「ミス・ワールド」の応募締め切りの最後の瞬間に、安井夏美(やすい なつみ)はやっと決心して送信ボタンを押した。10分前、彼女は日向南人(ひなた みなと)の肩にもたれかかって結婚写真を選んでいた。彼女は胸を弾ませながら、これがどうかと彼に写真を差し出した。しかし、彼は突然、彼女を強く押しのけると、背筋をぴんと伸ばし、スマホから目を離さなかった。「心音……自殺する」彼女が反応する間もなく、南人は慌てて病院へ向かった。自分の伸ばした手を見て、夏美は突然、この数年一緒にいても全然意味がなかったと思った。3年前、木村心音(きむら ここね)の兄は南人をかばって刺され、命を落とした。それ以来、彼女は私たちが一緒になるのを阻止するため、ありとあらゆる口実を繰り出してきた。それが、666番目の口実だ。心音の理由は次々に出てくるが、たとえそれが悪戯だと分かっていても、南人は気にしなかった。心音が機嫌を直してからようやく、南人は贈り物を持って家に帰ってきた。そして笑顔で彼女に、「心音はまだ子供だから、大目に見てやれ」と言った。そのことを思い出すと、彼女は思わず頭を振って苦笑した。毎回南人はこれが最後だと約束するが、今では「最後」は永遠に終わらないように思えた。夏美は一枚一枚アルバムの結婚写真をめくり、写真に伴う記憶が洪水のように溢れ出した。初めて南人に会ったのは、大規模な限定ドレスショーだった。彼女がランウェイを歩いているとき、急にお腹が熱くなり、暖かい液体が流れ出した。下りる暇もなく、シーズン限定の白いドレスに鮮やかな赤い染みが広がった。客席は笑いに包まれたが、南人はその笑いの中でゆっくりと立ち上がり、ドレスを購入すると、その場で彼女に贈った。彼女は彼に大きな借りができたが、彼は一度も無理な要求をせず、むしろ彼女を連れてさまざまな宴会に出入りさせてくれた。彼女は上流階級の人々を見てきたが、南人だけはどうしても断れなかった。たとえ彼が結婚の約束をしなくても、彼女はずっと彼のそばにいた。ある事故が起き、彼女と南人は土石流に車ごと閉じ込められた。彼女は平静を装ったが、すすり泣きが指の隙間から漏れ続けた。南人は彼女の恐怖を感じ取ると、彼女を引き寄せて、しっかりと抱きしめながら、優しい声で言った。「もし無
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