トップシークレット☆桐島編 ~お嬢さま会長に恋した新米秘書~의 모든 챕터: 챕터 51 - 챕터 60

87 챕터

リミット PAGE2

「――そういえば会長、最近会社であまりお見かけしませんね」 少し前まで、車いすになっても無理をおして出社されていたのだが。それもできないくらい弱られていたということだろう。「うん……。あたし、奥さまから連絡頂いたんだけど、このごろは朝起きられないくらいつらそうなんだって。でも起きられないわけじゃないらしいの。お昼くらいに起きて、ご自宅の書斎でお仕事されてるらしいんだけど。自由ヶ丘から丸の内までクルマを運転してくるのもつらいんじゃないかなぁ」「もう……そんなにお悪いんですか。えっと、お仕事っていうのはこないだ先輩が話してくれたヤツですか? 絢乃さんのためにやっておきたいって、会長がおっしゃってたっていう」 僕が先輩からその話を聞いたのは、それより一週間ほど前のことだった。「ううん、そっちはもう終わられたみたい。会長がご自宅でなさってるのは通常業務の方。決裁とか色々ね」「ああ、そっちですか」 会長としても、とりあえず一つの大きな仕事を終えられたのだからひと安心、といったところだっただろう。「……でもさ、桐島くん。そろそろリミットって考えた方がいいかもよ? あなたも覚悟決めないと」「…………ですね」 先輩の言わんとしていることが、僕にはハッキリと分かった。会長の命の期限がもうすぐそこまで迫ってきている――つまり、絢乃さんが会長になられる日も近いということだ。「ここだけの話だから、他の人にはまだ言わないでね? あたし、会長から直接伺ったんだけど、会長の中ではもう、絢乃さんを後継者に決めてらっしゃるみたい。遺言書も作られたって聞いたよ。正式なヤツ」「そうなんですか? じゃあ……もう絢乃さんが次の会長ってことでほぼ決まりじゃないですか!」 〝ほぼ〟と言ったのは、正式に就任が決まるまでには株主総会という関門があり、他の候補者がいなければ、という条件もプラスされるからである。「そういうこと。だから、あたしは今、あなたにも会長秘書としての心構えを説こうとしてるの」 ……そうか、もうそんなことになっていたのか。とすれば、僕もそろそろ移動先が秘書室だということを絢乃さんに打ち明けなければと思った。 ちょうどもうじき新車も納車される頃だったし、クリスマスパーティーの日がちょうどいい機会だろう、と。……ただ、僕が源一会長の死期を待って
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リミット PAGE3

 僕は別に、「会長秘書をやりたい」と小川先輩や室長、先輩たちに公言していたわけではないのだが。自分の中では「絢乃さんに付く」=「会長秘書」という理屈ができあがっていた。だって、絢乃さんが会長以外のポストに就くことはあり得ないのだから。 そして、彼女以外の人が会長に就任された場合、僕は会長秘書のポストを辞退するつもりでいた。僕は彼女の支えになりたくて秘書室に入ったのだ。彼女以外の人に付くなんて冗談じゃなかった。   * * * * それから二週間ほどしたクリスマスイブ直前の土曜日、僕の新車が納車された。と同時にオンボロ車はお役御免となり、僕はピカピカの新しいセダンを運転してアパートに帰った。ちなみに、前のクルマとカラーリングを同じにしたのは、僕のクルマがシルバーだと絢乃さんに憶えて頂くためだった。 セダンは父も乗っていたので運転させてもらったことがあったが、自分の愛車はまた愛着が違う。ハンドルが若干重く感じたのは、ローンの返済が重くのしかかっていたからだろうか。 軽の時とは違い、助手席との間が少し広いので、絢乃さんを乗せるたびに感じるドキドキ感はほんの少し緩和されたと思う。「絢乃さん、このクルマ見て何ておっしゃるかな……」 購入の報告をした時、彼女は嬉しそうに「楽しみにしている」とおっしゃっていたので、喜んで下さるだろうとは容易に想像がついた。が、それと同時に僕は気を引き締めた。 その時には、秘書室へ異動したことを彼女に話さなければならないのだ、と。 彼女はきっと、あの三ヶ月間を有意義に過ごされ、もうある程度は覚悟ができていただろう。お父さまの死後、ご自身がどういう立場に置かれるのかを。元々芯の強い女性だったようだし。 でも、きっとその裏で人知れず涙を隠してもいたと思う。その涙を、僕の前では隠さずにいてほしかった。彼女が涙を見せられる唯一の存在が僕であってほしいと願っていた。「……っていうか、当日何着ていこう?」 僕はそこで頭を抱えた。僕の私服は決してダサくはないと思うのだが、果たしてよそのお宅(ましてやあんな大豪邸だ)に着ていってもいいレベルのものかどうか……。 こういう時、誰を頼るか? 兄にだけは相談したくない。ハッキリ言って、センスの〝セ〟の字もないから。「……………………しょうがない、ここは小川先輩に相談するか」 絢乃さんに嫉妬
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リミット PAGE4

 ――そして迎えた、クリスマスイブ当日。 その日はたまたま日曜日だったため、僕は朝からソワソワとした気持ちで小川先輩と一緒に渋谷のデパートへ出かけた。 デート、ではない。この日招待されていた篠沢家のクリスマスパーティーに着ていく服を、先輩に選んでもらうためだ。『――先輩、俺、絢乃さんのお宅のクリスマスパーティーにどんな格好で行ったらいいか分かんないんで、選んでもらっていいっすか?』 あの日、電話で先輩に頼んでみると、「あたしも忙しいから、土日なら一緒に選びに行ってあげられるけど。っていうか当日って日曜だよね」と言われ、当日になってやっとこういう状況になったというわけだ。「っていうかさ、桐島くんの部屋にある服見せてもらったけど。ハッキリ言って地味だね。っていうかモノトーン好き?」「……そんなにバッサリ斬り捨てなくても」 僕は情け容赦のない先輩のコメントに呻きながら、紳士服売り場で手にしていた黒のニットを棚に戻した。「あんまり色で冒険したくないんですよ。それで失敗したら大惨事でしょ。だから無難にモノトーンを選んじゃうんです」「誰に対しての大惨事よ? ……でも、色はともかくセンスは悪くないと思うな。パーティーって言ってもホームパーティーなんだから、あんまり気張ってオシャレする必要もないし。あれくらいの感じで行けばいいんじゃないかな? まぁ、色はあたしがチョイスしてあげるとして」「そうっすか。じゃあ色は先輩にお任せします」 そう言って頭を下げると、彼女は張り切って僕のコーディネートを選んでくれた。 アイテムこそ普段の僕が好んで着るようなものばかりだったが、さすがは女性というか、シャツの色なんかは僕が選ばなそうな明るい色をチョイスしてくれた。「――先輩、今日は俺の頼みを聞いて下さってありがとうございました!」「いやいや、いいよぉ。誰でもない可愛い後輩の頼みだからね。あたしも、桐島くんを着せ替え人形にできて楽しかったし。でも、このこと絢乃さんには言わないでね? 嫉妬されるのイヤだから」 小川先輩は、何だかんだ言って学生時代からの後輩である僕に頼られたのが嬉しそうだった。が、頼むから僕で遊ぶのはやめてほしい。……頼んだ僕が言えた義理ではないかもしれないが。「着せ替え人形……って。言いませんよ、俺だって」 僕だって、絢乃さんにあらぬ誤解をされたく
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リミット PAGE5

 先輩にしつこいくらいに念を押され、僕は半ばウンザリしながら頷いた。とはいえ、これが最後の機会かも……と思っていたのは僕も同じだった。 どうにか絢乃さんと二人きりになれるチャンスを作って、打ち明けなければ――。この際、彼女にどう思われるか、とか泣かせてしまったら、とか考えている場合ではなかった。     * * * *   そして、夕方――。僕は先輩にコーディネートしてもらった服に着替え、アパートの駐車場で新車のエンジンをかけた。  〈当日、パーティーが始まるのは夕方六時からだからね♪ 待ってます〉   その数日前に絢乃さんからスマホに送られてきたメッセージを見返す(もちろん、車載ホルダーにセットして、である)。その一行に、僕にも参加してもらえるんだという彼女の喜びがダダ漏れだった。 篠沢家の豪邸にお邪魔するのは緊張するし、会長のご存じないところで絢乃さんと親しくしているという後ろめたさから敷居が高いとも感じていた。といって、別に疚しいことをしていたわけでもないのだが。 でも、そこで「行くのやーめた」ってなワケにもいかなかった。お義理で行くわけでもなかったが、絢乃さんをガッカリさせたくなかったし、僕には彼女に伝えておかなければならないことがあったのだ。 「――さて、絢乃さんはこの服を見てどう思われるかな……」  思えば、彼女に僕の私服姿を披露するのはこの日が初めてだった。彼女にお会いする時はいつもスーツ姿だったからだ。初めてご覧になった僕の私服姿にどんな反応を示されるか、僕は不安と楽しみが半々だった。 そういう僕も、彼女のドレス姿と制服姿は見ていたが、普段の姿は見たことがなかった。――果たして彼女の私服は一般的な女子高生と変わらないのか、それともいかにも「お嬢さまでござ
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リミット PAGE6

     * * * *   ――夕方六時少し前。緊張に震える指で篠沢邸の門に取り付けられたドアチャイムを押すと、応答してくれたのはお手伝いさんなどではなく、なんと絢乃さん本人だった。 『――はい』 「あ、桐島です。今日はお世話になります。――クルマ、カーポートに勝手に停めさせて頂きましたけど」  この家のカーポートはかなり広く、そこに停められていたのは黒塗りの高級セダンと小型車、そして僕にも見覚えのある紺色の〈L〉のセダン――これは源一会長の愛車だ――の三台だけだった。 来客用かどうかも分からず、とりあえず空いているスペースにクルマを停めてしまったのだが、よかったのだろうか? 『いらっしゃい、桐島さん! 全然オッケー☆ 門のロック開いてるからどうぞ入って』  ところが、そんな僕の心配はただの杞憂だったようで、絢乃さんはとびっきり元気な声で僕を歓迎して下さった。でも、その声からは彼女がかなりムリをして明るく振舞っていることも窺えた。  「――絢乃さん、今日はご招待、ありがとうございます。おジャマします」 「いらっしゃい! 来てくれてありがとう。どうぞ、これに履き替えて。会場はリビングダイニングなの」  ニコニコしながら僕を出迎えて下さった絢乃さんは、タートルネックの赤いニットに深緑色のジャンパースカートという少しピッタリとした服装だった。それまで見てきた制服姿やドレス姿はわりとゆったりしていて体型がよく分からない感じだったので、彼女の恵まれたプロポーションが見た目にも分かる私服姿に僕は内心ドキッとした。この時ほど「自分は男なんだな」と意識したことはなかったかもしれない。  玄関には僕が履いていった茶色のレザースニーカーの他に、女性
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リミット PAGE7

「えっ、ケーキを手作りされたんですか? スゴいですねー」 僕は正直驚きを隠せなかった。まさか絢乃さんがお菓子作りの趣味をお持ちだったなんて。……まぁ、ものすごく女の子らしくて彼女らしいといえばらしいのだが。「うん。お菓子作りだけじゃなくて、お料理全般得意なの。今日は里歩からのリクエストと、パパと一緒に過ごす最後のクリスマスだから久しぶりに作ってみたんだよ。桐島さんのお口にも合うといいんだけど」「そうなんですね……、それは楽しみです」 僕は彼女の話に相槌を打ちながらも、気がそぞろだった。もちろん僕はれっきとした招待客だったのだから、堂々としていればよかったのだ。が、絢乃さんと親しげにしていることを源一会長に怪しく思われはしないかと不安に思っていたのだ。そもそも、会長が何を思って僕を招かれたのかもよく分からなかったし。「――ねえ桐島さん。わたしとちょくちょく会ってること、パパに後ろめたいと思ってるなら大丈夫だよ? パパも知ってるもん」 そんな僕の様子に気がつかれた絢乃さんが、僕の機先を制した。「え…………、そう……なんですか?」「うん」 そうだったのか……。源一会長は、どうやら絢乃さんに対する僕の想いをとっくにご存じだったようだ。「ああ、そうだったんですか。よかった……」 僕はそう呟きながら、その数日前に会長と交わした会話のことを思い出していた。だからあの人は、あの時僕にあんなことをおっしゃったのか――。『――桐島君、わざわざ来てもらってすまないね。まぁ座りなさい』 その日、会社に顔を出されていた会長から会長室に呼ばれた僕は、入室するなり応接スペースのソファーを勧められた。いかつい革張りではなく、温かなグリーンのベルベット地が張られた、会長お気に入りのソファーだ。――ちなみにこのソファーはその後、絢乃さんのお気に入りにもなっている。『はい。――それで、会長。僕に何のご用でしょうか?』 秘書室は会長室と同じフロアーにあるので、呼ばれたからと馳せ参じるのは苦にならないが、一体どんな用件で呼ばれたのか不思議で仕方がなかった。『小川君から聞いたんだが、君が秘書室に異動したのは絢乃のためらしいね』「……えっ!? はぁ、そうです……」 もしや、僕の絢乃さんに対する下心に(そんなもの、実際はなかったのだが)お気づきになられたのかと、僕は縮こまった
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リミット PAGE8

『はい、何でしょうか』『私亡き後、君に会長秘書をやってもらいたいんだ。――君も小川君から聞いているだろうが、私は遺言状で絢乃を正式に後継者として指名した』『はい、存じております』 ということは、これは源一会長直々のご指名なのだ。絢乃さんが会長になったら、それすなわち僕が会長秘書に就任するのだ、という。『うん、それなら話は早い。桐島君、ぜひとも絢乃の支えになってやってくれ。君になら安心してあの子を任せられる』『はい。僕などでよろしければ』 それは僕にとっても願ったり叶ったりだった。……が、会長のお話にはまだ続きがあった。『そうかそうか。だがね、桐島君。それは仕事のうえだけの話ではないんだよ。……ひとりの男としても、絢乃に寄り添っていてやってほしいんだ』『……は? と……おっしゃいますと?』『いずれはあの子の伴侶となってほしい、ということだ。まぁ、君の意思だけではどうにもできないだろうがね』 それはそうだ。僕がそこで「承知しました」と言ったところで、結婚話は絢乃さんの気持ちを無視して進められないのだ。『……はい。それは……すぐにどうこうできることではないので。ここでの返事は保留にさせて頂いてもよろしいでしょうか?』『もちろんだよ、桐島君。じっくり考えたうえで、返事をしてほしい。が、私にはもう時間がないから、なるべく早い方がいいな。無理を言ってすまないが』『……いえ、そんなことは』『私にはもう分かっているんだよ。――君は、絢乃に惚れているんだろう?』 会長はいたずらっ子のような笑みを浮かべて、僕に特大の爆弾を投下された。『…………はい』 僕は素直に認めた。この人にはどんなごまかしも通用しないような気がしたからだ。『やっぱりそうか。私の目に狂いはなかったようだね。ではさっきの件、考えておいてほしい。――桐島君、仕事中に呼び立ててすまなかったね』―― ――僕はこの日、源一会長にあの二つ目の依頼の返事をしようと思っていた。それも、絢乃さんのいないところで、会長と男ふたりだけになった時に。「……桐島さん? どうしたの、なんかボーッとしてたよ?」 ふと我に返ると、前を歩いていた絢乃さんが僕を振り返り、不思議そうに首を傾げていた。「ああ、いえ、何でもないです。――ところで今日、お父さまの具合は……? もう会場にいらっしゃるんですか?」「
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リミット PAGE9

「そうですか」 絢乃さんの表情が少し暗かったように見えたのは、きっと僕の気のせいではなかったと思う。彼女くらいの年代の女の子にとってはショックが大きかっただろう。自分の父親が、間もなく死を迎えようとしているなんて。精一杯強がったところで、そのショックが和らぐことはないはずである。 いくら今の抗ガン剤が優れていて、副作用もほとんど出ないとはいえ、源一会長の命は確実に削られていたのだから。……その証拠に。「……もう、わたしもママも覚悟はできてるの。パパは十分頑張ったんだから、旅立った時は『お疲れさま』って見送ってあげようね、ってママと話してて」 そう言った彼女の目は、少し潤んでいた。「覚悟はできている」と口ではおっしゃっていても、きっと心の中では葛藤があったに違いない。努めて明るい口調にしていらっしゃったのは、僕に心配をかけまいと気を遣っていたからだろう。「……って、なんかゴメンね! 今日はこんな湿っぽい日じゃないよね」 そう言ってまだ強がる彼女が、僕には何だかとても痛々しく見えた。僕に気を遣わなくてもいい。無理に笑ったりしなくていいのに……。  どうして僕はまだ絢乃さんの彼氏じゃないんだろうと、恨めしく思ったことを今でも憶えている。彼氏だったら、「強がらずに泣いていいんだ」と彼女をそっと抱きしめることもできたのに。「絢乃さん……、大丈夫ですか?」「うん、大丈夫! ――あ、ここがリビングダイニングね。どうぞ」 月並みの言葉しかかけられなかった僕に、彼女はカラ元気で答えた。もっと気の利く言葉は出てこなかったのかよ、俺。情けない。 パーティー会場に入ると、すでに車いすに座られた源一会長がいらっしゃっていて、絢乃さんの親友だと思しきショートボブカットの女性にサンタ帽を被らされていた。彼女は水色のタートルネックに黒いデニムのミニスカート、黒のタイツというスポーティーなファッションで、身長は百七十センチ近くありそうだと僕は感じた。「会長、今日はお招き頂いてありがとうございます。お邪魔させて頂きます」「桐島君、堅苦しい挨拶は抜きにしよう。よく来てくれたね、ありがとう。楽しんでいきなさい」「はい」 会長が温厚な笑顔で僕を歓迎して下さったおかげで、僕の緊張はどこかへ吹き飛んでしまい、なぜだかリラックスした気持ちになった。というか、緊張の対象が会
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リミット PAGE10

「――それで、こちらが絢乃さんのお友だちの」「中川里歩です。初めまして、桐島さん。絢乃がいつもお世話になってます」 僕は絢乃さんに紹介してもらおうとしたのだが、それより先に里歩さん自らが口を開いた。彼女は控えめな絢乃さんと対照的に、積極的な女性らしい。そしてちょっと世話焼きなところもあるのかな、というのは僕の個人的な感想だが、あながち間違ってもいないようである。「ああ、いえ。初めまして、里歩さん。桐島貢と申します。よろしく」 きっと里歩さんも絢乃さんと同い年だが、僕はキッチリと敬語で彼女に挨拶をした。その時点ではまだ、絢乃さんをお世話していたわけではなかったが、その後に実際秘書としてそうなったので、これも間違いではなかった。 そして僕が敬語だったのは、この日が初対面だった里歩さんのことを信用するに値する人かどうか判断しきれていなかったからでもあった。「桐島さん、もっと肩の力抜いて。里歩はわたしと同い年だよ」「そうですよー。ほら、リラーックスして」 そんな僕の態度に絢乃さんは苦笑いされ、里歩さんと二人して僕の肩やら背中やらをポンポン叩き始めた。身長的に背中を叩いていたのは絢乃さんで、肩を叩いていたのは里歩さんだろう。「……はあ」 この時に僕が困った顔をしたのは、肩に感じる衝撃が強くて痛かったからである。彼女の腕力がなぜこんなにも強いのか、その理由を知ったのはこのすぐ後だった。 ――僕がソファーに腰を落ち着けると、絢乃さんと里歩さんは「テーブルのセッティングがまだ残っているから」とリビングを抜け出した。加奈子さんやお手伝いさんの姿も見えなかったことから、女性陣はみんなキッチンにいるものと思われた。 ……というわけで、リビングには僕と源一会長の二人きりになった。「――桐島君、例の件、考えてくれたかな?」 そう質問された時、僕は覚悟を決めた。あの依頼の返事をするのに、このタイミングが絶好の機会だと思ったのだ。もちろん、僕の中でもうすでに答えは出ていた。「はい。僕が全身全霊、一生涯をかけて絢乃さんを支えていきます。会長秘書としても、一人の男としても」「そうかそうか! ありがとう、桐島君」「ですが、絢乃さんのお気持ちを第一に考えたいと思っておりますので。もし絢乃さんが他の男性を好きになられたら、僕は潔く身を引かせて頂きます。それでもよろしいで
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リミット PAGE11

「はい、お約束します」 僕は力強く頷いた。きっとこれは、源一会長から僕への遺言だと思ったからだ。「――ん? なになに、何の約束?」 そこへ、真っ白なデコレーションケーキの載ったワゴンを押した絢乃さんが戻ってきた。後からたくさんの料理や食器の載ったワゴンを押す加奈子さんとお手伝いさんと思しき五十代くらいの女性、そしてなぜかフライドチキンがどっさり盛られたバスケットを抱えた里歩さんも続いた。「いやなに、男と男の約束をな。……なぁ、桐島君?」「ええまぁ、そんなところです。――ところで里歩さん、そのフライドチキンは何ですか?」 僕は源一会長に頷いてから、里歩さんに訊ねた。「ああ、コレですか? あたしからの差し入れです。っていっても手作りじゃなくて、ファストフードのお店で買ってきたパーティーパックのを温めただけなんですけどねー」 あたし料理あんまり得意じゃないんでー、と彼女は笑いながら答えて下さった。……いや、いくら料理が得意な人でも、フライドチキンまで手作りできる人は少ないんじゃないだろうか。 兄の場合はどうだろうか……って、ここでは関係なかった。「里歩のお家では、クリスマスは毎年コレが欠かせないんだよね。ウチも助かったよー。今日は人数も多いし、コレのおかげで食卓が賑やかになるから。ありがとね」 どういたしまして、とドヤ顔で言った里歩さんに、絢乃さんも笑っていた。こうして見ると、自然体の絢乃さんはやっぱりごく普通の高校生のお嬢さんで、里歩さんとは本当に仲がよろしいんだなと僕も微笑ましく思った。   * * * * ――こうして、篠沢家のクリスマスパーティーが始まった。クリスマスソングをBGMにしてごちそうを囲み、楽しい時間が流れていった。「――絢乃さん、けっこうワイルドなんですね」 彼女が豪快にフライドチキンを頬張る姿に、僕は正直驚いた。お嬢さまだから、もっと上品に召し上がるのかと思っていたのだ(まぁ、フライドチキンの食べ方に上品な食べ方なんてあるのか、とツッコまれそうだが)。「え、そう? でもわたし、普段からこんな感じだよ?」「そうそう。ハンバーガーとか平気でかぶりついてるよね」「……そうですか。ちょっと意外だな、と思って。でも、おかげで自然体の絢乃さんが見られて親近感が湧きました」 自然体な絢乃さんは気取りがなくて、本当に可愛い人
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