All Chapters of 風に消える恋なら、それでよかった: Chapter 21

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第21話

「君のお姉さん――いや、南条千春が海外で知り合ったっていうハリウッドの映画監督さ。あれ、実は詐欺師だったんだ」悠真の語る言葉は淡々としていたが、その内容は衝撃的だった。「金も体も騙されただけじゃなくて、偽名で投資話まででっち上げて、騙し取った金を持って逃げたらしい。なのに、千春はプライドが邪魔して事実を認められなくて……気づいた時には莫大な借金を抱えてた。元々は別の道も開けていた。当時の彼女には、高峰啓介が必ず借金を清算してくれるという、揺るぎない確信があったのだ」「……それも、あの人ならやりかねないわ」夏希はため息混じりに言った。「どうせ誰かが後始末してくれるって思ってたんでしょね」「でも、高峰啓介は助けなかった」その一言に、夏希は少し驚いた顔をした。「彼が?あんなに千春のこと好きだったのに……それに私の両親は?放っておくわけないでしょ?」「うん、彼女の両親は財産をすべて売り払って借金を返した。それでも足りなくて、今は高峰啓介の援助でなんとか暮らしてるみたいだよ」かつて頻繁に聞いていたその名前も、今となってはすっかり遠い過去のもの。悠真は静かに尋ねた。「高峰啓介の近況、知りたい?いくつか情報は把握している」夏希は、はっきりと首を振った。「興味ない。私の時間は、そんな価値のない人のためにあるんじゃないから」そう言って、二人はその場を後にした。かつての家族に、ひと目も振り返ることなく。新しい旅に出る前日、夏希のスマホに電話がかかってきた。発信者は莉子だった。航空機事故の後、すぐに連絡を取り合って以来、ずっと連絡を取り続けていた大切な友人。彼女は今まで夏希が生きていたことを、誰にも漏らすことはなかった。電話を取った夏希は明るく声を弾ませた。「送ったおみやげ、もう届いた?」「もちろん!それとね、超ビッグニュースも一緒に届いたのよ!」莉子は興奮気味に語り出した。「高峰啓介、最近『人探し番組』に出てたんだけど、その後でとうとうあの家族と手を切ったみたい。援助を完全に断って、家も明け渡させて……あの三人は賃貸暮らしになってるんだけど、早速喧嘩ばっかりらしいよ。本当に千春のこと好きだったんだと思ってたけど……結局その程度だったんだね」夏希は特に驚くこともなく、淡々とした声で
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