啓介は、海の上に浮かぶ破片を見るたびに、どれか一つでも夏希に繋がっていないかと、必死で泳ぎ続けた。だが、希望は次々と裏切られ、手がかりのないまま、彼の体力は徐々に限界へと近づいていった。ついには腕も脚も動かなくなり、そのまま静かに、海の底へと沈んで行った――だが、幸いにも救助艇がすぐ近くにいた。隊員たちは素早く海へ飛び込み、意識を失った啓介を引き上げ、甲板の上に運びあげた。応急処置の末、啓介はようやく数口の海水を吐き出し、薄く目を開けた。その姿を見ていた隊員たちは、ついに彼に問いかけた。「一体何を探していましたか?」「……げほっ……」啓介は絶対に助けを求める機会を逃さない。その問いに応じ、すがるような声で答えた。「……俺の、婚約者を……あの便に乗ってたんだ……もう、一週間も経ってるのに……何の情報もなくて……お願い、どうか……助けて……」懐から取り出した防水ケースに入ったスマホを震える指で開き、夏希の写真を隊員たちに見せた。「……この子だ……もし見かけたら、どんな小さなことでもいい、教えてほしい……」周囲の救助隊員たちは皆、厳しい現実を知っていた。航空機事故での生存率は極めて低く、既に一週間が経過しているとなれば、望みは限りなく薄い。たとえ見つかったとしても、それは遺体しかない。――けれど、その事実を、目の前の男に向かって告げる者はひとりもいなかった。啓介を引き上げた隊員のひとりが、そっと肩に手を置いた。「あなたは命を賭けて彼女を探していました。その気持ちは、きっと伝わりますよ」――その言葉は、嘘ではなかった。けれど、それでも、啓介の胸には刺さった。彼にだけは分かっていた。どれほど彼女の想いを踏みにじり、どれほど長い間、真正面から向き合ってこなかったか。あの時の、あの言葉のひとつひとつを思い出すたび、胸が締めつけられるように痛んだ。「……違うんだ……俺は……最低の男なんだよ……」そう呟くと、啓介は仰向けに甲板へ倒れこみ、顔を両手で覆った。「……俺なんか、あいつの愛を受ける資格なんてなかった……全部俺のせいだ、俺が……俺が夏希を、死なせたんだ……」止めどなく溢れる涙が、指の隙間から流れ落ちていった。その後も、啓介は毎日、海岸に立ち尽くし、望みのない捜索が終わるまで離れようと
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