Home / 恋愛 / おいしい契約恋愛 / Chapter 241 - Chapter 250

All Chapters of おいしい契約恋愛: Chapter 241 - Chapter 250

253 Chapters

241.新たな世界⑧

しばらくして着替え終わった慧さんがリビングに戻ってきて、ソファーに座るのを見て。 「そこで食べますか?」 「うん。ここに持ってきてもらってい?」 「はい」 ソファーの前のテーブルにお皿とカップを置いて、あたしも慧さんの隣に座る。 「お疲れ様です」 「ん」 「ありがとうございます。時間取ってくださって」 「いや。オレも今日は依那と話そうと思ってたから」 「ホントですか?」 「うん」 嬉しい。 慧さんも同じようにそんな風に思ってくれてたなんて。 「せっかく熱い紅茶も淹れてもらったし、先に食べようか」 「はい。いただきます」 「ん」 そしてフルーツたっぷりのタルトを口に運ぶと、たくさんの味が同時に広がる。 「ん~美味しい! なんかいっぱいの果実が口に広がって、すごい贅沢な気持ちになります」 「ハハ。贅沢か」 「はい♪」 そして慧さんもそのタルトを口に運び。 「ん。やっぱ美味い」 慧さんも美味しそうな顔をする。 「このタルト。慧さんのお気に入りですか?」 「あぁ~。実はこれ、今度のプロジェクトで出そうと思ってる試作品」 「えっ、そうなんですか!?」 「実はさ。このフルーツタルトがきっかけで立ち上がったプロジェクトなんだよね」 「えっ? このフルーツタルトがですか?」 「うん。まぁこのタルトっていうより、このフルーツがきっかけというかさ」 「それはプロジェクトの時話してた農家の方のフルーツってことですか?」 「そう。たまたま仕事で知り合った人が、果樹農家の人でさ。いろいろな状況が重なって卸先が困難になったって話聞いたんだよね」 「たまたま知り合った方だったんですね」 「あぁ。それと同時期に知り合いのパティシエ見習いの子が、ちょっとした理由で働く場所を失くしてさ。元々その子、オレがプロデュースした店で働いてた子で。その時にまかないで一度フルーツタルトを作ったのを食べさせてもらったことがあったんだ」 「へ~」 「それがすごく美味くてさ。まかないだから、あんまりその時はフルーツを盛大に使えるわけじゃなくて、ごく限られた種類と量で作ったんだけど、それでもそのセンスが絶妙で。オレ的にはそれからを期待してたんだけど、その店辞めることになったって聞いたんだ
Read more

242.新たな世界⑨

「そしたらさ、同じようにどこかで困ってたり、才能持て余してる人たち、これからの可能性が広がるすべての人や状況を、プロジェクトとして企画すれば、その人たちも笑顔に出来るし、それを求めてくれる人もたくさんいるんじゃないかなって」「それでこのプロジェクト……」「うん。でもオレ的にはそのパティシエの子みたいに、自分の力でまだどうにも出来ない状況の人たちに、手を貸したかった。オレも、ここまでになれるまでに、まだ経験も金もない状態の時、周りの人たちの協力や優しさでここまで支えられて頑張れてきたみたいなとこがあるからさ。恩返しってわけじゃないけど、今の自分ならそれが力になれること出来るから、どうしてもこれを実現したかった」「そんな想いが込められたプロジェクトだったんですね……」「結局はさ、助け合いなんだよね。何かのきっかけで知り合ったことで、お互い協力し合って力になって、また新しいモノが生まれる。だから、まだ何にも染まってないどこまでも可能性や希望を持っている人たちがこのプロジェクトには相応しいし、それを引き出せるきっかけとしての場所をオレが作りたいって思った」「素敵です。そんな想いを持ってこのプロジェクトが立ち上げられたなんて……」「このプロジェクトはさ、オレ的には人と人の繋がりももう一つのテーマだと思ってて。いろんな世界でこれから頑張ろうとしている人たちが、力を合わせればどんなモノが生まれるのか。オレがそれを見たいんだよね」慧さん発信のプロジェクトだから、きっと何か考えがあるのだろうとは思ってたけど、だけど、そんなたくさんの想いが込められたプロジェクトなんて思わなかった。たくさんのテーマが一つになった意味は、こういうことだったんだ。慧さんは、いつだってどこまでも可能性を広げていく人。慧さんが関わったプロデュースは、いつも誰かのことを想って作られている。「そんな素敵なプロジェクトに、あたしも参加出来るなんて嬉しいです……」「うん。正直、依那がこれに関わってくれること、オレも嬉しいって思ってる」「ホントですか?」「うん。きっと依那もこのプロジェクトに相応しい人間の一人だって思ってるから」「それは、社長としてですか?」「もちろん。このプロジェクトに関しては、依那が彼女だとかそういう贔屓は一切ないから。可能性を感じなければ例え彼女でも関わらせるつもり
Read more

243.新たな世界⑩

「あっ、じゃあ、このタルトはその方が作ったタルトってことなんですね」「あっ、うん。これがきっかけで立ち上げたっていうのもあるからさ。基本プロデュース的なことはメンバーの皆に任すけど、このタルトは一番のメインにしようと思ってる」「わ~そうなんですね」「このタルトはさ、どうしてもたくさんの人に届けたいんだ。パティシエの子が作ったタルトの味も間違いないし、このフルーツもホントに価値ある素晴らしいモノだから」「はい。とても美味しいです」「だからそのタルト作りだけは、オレが最後まで関わらせてもらおうと思って」「そういうことだったんですね」きっとそこは絶対慧さんがこだわりたいとこで。このきっかけになった大事なタルトは、きっと慧さんが最初から最後までこだわって届けたいのだと伝わる。そういう想いも、たくさんの人に届けたいな。普通は知ることの出来ないそういう部分を知れば、また尚そのタルトが貴重なモノに思える。ただのタルトじゃなく、それだけの想いが込められてるタルトだからこそ、ちゃんとその価値を届けたいし感じてもらいたい。「それで今日その試作品をいくつか作ってて、その中でもオレが一番気に入ってるタルトをもらってきた」「やっぱりこれ慧さんのお気に入りなんですね」「うん。今日は依那がようやく自分を信じて新しいスタートを歩み始めるきっかけになった日だから」「慧さん……」「だから、ちょっとしたお祝いじゃないけど、ちゃんと褒めてやろうと思ってさ」そうだったんだ……。ただお土産に持って帰ってきてくれたんじゃなくて、あたしのため……?慧さんがそうやって言ってくれることが嬉しい。ちゃんとあたしを見ててくれてたのが嬉しい。あたしのいないとこでも、慧さんはどれほどあたしのことを考えてくれてるのだろう。まだなんのカタチにもなってもいないのに、多分きっと慧さんはあたしが自分で納得して自分で新たな一歩を踏み出したこと、自分でした選択のその意味を、ちゃんとわかってくれている。それをあたしだけのことじゃなく、ちゃんと言葉にして、ちゃんとそれをカタチあるモノとして、存在させてくれる。自分だけの感情が、慧さんがこうやってカタチにして想いを伝えてくれることで、自分の中で更に頑張る力になる。ちゃんと慧さんの元でこれから頑張っていくのだと、気持ちを高めてくれる。「あ~もう
Read more

244.新たな世界⑪

「そう。元々このプロジェクトはかなり前から計画されてたことで、ここまでのカタチにまで持っていくまで案外時間かかってたんだよね」「本体のプロジェクトじゃなくてですか?」「うん。あっちは、それこそオレだけじゃなくいろんな人が関わる大きなプロジェクトだし、もちろん本体側はそれ以上に時間はかかってるんだけど、このSEIKAプロジェクトは、それを成功させるためにも、オレがこだわりたい土台っていうか」「なるほど……」「ある意味、あの時、依那と出会って、依那を通して彼らのことを知れてよかったって思ってる」「それは、どうしてですか?」「依那が彼らをファンとして応援してることで、彼ら側じゃなくて、ファン側の気持ちを知れたっていうのが大きいかな」「それって、あたしがEveRを応援してることで、何かを感じ取ったってことですよね……?」「そう。彼らの活動が、こんなにも一人の人間やたくさんの人たちの心を動かしてるんだなって」「慧さん……」「最初に出会った頃さ、依那話してくれただろ。自分にとって推しの存在がどれだけ自分の支えになって力になって生きる希望になっているかって」「あ、はい」「それがどういうことなのかわかった気がした。依那みたいな人がきっとたくさんいて、彼らの存在が大きな力になってるんだよな」 きっと普通の人なら、そんなとこまで気付いてくれないようなこと。だけど、琉偉たちの存在がどれだけ自分たちファンにとって大きな存在かを、慧さんはちゃんとわかってくれていた。あたしにとっては、ある意味自分の一部みたいなモノで、それを全部理解してもらえるとは思わない。それが彼氏なら尚更。だけど、きっと慧さんは、社長として、人の気持ちを考える人だから、そんなファン側の気持ちまで知ろうとしてくれて理解しようとしてくれてる。そんな言葉を慧さんから聞けて、あたしはまたそんな風に思ってくれる慧さんへの想いがまた強くなる。 最初の頃、琉偉を応援している自分を受け入れてくれただけでも嬉しくて。自分の好きなモノならその気持ちを大切にすればいいと伝えてくれた。それだけでも嬉しかったのに、今はちゃんと琉偉をEveRを知って、EveRと共に受け入れてくれてるのが、あたしには有難くて幸せで。そんなあたしの当たり前で、だけど誇れるこのファンとしての想いが、今こうやって慧さんが何より大
Read more

245.新たな世界⑫

「嬉しいです。慧さんにそういう気持ち、ちゃんとわかってもらえて」「うん。依那から聞くまで、正直そういうの全然知らなかったけどな」「当然です。そんな推しとかへの想いなんて、普通の人は理解出来ないし知らないことですから」「うん。だけど、間違いなく依那の人生には、推しの存在が必要だったんだなってよくわかった」「フフ。なんか慧さんの口から推しって言葉聞けるのがなんか変な感じです」「依那が推し推しっていうから」「ですね(笑)」あたしがそう指摘すると、少し照れたように言葉を返す慧さんが少し可愛く感じる。だけど、ちゃんとあたしの立場に立って、そうやって話してくれることが嬉しい。「だけど、オレも、依那のおかげで彼らに興味を持ち始めた」「えっ!? 慧さんがですか!?」「いや、お前が思ってるような興味じゃないぞ? プロジェクトのアンバサダー候補としてな」「あっ、そっか。そうですよね」「正直アンバサダーの候補を最初に決める時、話題になっている人物で、それなりに有名ならいいかと思ってたんだけど、そうじゃないなって。まずは、うちのプロジェクトに本当ならどういう人物が適任なのか、そしてアンバサダー候補の人たちはどういう人なのかを改めてちゃんと知る必要があると思った」「え。じゃあ、そこからまたそこをいろいろ知っていたってことですか?」「あぁ。表面だけの見えてる部分だけじゃなく、見えてない部分はどういう人物で、どういう人たちにどういう存在を与えているのか。そして、それはうちにどう影響するのか」「そんなとこまで……」「結局は、一番伝えたい部分を伝えてもらう存在になるってことだしな。本来一番ちゃんと見極める必要があると思った」「なるほど……」「そしたら、ようやくしっくり来たんだ」「違和感がなくなったってことですか?」「そう。その中で一番うちのコンセプトにあって、そこからいろんな可能性や期待を感じて広がっていくと思ったのが、依那が応援してるEveRだった」「え……。じゃあ、慧さんがいろんなことを知った上で、いろんな人の中から、彼らがいいって思ってくれたってことですよね……?」「そうだな。依那は見る目あると思ったよ」「ホントですか……!?」嬉しい。慧さんのそういう想いがある上で、EveRを知ってくれて、それで彼らを適任だと思ってくれた。あぁ、こんなこ
Read more

246.新たな世界⑬

「うん。詳しく調べて行ったら、彼らは自分たちでプロデュースしてることが多いんだな」「そうなんです!」「特に依那の応援してる琉偉くんだっけ。彼、センスあると思うよ」あたしの目を見つめて、優しく笑いながらそんなことを言ってくれる慧さん。「え……! どうしよう!」慧さんに……、尊敬する社長に、琉偉の魅力伝わってた……!いきなりそんなことを言ってもらえて、あたしは思わず嬉しすぎてそんな反応になってしまう。「え、何!?」すると、あたしがそんな反応をしたからか、慧さんもさすがに驚いた反応をする。「慧さんに琉偉のこと褒めてもらえるなんて……! もう嬉しすぎて言葉にならないです……!」「いやいや。彼も、彼のいる場所や世界でしっかりその力を活かせてるし、ちゃんとカタチにしているんだから、立場的にはオレと別に変わらないよ」慧さんは謙遜してそんな風に言うけど、ホントは全然違うことくらいあたしでさえわかる。年齢も経験も実力も、明らかに慧さんが今まで手掛けてきたモノや数に比べものにならなくて。レベルも明らかに違いすぎる。だけど、きっと慧さんはこういう人なんだよな。年齢も立場も関係なく、ちゃんと一人の人間として見ようとする人だ。その人にとってたいしたことない、そこまでじゃないと思っていることでも、慧さんがいいと認めれば、その人に対してリスペクトをし、ちゃんと伝えようとしてくれる。きっと今の琉偉に対しても、実際彼の才能を少しは認めてるのだと思うし、そしてあたしが好きでいるからこその言葉を選んでくれているのだろう。そんな優しさと大人な対応と男らしさと……、もう数えきれないくらいの慧さんへの想いが溢れて来て、キュンとする。こういうさり気ない優しさが、やっぱりとても尊敬出来て大好きだって思う。きっと慧さんは特にそんな意識もしてないだろうし、きっと本当にそう思ってくれているのだろうけれど。だけど、慧さんの立場からそういう言葉を言ったとしても、決して選ぶってるわけでもなく、ホントに慧さんなりに琉偉を認めてリスペクトしてくれてるのだと思う。そう思える慧さんだから、仕事でも恋愛でも、その都度見せてくれる・感じさせてくれる優しさや魅力に、またあたしはどんどんハマっていく。「慧さん。ありがとうございます」「いや、オレは思ってること言ってるだけだよ」そしてまた大人
Read more

247.新たな世界⑭

「やっぱりそうですよね?」「ん?」「あたしにそのチャンスをちゃんと自分の力で手に出来るようにしてくれたってことですよね?」「まぁ。そういえばそうなるかな。だけど、どうするかは依那の気持ち次第だし、オレがとやかく言うことじゃなかったから。時にお前はよくわかんないとこで自信失くしたりすることあるからな」「あっ……」「だけど、それは自分の中での問題だし、自分で向き合って自分で受け入れるしかないことだから。あとはどういうカタチからでも、自分に自信を持つきっかけが必要だったし」「はい」「だからあえてオレはお前に彼らのことも話さなかった。お前がきっかけで彼らのことをちゃんと知れたっていうのはあるけど、だけど、これは仕事の一環だし、お前もそういう相手が仕事相手となれば、もしかしたら嫌だっていう感情もあるのかもしれないなって思ったし。仕事相手としてお前自身に判断してもらおうと思った」「はい」「お前が彼らを好きだから彼らに決めたわけでもないからな。ただ、たまたま仕事相手が彼らだったというだけ」「ですね。慧さんはきっとそう思ってるんだろうなって思ってました。だからこそ、あたしは仕事相手として一緒に仕事したい・自分が担当したいって思いました。彼らを一番理解出来て輝かせられるのはあたしですし。彼らもこのプロジェクトに関わることすべて、絶対価値があって素晴らしいモノなのだとたくさんの人に伝えるので任せてください!」「頼もしいな。うん。お前ならきっとそういうんだろうなって思ってた」「やっぱり慧さんはあたしのことよくわかってますね」「あぁ。お前がお前自身気付いてない良さや魅力に気付いてやるのも引き出してやるのも、オレの役目だと思ってる」「慧さん……」「だからお前も安心して自分もオレも信じろ。オレが必ずお前を見ててやるから」「はい……」そんな何よりも心強い嬉しい言葉で、慧さんはまたあたしにやる気と自信を持たせてくれる。やっぱり慧さんは、すごいな。結局ちゃんとあたしのことも考えてくれてる。きっと慧さんは、誰よりあたしを信じてくれてるから。社長として、恋人として。だから、社長としても恋人としても、一番近くで見守ってくれる存在でいてくれるというのは、何よりもあたしの頑張る力になる。だから、あたしはあたしなりに頑張ろう。慧さんの、社長の期待を裏切らないよう
Read more

248.推しと社長①

そして、いよいよプロジェクトで琉偉と対面する日がやってきた。この日が来るまで、あたしはまずあたしの中でどれだけ琉偉がこのプロジェクトで活躍出来るか、どんな役割りが理想かなど、あたしが把握出来る情報と知識で、事前に出来る限りの準備をした。それと同時に自分の中で決めた一つのこと。<琉偉は推しでも、公私混同はしないこと>と、決めたものの、自分がファンだからこそ、多分琉偉のことを理解出来てる部分もあって。だから、この仕事をしていく以上、ファンではないと言い切れることは難しいとも、思ってる……。だけど、琉偉自身も自分のファンと、仕事をするのは気が引けるだろうし、仕事もやりにくいだろうから、出来るだけバレないように──。どうしても仕方ない時は、それを伝えなければいけないかもしれないけど、とりあえずしばらく落ち着くまでは、出来るだけボロ出さないようにしなきゃそこだけは、ちょっとあたし的に頑張らないといけないとこだな。推しに気は遣わせたくないし、出来る限り気持ちよく嫌な気持ちにならずに仕事してほしい。そのためには、絶対あたしがちゃんとそこを意識しないと。と、言いながらさすがに琉偉と打合せとなると、二人きりだし、めちゃくちゃ心臓バクバクだけど。だって推しとこれから会議室で二人きりになるんだよ?そんな世界線ある?いや、まぁ今まで琉偉を応援しに行ってた時は、握手会だったりで会話はしたことあるけどさ。チェキや写真だって二人で撮ったことあるけどさ。それとはわけが違うでしょ。今までは、琉偉を好きだと全面に出しながらウキウキワクワク、時にはニヤニヤして会いに行って握手なり撮影なりしてたけど。今回は絶対そういう顔は見せちゃいけない。だからといって真顔だったりクールなままとかで琉偉に接するのも絶対嫌だし。だけど、ファンとしての顔は封印しなきゃいけないとか、なかなかのハードル。だけど、琉偉のため・あたしのため・慧さんのため、このプロジェクトをなんとしてでも成功させなきゃいけないから頑張るしかない!とりあえず、あたしは自分の気持ちを奮い立たせて、琉偉と約束している時間が近づく寸前まで深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。あぁ、この時間、めちゃ心臓に悪い……。そう思っていると。会議室のドアが開いて──。「失礼します」そう声が聞こえて顔を出した人物。う
Read more

249.推しと社長②

「では、そちらお座りください。こちらこのプロジェクトで一緒に進めて行く内容になります。今日はまずは、このプロジェクトで琉偉さんとどのようなことを一緒にさせていただくかをまずは説明させていただいて、それについてもしお時間あるようでしたら少し細かい打合せなども出来ればと思っております」「はい。わかりました」プロジェクトの担当者として気を引き締め、琉偉に座ってもらうように促す。そして向かい合わせに自分も座り、早速資料に基づいて説明を始める。それと同時に不安モードの自分は一時封印させる。それから時間が経った今。この会議室という密室で、いくら推しと二人でいるといっても、なんか自然と琉偉とは落ち着いて仕事相手として話している自分がいる。それは多分自分も琉偉にファンとして接してないからだと思う。なんか今は自然と気持ち的に仕事相手だと割り切れる。当然琉偉もあたしに気付くことはないから仕事相手として接してくれる。なんかそれが逆に心地いいというか、楽というか。琉偉も無理して話してくれるって感じじゃなく、仕事の話を楽しんでいるように見えるし。だから仕事相手だと思って接すれば、今の琉偉とあたしで作っていく新たな関係が生まれるようなもそんな気もして。そっか。結局は自分の気持ち次第なんだな。琉偉もきっとそうだよな。琉偉もある意味仕事でステージに立って、ファンの前ではファンが望む姿でいてくれる。そして、あたしたちファンもそれを見てキャーキャー言って幸せになる。ある意味それはどちらも幸せな世界の中で、そういう自分たちを演じてるというわけじゃないけど、そこでしか見せない顔があったり、そこだからこそ楽しめる幸せになれる自分になれる。そこにいるあたしと琉偉は、そんな推しとファンとして成り立っているけど、この場所では、同じ立場の仕事相手。ここにいてお互い無理に感情が昂ることもない。それが今この状態で自分が落ち着いてプロジェクトの説明を出来てることがとても不思議に感じる。きっと昔の自分なら、こんな状態なら興奮して緊張してドキドキして説明どころじゃなかった。だけど、今こうやって冷静でいられるのは、きっと慧さんの影響がとても大きいのだと思う。琉偉がすべてだったあたしは、どんな時も琉偉が中心だった。だけど、慧さんに出会って、慧さんを好きになってから、いつの間にかそ
Read more

250.推しと社長③

だけど、そんな今の自分が案外嬉しくて。今の自分になる前までは、ここまでの自分になれると思ってなかったから。仕事で夢はあったけれど、それはこの会社でいつか叶えたい夢。どれだけ遠回りしてもいいからいつか叶えたいと思っていたこと。そのために、その目標に向けて勉強して頑張ってはいたけど、自分が主体になって仕事を進めて行くとか、そんなこと出来る自分になるなんて思ってもいなかったから。だけど、慧さんに出会えたことで、やっぱりそんな願望ややる気が自分にもあったんだと改めて気づいた。琉偉だけがすべての自分のままじゃ、いつか壊れてしまっていたかもしれない。推しという絶対的に幸せにしてもらえる存在は、ある意味依存してしまうような存在でもあったから。だけど、慧さんと出会ったことで、慧さんを好きな気持ちや、自分の仕事への意欲が、自分が自分でいられることを実感出来て、今までとまた違う幸せを感じることが出来る。きっとそれは慧さんが、ちゃんとあたしを見てくれていて、あたしという存在を意味あるモノにしてくれているから。慧さんはそうやってあたしがあたしでいることを好きにさせてくれる。だから、きっと今琉偉と仕事の話出来ていることが何より嬉しく思う。ファンとして琉偉を応援する時はもちろん何よりも幸せな時間だけど、今自分の仕事への熱を琉偉と共有出来てることが、琉偉をもっと輝かせられる手伝いが出来ると思うと、今までとは全然違うまた幸せを実感出来る。琉偉とこんな時間が過ごせるなんてな。琉偉をこんな風に思えるなんてな。やっぱ慧さんはすごいや。あたしは琉偉と打合せをしながら、仕事相手として琉偉と接することが出来ること、そして慧さんを好きになった嬉しさを、心の中で、こっそりと噛み締めていた。「では。今日はこれくらいにしましょうか。瑠偉さんお忙しいのに、お時間取っていただきありがとうございました」そして予定していた時間に近づいて、打合せのキリもつき、琉偉に声をかける。「いえ。しばらく自分のソロの時間は、このプロジェクトに回せるように調整してあるんで大丈夫です」「え? ソロの時間をこれにですか?」「はい。実はこのプロジェクトのお話いただいた時、自分たちに決まる前から、オレどうしてもこの仕事やりたくて、どうにか決まってくれるように願ってたんです」「え!? そこまでですか!?」
Read more
PREV
1
...
212223242526
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status