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All Chapters of おいしい契約恋愛: Chapter 261 - Chapter 270

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261.注目と噂①

プロジェクトが少しずつ順調に進み始めた数日後。少し社内と世間が騒がしくなった。つい最近プロジェクトの本体の情報が世間に解禁された。社長発案の新しく展開しようとする事業に対しての注目。そしてそのプロジェクトのデザインを受け持つ世界的有名なインテリアデザイナー藤代瑞希とのコラボ。それだけの材料だけで、発表早々、すぐにこのプロジェクトは話題になり注目される。前からそれなりに慧さんはメディアにも顔出しはしていたけれど、このプロジェクトへの意気込みが今まで以上に強くて、社長として更にいろんなカタチで慧さんが直接話題にし世間に伝えるということが増えていった。それは必然的にプロジェクトが注目されるということでもあり、それと同時に慧さん自身も注目されるということ。そこから慧さんのビジュアルのカッコよさや、仕事に対する姿勢が更に魅力的だと話題になり、今では少し、時の人状態になりつつある。それは仕事としては嬉しいことではあるのだけど、恋人としての自分としては、あたしの知ってる慧さんが世間に見つかってしまったという寂しさも同時に芽生える。ついこの前、慧さんの素敵なところを、たくさんの人に知ってほしいと思っていたはずなのに、そんな感情になってしまうあたしは、なんて心が狭いのだろう。慧さんと一緒にいる時は少しずつ自信を持てるようになってきて、好きでいてもらえてる幸せも感じられているのに。だから正直、今以上何かをもっと望むことは、きっと贅沢なのだとわかってるのに。仕事で尊敬して憧れている社長としての慧さんと、恋人としての慧さんを、一人占めすることはやっぱり不可能で。恋人としての慧さんは、かろうじてまだあたしのモノでいてくれるけど、正直社長としての慧さんは、自分のモノだけじゃなく、すべての人のモノ。慧さんがどんどん注目されていくことで、今まで気付かなかったその現実にようやく気付き、そしてやっぱり慧さんはそれほど影響力があって、すごい人なんだと改めて実感する。
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262.注目と噂②

「やっぱ、うちの社長すごいよね~」「ビジュアルも仕事っぷりもカッコよすぎでしょ~」社内では、当然そんな風に慧さんの魅力に更に騒ぎ出す人も増えてくる。正直前までの慧さんは、カッコよくて狙ってる人も多かったのは確かだけど、それまでは社長って感じで、少し近づきにくい部分も多くて、ただ憧れてる人が多かった。クールでデキる感じだったのが、今回のプロジェクトで自分のやりたいことをやっている慧さんは、それこそ自然に楽しんでる感じで笑顔なんかも増えていって、更に輝いていて。あたしだけが知ってる慧さんが少しずつ世間に知られていってしまってる現状。そのギャップが更に魅力になって親近感が沸いたという女性も、どんどん増えて、今ではあたしがどうにも出来ない状況になってしまっている。慧さんの素敵なとこを知ってもらえるのは嬉しい。だけど、それでたくさんの女性に想いを寄せられるのは辛い。慧さんが例え今は相手にしなくて、あたしを好きでいてくれたとしても、その女性たちが慧さんを想っているという事実だけで、あたしは切なくなる。ホントは優しい慧さんだから、あたしの時みたいに、情が移ってしまったりする女性が現れたら、もしかしたらその人を好きになってしまうかもしれない。今は条件的に、あたしが慧さんの食事や生活を満たしているだけだから、同じ条件で、あたしより魅力的な人がもし現れてしまったら……。そんな自分だけがもどかしく感じる感情を、慧さんにも当然伝えることなんか出来なくて、初めて感じるこんな感情を自分でどうすればいいかもわからない。なのに、そんな時に、追い打ちをかけるように、流れた噂。藤代瑞希とのインタビューや会見で、常に二人でいることが増え、注目されることになったことで、仕事も完璧で、それでいてスタイリッシュな美男美女の二人があまりにも絵になりすぎるほどお似合いだと、そっちの面もどんどん話題になってしまっている。確かにあたしが見てもそう思ってしまう。そして二人はとてもよく似ている。インタビューで話している二人の会話。そこですべて感じてしまうのだ。仕事に対する情熱や意欲、考え方、モチベーション、目標とすること、アイデアの方向性。どのインタビューでも二人が気が合うということを感じすぎてしまうほど。それがどんどん知られていくことで、慧さんを狙っている人も少しずつ尻込みし
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263.注目と噂③

それから残業で遅くまで会社に残っていたある日。会社の廊下である人に偶然出会う。「あっ。逢沢さん。久しぶりだね」「本村さん。お久しぶりです」お互い一人で歩いてる状況で、久々だったからか本村さんから声をかけてきてくれた。「元気?」「えっ、あっ、はい。元気です」本村さんがいつものように気軽に尋ねてきた問いかけに、あたしも特に深く考えずに何気なく普通に答える。「残業?」「あっ、はい。ちょっとプロジェクトのことで今日中にまとめておきたいことがあって」「そう。頑張ってるみたいだね、プロジェクト」「はい。これは自分でやりたかったことなので、いろいろやり甲斐あります」「そう。それはいいことだね」「はい。じゃあ、失礼します」あたしは当たり障りない話をしてその場を去ろうとする。すると。「逢沢さん」すれ違ったタイミングで本村さんに再度声をかけられ後ろを振り向く。「ちょっと休憩しない?」すると笑顔で本村さんがそう声をかけてきた。「えっと、あたしこのフロア入って大丈夫なんですかね?」そのフロアは社長室があるフロアで、普段では普通の平社員が立ち入れない場所。本村さんに一緒についてきたら、エレベーターが止まって降りたのはそのフロア。足を進める前に思わず本村さんに確認する。「あぁ。うん。今日は大丈夫だよ。慧も今接待に出てて会社には戻ってこないし、秘書の皆も今日はもう全員帰ってる」「あっ、そうなんですね」「だから、このフロアの休憩室でちょっとコーヒーでも飲まない?」「あっ、はい」本村さんにそう言われ、社長や秘書の人など役員関係しか使えないそのフロアの休憩室へ足を踏み入れる。「あれ? 休憩室、あたしたちが使う休憩室とあんまり変わらないんですね」「何? もしかして、このフロアにあるからって特別すごいとこだとでも思った?」「はい。そうかと思ってました」本村さんについていった休憩室は、さほど自分たちが使う休憩室と変わりがなかった。それが意外に感じて、つい口にした言葉を、さすがの本村さんはその真意を見抜く。「これはね。慧の意向なんだ。基本あいつは自分が社長でも、社長だからどうとかそういう差をつけたくないヤツだからね」本村さんはコーヒーマシンのところに向かいながら慧さんのことを語る。「逢沢さんは何飲む? 下の休憩室と同じマシンだから、何あ
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264.注目と噂④

「社員食堂のメニューもさ、すごい豊富でしょ?」「あっ、はい。常にオシャレなメニュー用意されてるし、期間ごとに会社がプロデュースしたお店の料理を食堂で出してくれるとか嬉しすぎます」そう、うちの会社はとにかく食堂のメニューも豊富でオシャレ。その中でも期間ごとに変わるスペシャルメニューというのがあって。会社でプロデュースした飲食店が、うちの食堂でその店で出してるメニューを提供してくれるというもの。それこそ人気でなかなかお店で予約が取れないようなところも、なぜかうちの食堂のランチで運良く食べれたりする。食堂でしか食べれないメニューやテイクアウト出来るメニューまで、いろんな人が望むカタチを考えて提供されている。それが嬉しくて、あたしも全制覇したいところなのに、制覇出来ないほど盛りだくさんのメニューを用意してくれているくらいで。そして、それもこの会社の自慢出来る理由の一つ。「それはさ、慧が最初にこだわった部分なんだよね」「えっ? 社長が?」「そう。うちが自信持ってプロデュースした店の料理は、うちの食堂のランチで提供してもらうっていうのを、まずは契約の条件に入れてる」「えっ? そうなんですか?」「あいつ的にはさ、その店をプロデュースをするっていうことは、いろんなうちの人間が関わってるってことでしょ。その人たちに、ちゃんと仕事が終われば還元したいって、それはあいつのこだわり」「還元ですか……?」「そう。普通ならプロデュースして終わりなんだけどさ。あいつは違うんだよね。プロデュースし終わったあとも、全部その先まで繋げていこうとするんだよ。だからどの店も自分が足運んで料理チェックして、店の相談に乗ったりする」「確かに、あたしが社長と出会ったのも、プロデュースしたお店が最初で。それがきっかけでした」「そっか。なら逢沢さんはそういう慧の部分知ってるってことだね」「はい」「それで慧的には、プロデュースの仕事を頑張ってくれた社員たちにも、ちゃんとその店の料理を味わってほしいんだって。自分だけそれを楽しむのは違うってさ」「自分だけ楽しむって……。それは社長のお仕事でもあるのに」「あいつの中では、仕事でもあり趣味みたいな、楽しんでる部分もあるからね」「そっか」「それに、そうすることで関わった社員はさ、自分がこんなにも美味しい店のプロデュースに関わった
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265.注目と噂⑤

「すごいですね。慧さん……」あたしは思わず無意識に呟く。「あっ、すいません! 慧さんじゃなくて社長……です」そしてすぐに訂正し直す。「ハハ。いいよ。ここは他に誰もいないんだし、いつもの呼び方してくれたら」「ありがとうございます」すると、本村さんは笑って受け入れてくれる。「でもすごいでしょ。ホントあいつ」「はい。そんな深い想いが込められている食堂なんて知らなかったです。だけど、今日本村さんから聞けてよかったです」「うん。慧は、そういうことしたがるくせに、必要以上にそれを見せたがらないし知られたくもないようなヤツなんだよ」「慧さんらしいですね」「そう。それで損してることもいろいろあるとは思うけどね。でも、あいつは損得勘定で動くようなヤツじゃないからさ。人のために何かしたいってヤツだから、誰か喜ぶことが出来るなら、誰かに寄り添うことが出来るなら、あいつはそれで満足なんだよ」本村さんから言われる慧さんの話を一つ一つ聞くたび、あたしの胸はキューッとなる。どこまで優しい人で、どこまで温かい人で、どこまで魅力的な人なんだろうと。あたしの胸はその話を聞くたびに切なくなって、好きの気持ちが重なる。「ホント素敵な人ですよね……。本来なら、絶対手の届かない人なんだろうな……」だけど、慧さんのその素敵なところを実感するたび、あたしにはホントなら手の届かないほどすごい人で、慧さんの恋人でいれている自分が不思議で仕方なくなる。そしてそんな慧さんの恋人でいれることが何より幸せに感じるのと同時に、あたしなんかが慧さんの恋人でいていいんだろうかと不安も感じてしまう。それほど慧さんはすごい人で、あたしにとって奇跡みたいな存在。
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266.注目と噂⑥

「何? もしかして自信失くしたりしてる?」「えっ?」すると、あたしの様子から察したのか、本村さんがそんなことを聞いてくる。そんなことないですよ、と否定したいけど。今の場分には図星すぎて、そんな気力も沸いてこない。いつだって本村さんは鋭い。敏感な心の動きを、なぜだかいつも察してくれる。だけど、核心ついたそのことも、なぜだか本村さんには打ち明けたくなるような。そんな不思議な魅力を、この人も持っている。「慧と瑞希の噂。気にしてたりするんじゃない?」そして、本村さんはフワッとズバッと言い当てる。「あっ……。えっと……」だけどあたしはどこまで話していいかわからず一瞬戸惑う。「いいよ。オレにはそういうことは気遣わなくて。逢沢さんが息苦しくならないように、オレが話聞く役目だからね。何かあったらちゃんと相談にのってほしいって、慧に言われてるから」「慧さんに……?」「そう。あいつは社長の立場だし、仕事も忙しいから、家もあんま帰れないことも多いし、周りを気にかける余裕がなかったりする。だから、基本今までもわざわざ否定することもしないし誤解されてもそのままにしてしまってたりした」「はい……」「だけど、君のことは、慧に頼まれてるんだ」「えっ……?」「慧がもしフォロー出来てないことがあったり、気付かないことがあれば、君のことだけは、ちゃんと気にかけてやってほしいって」「慧さんが、本村さんに……」そんなことを頼んでくれていたなんて……。さっきとは違う切なさで、また胸が詰まる。「今までなら、特定の誰かにそんな気にかけるようなこと絶対なかったんだけどね」「でも、会社の人には……」「あぁ。それは会社の人間としてでしょ。不特定多数だよ。だけど、君は違うでしょ? 慧の恋人で、慧の大切な人だ。その人を親友のオレが気にかけるのも当然のことだよ」「本村さん……」あぁ、どうしよう。嬉しすぎて胸が苦しい。慧さんの想いも、本村さんの想いも……。「慧も君も、時に思い込んだら周りも自分も見えなくなる時がある。だから、冷静に判断出来て状況も理解しているオレみたいな存在が、君たち二人にとっては必要なんだと思ってるんだけど。違うかな?」「違わないです。本村さんの存在、ホントに有難いです……」そんな言葉だけでは収まらないほど。誰より慧さんのことを知っている本村
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267.注目と噂⑦

「さっ。何が聞きたい? オレが知ってることなら、なんでも答えるよ」本村さんはそう言って、あたしが話しやすいようにしてくれる。「えっと、聞きたい、というか。あたしが藤代さんと慧さんが噂になってることで、勝手に自信失くしちゃったというか。ただそれだけなんですけど……」別にこれという理由があるわけじゃない。ただあたしが勝手に自信を失くしてるだけ。別に何かされたわけでもない。あたしがただ気にしすぎているだけ。「そっか。そういう感じか」「はい……」「えっと、それは何に不安になってるの?」「何に……。何にでしょう……」そう具体的に尋ねられると、どう答えていいかわからなくなってしまう。「まぁ、なんとなく予想はつくけど」「別に慧さんも藤代さんも何かしたわけじゃなくて……。ただ二人がお似合いだと噂されていることが、自分でも納得出来ちゃって……。ホントにあたしが恋人でいいのかなとか思ったりして……」結局はあたしが小さい人間なだけ。もっと自分に自信が持てる人間なら、きっとそんなことも気にせずいられるはずなのに。「それってさぁ。今に始まったことじゃないでしょ」「え?」「だって、慧と付き合い始めた時、それわかってたよね?  慧は社長で、君はただの社員。そんで瑞希は元カノで、その時はお互い特別な存在だったって」「はい……」本村さんにハッキリそう言われると胸がズキッとする。そうだよね。特別な存在同士だったんだよね……。「だけど、それはどうやったって変えられないことだし。ずっと向き合わなきゃいけないこと」「ですよね……」「だけど、それ気にしてるのは君だけじゃない?」「えっ?」「慧はそんなこと何にも気にしてないよ」「それ、は……」本村さんがサラッとそんな風に言って、少し戸惑う。「今の慧にとっては、瑞希は仕事相手以外何者でもないし、君が君だから慧は君のことを好きなんじゃないのかな?」「あたしがあたしだからですか……?」「そう。それこそ同等に夢を追いかけて仕事したいなら瑞希で十分。瑞希にはそれを望んでるし、瑞希はそういう意味で慧に応えてる。だけど、君は慧にとっては、同等に仕事をしたいなんて望んでないだろ?」「それはそうです……」「君は、別に今のまま社員という立場で、慧のプロジェクトに参加して頑張ってるんじゃないの?」「そうです」「な
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268.注目と噂⑧

「足りない部分ですか……?」「そう。君にしか出来ないこと。君だからこそ出来ること。慧はちゃんとそういうところを君に感じたから、君を選んだんだと思う」「あたしだから……」そんな大きな意味を感じて、慧さんはあたしを選んでくれたんだろうか。そういう特別なことを、あたしに感じてくれているということなのだろうか。「そう。それこそ食事とかの生活面の世話もそうだけど、それ以上に、慧の心の足りなかったり欠けている部分を、君がちゃんと支えてる」「そう、なんですか……?」自分ではわからないけど、ホントに慧さんの欠けてる部分を、あたしが支えられてるってこと……? 「どれがとか具体的に伝えることは出来ないけど、でも間違いなく君と付き合い出してから、慧は変わったから。仕事ではあんなに人に寄り添ってるヤツだけど、普段の慧は、人を信じられない人間だからさ」「どういうことですか……?」慧さんが人を信じられない……?こんなに人に心を寄せてくれる人が……?「まぁ、それはさ。いつか慧が話してくれるだろうと思うから、オレからは何も言わないけど」「そう、なんですね……」本村さんが、少し濁しながら言ったその言葉が、きっと何か慧さんの中で抱えてる何かがあるような気がした。その理由、いつか慧さんから話してくれるといいな……。「でもまぁ今の慧はそうじゃなくなってると思うから、それは安心して」「あっ、そうなんだ。よかった……」そう聞いて、とりあえず今はそんな慧さんじゃないことにホッとする。「多分そうなれたのはさ。慧が君のことを信じようと思ったからだよ」「あたしを、ですか……?」「そう。君と付き合うと決めたってことは、あいつにとってそういうことだと思うから」何か深い理由があるような気はするけど。だけど、今はまだきっとそれをあたしが知ることじゃないような気がして。あたし自身も、きっとまだそんな強い人間になれていないと思うから。なんとなくそれを聞いていい時は、あたしがもっと自分自身強くなった時で。どんな逆境にも立ち向かえた時、あたしはその理由を聞いてもいいような、そんな気がする。「だから君は君自身を信じてあげることから、まず始めてみたらどうかな?」「あたし自身を信じる……」「瑞希にはさ、絶対君は適わないことなんてわかってるし、そもそも張り合うレベルにもなってない」
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269.注目と噂⑨

「はっ? えっ? ちょっと待ってください。本村さんと藤代さんが付き合ってるんですか?」「そう。そこはね。また時間ある時ゆっくり説明するけどさ」「いやいや、そんなあっさりと……」「今別にオレらのことはいいからさ」「いや、めちゃ気になりますけど」「まぁとにかく瑞希は今慧のことなんとも思ってないし、もしそうならオレが困る」「そりゃ、本村さんと付き合ってるんでしたら、そうですよね……」いやいや、なんかなかなか理解が追いつかないけど。「なら、本村さんも二人噂されてるの嫌じゃないですか!?」「あ~。それは勝手に周りがそう噂してるだけだし、実際違うことは本人らがわかってんだからさ。別にどうでもいいよね」そんなもんなんだ……。あたしがあんなに気にしていたことなのに、同じ立場で本村さんはこんなにもあっさりしてるんだ……。「それに二人がどこまでも気が合ってるのは、もう昔からだから。オレらの学生の時からあいつらはそういう意味では特別だった。だけど、今思えば同志っていうかさ。男女関係ない貴重な気持ちをわかち合える存在っていうだけなんだよ」「なるほど……」「結局は本人たちがどう思うかだけでしょ。二人の間になんの恋愛感情もない。そして気が合う同志として、同じ仕事をして夢を目指してる。ただそれだけ」「確かに……」「それを仕事仲間としてオレも君もサポートしながら見守る。ただそういうことだと思うよ」「そっか……。確かに、藤代さんに本村さんっていう相手がいるなら、なんの問題もないですもんね」「そういうこと。だから、君の悩むことは全然意味ないってわけ」「そっか……」本村さんが伝えてくれたその事実は、衝撃的だったけど、その本村さんの言葉や考え方は、素直に共感出来て。あたしが思ってたことは、ただ自分だけの勝手な思い込みで、意味ないことなのだと思い知らされる。結局は相手をどこまで信じてるか、二人を信じてるか。多分きっとあたしはまだそこまで覚悟が出来てなかったのかもしれない。自信もまだそこまで伴ってないあたしに比べて、本村さんは二人を信じて信頼している。自分の気持ちと、それぞれの気持ちをちゃんと理解しようとしている。そう考えれば、あたしは全然自分のことだけで慧さんのことも周りもちゃんと見えてなかったんだなとわかる。すごいな本村さん。考え方ひとつで、同じ状
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270.注目と噂⑩

「君はさ、どうして慧が君を選んだかわかる?」「えっ、全然わかんないです」今でも全然わからない。なんであたしを受け入れてくれたのか、どうしてあたしを好きになってくれたのか。あたしが必死にアピールしたから好きになってくれた?一緒に住んでて一番近くにいたから?料理作れたから?きっとそれらは単なるきっかけでしかすぎないのかもしれない。だけど、そのきっかけがなければ、きっと今の慧さんとはなくて。多分、きっと、その理由は散りばめられた小さな欠片くらいのモノで。もしかしたら、ちょっとした積み重ねで好きになってくれたのかもしれない。だけど、それは慧さんにとって小さな欠片で気付かないような理由だとしても、あたしにとってはその一つ一つの欠片がたくさんたくさん積み重なって慧さんへの想いがどんどん大きくなっていて。慧さんにとってわからないくらいの欠片でも、あたしにとってはどれも一つずつ大切な宝石のようなモノだから。だから、今慧さんがあたしを選んでくれただけで十分幸せで。どんな理由であれ、今のその幸せを手に出来ていることに、きっと意味があると思うから。いつの間にか、あたしの慧さんの憧れが好きという想いに変わったように、慧さんも、その小さな欠片から、今は同じような気持ちになってくれていたら嬉しい。例えあたしと同じ大きさの想いじゃなくても、慧さんの中で、あたしが存在していて、どんな欠片でもいいから、あたしを必要としてくれたり、好きだと想ってくれればそれでいい。その分あたしがもっともっと想いを大きくすればいいだけ。自分だけが大きくなって、時に辛くなる時があるかもしれないけど。だけど、あたしは慧さんを想えることで、今のあたしは存在しているから。きっとあたしがその気持ちさえ確かなモノにしておけば、きっともっと強くなれるはずだから。「うん、そんな感じで君は君のままでいればいいよ」本村さんは、あたしに聞いてきたその問いかけの答えをくれるわけでもなく、何を見てそう言ったのかもわからないけど、なぜだがまたあたしのままでいればいいと、そう伝えてくれる。「えっ、教えてくれないんですか?」「だってその理由は慧しかわかんないもん」いやいやいや、そこまで言っといて!本村さんってこういうとこあるんだよなー!「とにかくオレが言えることは、何があっても慧のそばにいてやっ
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