Semua Bab トップシークレット☆桐島編 ~お嬢さま会長に恋した新米秘書~: Bab 61 - Bab 70

87 Bab

リミット PAGE12

 絢乃さんご自慢の特製ケーキはシンプルなイチゴのホールケーキで、スポンジ生地に香りづけとして少量のリキュールが練りこまれていたらしい。源一会長が、甘いものがあまりお好きではなかったからだという。そういうところからも、絢乃さんのお父さま思いなところが窺えた。 ――たっぷりのごちそうがなくなった頃、プレゼント交換が行われた。 絢乃さんは里歩さんにマフラーと手袋を、お父さまにクッションを、そして僕にもネクタイを下さった。……が、赤いストライプ柄の入ったネクタイに僕は正直困ってしまった。僕の持っているスーツはほとんどがグレーの地味なものだったので、この柄はちょっと合わないんじゃないかと思ったのだ。「えっ、そうかなぁ? 濃い色のスーツに合わせたらステキだと思うけど」 僕にはちょっと派手じゃないか、と感想を漏らすと、彼女からはそんな答えが返ってきた。 濃い色のスーツ……、持っていないから新調するしかないか。会長秘書になるんだし。でもちょっと痛い出費だな……と僕はこっそり心配していた。 里歩さんは絢乃さんにコスメを贈っていたが、僕と源一会長は何も用意していなかった。 二人してそのことを申し訳なく思い、弁解すると、「二人は参加してくれただけで十分」と絢乃さんは笑いながらおっしゃった。 「そうですか? 何だか、招待されたのに手ぶらで来たのが申し訳なくて。……あ、そうだ。絢乃さん、後ほど少しお付き合いして頂けませんか? お見せしたいものがあるので」 せめてプレゼント代わりに、絢乃さんとお約束していたとおり、新車のお披露目をしようと思い立った。そのことを彼女に耳打ちすると、「……えっ? うん、いいけど」と頬を染めながら頷き、その光景を加奈子さんと里歩さん、源一会長とお手伝いさんまでもがニヤニヤしながら眺めていた。 もしやこの人たちはみんな、僕と絢乃さんが親しくしていることをご存じなのか……!? 僕はこの時、背中に冷や汗が伝うのを感じた。
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ヒーローになる時 PAGE1

 ――その後、僕は絢乃さんと里歩さんと三人で、部活の話題で大いに盛り上がった。 里歩さんは中等部に上がってからずっとバレーボール部に所属されていて、中等部でもキャプテンを任され、その当時もキャプテンとしてチームを引っ張る立場におられたらしい。……ただ、茗桜女子は強豪校ではないため、あくまで「バレーボールは楽しくプレイできればいい」というスタンスでいたそうだ。 そのうえ、ポジションも花形のウィングだったというから、僕にしてみれば華やかすぎて(?)羨ましい限りである。やっぱり、目立つ絢乃さんには同じくらい目立つ里歩さんのような友人ができるのだろうか。……ん? ちょっと違うか。 彼女が長身でスタイルもいいので、思わず口に出して褒めたところ、絢乃さんから「それ、セクハラだよ」とお咎めを受けた。――里歩さんは笑いながら「ありがとうございます」と軽く流されただけだったが。「――ねえ、桐島さんは何か部活やってたんですか?」 逆に里歩さんから質問を受け、「わたしも聞いたことなかったな」と絢乃さんにまで乗っかられて、僕はたじろいだ。 中高の六年間、ずっと帰宅部だったなんて答えたら、このお二人はガッカリするだろうか。……特に絢乃さんが。 僕はけっこう身長が高い方で、しかもほどほどに筋肉もついているのでスポーツをやっていたのでは、と誤解されがちなのだが、実はかなりの運動オンチだ。筋肉がついたのは社会人になってから、総務課でこき使われていたためだ。「…………いえ、何にも。中学高校とずっと帰宅部だったので」 とはいえ、ウソをつくのがキライな性分なので正直に白状すると、絢乃さんにガッカリされている様子はなかった。「なぁんだ。じゃあわたしと同じだね。ちょっと……嬉しいな」 むしろ、僕とご自身の間に共通点を見つけられて嬉しそうにはにかんでいた。 でも、同じ帰宅部でも多分、僕と彼女とでは事情や理由が違っていたはずだ。 絢乃さんは放課後も習いごとやら何やらでお忙しかったから、部活になんて入っている余裕がなかったのだろうが、僕はただ単に先輩後輩の関係に煩わされるのが面倒で入りたくなかっただけなのだ。 それに、元々僕は平和主義者なので、部活内での揉め事なんかゴメンだったし。……これは運動部・文化部問わず、どちらにも言えることだ。「え~っ!? なんか意外~!」 対して、里歩
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ヒーローになる時 PAGE2

   * * * * ――午後八時少し前にパーティーはお開きとなり、源一会長は「疲れたから先に休む」とおっしゃって、加奈子さんに車いすを押されて寝室にお戻りになった。 そして加奈子さんがリビングに戻ってこられると、お手伝いさん(お名前は安田史子さんとおっしゃるそうだ)も含めた僕たち五人で後片付けをし(「男手があって助かる」と絢乃さんや加奈子さんからものすごく感謝された)、それがすっかり済んだ八時半ごろ、里歩さんが帰られた。外は粉雪が舞っていて、ミニスカート姿だった里歩さんはちょっと寒そうに見えた。 加奈子さんは会長の様子を見に寝室へ行かれており、安田さんも何やら別の用でリビングからいなくなっていて、気がつくとそこには僕と絢乃さんの二人きり。――秘書室に異動したことを彼女に打ち明けるなら今しかない! 僕は腹を括った。「――あの、絢乃さん。僕もそろそろ失礼しようかと思ってるんですが、よかったら今から僕の新車、ご覧になりますか?」「えっ?」 僕は明らかに、この話題の導入部分をミスった。これじゃ口説こうとして言ったみたいじゃないか!「先ほど、『お見せしたいものがある』と言ったでしょう?」「あ……」 絢乃さんは戸惑っておられたが、プレゼント交換の時に僕が言ったことを口実に使うとすぐにピンときたようだった。やっぱり、絢乃さんは頭の回転が速い人なのだ。「やっと納車されたので、今日乗ってきたんです。絢乃さんに真っ先にお披露目するとお約束していたもので」「そういえば……、そうだったね。じゃあちょっと待ってて。部屋からコート取ってくるから」 確かに、絢乃さんの服装では寒そうだったので、彼女がリビングを出ようとしているところへタイミングよく、彼女のダッフルコートを手にした安田さんがやってきた。……もしや、僕と絢乃さんの会話をどこかに隠れて聞いていたのだろうか?「ありがとう、史子さん。じゃあ、ちょっと出てきます」「今日はお世話になりました。楽しかったです。それじゃ、僕はこれで失礼致します」 絢乃さんがお手伝いさんに手を振ると、僕も彼女に丁寧なお礼を述べ、バッグと新車のキーを掴んで絢乃さんをカーポートまでお連れした。絢乃さんは、茶色のロングブーツ――これも多分、安田さんがシューズクローゼットから出しておいて下さっていたのだろ
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ヒーローになる時 PAGE3

「――これが僕の新車です」「わぁ、カッコいい! これってけっこう高いヤツだよね?」 僕の新車を紹介すると、絢乃さんはそれがすぐにお父さまの愛車と同じメーカーのものだと分かって下さった。それと同時に、「これなら四百万くらいかかっても当然だ」と理解して下さっただろうか。 僕が新車として購入し、今も愛車となっている〈L〉はいわば高級車の部類に入る。絢乃さんに乗って頂くならせめてこれくらいのグレードでないと、と選んだのだが、かえって気を遣わせてしまっただろうか?「はい。内装も、絢乃さんに乗って頂くことを考えてこの色を選びました。どうですか?」「うん、すごくステキだし、乗り心地もよさそう。でも、どうしてわたしのためにそこまで?」 彼女はすぐに、僕の言葉の裏にある事情を汲んで下さったらしい。――僕がこのクルマを購入したのがご自身のためである、と。だとしたら、そういう決断をした理由を僕もキチンと打ち明けなくては。「実は……ですね、こうしたのは僕の異動先にも関係があって……。もう、絢乃さんには申し上げた方がいいかもしれませんね。僕の異動先というのは、人事部・秘書室なんです」「秘書……?」 絢乃さんは僕の言葉に瞬いた。ご自身がお父さまの正式な後継者となっていること――ひいては次期会長候補であることを、彼女はまだご存じないはずだった。が、首を傾げずに瞬いたということは、きっとそのことにも気づかれているはずだと僕は思った。 ただ、やっぱりこのタイミングまで引っ張ったのは失敗だったかな、と僕は内心自分に舌打ちした。もしかしたら、彼女は僕が意図的にこのタイミングを狙っていたと気を悪くされたかもしれないのだ。「はい。こういう言い方は誤解を招きそうですが、お父さまの跡を継がれるのは十中八九あなたでしょう。僕は万が一そうなってしまった時のために、異動や新車購入を考えていたんです。あなたを支えるため、あなたのお力になるために」 僕は少々言い訳がましくなったが、慎重に言葉を選んでその経緯を彼女に打ち明けた。彼女を傷付けてしまったらどうしよう、という思いで指先が冷えていくのを自分でも感じていた。
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ヒーローになる時 PAGE4

「本当は、話すべきかどうか、ここに来るまで迷ってたんです。でも、絢乃さんが『もう覚悟はできている』とおっしゃったので、僕も打ち明ける決心がつきました」  こう言った時、僕の声が少し震えていたことに絢乃さんは気づかれていたようだ。優しく、そして落ち着いた声で僕にこう言って下さった。 「うん、大丈夫。パパのことはもう覚悟できてるし、貴方がパパの死を望んでたなんて思うわけないよ。だってわたし、貴方がそんな人じゃないってちゃんと知ってるから」  やっぱり、この人はただ者ではないと思った。どっしり構えているというか、肝が据わっているというか、女子高生にしてこの落ち着きはさすがとしか言いようがなかった。ご両親どちらに似てもきっとこうなるだろう。 「だから桐島さん、これから先、わたしに力を貸して下さい。わたしのことを全力で支えて下さい。よろしくお願いします」  彼女は真剣な眼差しとともにそう言い、僕と同じくらい冷えた右手を僕に差し出した。 「はい。誠心誠意、あなたの支えになります。こちらこそよろしくお願いします!」  その生半可ではない覚悟を受け止めた僕は、両手で彼女の右手を包み込むようにして握り返した。 指先が冷たい人は、温かい心の持ち主なのだと聞いたことがある。僕はそんなところからも、彼女のお父さまに対しての優しさや深い愛情を感じ取ることができた。 「ご存じですか? 手が冷たい人は温かい心の持ち主なんですよ。僕はよく知っています。絢乃さんがお父さま思いの心優しいお嬢さんだということを。そんなあなただからこそ、僕もあなたのお力になりたいと思ったんです」  僕がそう言った時、彼女は少し俯いた。が、その時少し涙ぐんでいるように見えたのはきっと僕の気のせいではないだろう。 だって、僕は知っていたから。お父さまが倒れられた時にも、余命宣告を受けた時にも、絢乃さんがどれほど心を痛めておら
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ヒーローになる時 PAGE5

    * * * *  ――その後、絢乃さんとお父さまとの間でどんな会話がなされていたのか、僕は知る由もなく。 翌日、アパートで出勤の支度をしていた僕は、絢乃さんから驚くべき連絡を受けた。 「――絢乃さん、おはようございます。どうされました?」 『ごめんね、朝の忙しい時間に。……実はね、パパが目を覚まさなくて。このまま入院させることになりそうなの。ママがさっき救急車を呼んで』 「…………えっ? そうですか……。じゃあ、今は救急車の到着を待たれているところなんですね?」  彼女の焦燥感漂う声に、僕はショックを受けた。前日の夜まで、源一会長は僕ともお話をされていたのに。クリスマスパーティーだってあんなに楽しまれていたのに。やっぱり前夜のあの言葉は、彼から僕に向けての遺言だったのか……。 『うん。あと二~三分で来ると思う。でもね、わたし思ったの。パパはもう、このまま目を覚ますことはないんじゃないか、って』 「そんな……。絢乃さん、気を強く持って下さい。まだそうと決まったわけでは」  絢乃さんは泣いていなかったが、すでに最悪の事態も覚悟されているようだった。でも、病院に――それも主治医であるドクターが勤務されている大学病院に搬送されれば、わずかでも助かる可能性が残されていたのだ。 『ううん。わたしね、昨夜パパから言われたの。「絢乃、ママと篠沢グループの未来をよろしく頼む」って。多分あれ、パパからの最後のメッセージだったんだよ。パパはあの時、自分がもう助からないんだって悟ったんだと思う』 「…………
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ヒーローになる時 PAGE6

 出社した僕は、朝の挨拶もそこそこに小川先輩に声をかけた。 「――先輩、会長が病院に搬送されたそうです。出勤前に絢乃さんから連絡を頂いて」 「…………そう。で、ご容態は?」  先輩は明らかにショックを受けている様子だった。彼女が会長に道ならぬ恋をしていたことを知っていた僕は、会長の病状についてどう話そうか躊躇した。 「昨夜から昏睡状態で、朝目を覚まさなかったそうです。絢乃さんがおっしゃるには、このまま二度と目を覚まさないかもしれない、と。――昨夜、絢乃さんにおっしゃってたそうですよ。『加奈子さんと、篠沢グループの未来をよろしく頼む』って。絢乃さんはそれがお父さまの遺言なんじゃないかって」 「……そっか。もう助からないんだ、会長。…………参ったなぁ」 「すいません、先輩。俺、こんなこと先輩に話すべきじゃなかったっすよね」  今にも泣きそうに顔を歪ませていた先輩に、僕は申し訳ない気持ちになった。 「ううん、桐島くんのせいじゃないよ。話してくれてありがとね。あたしの方こそごめん」  ――先輩がその日一日ボロボロで、仕事にならなかったのは言うまでもない。広田室長も小川先輩の会長への想いには気づかれていたらしく、彼女がミスを咎められることはなかった。     * * * *   会
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ヒーローになる時 PAGE7

 ――というわけで二日後(源一会長がお亡くなりになった日が友引だったのだ)、僕は黒のスーツに黒のネクタイを締め、篠沢商事二階の大ホールで営まれた源一会長の社葬に参列した。 葬儀は総務課が取り仕切っていて、司会進行は久保が行うことになった。もしもまだ総務課にいたら、僕もまた島谷課長にこき使われていたことだろう。 前日の夜に絢乃さんから電話があり、お通夜で公開された遺言書によって、彼女が正式に源一会長の後継者として指名されたと聞かされた。それに反発した親族によって、加奈子さんだけではなく絢乃さんまで敵視される事態になったことも。 それでも彼女は「大丈夫」と気丈におっしゃって、マイナスの言葉を決して吐き出そうとしなかった。 親族から目の敵にされることは怖かっただろうし、お父さまやご自身のことであることないこと言われるのは腹立たしいことだったろうに。内心では相当ストレスを溜め込んでいたことだろうと思う。 そんな彼女を守るために、僕は秘書になったのだ。それまでごく平凡に人生を送ってきたこんな僕が、ヒーローになる時がやってきたのだと、葬儀当日の朝、身支度を整えながら武者震いしたことを今でも憶えている。 受付で芳名帳に記入をして香典を渡すと、総務課時代の先輩だった女性が「桐島くん、ご苦労さま」と頭を下げてくれた。「聞いたわよ。あなた、絢乃お嬢さまの秘書になったんだって?」「はい、今日も絢乃さんのことが心配で来たんです。源一会長とはちょっとしたご縁もありましたし。――絢乃さんはもう中に?」「うん。加奈子さまとお二人で、弔問客を出迎えてらっしゃると思う。……そういえばほんの少し前、お嬢さまのご友人だっていう女の子が来てたわ。背の高い、ボブカットの」 彼女が挙げた特徴から、その女性は里歩さんだろうと確信した。里歩さんとは一度お会いしただけだったが、彼女がとても親友想いな女性だということを僕も感じていた。そんな彼女なら、お父さまを亡くされてショックを受けておられた絢乃さんを慰めに葬儀にも参列されるだろうと僕は思った。「それ、多分僕も知ってる方だと思います。ありがとうございます」 ――ホールの中へ入っていくと、ブラックフォーマルのスーツに身を包んだ加奈子さんとシックな黒のワンピース姿の絢乃さん、そして大人っぽいダークグレーのワンピース姿の里歩さんを見つけた。 喪
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ヒーローになる時 PAGE8

 彼女の目に涙はなく、僕はその理由をすべくホール内を見まわし、考えを巡らせた。 まず気になったのが、そこに流れていた禍々しい空気。お電話でも聞かされていたが、絢乃さんたち親子に対する親族の憎悪は相当なものらしい。他人の僕でさえ不快に感じるほどだった。 そして、そんな悪意の目に晒されている絢乃さんを守るようにピッタリと側に寄り添う里歩さんの姿。彼女もきっと、葬儀会場とは思えないほど殺伐とした雰囲気に不快感を抱いていたに違いない。だからこそ、絢乃さんをその殺気立った空気から守ろうと睨みをきかせていたのだと思う。 そしてまた、絢乃さんご自身もこの人たちの前では泣かずにいようと心に決められていたのだろう。弱みを見せないことで、この人たちからご自身のメンタルを守ろうとして。……もちろん、理由はそれだけではないかもしれないが。 ……なるほど。これじゃ絢乃さんも泣いていられないわけだ。――納得できた僕は、絢乃さんたちの座っていらっしゃる親族席の方へと歩いていった。「――桐島さん、ご苦労さま」 そんな僕に気づき、絢乃さんが声をかけて下さった。やっぱり彼女は無理をしているな、と僕は思い、心が痛んだ。本当は笑えるはずなんてないのに、うっすらと笑顔を張り付けていたからだ。こんな時は無理に笑顔を作らなくても、何なら真顔だって僕は別に構わなかったのに。 「絢乃さん、この度はご愁傷さまです。――ああ、里歩さんも来て下さったんですね。ありがとうございます」 僕は殊勝にお悔やみの言葉を述べ、小さく会釈して下さった里歩さんにも参列して下さったことへのお礼を言った。 里歩さんはどうやら、(もちろん、ご自身が参列したかったお気持ちもあっただろうが)中川家の代表としていらっしゃっていたようだ。彼女のご両親は経営コンサルタントの事務所を開いておられて、亡くなった源一会長とも仕事上のお付き合いがあったのだとクリスマスパーティーの日に絢乃さんから聞いていた。「ああ、いえいえ。ウチの両親も絢乃のお父さんにはお世話になってましたから。桐島さん、絢乃の秘書になったそうですね」 里歩さんは真面目な顔で、僕にそう切り出した。が、どうして彼女がそのことをご存じなのか、僕は疑問に思った。絢乃さんからお聞きになったのだろうか?「はい。絢乃さんはこれから篠
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ヒーローになる時 PAGE9

 その言葉に困惑されたらしい絢乃さんがすかさず「それは言い過ぎだ」と里歩さんを咎められたが、彼女の言葉は間違っていなかったし、僕には分かっていた。里歩さんはおそらく、僕の覚悟がどの程度なのかを問いたいのだと。絢乃さん思いの彼女らしいと僕は思った。「いえ、いいんです。もちろん、僕もそのつもりでいますよ。絢乃さんのことは僕が全身全霊お守りすると決めましたから」 なので、僕は里歩さんに気を悪くすることなく、真正面から自分の覚悟を言葉にして伝えた。これで納得してもらえるかどうか自信はなかったが、これが僕の精一杯の覚悟だったから。「……それならいいんです。ごめんなさい、偉そうなこと言っちゃって。絢乃のこと、これからよろしくお願いします。――絢乃、ホントごめん」 里歩さんは納得して下さったようで、僕に謝られた後、改めて絢乃さんのことを託された。「ううん、いいよ。ありがと」 親友に謝られた絢乃さんは、これにも笑顔で応じられていたが、彼女のメンタルはきっと壊れるか壊れないかギリギリのバランスを保っていたのだろう。彼女はそれほどタフではないから。というか、父親を亡くしたばかりの十七歳の女の子がそんなに強いわけがないのだ。  だからこそ、僕が秘書として彼女を守らなければ――。平和主義者だし、格闘技なんかやったこともないし、頼りないヒーローで申し訳ないが。メンタルの強さにだけは自信がある。彼女が親族たちから集中砲火を浴びせられた時の盾くらいにはなれるだろう。  ――会長の社葬は一般的な献花式で行われた。篠沢家は無宗教だからだそうだ。  出棺前になって里歩さんがお帰りになり、僕は自分の愛車で加奈子さんと絢乃さんを斎場までお連れすることにした。「うん。桐島さん、よろしくお願いします」「桐島くん、ありがとう。安全運転でよろしくね」 お二人を後部座席にお乗せすると、僕はハンドルを握って霊柩車のすぐ後ろをついていった。
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