Semua Bab 雪の降る時、止まらぬ想いを抱えて: Bab 11 - Bab 20

咲月は本当に死んでしまった。しかし、辰樹は彼女の埋葬地さえ見つけられない。この真実が、辰樹の神経を激しく打ちのめす。涙が予期せず、一粒、また一粒と床に落ち、彼は崩れるようにソファの傍らに跪き、苦痛に身を縮める。そして、何かを思い出したかのように、床に落ちていたスマートフォンを拾い上げ、その知らない番号に電話をかける。彼は相手に、咲月が一体どこに埋葬されたのか聞きたい。咲月の情報を得るためなら、どんな代償も払うつもりだ。しかし、彼に答えたのは、機械的な女性の声だけ。「おかけになった電話番号は、現在使われておりません……」もう一度かけても、同じだった。もう一度かけても、やはり空番だった。……どうやら、その人物の目的は、わざと情報を漏らし、彼を苦しめることだけだったようだ。スマートフォンの電源が切れるまで、辰樹は力なく床に倒れ込む。涙で再び視界がぼやけ、彼は檻に閉じ込められた獣のように嗚咽する。「頼む、教えてくれ。咲月は一体どこに埋葬されたんだ？彼女に会いに行かせてくれ。少し話をさせてくれ。頼むから……」しかし、彼に答えたのは、静まり返った空気だけ。この瞬間になって、辰樹はついに咲月が自分にとっての重要性に気づいた。彼女を失うことが、これほどまでに耐え難い苦痛だとは。もしかしたら、数え切れないほどの触れ合いの中で、とっくに咲月を愛していたのかもしれない。ただ、それに気づいていなかっただけだ。あるいは、認めたくなかったのかもしれない。しかし今、咲月は死んでしまった。彼が自分の気持ちを伝える機会は、もう二度とない。辰樹が病気の時に徹夜で看病し、資金繰りに困った時に全財産を差し出し、彼の知らないところで、黙って彼のために尽くしてくれた彼女のような人は、もうどこにもいない。後悔が潮のように全身を襲い、彼を完全に飲み込んでいる。「辰樹、お前はなんて奴だ！」彼は自分の頬を激しく平手打ちし、自虐的に血が流れるまで叩き続ける。しかし、肉体的な痛みは、彼の心の中の苦しみを和らげることはできない。むしろ、さらに生き地獄へと追いやる。「ああ！」辰樹は暗闇の中で、悲鳴を上げる。枝に止まっていたカラスさえも、彼に驚いて飛び去る。朝の最初の光が辰樹の顔に差し込んだ時、彼はついに支えきれ

秘書の神田孝介（かんだ こうすけ）は、これまで辛いものを一切口にしなかった辰樹が、今、唐辛子油にまみれた具材を次々と口に運んでいるのを見て、唖然としている。一度、辰樹が誤って唐辛子を一本食べただけで一晩中吐き続けたことを覚えている。今日、なぜ急に自分を苦しめるようなことをするのだろうか。すぐにその答えを知った。辰樹は、野菜を一本挟んで向かいの器に入れ、優しく言う。「咲月、お前が一番好きな料理だよ。さあ、熱いうちに食べて。辛さが足りないかな？それなら、もっと辛いスープを足してもらおう。もうお腹いっぱい？わかった。俺が代わりに食べてあげるよ」辰樹は、向かいの空っぽの椅子に向かって独り言を言っている。まるで、咲月がそこに座っているかのようだ。真っ赤な料理を大口で食べ、腫れ上がった唇や痛む胃も気にしない。咲月の祖先は皆、辛い物好きの湘浜町の出身で、そういった食習慣の中で、辛いものなしではいられない体質になっていた。しかし、辰樹が辛いものを食べられないと知ると、彼女は自分の習慣を無理やり変え、彼に合わせてあっさりした食事を共にしていた。辰樹が何気なく尋ねた時も、咲月はただ強がって、唐辛子は食べ飽きたから、別の味を試したいだけだと言っていた。彼のためにこれほど多くのことを我慢し、犠牲にしてきたのに、彼女と一緒に一度もまともに食事をすることができなかった。罪悪感と後悔が辰樹の心を蝕み、ようやく痛みで涙を流し出す。涙と共に、自虐的に食べ物を飲み込み続ける。胃がねじれるように痛み、喉が締め付けられ、最後に「うわっ」と吐き出した。しかし、まるで苦痛を感じていないかのように口を拭い、そして食事を続ける。隣にいた孝介は、見かねて、切迫した様子で説得する。「社長、もう食べないでください……」辰樹は顔も上げずに言う。「もっと辛くするように伝えろ。まだ足りない。それから、海鮮を全種類、一皿ずつ持ってこさせてくれ」孝介は全身がこわばり、自分の耳を疑う。辰樹が海鮮アレルギーであることは、誰もが知っている。一度、海鮮スープを一口飲んだだけで、病院に運ばれて緊急の胃洗浄を受け、危うく危篤通知まで出されるところだった。今、命の危険を顧みず海鮮を食べようとしている。これは、自殺と何が違うというのか！「社長、だめです！

男たちは帽子とマスクで顔を完全に覆い、手にはそれぞれ棍棒を持っている。辰樹の心に警鐘が鳴り響き、次の瞬間、棍棒で殴り倒された。倒れたその瞬間も、辰樹は胸の彫刻をしっかりと守っている。痛みをこらえ、懐から一枚のカードを取り出し、男たちに差し出す。「このカードには一億円入っている。さっさと失せろ」リーダー格の男は、冷笑する。「俺たちは金のためじゃない。お前が持ってる、あるものに用があるんだ」辰樹は彫刻を抱く手を強く握りしめる。「何だ？」「お前が胸に抱えてる、その彫刻だ」男はそう言って、手を伸ばして奪おうとする。辰樹は、必死にそれを守り、放そうとしない。「その汚い手を放せ」男の顔つきが険しくなり、彼の腕に向かって棍棒を振り下ろす。悲鳴と共に、辰樹の手が緩み、男はやすやすと彫刻を奪い取った。「返せ、それを返してくれ。お前たちの要求は何でも聞くから……」辰樹は必死に懇願する。しかし、男は軽蔑するように彼を一瞥し、まるで馬鹿を見るような目つき。「俺たちのボスが言ってたぜ。お前がボスの気に入ったものを奪ったから、ボスが手に入れられないなら、壊すしかないってな」男が彫刻を地面に叩きつけようとするのを見て、辰樹は猛然と立ち上がり、飛びかかってくる。目は血走り、骨が浮き出るほど強く彫刻を握りしめたその姿は、まさに鬼の形相。「返せ、それを返してくれ！」男は驚き、辰樹を蹴り倒す。しかし、辰樹はまるで痛みを感じないかのように、再び飛びかかってくる。数回の攻防の末、男は完全に我慢の限界に達している。若くして有能な社長が、なぜ一つの彫刻にこれほど執着し、命さえも惜しまないのか、彼には理解できない。本当に狂っている。キラリと光るナイフを取り出し、辰樹に向かって突き刺した。鮮血が飛び散るその瞬間も、辰樹は彫刻をじっと見つめている。血まみれの手を伸ばし、虚空を通して彫刻を掴もうとする。次の瞬間、彫刻は男によって地面に激しく叩きつけられ、粉々に砕け散った。辰樹は傷口を押さえながら地面に滑り落ち、散らばった破片を見て、目から苦痛の涙を流し出す。「咲月、ごめん。お前に贈るはずだった誕生日プレゼントを、失くしてしまった。ごめん、本当にごめん……」意識が闇に沈む前、彼は男たちの嘲笑する

辰樹は震える手でスマートフォンを開き、動画のサムネイルに映る咲月の顔を見て、再び涙で視界がぼやける。一本目の動画を開くと、それは彼と咲月が大学の校門前で撮影したものだった。自分が「この動画が編集される頃には、お前から解放されてるといいな」と言っているのを聞き、辰樹は画面に飛び込んで自分を締め殺したい衝動に駆られる。その言葉通り、今は完全に咲月から解放された。しかし、彼は後悔の念に苛まれている。結婚式の翌日に咲月の父が訪ねてきたことを咲月が知らなかったと知り、辰樹の心はさらに激しく痛んでいる。とっくに気づくべきだ。彼女のプライドの高さで、自分の父親にみずからあんな真似をさせるはずがないと。思えば、何度も説明しようとしてくれたが、辰樹は一度も信じなかった。そのせいで、結婚してからの三年間、ずっと彼女に偏見を抱いていた。本当は、あんなにも優しくて、素晴らしい女性だったというのに。辰樹は震える手で次の動画を開く。自分が去った後、咲月が涙を流し、さらには気を失って倒れるのを見て、辰樹の心はまるで見えない大きな手にぎゅっと掴まれたように、息ができない。どうして、いつも日奈子の一言で咲月を見捨ててしまったのだろうか。この時こそ、彼女は自分がそばにいることを一番必要としていたはずなのに。牧野辰樹、なんて罪深い男なんだ。二本目の動画では、咲月は泣きながら過去を語っていた。辰樹が置き去りにしたこと、そして、かつて交わしたハネムーンの約束も、彼がすっかり忘れてしまっていたこと。その姿を見ていると、辰樹の心は、罪悪感でじりじりと焼かれるようだ。彼の知らないところで、咲月は自分のためにこれほど多くの涙を流していた。彼女にあんなに傷つける言葉を言った時、咲月はどれほど心を痛め、悲しんだことだろうか。辰樹の目から、大粒の涙がぽろぽろとスマートフォンの画面にこぼれ落ちる。心臓を直接握り潰されるような、耐え難い痛みが彼を襲う。三本目の動画は、彼らが一緒に映画を見た時のものだった。辰樹が動画のリプレイで、日奈子が先に赤ワインを咲月の顔にかけたのを見た時、拳は固く握りしめられる。自分が理由問わずに咲月を平手打ちしたのを見て、心には後悔しか残らなかった。画面に飛び込んで、あの得意げな自分を締め殺したいと願ってしまう。咲月がカメラに向か

道中、孝介から電話がかかってくる。「社長、奥様を陥れた件以外にも、先日あなたと彫刻を競り合い、人を雇ってあなたを刺させ、彫刻を壊させた黒幕も、前川さんです」「『さん』なんかつけるな。あれは、紛れもない畜生だ。今日、あいつに悪には報いがあるということを知らせてやる」辰樹の声は氷のように冷たく、その瞳の奥には、地獄の業火のような怒りが燃え盛っている。その姿は、まさしく地獄の修羅そのものだ。この数日間、彼の心に積み重なった苦痛と悔しさが、ようやく何らかの捌け口を見つけたようだ。日奈子がドアを開けて辰樹を見た瞬間、その顔に喜びの色が隠しきれない。いつものように甘えた声で言う。「辰樹、やっと来てくれたのね。ずっと待ってたのよ。やっぱり、私を捨てられないのね。少しでも私を慰めてくれれば、もう二度とあなたのことを怒らないって約束するわ」辰樹は日奈子を突き飛ばし、冷たく笑う。「そうか？お前は、この日が来ることをとっくに知っていたようだな。結構だ」その時、日奈子はようやく辰樹の目の中に怒りがあることに気づいた。彼女はびくりと肩を震わせ、気まずそうに言う。「辰樹、どうしたの？誰が怒らせたの？」次の瞬間、辰樹に首を強く締められた。「日奈子、悪いことを尽くした。今日が、お前の命日だ」日奈子は必死にもがき、顔は紫色になり、目には絶望の色が浮かんでいる。どれくらいの時間が経っただろうか、辰樹はまるで壊れた人形のように彼女を床に投げ捨てる。日奈子は、自分の所業がすでに露見したことを悟り、心に恐怖がよぎる。辰樹の容赦ない手段を誰よりも知っている。ゆっくりと辰樹の足元に這い寄り、懇願するように言う。「辰樹、私が間違ってたわ。あんなことをするべきじゃなかった。でも、私はただ、あなたを愛しすぎただけなの。咲月にあなたを奪われるのが怖かったのよ。お願い、今回だけは許して。もう二度としないから……」辰樹の、見下すような眼差しは、まるで氷のように冷たい刃だ。「俺に許しを請うべきじゃない。咲月に許しを請うべきだ」辰樹の言葉に、日奈子は心の中で驚いた。「何？でも、咲月……咲月はもう死んだじゃない……」「だから、お前にはあっちへ行って、咲月に謝ってもらう。だがその前に、お前には彼女が受けたすべての苦痛を味わってもらう」