Semua Bab トップシークレット☆桐島編 ~お嬢さま会長に恋した新米秘書~: Bab 41 - Bab 50

87 Bab

秘書としての覚悟 PAGE4

「分かりました。そういう事情でしたら、僕も絢乃さんのためにひと肌脱ぎましょう。……あ、ですが一つ問題が」 僕は二つ返事で承諾しようとしたが、肝心なことを忘れていた。社会人である僕と高校生だった彼女とでは生活パターンが違ったのだ。絢乃さんを学校帰りに迎えに行くということは、僕は会社を早退しなくてはならないということだ。僕が仕事を終えるまで彼女に学校で待ってもらうわけにはいかないのだから。 そのことを加奈子さんに伝えると、「そのことなら心配要らないわよ」という返事が返ってきた。『あなたが会社を早退するかもしれないことは、もう室長の広田さんに伝えてあるから。あなたが仕えるべきボスは絢乃なのよ。だからそこは気にしなくてよろしい』 なんと、いつの間にそういうことになっていたのか。さすがは元教師の加奈子さん、色々と手回しのいいことで。「つまり、根回しもバッチリというわけですね。分かりました」『ま、そういうことだからよろしくね。あ、そうだ。あなたが部署を変わったこと、まだあの子には話してないわよ。あなたもまだ伝えてないでしょう? でも、私から伝えるのもおかしな話だものね』「……そうですか」『じゃあ、とにかくそういうことで。そろそろ失礼するわね』 僕も「はい、失礼致します」と言って通話を終えたが、小川先輩が怪訝そうな顔で僕を見ていた。「…………先輩、何ですか?」「桐島くんさぁ、絢乃さんにまだ異動したこと話してないの?」「はい。別に隠しているわけじゃないんですけど、何ていうか……。俺が部署を変わったって聞いたら、絢乃さんはきっと理由を知りたがるじゃないですか。でも、その理由を話したらきっと、あの人はお父さまの死が近づいていることをイヤでも意識してしまうんじゃないかと思うと……」 せっかく前向きに、お父さまの残された命の期限と向き合うようになった彼女の明るさを、そんなことで奪ってしまいたくなかった。「でも、いつかは話さなきゃいけないっていうのはあなたも分かってるんだよね?」「それは分かってます。ただ、今じゃないかな……って。あくまでタイミングの話で」 こういう大事なことは、言うタイミングを間違えると相手に大きな誤解を招いてしまう。――これはあくまで僕個人の経験から学んだことだが。 いよいよお父さまの死期が迫ってきたというタイミングで言わなければ、僕が
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秘書としての覚悟 PAGE5

「桐島くん、それ、かえって逆効果なんじゃないかな。リミットギリギリになって言う方が、『この人、パパが危なくなるタイミングを狙ってたんじゃないか』って絢乃さんに思われるとあたしは思うんだけど」「…………確かに、そうかもしれないっすね」「でしょ? だったら早い方がいいと思うけどなぁ。タイミングを遅らせれば遅らせるほど、あなたも言いにくくなるだろうし」「……分かりました。じゃあ……とりあえず、秘書室だってことは伏せて、異動したってことだけは早めにお伝えしようと思います」 僕の中で葛藤はあったものの、とりあえず僕側が譲歩する形でこの話題は終わった。「――ところで先輩。源一会長が亡くなられた後、先輩はどうするんですか? 会長秘書は二人も要らないですよね」 源一会長亡き後、後継者となられるのは絢乃さんの可能性が大だった。僕が彼女の秘書に付くことになれば、源一会長の下で秘書として働いていた小川先輩はハブられる形になる。……ちょっと言い方は間違っているかもしれないが。「そのことなんだけどね、あたし、どうやら村上社長に付くことになりそうなの。何でも、社長秘書の横田さんが年内一杯で会社を辞めることになったらしくて。……実家の家業を継ぐんだって」「そうなんですか。横田さんのご実家って確か、湯河原の温泉旅館でしたっけ」 横田司さん(ちなみに男性である)は当時三十二歳で、温泉旅館を営むご実家の長男だったらしい。六十代のご両親がお元気だったので、家業は継がなくていいと言われて東京で就職したが、女将だったお母さまが体調を崩され、急きょ家業を継ぐことになったそうだ。「うん。ウチの社員旅行でもお世話になったよね。まぁでも、あたしは会社を辞めるわけじゃないし、会社に残るから、何かあったらいつでも相談に乗るよ」「はい」 まだ慣れない秘書の業務に追われる中で、小川先輩というよき相談相手が身近にいてくれて、僕は恵まれているなぁと思う瞬間だった。
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秘書としての覚悟 PAGE6

   * * * * 僕は十一月の初旬、自動車メーカーの正規ディーラーを訪れ、新車の購入契約をした。外側の塗装や内装をカスタムしたこともあり、納車には半月から一ヶ月ほどかかると言われた。 その分費用はトータルで四百万円ほどかかってしまったが、それが僕の秘書としての覚悟の証明になるなら安いものだと思えた。 シートのカラーが自分で選べたので、僕は数あるカラーの中から上品なワインレッドをチョイスした。絢乃さんのイメージなら、どキツいピンク系よりもそちらだろうと思ったからだ。それに、ワインレッドだとシートの生地がベルベット地になるので乗り心地もよくなるだろうと。 新車と引き換えに、それまで散々こき使いまくったオンボロのシルバーの軽自動車は下取りしてもらうことにした。納車前に売っ払ってしまうと、僕の通勤手段がなくなってしまうからだ。当然のことながら、絢乃さんをドライブにお連れすることも不可能になってしまう。「売っ払っちまうくらいなら、なんでオレに譲ってくんなかったんだよ!?」 兄は(もちろん普通自動車の免許は持っている)文句タラタラだったが、だったら兄貴が車検代とか維持費払えるのかと訊いたところ、反論がなかった。どうやらそっちの経費は僕に丸投げするつもりだったらしい。いくら篠沢商事の給料が飲食系よりいいとはいえ、二台分のクルマの維持費を払うなんて冗談じゃない。こっちの生活が成り立たなくなるじゃないか。 ――なんてことがありつつ、僕は時々絢乃さんを放課後のドライブにお連れするようになったのだが……。「異動しました」の一言を彼女に告げるタイミングがなかなか掴めないまま、一ヶ月以上が経過した。気がつけばその年もあと一ヶ月を残すところとなり、クリスマスが近づいていた。  小川先輩の言ったとおり、大事なことは話すタイミングをズルズルと引き延ばせば引き延ばすほど言いにくくなる。そんな中で源一会長の命にもタイムリミットが迫っていて、僕は焦り始めていた。 せめて、よく会社を早退するようになった僕に疑問を抱かれた絢乃さんの方から切り出してはくれないだろうか、と何とも他力本願なことまで考えるようになっていた。が、ある日それが叶ってしまった。
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秘書としての覚悟 PAGE7

 ある日の午後、僕は例によって八王子まで学校帰りの絢乃さんをクルマでお迎えに行った。仕事は三時で切り上げ、早々に退社して。 その日は世界一の高さを誇る墨田区の電波塔に行きたいという彼女のために、クルマを走らせていたのだが。 僕が新車を購入したという話に驚を隠せなかった彼女は、どういう話の流からか僕がいつも会社を早退していることへの疑問を口に出された。「……っていうか桐島さん、今日も会社早退してきたんだよね? 大丈夫なの?」 もしかしたら、自分のためにいつも会社を早退しているから僕の会社内での立場が危うくなるのでは、と心配に思われたのかもしれない。 なかなか言い出せなかった僕に助け船を出して下さる形になった絢乃さんには感謝したが、内心では「なんで早く言わなかったんだ、俺のバカヤロー!」と自分自身に罵声を浴びせたくなった。そのせいで、彼女に余計な心配をかけてしまったかもしれないのだ。「大丈夫ですよ。……実は僕、以前から総務課で上司のパワハラ被害に遭ってまして、部署を異動することにしたんです。で、今は異動先の部署の研修中で早く退勤させてもらってるんです。お母さまの計らいで」 僕のパワハラ被害のことは、初対面の時にそれとなく匂わせていたので、ここまでは無難にスラスラと言葉が出てきた。 案の定、彼女は僕の異動先も知りたがった。ここで話してしまえば僕は心のつかえが下りて楽になれたかもしれないが、絢乃さんの心を曇らせてしまうのは本意ではなかったため、「言えるタイミングが来たら、真っ先に絢乃さんにお伝えします」とお茶を濁した。でも聡明な彼女は、その言葉の裏で「その時が来ないでくれればいのに」と僕が思っていたことに気づいて下さったようだ。それ以上詮索されることはなかった。「あと、新車も真っ先にあなたにお披露目しますね。楽しみにしていて下さい」 取り繕ったように新車の話題に戻すと、「楽しみにしてる」と彼女は笑顔でおっしゃったので、どうやら話を逸らすことには成功したようだった。  そして、僕は漠然とだが気がついた。絢乃さんはどうやら、本当に僕に好意を抱いているらしいことに。――それまでは女性の真意を信じられなかった僕も、これだけは信じてもいいのかもしれないと自然と思えた。   * * * * タワーの入館チ
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秘書としての覚悟 PAGE8

 それにしても、この人は月々のお小遣いをいくらもらっているんだろう? ――僕はそんな疑問に頭をもたげた。チケットを購入している時に彼女の長財布の中がチラッと見えたが、千円札や五千円札の他に一万円札が何枚も入っているように見えた。多分、十万円に少し欠けるくらいでサラリーマンの僕の所持金より多い。一般的な女子高生が持ち歩く金額ではないよな……。 そんな些細なことからも自分と彼女との格差を感じ、僕は落ち込むのだった。「――わぁ……、スゴくいい眺め!」 地上三百五十メートル地点にある天望デッキのガラス窓にへばりついた絢乃さんは、女子高生らしく無邪気に歓声を上げた。彼女はどうやら高いところも苦手ではないらしい。 ちなみに、源一会長には高所恐怖症の気があったらしいと絢乃さんがおっしゃっていた。そんなお父さまに遠慮して、生まれて十七年以上このタワーに上ったことがなかったのだと。 窓の外に広がる、まるでジオラマ模型のような東京の街並みを見下ろす彼女の姿を見て、やっぱりこの人は生まれながらにして大きな組織のトップに立つべき人なんだと僕には思えた。「気分転換できました?」「うん! 来てよかった。桐島さん、連れてきてくれてありがとね!」 僕が訊ねると、満足そうに頷く彼女の表情は明るかった。普段とは違う景色をご覧になれば気分も変わるし、息が詰まりそうな過酷な現実から、彼女をひとときの間だけでも解放して差し上げられる。彼女はきっと、本当は日ごとに近づくお父さまとの別れに心を痛められ、泣きたいのを堪えて必死に明るくふるまっておられたのだろう。だからせめて、僕の前だけでも等身大の女の子でいてほしいと願っていた。僕はそのために、秘書になろうと決めたのだ。 そこでそれとなく、絢乃さんに毎月のお小遣いの額を訊ねてみると、彼女は「毎月五万円」と屈託なく答えて下さった。でもブランドものは好きではないし、高校生の交際費なんて限られているから多すぎるくらいだとおっしゃった。だから財布の中があんなにパンパンになっていたのだ。「お嬢さまは金使いが荒い」というイメージしか持っていなかった僕は正直驚いたが、絢乃さんは人並みの金銭感覚を持ち合わせているらしく、なかなかの節約家であるらしい。お嬢さま育ちとはいっても、婿養子だったお父さまは元々一般社員だったし、お母さまも教師だった頃
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秘書としての覚悟 PAGE9

 お父さまとは以前よりよくお話をされるようになったらしい。 父親と娘というのはどこの家庭でも没交渉というか、あまりいい距離感ではないと思っていたが(いわゆる「パパウザい!」的な?)。絢乃さんとお父さまの場合はそれに当てはまらなかったようだ。夕焼けに染まりながら目を細めて話される絢乃さんは、お父さまへの愛情が全身から溢れ出していて神々しいくらいだった。「余命宣告された時はショックだったけど、今はパパと過ごす時間の一分一秒が尊く思えるの。そう思えるようになったのは貴方のおかげだよ。桐島さん、ホントにありがと」 そう語られたように、彼女はお父さまの命のリミットと真摯に向き合われているのだと分かり、僕も嬉しかったし、そんな彼女のことがより愛おしく感じた。「感謝されるようなことは何も」と謙遜で返したが、本当はベタ褒めされるのが照れ臭かっただけだ。「――そういえば、もうすぐクリスマスですね。絢乃さんはもう予定が決まってらっしゃるんですか?」 こんな質問をしたのは、あわよくば彼女が僕と一緒にクリスマスを過ごしてくれるのではないか、という淡い期待もあったからかもしれない。デートなんておこがましいことは言えないが、せめてメッセージアプリで繋がって、同じ時間を共有するくらいならバチは当たらないだろう、と。正直、もう〝クリぼっち〟からは脱却したかったのだ。 絢乃さんは「まだ特にこれといっては」という答えの後、僕に「彼女と過ごしたりするの?」と質問返し。 こんなことを訊くということは、もしかして……!? 彼女も僕と過ごしたがっているのか!? 待て待て俺! 女性不信はどこに行った!?「いいえ、僕もまだ何も。というか彼女はいないので、今年もきっとクリぼっちですね……」 肩をすくめ、余裕をぶっこいて答えたつもりだったが、本当は心臓バクバクだった。ちなみに脳内BGMは超ロングヒットのクリスマスイブの歌である。 彼女はホッとしたように「……そう」と言ったので、僕に交際相手がいないことに安心していたのは間違いないようだった。 絢乃さんは毎年、イブにはお友だちとお台場のツリーを見に行かれるそうだが、その年はお父さまと過ごされる最後のクリスマスだけに、お友だちも遠慮されているらしかった。そしてきっと、彼女自身も悩まれていたのだろう。
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秘書としての覚悟 PAGE10

「――絢乃さん、寒くないですか?」 帰りのクルマの中で、僕は何やら助手席で考え事にふけっていた彼女に声をかけた。「ん? 大丈夫だよ。コート着てるし」 そう答えながらも、両手の指先をこすり合わせていた彼女は少し寒そうに見えた。ああ、でもコートの萌え袖、可愛い……。 この日は朝から寒く、僕は寒さに強い方なので大丈夫だが寒さに弱そうな絢乃さんのために暖房を効かせて差し上げたかったのに、廃車寸前でバッテリーが上がりかけていた車内での暖房の効果はイマイチだった。新車に変われば、彼女にもっと快適なドライブを楽しんでもらえるのだが……。「それならいいんですが……。すみません、このクルマ、ポンコツなんで。暖房の効きが悪くて」「でも、もうすぐこのクルマとはお別れなんでしょう? だったらもうちょっとのガマンだね」「……そうですね。ところで、先ほどから何を悩まれていたんですか?」「うん……、クリスマス、どうしようかなーって。何もアイデアが浮かばないの。家族とも、親友とも、桐島さんとも一緒に楽しめる方法、何かないかなぁ……」 ……あれ? 今、俺の名前出てこなかったか? 僕は一瞬、自分の耳を疑った。彼女はやっぱり、クリスマスを共に過ごす相手に僕もカウントして下さっていたらしい。「僕のことはお気になさらず。今はお父さまのことを気にかけて差し上げて下さい。それにまだ時間はありますから、ゆっくり考えて下さって大丈夫ですよ」「…………そう、だね。ありがと」  その時点で、クリスマスイブまでは半月以上もあった。その間にご両親やお友だちと相談して頂ければ、何かいいアイデアが浮かぶかもしれない。そしてあわよくば、僕もその仲間に加えてもらえるかも……なんて思ったのだ。 ――僕は僕で、運転しながら源一会長の病状について思いを馳せていた。 彼はその頃、すでに体力的にかなり衰弱されていて、車いすで出社されていた。 その前には辛うじて歩くこともできたが、足腰がかなり弱っておられたので社内でフラついておられることも多かった。廊下で倒れそうになっていた源一氏を、僕が慌てて支えることもしょっちゅうで、「桐島君、いつもすまないね。ありがとう」と感謝されることもしばしばあった。 そんな体になっても、源一会長は無理をおして出社し、PCに向かって一心不乱に何かをされていたと僕は小川先輩
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秘書としての覚悟 PAGE11

 きっと彼の中ではもう、絢乃さんが自身の後継者だと決められていたのだろう。ただ、そこに彼女のハッキリとした意志が組み込まれているのかどうかまでは、僕も小川先輩も分からなかったが……。僕の感じていた限りでは、絢乃さんにも「お父さまの後を継ぐ」というしっかりした意志があるようだったので、源一氏が命を削られてまでされていたことは決してムダではなかったのだろう。現に、そのおかげで絢乃さんは会長の仕事を始められてからも困ることがなかったのだし。「――桐島さん、今日も付き合ってくれてありがと。楽しかったよ」 ご自宅の前で車を降りられた絢乃さんは、屈託のない笑顔で僕にお礼を言った。でも、僕はひっそりと思っていた。これってまるで、デート帰りのカップルの別れ際じゃんか。「楽しんで頂けて何よりです。僕も忙しくなったので、毎日というわけにはいきませんが。また一緒にどこかへ行きましょうね」「うん。あと、クリスマスイブのことだけど……」「それは、ちゃんと予定が立ったらまた連絡を下さい。先ほども申し上げましたが、僕に気を遣われる必要はないので」 絢乃さんと一緒に過ごせたら……というのはあくまで僕の勝手な願望というか妄想であり、特に何もなければ実家で過ごすという手もあったのだ。ただし、そこには漏れなくやかましい兄が付いてくるのだが。「分かった。じゃあ決まったら連絡するね」 ――絢乃さんはその後、僕のクルマが走り出すまでずっとその場から見送ってくれていた。というか、これは後々から知ったことだが、いつもそうして下さっていたらしい。   * * * * ――そして、その翌々日の朝。「おはようございます、室長。小川先輩もおはようございます」「おはようございます」「おはよう、桐島くん」 僕の出社の挨拶に最初に返事をしたのが秘書室のボス・広田妙子室長。背中までの長い黒髪をひっつめ、パッと見はキツそうな顔をしているが、本当はすごく部下思いの優しい女性だ。その当時で四十二歳。どこの部署だったか忘れたが、ご主人は同じ社内にいらっしゃるらしい。ご結婚が遅かったので、まだお子さんはいらっしゃらなかった。 そして、室長の次に返事をしてくれたのは小川先輩だ。この二人は上司と部下という関係を超えて、女性同士で馬が合うらしい。ちなみに、我が秘書室には男性社員も数人在籍しており
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秘書としての覚悟 PAGE12

「ちょっと桐島くん! 『小川先輩も』ってどういうことよ!? ……まぁいいや」 気心知れた相手なので、先輩がこうして僕の言うことにいちいち茶々を入れてくるのは挨拶代わりのようなものだったし、僕もいちいち気にしていなかった。「いいんですかい。……あ、コーヒー淹れてきましょうか? 僕も飲みたいんで」 とはいっても、この頃はまだ自前の豆やら道具やらは会社に持ち込んでおらず、給湯室にはインスタントコーヒーしかなかったのだが。「いいの? じゃあお願い。あたし、ブラックの濃いめで」「じゃあ私もお願いしようかな。薄めのお砂糖多め。ミルクはなしで」「分かりました」 給湯室へは、秘書室から直通の通路で行ける。あと、会長室側からも同じような通路が設けられている。 僕は手際よく三人分のコーヒーを淹れ、マグカップをトレーに載せて秘書室に戻った。ちなみに僕はミルク入りの微糖が好みだ。「――はい、お待たせしました」「ああ、ありがとう、桐島くん」「ありがとー。いただきま~す♪ ……ん、美味しい♡」「でしょ? 温度が大事って言ったの、分かってもらえました?」 僕は得意げに肩をそびやかし、自分もカップに口をつけた。「――ところでさ、桐島くん。一昨日絢乃さんとデートしてきたんだって? どうだったの?」「……………………ブホッ!」 ホッと一息ついたところで、先輩がサラッと爆弾のような質問を投下してきた。僕はしばらくゴホゴホとむせた後、やっとのことで反論した。「デ……っ、デートじゃないですよ!? そんなおこがましい!」「えーー? そうかなぁ? あたしはデートだと思うけど」 先輩も大概しつこい。こっちが否定してるのにまだ言うか。「…………どうしてそう思うんですか? 絢乃さんが俺のこと好きかどうかなんて分からないじゃないですか」「だってあたし、分かるもん。絢乃さんも桐島くんのこと好きだって、絶対」「……………………」 この人はどうしてこんなに自信満々なんだろうか。そもそも、ちゃんと根拠があっての発言なのか?「……先輩、それ、何か根拠があって言ってるんですか?」「女のカン、っていうのは冗談だけど。傍から見ればあなたたち、付き合ってるようにしか見えないもん」「え…………、マジっすか」 確かに僕サイドはそのつもりだった。「おこがましい」と口では言っ
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リミット PAGE1

「……で? どうだったのよ、一昨日?」 そうだった。僕と先輩はその話をしていたのだ。先輩が急に変なことを言い出したから話が脱線したのだった。「一昨日は世界一のタワーに行きました。そのあとクリスマスイブの話題になったんですけど」「うんうん。それで?」「昨夜、絢乃さんからお電話があって。『イブの夕方六時からウチでクリスマスパーティーをやるんだけど、あなたも来ない?』ってお誘いを受けました。……何でも、源一会長が俺も招待したいっておっしゃったそうで」「…………へぇ。いいじゃん! で、あなたは当然参加するんでしょ?」 僕の話を聞いて、先輩は大はしゃぎだった。が、最初の溜めは多分、自分にお誘いがかからなかったことを残念がっていたのだろう。「ええ、最終的には。でも、最初は渋ってたんですよ。『俺が言ったら場違いなんじゃないか』って思って、お断りしようとしたんです。最初は会長からのご招待だとは知らなかったんで」「えっ、そうなの? もったいない」「なんか、絢乃さんと個人的に親しくさせて頂いてることを後ろめたいっていうか……。付き合っているかどうかは別としても、俺が彼女に好意を抱いてることは事実ですし。相手がまだ高校生だから、とか年の差とかやっぱり気にしちゃって。…………ただでさえ体調がすぐれない会長のご気分まで害してしまったら、とか思うと」 一般的には、父親というものは自分の娘と親しくしている男の存在が気に入らないらしい。ウチの父親には二人の息子しかいないので何とも言えないが。「桐島くんってばそんなこと気にしてるの? あたしが思うに、会長はあなたのこと気に入ってるはずよ? あたしの知ってる限りじゃ、あの人は世間一般の父親とは違うから。だからクリスマスにもあなたを招待したんじゃないかな」「ああ……、そっか。そうですよね。気に入らない相手を招待なんかしませんよね」「そうそう。まぁ、あなたに下心があることまでご存じかどうかは分かんないけどねー」「したっ……!? だからそんなんじゃないって言ってるじゃないですか!」 僕は顔を真っ赤にして猛抗議した。絢乃さんへの恋心は事実だし、それは百歩譲って認めるとしよう。だが。決して恋心=下心ではないのだ。別に僕は、絢乃さんをどうこうしようなんて思ったことはなかった。ただ僕が勝手に想う分にはいいじゃないか、と思っていただけで
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