しばらくして着替え終わった慧さんがリビングに戻ってきて、ソファーに座るのを見て。 「そこで食べますか?」 「うん。ここに持ってきてもらってい?」 「はい」 ソファーの前のテーブルにお皿とカップを置いて、あたしも慧さんの隣に座る。 「お疲れ様です」 「ん」 「ありがとうございます。時間取ってくださって」 「いや。オレも今日は依那と話そうと思ってたから」 「ホントですか?」 「うん」 嬉しい。 慧さんも同じようにそんな風に思ってくれてたなんて。 「せっかく熱い紅茶も淹れてもらったし、先に食べようか」 「はい。いただきます」 「ん」 そしてフルーツたっぷりのタルトを口に運ぶと、たくさんの味が同時に広がる。 「ん~美味しい! なんかいっぱいの果実が口に広がって、すごい贅沢な気持ちになります」 「ハハ。贅沢か」 「はい♪」 そして慧さんもそのタルトを口に運び。 「ん。やっぱ美味い」 慧さんも美味しそうな顔をする。 「このタルト。慧さんのお気に入りですか?」 「あぁ~。実はこれ、今度のプロジェクトで出そうと思ってる試作品」 「えっ、そうなんですか!?」 「実はさ。このフルーツタルトがきっかけで立ち上がったプロジェクトなんだよね」 「えっ? このフルーツタルトがですか?」 「うん。まぁこのタルトっていうより、このフルーツがきっかけというかさ」 「それはプロジェクトの時話してた農家の方のフルーツってことですか?」 「そう。たまたま仕事で知り合った人が、果樹農家の人でさ。いろいろな状況が重なって卸先が困難になったって話聞いたんだよね」 「たまたま知り合った方だったんですね」 「あぁ。それと同時期に知り合いのパティシエ見習いの子が、ちょっとした理由で働く場所を失くしてさ。元々その子、オレがプロデュースした店で働いてた子で。その時にまかないで一度フルーツタルトを作ったのを食べさせてもらったことがあったんだ」 「へ~」 「それがすごく美味くてさ。まかないだから、あんまりその時はフルーツを盛大に使えるわけじゃなくて、ごく限られた種類と量で作ったんだけど、それでもそのセンスが絶妙で。オレ的にはそれからを期待してたんだけど、その店辞めることになったって聞いたんだ
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