Home / 恋愛 / おいしい契約恋愛 / Chapter 331 - Chapter 340

All Chapters of おいしい契約恋愛: Chapter 331 - Chapter 340

355 Chapters

331.想像以上の想い⑩

すると、ようやく慧さんも正気を取り戻したのか、少し表情が変わり……。「……ごめん。依那……」慧さんはそう静かに呟いて、あたしを少し切なそうに見つめたかと思ったら、あたしの頭ごと慧さんの胸に力いっぱい抱き寄せ、そのまま抱き締める。あたしはそんな慧さんに反応出来なくて抱き締められたままでいると。ようやく慧さんはあたしを抱き締める力を少し弱め、身体を離し肩を掴みながら、あたしを見つめる。「はぁ……。大丈夫だと思ったんだけど……。帰ってきて、依那の顔を見たら、やっぱり全然余裕なかった……」「何がどうしたんですか……?」「フッ。オレはもうこんなにもお前にどうしようもなく惚れてんだな……」「え……」慧さんは何かを自分の中で確かめながら、そんな言葉をあたしに呟く。その表情と見つめる視線は、優しくて甘い。「依那……。好きだよ」「慧さん……」そして、ストレートなその甘い言葉。あたしは状況がわからないままだけど、その甘い慧さんの声に視線に言葉に、胸が高鳴り続ける。「あたしも……、大好きです」あたしも慧さんの目を見つめて、その言葉を伝える。その言葉を聞いて、慧さんは優しく微笑んで。「もう一回。キスしてい?」甘く囁く。「はい……」あたしはその視線と言葉にうっとりしながら。今度は優しく唇を重ねてくる慧さんに、しっかり抱きつきながら、その甘い幸せにとろけそうになる。そんな甘い慧さんにずっとドキドキしてキュンキュンして、その高鳴りとこの幸せに息が出来なくなりそうになるほど、胸がいっぱいになる。この幸せを、この好きな気持ちをどうやって伝えたら伝わるのか、どうすれば全部伝わるのか、どれだけ考えても答えは出ない。だって、一分一秒ずつ、この瞬間ごとに、もっと慧さんを好きになっていってしまうのだから。言葉にしたら、またその言葉以上に好きが重なっていくから。この好きが一方通行じゃなく、ちゃんと受け止めてくれてるのだと感じられる幸せ。同じように自分を好きだと感じられる慧さんの想い。あたしのこの想いが慧さんに負けてるなんてことはありえないけど、だけど、もし同じくらい慧さんもあたしを想ってくれているのだとしたら、こんなに幸せなことはない。何も考えられないほどに、この甘いキスに甘い幸せに溺れていく。そのあと唇を離すと同時に見つめ合う視線。そしてどちら
Read more

332.想像以上の想い⑪

「なら……。本音、言ってい?」「本音ですか? 全然言ってください」あたし的には本音を聞きたいくらいだったから、慧さんからそう言ってくれることは願ったり叶ったりだ。「今日。ホントはずっと撮影のことが気になって仕方なかった」「あたしも最初はちゃんと出来るか不安だったんですけど、さすがスタッフさんも瑠偉もプロですよね。あたしがどうこうしなくてもちゃんと素敵な撮影になりました」「オレ言ってんのそこじゃないんだけど?」「えっ?」そことは? どれ??「依那。撮影見に行った時からそれずっと言ってるけど、オレはそこは特に気にしてない」「気にしてないってどれをですか?」「だから。依那の仕事ぶりは元々信用してるし何も心配なんてしてないよ」「え? だったら」「はぁ~。お前はなんでそんないつも鈍いんだ」すると、慧さんが少し呆れるように溜息をつく。「鈍い??」「オレがずっと気になって仕方なかったのは、依那と彼だよ」「彼って、瑠偉のことですか?」「あぁ」「気になるってどう……?」「いや、依那はきっと仕事だと割り切ってるっていうのはわかってるんだけど……」「はい」「ずっと好きだった男と願ってた仕事をするんだ。それも彼が得意とする撮影なんて、依那的にはそのなんていうか、またそんな姿にトキメくとかあるかもしれないだろ……」少しずつ声が小さくなってボソボソとそんなことを呟く慧さん。「あぁ~。なんだ。そういうことだったんですね(笑)」あたしはそんな慧さんが可愛くて思わず笑ってしまう。「それ」「えっ?」「随分、彼と楽しそうにしてたよな?」すると今度はそう言いながら、あたしを見つめる慧さん。「楽しそうっていうか。普通にお仕事してただけですよ?」「でも。依那、すげぇ嬉しそうな顔して笑ってさ。オレ、お前のあんな顔見たことねぇし……」あたしから目を逸らして、少し寂しそうに拗ねるように呟く慧さん。「えっ!? そうですか!? でも別にそれに特に何か意味あるわけじゃ」「うん。わかってる……。お前は推しだからって言いたいんだろ?」「えぇ、まぁそうですけど……。今回はお仕事としてですから、あたし的にはそういう目で見るのは控えてたつもりだったんですけど……」「控えてたってことは、少しはそういう目で見てたってことだろ?」「いや、それはまぁまったくそう
Read more

333.想像以上の想い⑬

 「それであたしに会いに来てくれたんですか?」「……あぁ。なんか考えだしたらキリなくて。そしたらどうしても現場でどんなことになってるのか確認したくて……。悪い。完全にオレの個人的な感情で動いた。あっ、でもだからといって、依那を信用してないとかそういうんじゃなくて」「はい。わかってます。っていうか、あたしは嬉しかったです。まさかわざわざ会いに来てくれるなんて思ってなかったのに会えて、そしてそれが仕事だけじゃなくあたしが好きで気にかけてくれたってことが」「まさかオレもそれほどになってるとは、自分でも驚いたよ。柾弥がいなければ正直もっとカッコ悪いとこ見せることになってたかも」「慧さんにカッコ悪いことなんてないですよ」「いや、実際あの時、オレかなり余裕なフリしてただけだし」「えっ、そうなんですか?」「彼が依那と "親身" にって言葉聞いた時も、思わず反応しそうでヤバかった」「あれ、そうだったんですか!?」「なんともないフリしてただけだよ。大人な対応してまたカッコつけてただけ」「確かに。そんな風に思ってたなんて全然気付かなかったです」「なら良かったよ。バレてたらカッコ悪すぎだからな」「あたしはホント仕事ちゃんと出来てるか抜き打ち検査的に確認しく来たのかなって思ってたくらいでした」「ハハ。そこまではしないよ。オレは社員皆に現場のことはそれぞれ任せてあるし、責任持って取り組んでくれればそれで問題ない」「なるほど」「だから今回は完全に公私混同。こんなのホント他の社員に示しつかないけど」「大丈夫です。彼女のあたしでも仕事熱心なんだなって感じにしか思わなかったですから。あたしがただ嬉しかっただけなので、それで良しとしましょう」「ハハ。そっか。依那的には喜んでくれてたんだ」「もちろんですよ!  今日の慧さん全部嬉しかったです!」なんかこんな慧さん新鮮。あんなに仕事が一番の慧さんが、仕事に影響させちゃうほどだなんて……。えっ、も
Read more

334.想像以上の想い⑭

「あっ、でもやっぱなんかオレだけ我慢すんの悔しいから、依那が彼の名前呼ぶたびキスと引き換えにするか?」「えっ!?」すると、いつの間にかまたすぐに余裕たっぷりの意地悪な慧さんに戻っていて。「えっと、今日オレの前で名前何回くらい呼んだっけ?」「えっ、そんなの何回も言いすぎて覚えてませんよ!」「だよな。ならとりあえず今日はもっと数えきれないくらいのキスで許してやる」「それって、どれくらい!?」「さぁ? オレが気が済むまでかな」そう言ってフッと意地悪く笑って、唇を重ねる。そのあとホントに慧さんは何度も何度もキスを繰り返した。ソファーの上でもベッドの上でも、目が合えばその度、それこそ軽いのから深いものまで……。「どう……? オレの想い、少しは実感した……?」唇を離し、甘い瞳で見つめながら、慧さんが甘く優しく囁く。「はい……」あたしは、またそんな甘い慧さんにとろけそうになりながら、照れながら答える。「でも……。まだ許してほしくないです……」「はっ……!?」あたしが静かにそう呟いた言葉に、慧さんが驚く。「甘い慧さん、もっと欲しいです……」あたしはまだ慧さんと離れたくなくて、この時間が終わってほしくなくて、素直な気持ちを伝える。今まで自分からそこまで言ったことないだけに、慧さんは一瞬驚くも、すぐにフッと優しい目をして微笑みながら、あたしを見つめると。「そんな可愛い我儘なら喜んで」慧さんはそう言って、今度は甘く優しくまた唇を重ねた。あたしはそんな慧さんがもっと欲しくて触れたくて、慧さんの首に腕いっぱい伸ばして抱きつく。そして少し唇が離れた瞬間。「慧さん。大好きです」あたしは慧さんに気持ちを伝える。「なら。一生こうしてる?」「はい。一生離れません」慧さんが優しく微笑みながら囁いたその言葉に、あたしも微笑んでそう言葉を返す。「なら。一生覚悟して」そう言いながら笑って、慧さんはそれから唇に首に身体中にキスの嵐を降らせた。意地悪モードに入った慧さんも、優しく甘い慧さんも、ホントにあたしをドキドキさせる天才で。こうやってあたしは慧さんに翻弄されて、そしてその分愛されている幸せを重ねていく。慧さんがあたしを想ってくれる意地悪も、さっきみたいな素直な反応も、あたしには嬉しくて甘い幸せ。それだけ愛されていると実感出来る幸せ。ド
Read more

335.重なっていく喜び①

「依那。オレそろそろ行くわ」朝。いつもより少し早い時間に、慧さんが仕事へ向かう前リビングであたしに声をかける。「あっ、慧さん! ちょっと待ってください!」玄関に向かおうとしていた慧さんをキッチンから引き止める。「ん?」「これ。もしよかったら空いてる時間に食べてください」「えっ?」「サンドイッチです」慧さんが出かける準備をしている間、キッチンで作ったサンドイッチの入った袋を慧さんに渡す。「えっ、今作ってくれたのか?」それを受け取りながら慧さんが少し驚いた反応を示す。「はい。昨日の朝食の時、今日一日外の現場周りの仕事ばっかりで朝も昼も食べる暇なさそうだと言ってたんで」「いや。まぁそうだけど。今日いつもより朝早いし依那に悪いから朝食いらないって言ったのに」「そんなことだろうと思ってました。相変わらず慧さんあたしに甘いんですよね。自分の分は朝食作らず寝てていいって言ってくれるし」「そりゃ毎朝作ってくれるだけでも有難いのに、早い時間にまたわざわざ作らせたくなかったから」「違いますよ? 慧さん」「えっ?」「わざわざあたしは慧さんのために作りたいんです」「依那……」作らされてるんじゃなく、あたしは大好きな慧さんのためにただ作りたいだけ。だけど、朝早いから適当に食べるっていうし、慧さんの朝の準備の都合もあるから、無理に作りはしなかったけど。多分それはきっと慧さんがあたしを気遣ってくれてるんだろうなと思ってたから。やっぱり慧さんはいつでも優しい。「なら。夜中まで無理させるんじゃなかったな」「えっ!?」「依那をいつも以上に放したくなかったから、なかなか寝かせなかったし」「いや、それは……、あたしも眠りたくないほど離れたくなかったので……」改めてそんな風に伝え合うのが少し照れてしまう。昨夜、慧さんと幸せな甘い時間を結局かなりの時間を過ごしていて。慧さんが次の日いつもより朝早いとわかっていたのに、つい気持ちのままずっと……。「まぁ昨日はお前が可愛すぎたのが悪い」「えっ!? あたしですか!?」「そりゃあんな可愛いお前見せられたら止めらんねぇしな~」「じゃあそれは慧さんも問題ですね」「えっ、オレ!?」「はい。あたしをこんなに好きにさせてる魅力的な慧さんのせいです」「ハハ。そうくるか。まぁそうじゃないと困るからな」「え
Read more

336.重なっていく喜び②

「結構多めにたくさん作ったんで、もしよければ本村さんにも食べてもらってください」「却下」「へッ?」「依那がオレのために朝早く頑張って作ってくれたモノ、なんで柾弥に食べささなきゃいけねぇんだよ」「いや、全然そんなたいしたものでは」「オレが全部食う」ただのサンドイッチなのに、一人占めしようとしてくれる姿がなんだかかわいく思えてしまう。「フフッ。それならそれであたしも嬉しいです」「オレの方こそ。すげー嬉しいこれ」「よかったです。それなら簡単にいつでもどこでも食べられるんで」「うん。助かる。今日予定わからないスケジュールで、いろんな取引先で詰め詰めだから間の時間も余裕なさそうだし」いきなり思いついたことだったけど、思った以上に喜んでくれてる姿を見れて嬉しくなる。「もし良かったら今度、お弁当も作ってもいいですか?」「えっ、マジで? 弁当も作ってくれんの?」「嫌じゃないですか……?」「そんなのあるわけないだろ。依那の作るメシ、マジで全部ウマくて好きだし。それに弁当とか未知の憧れみたいなとこあるからさ。だからそれ作ってくれんのもすげー嬉しい」慧さんお弁当にそんな憧れを……?じゃあ今まで誰にも作ってもらったことないってことかな……?「今までの彼女さんにしてもらったことは……?」「いや。そういうのは全然。母親もそういう記憶は……」あっ、そっか。慧さんのお母さんにはそういう想い出なかったのかな……。「なら。ぜひ作らせてください」「……あぁ。楽しみにしてる」慧さんが穏やかに笑う。「ヤバいな……」「えっ? どうしたんですか?」「今日の依那のサンドイッチ食えるの楽しみすぎる」「フフ。そんな楽しみにしてもらえて嬉しいです」「今日依那の作ったサンドイッチあるってだけで、すげぇ仕事頑張れるパワー出てきたわ」「うわっ、そこまでですか!?」「もちろん。でも楽しみすぎてすぐ食っちゃいそう」「たくさん作ったので朝と昼どちらも食べれるくらいあるから大丈夫ですよ。逆に荷物になっちゃうかもで申し訳ないですけど」「いや、それは全然問題ない。柾弥が車で迎えに来てくれるから、どれだけ重くても大丈夫だ」「ハハ。じゃあ大丈夫ですね。あっ、ごめんなさい、引き止めちゃって。時間大丈夫でした?」「あぁ。早めに下に降りようと思ってただけだから問題ないよ」「よ
Read more

337.繋がる奇跡①

 「慧さん! 準備出来ました!」「ハハ。早いな。もう準備出来たのか」久々の慧さんとの休日のお出かけに、あたしはワクワクしすぎて、早々に準備をして慧さんを待つ。今日は休日で、しかも慧さんと予定が入ってない一日が重なったので、久々にあたしが行きたいお店に一緒に行く約束をしたのだ。「あ~今日慧さんと一緒に行けるなんてすごく嬉しいです!」「なかなか行けなくて悪かったな」「いえ!  慧さんずっとお忙しかったですし、あたしも一人でいくつか行けるときは行ってたんで」「しばらく行けてないお詫びっていうかさ。今日はオレが連れて行きたい店行っていい?」「あっ、はい! そんなお店あるならぜひ!」「うん。また依那の行きたい店は連れてってやるから」「ありがとうございます。でも、あたしは慧さんと行けるならどこでも嬉しいです♪」行きたいお店はたくさんあるし、今すぐどこに行きたいとかではなかったし。それより慧さんが自分が連れて行きたいと思ってるお店に連れて行ってくれるほうが嬉しい!それから慧さんの車に乗ってその目的のお店まで向かう。「そういえば。前に行ってた夢を叶えるきっかけになった店って、まだ見つかってないのか?」運転しながら慧さんが隣から尋ねる。「覚えててくれたんですね。そんな何気ない話」「そりゃ覚えてるよ。その話聞いてオレ的には依那のこともっと気になる存在になったんだし」「えっ? そうだったんですか!?」さらっと慧さんがそんなことを呟いて、あたしは驚いて反応をする。「まぁ依那好きになったのはそれだけって訳じゃないけどさ。でも、夢を叶えたくてオレの会社入ってくれたこととか、それに向かってずっと頑張ったり勉強してるとことか、そういうとこも正直大きく惹かれた理由でもあったしな」「そうなんですね……」「依那は今まで会った誰とも違うなって、その時から思ってた」「あたしは、慧さんがい
Read more

338.繋がる奇跡②

あたしはまたそんな切なさを感じながら、隣の慧さんをじっと見つめる。 あ~カッコいい。車運転してる姿とかカッコよさ何倍増し?この姿をこんな近くで一人占め出来るって、彼女の特権ハンパないよね?「で。どうなの?」「えっ? 何がですか!?」じっと見つめていると慧さんに話しかけられて聞き返す。「だから。探してる店」「あ~。そうでしたね。いや、まだです。なんか手がかりあればいいんですけどね~。あたしもお店の雰囲気とかしか覚えてなくて、場所はさっぱり」「そっか。見つかるといいな」「はい。その時はぜひ慧さんとも一緒に行きたいです」「そうだな。出来ればオレが一緒に見つけてやりたいけど」「それなら最高ですね。慧さんと一緒にそのお店探せたりしたら」「今から連れて行きたい店も、依那にも気に入ってもらえたらいいんだけどな」「そのお店は慧さんのお気に入りのお店なんですか?」「そうだな――。まぁ、そんな感じ」「へ~慧さんのお気に入りのお店か~。楽しみだな~♪」慧さんのお気に入りのお店と聞いて、さらにまたワクワクが大きくなる。それからしばらくしてその店に到着し、車を停めお店の中に入っていく。そしてお店の中に足を進めてると、まさかのその光景に、あたしは驚いて店の入口で足が止まる。「ん? どした? 依那」足が止まったままでいるあたしに気付いて慧さんが声をかける。そこは明るい日差しが差し込んだ店の中に、花や緑がたくさん天井や壁に飾られてあるフラワーカフェ。「慧さん……。ここ……」「うん。ここがオレが連れてきたかった店」まさか慧さんが連れてきたかった店がそうだったなんて……。「どした? なんかあったか?」あたしがそのまま立ち尽くしている姿を見て、慧さんが近づいて心配そうに声をかけてくれる。あたしは近くにいる慧さんの袖を握りながら。「慧さん。ここです……」「ん? 何が?」「あたしが、ずっと探してた場所……」そう。ここだ。間違いなく、このお店があたしがずっと探してたお店だ。「えっ……?  マジで、ここなのか……?」「間違いないです……!」それを伝えると、慧さんが少し驚いた表情をして、そしてフッと笑う。「ハハ。そっか。ここだったのか……」慧さんも何かを確かめるように笑って呟く。「慧さん……! すごい! すごいです! 見つけました!」
Read more

339.繋がる奇跡③

お店自体は決して広い訳ではなくて、だからこそこの一体感や雰囲気が温かくて癒される空間。「こんにちは」すると、慧さんがそのカフェの店の誰かに声をかける。「あら慧くん。久しぶり」すると、店内で食器を運んでいた女性が返答する。慧さんに気付いてその食器を置き、こちらまで来るその女性。「お久しぶりです」その女性に慧さんも穏やかに微笑んで挨拶をする。知り合いなのかな?その女性は隣にいるあたしにも会釈をし、優しく微笑みを返してくれる。それを見て、あたしも同じように軽く微笑み会釈する。なんだか優しそうな女性だな。カウンターにいるのはここのマスターっぽいから、奥さんかな?「慧くん。そちらはもしかして……」「はい。ようやく大切な人連れて来れました」あたしの手をギュッとまた握り、その女性にそう伝える慧さん。大切な人……。誰かはわからないけど、自分のことをそう紹介してくれることに胸がキュッとなる。「そう。よかった……」するとその女性はその言葉を聞いて、とても嬉しそうに優しく微笑む。「ちょうど奥の特等席空いてるからどうぞ」「ありがとうございます」特等席?その意味があたしにはよくわからなかったけど、案内される中、慧さんのあとを手を繋いだままついていく。すると、慧さんはカウンターでコーヒーを注いでいるマスターらしき男性にも微笑みと共に会釈をする。「いらっしゃい」それを見て、その男性も優しく微笑んで声をかけてくれる。そして他のお客さんもいる中、案内された特等席らしき場所は奥の方にある少し他の席とも離れた空間。「すご~い。素敵~」その席に着いた早々、その素敵な空間にうっとりする。「ここ。特等席」「特等席?」「そう。オレがいつかここに大切な女性を連れてきた時用意してもらってた特等席」「それって、あたしのことですよね……?」「当然だろ。依那だからここに連れてきたんだ」「慧さん……」「ん。座って」「はい」そう言われ椅子に座り素敵な空間をキョロキョロ眺める。「フッ。気に入った?」「はい。もちろん!」この空間にいるだけで癒される。「ここ。オススメはワンプレートランチなんだけど」「じゃあ、それにします」「あと、コーヒー。マスターの入れるコーヒーはホントに絶品なんだ」「わぁ~じゃあぜひそれも」「うん。じゃあ、それでお願い
Read more

340.繋がる奇跡④

「この店。オレが初めてプロデュースした店なんだ」「――えっ!?」「でも世間的にもどこにもそれは公表してない」「えっ、そうなんですか!?」「この店のことは大切にしたくて、それを知ってるのはオレと柾弥だけ」「お二人だけですか?」「そう。一番最初二人でこの会社始めた時に手掛けた店だったからな」「そうだったんですね……。えっ、じゃあ、慧さんの初めてのお店をあたしは探してたってことですよね……?」「そういうことみたいだな」「えっ、すごい……。そんな奇跡みたいなことあるんだ……」「オレも正直驚いた。まさか依那が探してたのがこの店だとは思わなかったから」「そっかぁ……。フフ。そりゃそうだ」「ん?」「慧さんの手掛けたお店なら、そりゃ憧れて当たり前ですよね」「依那がこの店を気に入ってくれて、憧れてくれたってだけでも十分なのに。それどころかこの店がきっかけでオレの会社に入ってくれて夢を叶えようとしてくれてるなんて……。うん。すげー嬉しい」噛み締めるように慧さんはそう言いながら優しく微笑む。ホント、それは奇跡にも感じるけど、運命のようにも感じて。こんな風に慧さんを好きになる前に、あたしは慧さんの手掛けたお店に惹かれて焦がれて憧れていた。まるで今慧さんとこうなるように導かれていたかのように。いや、もしかしたら、その頃から慧さんとの縁は繋がっていたのかもしれない。自分たちが気付いてない瞬間に、どこかで誰かから繋がってる縁。そんな縁がもし慧さんと存在しているなら、この先慧さんと繋がってる縁はどこまで続いていくのか……、そんなことを考えるだけでも嬉しくなる。「そっかぁ……。こんな素敵なお店一番最初に手掛けたんですね……」「この店さ。柾弥の両親が経営してる店なんだ」「えっ? そうなんですか? じゃあ、もしかしてさっきの女性は……」「うん。最初に対応してくれた女性とカウンターにいる男性が柾弥の両親」「そうだったんですか……」「柾弥の両親にはホント小さい頃から世話になってて。ある意味自分のホントの両親より両親だって思ってるし、いつか今までの恩を返したいと思ってたんだ」「それでこのお店……?」「そう。二人が店出したいって言ってたのを聞いて、オレと柾弥が全部二人の望みを聞いてこの店をプロデュースした」「二人で……」「だからここがオレの原点。そ
Read more
PREV
1
...
313233343536
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status