激しい情事のあと、峰尋之(みね ひろゆき)は指先にシガーを挟み、満足げな笑みを浮かべた。「もう終わりだ。これからは秘書の役目だけに専念しろ」燃え落ちた灰が、星乃映夏(ほしの えいか)の脱ぎ捨てた服の上に落ちた。彼女は一瞬きょとんとした。ベッドの下では万能秘書、ベッドの上では気まぐれな愛人。……そんな関係を、二人は八年間続けてきた。突然「終わり」と告げられるなど、映夏には夢にも思わなかった。短い沈黙ののち、彼女はかすかに答える。「……はい」力の抜けた体を引きずり、服を整えながら、ゆっくりと社長室の休憩室を出ていった。その夜、映夏は重要なプロジェクトのための酒席で、ワインもビールも次々と飲まされ、ついには「化粧直し」と嘘をついて洗面所で必死に吐き出した。しばらくして気分が少し落ち着くと、化粧を直して個室へ戻ろうとした。その途中、耳に聞き覚えのある声が届いた。「尋之さん、あの秘書と本当に縁を切ったの?」ドアが半開きの個室の中で、尋之は花の位置を丁寧に整えていた。そして吐き出した言葉は、容赦なく冷酷だった。「もちろん本当さ、お前も言っただろう。彼女はただの秘書だ。仕事をすれば金を払う……それだけだ」その軽蔑に満ちた口調は、映夏の頬を打ちつける平手のようだった。もう聞きたくないのに、足は根を張ったように動けない。「でも、八年も一緒に寝てきたんだよ。俺たちはてっきり情が移ったのかと思ってたけど……やっぱり幼馴染みの魅力はすごいね。萌々香が戻った途端、秘書は切り捨てなんて」尋之は立ち上がり、その目に一瞬柔らかい光を宿した。「ああ、萌々香が帰ってくる。今日は彼女の誕生日だ。最高の思い出を残してやらなきゃな」彼は蘇我萌々香(そが ももか)のために用意した誕生会を見つめ、目を細める。「……だがお前の言う通りだ。映夏など取るに足らん。もし空気を読まず、俺と萌々香の仲を邪魔するようなら……どれほど仕事ができても、消えてもらうしかない」その声音に潜む冷酷さに、映夏の全身は氷の中に落とされたように震え、指先まで冷え切った。彼が敵に容赦しないことは知っていた。だが、彼女が彼の「敵」になる日が来るとは思わなかった。やがて尋之が電話を取り、その表情が一転して優しさに満ちると、彼は外へ出ていった。映
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