スーツのまま来たので、上衣を脱いでソファーに掛けると、 「あっ、掛けとく?」と、ハンガーラックを指差してくれたので、借りることにした。 そして、 「どれから呑む?」と聞かれて、レモンの酎ハイを指差した。 「ハイ、どうぞ」とグラスに注いでくれた。 ──優しいんだね 「ありがとう〜」とお礼を言うと、 「うん」と、にこやかに微笑んでいる。 いつもと逆で、専務にお世話されていることが、とても不思議なのだ。 不思議そうな顔で見ていると、 「ん?」と、言いながら修斗さんは、隣りに座って、 「乾杯〜!」と言ったので、グラスを持って乾杯した。 「寧音!」 「ん?」 「まだ、不安?」 「うん……」と小さく答えると、 「そっかあ〜寧々が今思ってること全部話して」と言ってくれた。 そして、私は正直に話した。 頭では分かっていた。修斗さんは、社長の息子だし、ウチの社長の甥っ子。 最初から私なんかと釣り合うはずがなかったんだ。 私の家は、母1人子1人、母は私をシングルマザーで育ててくれた。父は、私が幼かった3歳の時に、事故で亡くなったようだ。覚えていない。 だから、母に迷惑を掛けないようにと、学生の頃からずっとアルバイトをしていた。そんな時、母が『大学は行った方が良いよ』と言ってくれたので、奨学金を借りて大学を出て、就職と同時に1人暮らしを始めた。 最初から分かっていたことなのに、 「だから、修斗さんとは住む世界が違うの」 と、今更ながら気付かされた。 ──もう好きになってしまってる…… 周りのことなんて考えずに、ただ修斗さんのことを好きになってしまった…… でもまだ、今なら戻れるんじゃないかな とさえ、思っていた。 そう言うと…… 「そんなこと、言わないでよ」と言われた。 「……」 「俺は、寧音のことは、最初から全部知ってたよ」と言われて、 ──そっか、そうだよね。この人は、社長の甥っ子。そりゃあ秘書になる人のことぐらい社長なら最初から全部知べてるよね 「なら……」 「寧音が良い! 寧音じゃなきゃイヤなんだよ」と言われて驚いた。 「でも、そんなの周りの人には、認めてもらえない」と言うと、 「言っただろ? 最初に寧音を俺に紹介してくれたのは、伯父である社長だよ!」 ──そうだけど…… 「でも、ご両親は……」と
최신 업데이트 : 2025-09-07 더 보기