Semua Bab あいにく春はもう終わっていた: Bab 11 - Bab 20

心音が駆けつけると、彼がそのカードを地面に投げつけて踏みつけているところだった。「南人、どうしたの？夏美さんは？」心音の声は優しかった。南人は突然彼女を抱きしめながら、声を何倍にも上げて、わざと周囲に聞かせるように言った。「彼女のことは気にするな。失踪したいんだろう？どれだけ俺から離れられるか見てやる。お前はドレスを見に行きたいんだろ、さあ、今すぐ行こう。お前ら、よく聞け。もし彼女が戻ってきたら、誰も家に入れさせるな。捕まえてすぐに俺に電話しろ！」ボディーガードたちはすぐに頷き、一斉に「はい！」と答えた。心音はそれを見ると、口元がほころび、嬉しそうに車に乗り込んだ。そして、彼の言うことを聞かずに、ここに残って良かったと心の中で安堵した。出発するとき、南人は周囲を見回したが、夏美の姿は見つからず、鼻で一声笑って立ち去った。その後の数日間、彼は心音を連れてあちこちに出かけ、イベントや記者がいるところには必ず彼女も現れた。以前は夏美に控えめに行動するよう言われていたが、今は彼女に見せつけるかのように派手に振る舞っていた。彼女はそれを見て嫉妬し、怒る。怒ることでこそ彼のもとに戻り、彼を問い詰めるのだ。だから彼は家で、戻ってくる彼女の激しい問い詰めを待っている。しかし、2ヶ月もの間、夏美からの連絡は一切なかった。彼はスマホを取り出し、慣れた手つきで夏美の電話番号を見つけた。発信しようとしたその時、机の上にぽつんと置かれたあのSIMカードが目に入った。南人は生まれて初めてこれほどの挫折感と無力感を味わった。仕事が終わると、彼は習慣で玄関に立ち、「夏美、ただいま」と試しに声をかけた。昔なら、夏美はいつも小走りで迎えに来てくれた。彼女は靴を履かないので家の中に柔らかいカーペットを敷いていた。しかし今回はどれだけ待っても返事はなかった。彼は焦った目でリビングを探したが、彼女の姿はなかった。国内のどこにも利用記録が全くなかったのだ。若い夏美は現金も持っていないのに、どうやって一晩で完全に姿を消せたのか、彼には理解できなかった。暖かな光の下、かつて温かかったリビングは今や冷たく広々としていた。南人は考えれば考えるほど苛立ちを覚え、酒で自分を麻痺させるしかなかった。ぼんやりとした意識の中で、彼はあの黄色いドレス

南人の書斎の中、机の上には心音の数十ページにわたる健康診断報告書が置かれている。彼は一枚ずつめくりながら、目つきが次第に冷たくなっていった。数十ページにわたる報告書には、体の異常を示すデータが一つもなかった。南人は書類を握る手の力をじわじわと強め、やがて机を叩きつけると報告書を床に薙ぎ払った。がんのことも飲み会のことも、心音は一度たりとも真実を語らなかった！そして彼は、ただ夏美が中傷され虐げられるのを見過ごした。さらに、多くの人の前で自ら夏美の痛々しい過去を暴いた。「チャーリー、あいつを連れてこい！」南人の部下に腕を押さえられながら心音が入ってくると、彼女の顔にはまだ涙が浮かび、その哀れな表情に胸が締め付けられた。「南人……本当にごめんなさい。昨夜のこと、もし責任を取りたくないなら、あなたを責めないの。安心して、たとえお兄ちゃんが……」言い終わらないうちに、一束の報告書が彼女の顔に激しく投げつけられた。「もう死ぬんじゃないか？」南人は冷たい顔で、澄んだ声に怒りを抑え込んで言った。「これは何だ？説明しろ！」報告書のページが床に散らばり、心音は迷いながら拾って見ると、彼にぎこちなく笑みを向けた。「これ……説明できるよ。これは医者の誤診だよ！それに、私は癌じゃないのはいいことだよ。もしかしたら……もしかしたらお兄ちゃんが守ってくれてるのかも！きっとそう……」「黙れ！」南人は眉をひそめ、彼女と話す気もないように言った。「もうお前の兄さんのことは話すな！お前の兄さんが生きていたら、今のお前の姿を見て喜ぶと思うか？ここ数年、お前を甘やかしすぎたみたいだな」心音は彼の怒った顔を見て、思わず唾を飲み込んだ。そして、深く息を吸い込み、そっと彼の服の端を掴んだ。「南人……あなたはいつも私を一番大切にしてくれていたでしょう？どうせもう夏美さんとは離婚したんだから、これからは私が一緒にいられるよ。知ってるでしょう？私は子供の頃からあなたのことが好きだったの。好きすぎて抜け出せないの。南人、あなたが他の誰かと一緒にいるのは嫌よ」彼女は、自分が素直に謝れば南人も以前のように許してくれると思っていた。しかし次の瞬間、彼女の肩が彼の両手に強く掴まれ、その力は骨が折れそうなほどだった。「どうして離婚したのを知

彼は深く息を吸い込むと、突然四肢が冷たく硬直し、心の中で何かが砕けたように感じた。南人はその場に長く立ち尽くし、通りの人がほとんどいなくなってから、やっとスマホを取り出してチャーリーに電話した。「チャーリー、明日帰国する」電話を切ると、再び背後の聖ワシリイ大聖堂の方を見つめた。しかし彼が立ち去る瞬間、隣の西洋料理店の中で、夏美はゆっくりと大きな帽子を脱いだ。彼女の目は鋭く、離れていく南人の方向をしばらくじっと見つめていた。光莉が彼女に赤ワインを渡し、彼女の視線の先を見て思わず呟いた。「こんな偶然もあるんだね」夏美は視線を引き戻し、仕方なさそうに微笑んだ。「大丈夫よ、夏美。もう私たちもボディーガードがついてるから。ね、岳！」光莉は向かいの席の男性に口笛を吹いた。男性はにっこり笑ってうなずいた。夏美は驚き、彼も来ていたとは思わなかった。半年の合宿で一度だけ島を下りる機会があった。夏美は本当は降りたくなかったが、光莉があまりにも退屈そうだったので、彼女も船に連れてきたのだ。船を操るのは彼女のいとこである小野岳（おの たける）だった。岳は主催側の警備で、島にいる訓練生たちの安全を担当している。普段は島を出ないが、今回は光莉に無理やり連れてこられたらしい。「さあ、帰ろう。もうそろそろ戻る時間だ」岳は静かに言った。「えー、まだ遊んでないのに帰るの？もう少し遊ぼうよ」光莉は岳に向かって言ったが、岳は動じず、さっさと外に向かって歩き出した。夏美はそれを見ると、どうしようもない表情を光莉に向け、ついて行った。光莉は悔しさで、テーブルの赤ワインを一気に飲み干した。帰り道、光莉は動かずにじっと夏美を見つめていた。夏美は目を細めて、ため息をついた。「聞きたいことがあるなら言って。そんなにじっと見つめられて、ちょっと怖いけど」光莉はぱっと身体を起こし、興奮して彼女の手を掴んだ。「本当に？夏美、本当に聞いていいの？」夏美は船の外の穏やかな海面を見つめ、心に少しも波は立たなかった。いつからか、彼女は過去のことを話すのが怖くなくなっていた。「今日見かけたあの人は、昔よく話してくれた日向南人なの？」夏美は額の前の髪を耳の後ろにかけ、どう話そうか考えているようだった。しばらくしてから、彼女は

南人の命は、心音の兄が命と引き換えに救ったものだった。だからこそ、彼は何があっても心音の命だけは守ると、彼女の兄に約束していた。チャーリーは慎重に近づき、車のドアを開けた。「社長、ご指示通り、木村さん名義の全てのクレジットカードは停止しました。毎月の生活費として10万円だけ渡しています。他の出費は一切サポートしません。それと、医者には木村さんが今後妊娠できないよう処置を施すよう伝えました」南人は淡々と「うん」とだけ返した。「夏美の消息は？」チャーリーは首を振った。「まだ何もないです。でも……」南人が顔を上げた。「社長、裏の確かな情報によると、次回の「ミス・ワールド」選抜大会はパリで開催されるそうです。そして安井さんは当初、この大会に応募していたようです」南人は半年という時間がこれほど長く感じられるとは思ってもみなかった。夏美を見つけるために、彼は重要な株主総会を放棄し、全取締役会から解任されるリスクを冒してまで今回の選抜大会に投資した。今、彼は選抜大会の会場入り口に立ち、喉を鳴らしながら、スマホを固く握りしめていた。「チャーリー、情報は確かか？」チャーリーは頷いた。「安心してください、社長。安井さんの名前は今回の選抜リストに入っています。聞いたところ、主催者は参加者全員を無人島に集めて合宿させていたそうです。だから安井さんの消息を掴めなかったのだと」南人は少しぼんやりした。夏美が消えた1年間、彼の心はずっと彼女でいっぱいだった。かつて、彼は彼女にただ惹かれていただけだと思っていた。だが今、5年という時を共に過ごすうちに、彼はもう彼女なしでは生きられないことに気づいた。彼は執拗にスマホを握り、冷たい数字の羅列を見つめながら、彼女にメッセージを送るかどうか迷った。長い時間を経て、彼は歯を食いしばり、スマホをポケットにしまった。夏美は強情な性格だ。今日、彼が会場に来ていると知れば、彼女は試合を放棄するかもしれない。念のため、彼は試合終了後、直接控え室で彼女を待ち伏せすることに決めた。かつて、彼は彼女を少しずつ自分の生活に引き込むことができた。今度もできると信じている。胸を高鳴らせ、南人は矢も盾もたまらず会場に入った。だがチャーリーは急に彼の腕を掴んで忠告した。「

南人の両目は血走り、夏美を傷つけた記憶がまるで刃物のように、一刀一刀彼を苦しめていた。彼は目を閉じ、かすれた声で口を開いた。「どうしたら俺を許してくれるんだ？」夏美は彼の前にしゃがみ込み、彼の様子を見て軽く微笑んだ。「南人、私は絶対に……あなたを許さないわ」南人の目は瞬く間にくたびれ果てた。彼の失神したような様子を見ると、彼女は満足げに立ち上がり、背を向けて去っていった。ハイヒールが床を鳴らし、その音はまるで南人の心を踏みつけているかのようだった。夏美は「ミス・ワールド」コンテストで1位を獲得した。その夜には主催者が主催する晩餐会が開かれ、すべてのゲストが参加できた。廊下は人で溢れていたが、南人はずっと跪いたままだった。そこへチャーリーがやってきた。「社長、晩餐会が始まりましたよ」南人は無感覚に立ち上がり、魂が抜けたようだった。チャーリーは軽くため息をつき、探るように言った。「社長、安井さんは優勝しましたから、晩餐会にはジュエリーをつけて出席されます。安井さんを応援しに行きませんか？」南人は目を閉じ、やがて正気を取り戻した。夏美が許してくれないのは想定内だった。彼は来る前から分かっていた。夏美が許してくれないなら、彼は許してもらえるまで求め続ければいい。夏美が彼を好きでなくなったら、彼は彼女が再び彼を好きになるまでアプローチを続けるつもりだ。そう思うと、彼は大きく息を吐き、スーツを引っ張って宴会場へ向かった。晩餐会の控え室で、夏美は真剣に首元のジュエリーを身に着けていた。そのジュエリーから放たれる輝きが彼女を一層美しく見せていた。「わあ、このセットは何千万円もするんじゃない？」光莉は羨望のまなざしで彼女の首元のジュエリーを見て、手を伸ばして触った。「すごくきれいだわ。今日はどんな方が、ミス・ワールド優勝者の首にかけられたジュエリーを手に入れるのかしらね」夏美は彼女の手の甲を強く叩いた。「手を洗ってから触りなさい」光莉は手をこすりながら、ふざけて怒ったふりをした。「あなたってば、恩知らずね。もし急いで岳を呼んでこなかったら、あのクズ男がずっとつきまとってたわよ。どう？あのクズ男が殴られて、気持ちよかったでしょ？」夏美は鏡の中の自分を見て、苦笑いした。「なんだか……そ