバーがグループのために力になれるようにって、それぞれ任された自分に合った仕事をして頑張ってる。琉偉はグループの中でも人気メンバーの方で目立つ存在でもあるし、いろいろな才能があるから、それこそグループ活動以外でも一人でドラマや舞台も出たり俳優活動だってするし、バラエティーみたいなこともする。その中でのプロデュース業は、そう言いながらもきっと琉偉がやりたかったこと。所々、そういう言葉を琉偉から聞くことも、なんとなく多かったような気もしたし。今のEveRは、それなりに今人気は出てきてはいるけど、国民的スターっていうほどでもないから、まだEveRのことも琉偉のことを知らない人もたくさんいる。だからこそ、プロデュースを琉偉が担当し始めた時は、もっと自
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252.推しと社長⑤

「グループでプロデュース担当し始めた時も、どんどんアイデアややりたいことが浮かんできたって言ってたんですけど、実はホントはそうじゃなくて」「そうじゃないって……?」「しばらく自分のソロの仕事を入れずにプロデュースに集中しようってなって、実はもう徹夜でずっと何日も考え続けて絞りだしたんです」「そう……なんですか……?」え、いつの時?  琉偉、そんなことになってたの……?「だけど、自分の納得いくモノを考えられなくて。だけど妥協も出来なくて。実はちょっとくじけかけて、もう逃げ出したくなるくらいだったんですよ」琉偉から衝撃的な言葉を聞かされて、言葉を失いそうになる。あっ……、でもそういえば、その頃、しばらく琉偉SNSでほぼなんの発信もしなかった時があった。案外そういうのはマメな方だったから、それをあまりしなかったのは、舞台とかの台詞覚えたり何かに集中して急がしくしていると思ってたけど、でも舞台のお知らせも特にその時はなかったし、そのあとも何もそういうのは発表されなかったんだよね。だから、その時期は琉偉どうしたんだろうとファンの皆の中で話題になってることがあった。だけど、しばらくするとすごく元気なSNSしてたから、そこまでは心配はしてなかったんだけど……。まさかあの時そんなとこまで追い詰められてたなんて……。全然知らなかった。全然気付いてあげられなかった。琉偉ごめんね、気付いてあげられなくてごめんねって、ホントは直接今にも口にしてしまいそうになる。そんな言葉と少し泣きそうになる感情を無理やり抑えて、あたしはただ琉偉を切なく見つめる。「そんな時、ここの神城社長のインタビューを目にしたんです」「社長の、ですか……?」「はい。偶然目にしたテレビにたまたま神城社長が出てて。会社のことと自分のことを話されてたんですよ。その時は何気なく観てただけだったんですけど、その時に仰ってた話が、自分にはすごく響いて衝撃的で。それを聞いて、また頑張ろうって思えて、やる気出て。そしたらそれから不思議となんかいろいろ前向きになれたっていうか、そこから自分でもすげー自信持てるモノ考えること出来たんです」そうだったんだ……。琉偉と社長、実はそんな頃からずっと繋がってたんだ。実際二人はその時、関わったわけではないけど、だけど琉偉の中でもずっとその時から慧さんは琉偉の力
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253.推しと社長⑥

 「その時に響いた社長の言葉って、どういう言葉だったんですか……?」だから、あたしはついその言葉を知りたくなって、琉偉に尋ねてしまう。「その時、神城社長が苦労されてる話も聞いたんです。社長は恵まれた環境じゃなく全然先も見えないような状況から始めたっていうこと。そして自分はある思いをずっと持ち続けて、それを支えにして、それをいつか実現させるために、ただ頑張り続けるだけだって。そして向き合った相手と自分はどう接していけて、どうその願望を叶えていくか。それは自分と相手を信じて、何を大切にしたいのかを考えていくのを、ちゃんと意識し続けているって。それを忘れなければ、きっと自分のやるべきこと、やらなきゃいけないこと、やれることが見えてくるはずだからって」「そう、だったんですね……」きっとそれは慧さんがずっと思い続けてることだ。どんな時も向き合った相手、接している相手の、中身、思っていることをちゃんと理解しようと、知ろうとしてくれる人だ。表面的ではない、ちゃんと中身を見てくれる人だ。だけど、だからといって、自分が前に出るとか、何かの意思を貫くのでもなく、相手の立場に立ちながら自分はどうすればいいか、どうあるべきかを考える人。そっか、琉偉もそんな慧さんを知ってくれていたんだ……。「なんかそれ聞いて、自分に当てはめた時に、なんかしっくり来たというか。そこからグループのために、オレはどうすればいいか、どうしたいかをもう一回ちゃんと考え直すきっかけになって、それですごくいいアイデアも浮かんで、自分の自信にもなったんです」「…………」そんな想像もしてなかった琉偉の境遇や心情、そしてその時から大きな影響を与えるほどのやっぱりすごい存在の社長、どちらのことも思ったら、言葉に詰まってしまう。「だから、オレにとって、神城社長は恩人みたいな存在で。それで尊敬もしてるし自分が今頑張れるモチベーションを保てている理由の一つでもある人なんです」琉偉は今まで見たことない表情で慧さんのことを語る。その琉偉は、どう表現していいかわからないけど、凛々しいという
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254.推しと社長⑦

「ありがとうございます……」そして思わず口にしてしまった言葉。琉偉、逃げずにまた立ち上がって、向き合ってくれてありがとう。自分を信じてくれてありがとう。そして慧さんに憧れてくれていて、同じ気持ちを共感し合えることへの、ありがとうを。きっとあたしは琉偉に伝えたくて、思わず口から自然と零れ落ちた。「えっ……?」すると、さっきと同じような反応をする琉偉。「あっ、うちの社長に憧れていただいて光栄というか、あたしもホント社長のこと尊敬していて憧れているので、それを聞いてホントすごく嬉しくて……」「あぁ。なるほど。そうですよね。ホント神城社長はそんな存在ですよね」「はい。──それと、今ここにいてくれていてありがとうございます……。琉偉くんが琉偉くんでいてくれてありがとうございます」これだけはやっぱり伝えておきたい。ホントはもっと伝えたいことたくさんあるけど。もっともっとありがとうをホントは伝えたいけど。だけど、それを伝えられない今は、せめてこの言葉にその気持ちを込めて……。「あり、がとうございます……」少しまた不思議そうな反応で、一応返してくれる瑠偉。今はそれでいい。別にあたしのこのありがとうの意味をわからなくていい。ただそれを伝えられたらそれでいい。「あっ、なんかごめんなさい! 瑠偉さんの話感動しちゃって、つい感情移入しちゃいました!」だけど、変に思われたくもなくて、あたしはすぐにその場の雰囲気を変える。「あっ、いえ。オレもすいません。なんか逢沢さん話しやすくて。逢沢さん聞き上手だって言われません?」「えっ!?」ちょっと待って!推しにそんなこと言ってもらえるなんて、もうそれだけで幸せなんだが!もう琉偉の話ならいくらでも聞いてあげる!ってか、そもそも琉偉のことはほぼ大体のこともう知ってるんですけどね!でも、仕事相手として、そんな風に言ってもらえるなんて、正直嬉しい。琉偉に少しでも心開いてもらえたってことかな。それなら嬉しいな。琉偉は一人で頑張って抱えてしまうところがあるから、あたしと仕事してる時は、少しでもその場所は居心地いい場所にしていたい。仕事相手ではあるけど、少しでも気が楽になるような存在でありたい。琉偉が全力でプロジェクトの仕事に集中出来るサポートをしたい。それは慧さんにとっても思っていることで、やっ
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255.推しと社長⑧

「なんか心強いです。初めてのこういうお仕事なので、自分もどれくらい貢献出来るのかが少し不安だったんですけど、楠さんとならなんか頑張れそうな気がします」そう言って少し安心したかのように琉偉があたしを見て微笑む。あ~、なんて嬉しすぎる言葉。推しにこんなこと言ってもらえるなんて、あたしの方こそ何があっても絶対頑張れる。「はい。お任せください。一緒に頑張りましょう!」琉偉と、慧さんの想いがたくさん詰まったプロジェクト、絶対成功させたい。あたしはその想いを胸に、その純粋な気持ちで琉偉に笑顔を向ける。それからしばらくして、琉偉は次の仕事へ向けて会議室をあとにした。そしてまだ会議室に残ったあたしは、そのまま、まずは最初に無事やり切った達成感と、推しとの二人きりの緊張するやり取りで、気が張っていた気持ちが一気に抜けて、脱力感と共に、会議室の机に思わずグダーッと腕を伸ばして突っ伏しうなだれる。つ、疲れた……。気分的に。推しとの二人きりに。初めて担当するこの重要なスタートに。だけど、その疲れは気持ちのいい清々しい疲れで、ようやくスタートしたんだという実感も、今になって少しずつ感じ始める。そしてそれと同時にまさかの琉偉からの慧さんに憧れていたという告白。まさかこんなカタチで二人が繋がっていたなんて思いもしなかったけど。でも、琉偉がそこまで追い詰められていたのを知ったのは、少し……いや、かなりショックではあったけど、でもそんな琉偉を救っていたのが慧さんだということが、何よりあたしの胸を熱くさせる。琉偉。立ち直ってくれてありがとう。慧さん。琉偉を救ってくれてありがとう。そして何年か経った今、そんな時間を経て、慧さんが理想とする場所で、琉偉の魅力が慧さんに伝わって、自ら慧さんが選んでくれた。それはある意味、琉偉にとっても、あたしにとっても奇跡みたいなモノで。今、これから、その慧さんの理想とする場所で、琉偉と一緒にあたしがその場所に関われることを心から嬉しく思う。この嬉しさを、この喜びを、慧さんに早く伝えたい。出来ることなら、この琉偉の想いを、ちゃんと慧さんに届けてあげたい。琉偉にとっても、慧さんにとっても、あたしにとっても、多分この偶然のような必然的な出会いと巡り合わせが、きっとこの先意味あるモノになるような気がするから。慧さんの素晴らしさも知っ
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256.推しと社長⑨

そして、その日家に帰り、慧さんが帰ってくるのをずっとソワソワしたまま待ち焦がれる。こんな日に限って、慧さんはまた仕事で遅いらしく、何時に帰ってくるのかもわからない。あたしは今日のことを早く話したくてしょうがないのに。なんか今日はリビングで待っているより、玄関に近い自分の部屋で待ってる方が落ち着く気がして、自分の部屋で少し耳をいつもより澄ましながら慧さんを待っていると。思ってたよりも早く玄関の方で音がする。慧さん帰ってきた!あたしはすぐに部屋を出てすぐに玄関の方まで行き、帰ってきた慧さんを出迎える。「おかえりなさい!」そして玄関に入ってきた早々、慧さんに勢いよく声をかける。「あ、あぁ。ビックリした。ただいま」靴を脱ぎながら、勢いよく飛んできたあたしに少し驚いた反応をする慧さん。「どした? こんな玄関まで出迎えなんて」「慧さんと早く話したくて、帰ってくるのずっと待ってました」「話? なんか急用あったっけ?」あたしに話しながらリビングへと向かう慧さん。「今日琉偉とプロジェクトの初めての打合せの日だったんです」「あぁ、そっか。そうだったな」「はい! そのことを慧さんに伝えたくって」あたしは慧さんのあとをついていきながら伝える。「フッ。その顔じゃ上手くいった感じ?」「はい!」「そっか。よかったな」笑顔で答えたあたしを見て、微笑みながらそう伝えてくれる。「じゃあ、ちょっと待ってて。着替えてくるから」「わかりました」慧さんが部屋に着替えに行ってる間に、あたしはキッチンに行って、ポットのお湯を沸かし、柚子茶を用意する。そのあと、慧さんがリビングに戻ってきてソファーに座るタイミングに慧さんの前にも柚子茶を入れたマグカップを置く。
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257.推しと社長⑩

 「他の男のこと考えて嬉しそうにしてるのとか気に食わないんだけど」「えっ!?」他の男!? って琉偉のこと!?え、でも慧さんめちゃ真面目な顔してる。だけど、そう言いながら見つめる視線に、少し男っぽい雰囲気を感じて、こんな時でさえ、あたしはドキッとしてしまう。「あたし、そんな嬉しそうにしてるの漏れてましたか……?」「不本意だけどな」と、ちょっと不服そうに呟く慧さん。そんな慧さんが可笑しくて、そして嬉しくて、思わずまた顔が緩んでしまう。「フフッ。今考えてたのは慧さんのことですよ?」「……えっ、オレ?」「はい」慧さんだと伝えた瞬間、その本人は少し驚いた反応をしたけど、あたしは微笑み返して返事をする。「嬉しいこと伝えたかったのは、慧さんのことです」「えっ、琉偉くんじゃなくて……?」「はい。琉偉と話してて、やっぱり慧さんはすごいなって思いました」「えっ、どういうこと……?」あたしが思ってたことと違うことを言ったからなのか、不思議そうに聞いてくる。「琉偉。慧さんにずっと憧れてたんだそうです」「えっ、彼がオレを?」「はい」「彼と面識あったかな……。今回が初めてだったような気がするんだけど……」慧さんは、思い出そうと記憶を辿り始める。「多分初めてだと思います。琉偉がちょっと辛い時期に、慧さんがインタビューに出てたのを見て勇気づけられたって言ってました」「あっ、そうなんだ」「そこからずっと慧さんに憧れてたって。この仕事も慧さんとの仕事だからどうしてもやりたかったっていうのも聞いて、ホント嬉しくて」「そっか。彼とはまだちゃんと直接話せる機会がなくて全然話せてないんだ。だからそういうこと全然知らなかった」「あたしも琉偉がそういう時期があったことも、慧さんに憧れてたことも全然知りませんでした」「知らなかったんだ?」
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258.推しと社長⑪

「なら。いつか機会があれば、ゆっくり彼と話もしてみたいな」あたしの顔を見ながら優しく微笑んで、そんなことを言ってくれる慧さん。「はい! ぜひ! 絶対琉偉喜ぶと思います! ホントあたしと同じくらい琉偉さんに憧れてると思うし力になってると思うので、慧さんと直接話せたら絶対嬉しいです!!」慧さんの言葉にあたしは嬉しくなって、隣の慧さんに前のめりになって、興奮して伝える。「あ~その時が楽しみだな~♪ 琉偉が喜んでる笑顔が頭に浮かぶ♪」と、あたしはすでにその時のことを想像しては、ワクワクしてテンションが上がる。「おい」すると、急に隣から慧さんの手が伸びてきて、顔を両手で挟まれ、正面を向いていた顔をグイっと隣の慧さんの方に向けられる。「えっ!?」あたしは顔を挟まれたまま、わけがわからなくてそのまま反応するも。向かされた慧さんの顔を見ると、また不機嫌そうにしている。というか、寂しそう……?「それはわかったから。やっぱオレがいるのに他の男のこと考えて喜んでるのムカつく」「えっ……!?」そう言われた瞬間、心臓が跳ね上がる。すぐ近くであたしの顔に両手で触れながら、切なく見つめてくる慧さんに、あたしは一気にその慧さんの男らしさに気持ちが持っていかれる。その吸い込まれそうな瞳や甘い雰囲気に、ドキドキは収まらずに、更に激しくなっていく。「オレと一緒にいる時は、お前の頭ん中オレでいっぱいにしていたい」そして、またじっと見つめ、更に甘い言葉を呟く。「はい……。もう今いっぱいいっぱいです……」逆にこのドキドキを激しくなる心臓を収める方法を教えてほしいくらいだ。あたしは、慧さんといるといつもこんなにドキドキしっぱなしで、好きが溢れて、慧さんを好きでいられる幸せで常にいっぱいで満たされてるのに。琉偉のことでこんなに喜んでるのも、それだけこんなに大好きな慧さんの素敵なとこを知ってもらえるから。その気持ちを共感し合えるから。いくら琉偉が推しだとしても、慧さんが関わると、あたしはやっぱり慧さんが一番で、慧さんしか見えなくて、琉偉への推しという気持ちと、慧さんの好きの気持ちは全然違うのだと、実感する。それだけ慧さんは、今のあたしにとっては、どこまでも憧れる人で、尊敬する人で、大好きな愛しい人。ただ好きだという気持ちだけじゃなく、恋愛だけでなく、人として、あ
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259.推しと社長⑫

 「なら。もっとオレでいっぱいにしてやる」そう言って優しく微笑んだあと、静かに顔を近づけて、そのまま優しく唇を重ねる。あたしに触れるその両手も、優しく触れる唇も、優しく微笑んでくれる表情も、すべての慧さんで、優しく想いを伝えてくれる。頬に触れてる両手や唇で、少しずつ、あたしを求めるように場所や角度を変え、慧さんのその想いを感じられて、あたしは心でもまた幸せでいっぱいになる。そして、唇が離れたあと、また近くであたしを見つめ。「どう? いっぱいになった?」今度は満足そうに微笑んで囁く。「あたしはいつだって、ずっと慧さんへの想いが溢れまくってます。どこまで好きになっていくんだろうって戸惑ってるくらいです」「フッ。そうなんだ。なら、いいんじゃない? どこまでも好きになれば」そして今度は大人な余裕な雰囲気と表情になる慧さん。「はい。だから、ちゃんと慧さんも受け止めてくださいね?」「もちろん。オレも依那のこと、どんどん好きになって困ってるくらいだし」そう言ってまた微笑んでくれる。「困らないでいいです。もっともっと好きになってください。あたしも慧さんのすべて受け止めます」あたしの慧さんへの想いは、きっと限界なんてない。きっとどこまでもこの気持ちは留まらずに溢れ続ける。だから、もっと慧さんもあたしを好きになってほしい。誰も頭に入らないくらい、慧さんもあたしのことでいっぱいになってほしい。仕事が一番の慧さんなのはわかってるけど、それくらい自分のことも大切な存在にいつか思ってほしい。あたしと同じくらいに慧さんに好きになってほしい。あたしだけしかダメだと思えるくらいになってほしい。「あぁ。もうすげぇ依那のこと好きだよ。依那がずっと応援している存在に、無意味に本気で嫉妬するくらい」そう言いながら微笑む慧さんに、嬉しすぎて好きすぎて、あたしの心臓はまたギュッと締め付けられる。「ホントですか……?  
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260.推しと社長⑬

 「だけど。一応覚えておいて」「えっ?」「オレがそれほどお前のことが好きだってこと」「はい……」慧さんが、そう誤魔化すことなく、まっすぐあたしの目を見つめ、優しく笑って伝えてくれた言葉は、あたしの心にまっすぐ届く。「お前のことだと、ちょっとしたことでも、オレもただ余裕がない男になるってこと」「はい……。それくらいあたしのこと好きになってくれてるってわかって嬉しいです」「前にも言ったけど、ちゃんとお前への気持ちは、少しずつでもちゃんと伝えていこうと思ってるから。お前がオレにくれた想いの分、ちゃんとオレも必ずお前に返すから」「ありがとうございます」慧さんのその言葉と想いが嬉しくて、笑みが自然と溢れる。「嬉しいとかじゃなくて、付き合ってたらそんなの当たり前のことだろ? それだけお前は今のオレには大切な存在だから」「はい。あたしもです。慧さんは誰より特別で、誰より大好きで、誰より大切な人です。どれだけ想いが伝えても伝えきれないくらい」「うん。わかった」そして慧さんも、あたしのその言葉を受け止めてくれるかのような優しい微笑みで返してくれる。今になっては、当たり前のように慧さんが気持ちを返してくれることが嬉しい。ちゃんと好きだと伝えてくれることが嬉しい。お互い不安になった時、想いが溢れた時、安心したい時、どんな時も自分が想ってる気持ちを伝え合える関係になっていきたい。言葉にすればきっとその時気付けることがたくさんあると思うから。きっと慧さんは、あたしがそんないろんな想いを伝えても、どんなこともきっと受け止めてくれる。そして、あたしも慧さんならどんなことでも受け止めたい。お互い支え合える、そんな二人でいたい。「まぁ、とりあえず一度時間作ってホントに琉偉くんとは顔合わせするよ」そう言いながらあたしの頭にポンと手を乗せて微笑む慧さん。「はい」さっきみたいに恋人として甘く見つめ
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