祖父はそう思っているなら、随分と舐められたものだ。信行が目を通したファイルを机に放り投げると、祐斗はビクッと体を強張らせ、身動き一つできなくなる。しばらく重苦しい沈黙が降りたが、信行からそれ以上の指示はない。それを確認し、祐斗はようやく一礼して静かに執務室を後にした。ドアが閉まるのと同時に、信行の胸の内にふつふつと怒りが沸き上がってきた。いくら一族の長とはいえ、自分の領域に踏み込みすぎだ。これ以上オフィスでくすぶっている気にはなれず、信行は祐斗が持ってきた調査資料を鷲掴みにすると、そのまま片桐家の本邸へと向かった。*四十分後。本邸の裏庭に車が滑り込んだ。ドアを開けて降り立つと、祖父である由紀夫が、のんびりと盆栽の手入れをしている姿が目に入った。信行は暗い顔つきで祖父に歩み寄るなり、手にした証拠を遠慮会釈もなく石のテーブルにバサッと叩きつけ、唐突に口を開いた。「……これは、どういう腹積もりですか。少々、干渉しすぎじゃないですかね」由紀夫が口を開くよりも早く、信行は言葉を続ける。「世間の圧力でも掛ければ、俺が大人しく首を縦に振るとでも?随分と事態を甘く見ているようですが」目の前に証拠を突きつけられても、由紀夫は顔色一つ変えなかった。ゆっくりと信行へ顔を向け、事も無げに言い放つ。「でなければ、お前は他に何を考えているというんだ?真琴のことは、もう諦めろ。お前がこれ以上あの子を煩わせることを、この家の者は誰一人として望んじゃおらん。だいたい、自分が過去にしてきた行いを胸に手を当てて振り返ってみろ。どの面下げて、あの子に会いに行こうなどと思えるんだ」反論の隙を与えず、由紀夫はたたみかける。「成瀬家の嬢ちゃんなら、お前の妻として釣り合いも取れるだろう。週末、成瀬の爺さんと孫娘を食事に招いてある。予定を空けて戻ってこい」信行が口にする真琴への感情など、由紀夫はとうの昔に見限っていた。だからこそ、信行を思い通りに動かせるなら、どんな強引な手でも使う構えだった。どこまでも独断専行を貫く祖父を前に、信行は両手をズボンのポケットに突っ込み、その顔を真っ直ぐに睨みつけた。どれだけ鋭い視線を浴びせても、由紀夫は意に介する様子もなく、再び盆栽へと視線を戻す。その悠然とした背中へ向けて、信行は吐き捨てるように
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