達也は典子を連れて母の晶子(あきこ)に会いに行った。典子の不安は、晶子に会った瞬間にすっかり消え去った。晶子は車椅子に座り、穏やかに彼女の手を握り、優しいまなざしで彼女をじっと見つめている。晶子が彼女に最初にかけた言葉はこれだ。「達也と結婚するなんて、本当にご苦労だったね。あの子は忙しくて家にいることが少ないの。どうぞ気を悪くしないでね」典子は胸の奥がきゅっと締め付けられるような、言いようのない切なさを覚える。彼女はようやく、達也がなぜあんなにも急いで結婚しようとしたのかを理解した。噂によれば、晶子の余命は長くなく、彼女の一番の願いは、達也が家庭を持ち、支えてくれる伴侶がいることだ。達也は昔から親孝行で、ちょうどその頃典子は窮地に陥っていて、彼の結婚したいという思いを叶えることになったのだ。晶子は達也を席から外させ、典子を見てとても満足そうだ。「典子、あなたに会ったことがあるのよ」典子は少し驚く。「達也は私の息子で、彼のことはよくわかっている。彼は自分のことは自分で決めたがる子で、以前私が何人かの娘さんを紹介したけど、一度も会おうとしなかった。ただ『心に決めた人がいる』と言っただけだ。ある日、彼の携帯であなたの写真を見たことがあるの。彼は酔ってこっそり眺めていたところを私が見つけたの。あなたはとても綺麗で、一目で覚えてしまったわ」晶子は病気でありながらも、まるで子供のように優しい。「さっきあなたを見た瞬間から、いい子だと思う。さすが我が子、見る目があるわね」典子の目にはうっすらと涙がにじんでいる。綾子が自分にどれほど高圧的で、辛辣で、意地悪だったかを思い出し、彼女は心の底から上流階級の奥様たちに恐怖を感じていた。だが、晶子はそういった人たちとはまったく違っている。「典子、達也と結婚することに何も心配はいらない。私の病気のために、ずっと拠点を海外に置いている。こっちにはそんなに厳しいしきたりもないし、もし将来本当に帰国することになっても、白野家のことはすべて彼が決める。誰もあなたに口出しなんてできないわ。母親としての唯一の願いは、あなたたちが幸せでいてくれること。ただそれだけ。あなたには彼のそばにいて、支えてやってほしい。達也がここまで来るのは本当に大変苦労した。もし私までいなくなったら、彼はひとりぼっちになって
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