温品真言(ぬくしな まこと)と鷹取千浬(たかとり せんり)は結婚して五年、その五年間ずっと互いを消耗し合ってきた。彼は外で女を作り、彼女も外で男を作った。二人は約束していた──遊ぶのは外だけにしよう、相手を家に連れて帰ることだけは禁じる、と。しかし、千浬は結局その約束を破った。彼は真言の誕生日の日に、亡くなった姉にそっくりな女性を家に連れてきた。「この女を愛してしまった。真言とは離婚する」と彼は言った。けれど彼は知らなかった。真言はすでに死の間際にあったことを。あるいは、二日前にはもう亡くなっていた。二日前。それは二人の結婚五周年記念日だった。千浬への贈り物を用意するため、帰宅途中で真言は事故に遭ったのだ。猛スピードで走る車が彼女をはね飛ばし、数メートル先まで吹き飛ばした。瀕死の状態で、彼女は閻魔の姿を見た。執着心が強すぎて、死に切ることができなかったのだ。そこで閻魔は、彼女と一つの賭けを交わした。七日のうちに、もし千浬が心から彼女に一度でも口づけをすれば、再び命を得ることができる。そうでなければ、彼女は閻魔のもとに残り、彼の花嫁となる。その賭けの勝算が、どれほど低いかは真言自身がよく知っていた。結婚して五年、千浬は一度たりとも彼女に口づけしたことがなかったからだ。たとえ数えるほどしかなかった同衾の夜ですら。江代都の名門の社交界で、千浬は最も奔放で恐れられる存在だった。容姿も権力も兼ね備え、多くの令嬢が彼を追いかけた。だが彼の心の中にいたのは、いつも真言の姉──温品真雪(ぬくしな まゆき)ただ一人。彼は言ったことがある、「僕の妻は永遠に真雪だけだ」と。本来、彼と結ばれるはずだったのも真雪であり、真言ではなかった。五年前、真雪が突然の事故で命を落としたため、彼は仕方なく真言を娶ったのだ。真雪がいなければ、誰を妻にしても構わなかった。幼馴染である真言は都合の良い選択肢だった。彼は彼女にすべてを与えたが、愛だけは与えなかった。真雪の死後、彼は記者会見を開いて世界に宣言した。「僕の妻は永遠に真雪だけだ。僕と真言、ただの政略結婚だ」そう言って彼は記者の前で真雪の位牌を取り出した。そこにはこう刻まれていた。「吾が最愛の妻、真雪之位」
Read more