「はい、この方が5億円の入札です!前の方、まだ続けますか?」南人は夏美の微笑みを見ると、顔を上げて手に持ったシャンパンを一気に飲み干し、続けて言った。「6億円!」「7億円!」その後の展開は、南人がいくら値を上げても相手が1億円ずつ上乗せした。数分の間にこのジュエリーは本来の価値をはるかに超えてしまった。チャーリーはますます狂気じみている南人の腕をそっと引っ張った。「社長、もうやめましょう。これ以上続けると、取締役の方々に文句を言われます」だが南人は全く気にせず、止める者を振り切ってまた声をあげた。「16億円!」その場が一瞬凍りついたが、すぐにある声が上がった。「17億6千万円!」誰も反応できぬまま、彼は暗がりから現れて、みんなの注目を浴びながらゆっくりとステージに上がると、南人に向かって言った。「もう時間の無駄だ。これからは日向社長がいくら入札しても、俺は1億6千万円ずつ上乗せする。日向社長が気にしないなら、どうぞ続けてください!」会場はたちまち熱気に包まれ、ざわざわと話し合いが始まった。「わあ、これで決定じゃない!」「これは珍しいな。やはり、どんな男でも美人に弱いね。このジュエリーは1億6千万円の価値はないけど、美人はそれに値する!」「へへ、今日は本当に来てよかった」夏美は自分より背が一つ高く、目つきが鋭い岳を見て信じられない思いだった。通りで、光莉は南人にはそのジュエリーを取られないと言った。結局、岳が助けてくれるのか。しかし長い間一緒に過ごしてきたのに、彼女は岳の正体を全く知らず、彼も身分を明かしたことはなかった。席に座っている南人は顔が青ざめて怒りに震えていたが、心の中ではもう16億円が限界だとわかっていた。これ以上は取締役会に説明がつかない。だが諦めたくはなかった。再びパドルを挙げようとした時、チャーリーがスマホを取り出し、取締役会からの警告メールを見せた。南人は少し気力を失い、パドルを置いた。司会者が3度鎚を叩くと、夏美の首のジュエリーは岳のものとなった。それと共に、彼女の一日も一緒に手に入れたのだった。晩餐会が終わり、岳は入口で夏美を待っていた。彼女は少し戸惑っていたが、岳は何も言わず、彼女も尋ねようとはしなかった。「俺のこと聞かないの?」岳は笑
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