由香の陶土を取ろうと伸ばした手がぴたりと止まり、指先が宙で止まった。まさかこのタイミングでルカスが想いを口にするなんて思ってもみなくて、耳の先が焼けたみたいに一気に熱くなった。振り向いた拍子に、翡翠みたいな緑の目と正面からぶつかった。本気で見るとどれだけ人をさらう目か、前から知ってたのに、至近距離で受け止めると心臓が一拍飛ぶ。一秒もせずに慌てて視線を逸らし、指先で無意識に作業台の縁をいじる。「ルカス、どうして……私のこと好きなの?」彼女のまつ毛がかすかに震えて、声はとても小さい。ルカスは首をかしげる。「好きなのに理由がいる?」由香は唇を結ぶ。「でも、私……たぶん、あなたが思ってるような人じゃない」「想像で君を見たことない」ルカスは少し身を乗り出し、真剣に言った。「由香は、売れ残ったパンをこっそり角のホームレスに分けるし、客にケチつけられたら筋を通して言い返すし、陶土を捏ねるときは目がきらっと光る。太陽みたいなんだ。あったかくて、まぶしい!太陽に心が動くの、普通だろ?」由香は彼にそう言われて頬が熱くなった。生まれてこのかた、こんなに真っ直ぐ褒められたことはなかった。光希のそばでは、耳にするのはいつも「わがまま」「横柄」という言葉。ろくに知ろうともしない連中が、勝手にレッテルを打ち付けた。でも今は、彼女を太陽みたいだと言う人がいる。ただ、彼女はまだ、やり直す準備ができていない。それを見抜いたように、ルカスはふっと笑い、肩の力を抜いた口調で言った。「すぐ答えなくていいし、気負う必要もない。俺の気持ちを知ってほしかっただけだ」由香は口を開きかけ、結局は小さく「ありがとう」とだけ言った。恋愛は遊びじゃない。そんな軽々しくは決められない。「自分の気持ちを確かめる時間がいる、ルカス。今は答えられない」ルカスは目を細めた。「大丈夫。君の気持ちがいちばんだ」その日から、二人の関係はまた元どおりに戻った。さすがと言うべきか、ルカスは距離感がうまい。気持ちを打ち明けたあとも少しも圧をかけず、これまでどおり店にふらりと寄っては、陶芸の話やたわいない話をしていった。由香の日々は再び穏やかになり、戸口の風鈴は何度も鳴ったが、光希が姿を見せることはなかった。あの日の突き放しで、
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