おそらくこの先、真琴を巡って東都市と浜野市の間で、しばらくは激しい引き合いが続くだろう。最終的な行方は、光雅の出方と真琴自身の意思に委ねられている。ただ、彼ら数人にしてみれば、公私ともに、真琴にはこのまま東都市に留まってほしいというのが本音だった。冗談めかした拓真の言葉に、真琴は彼の方へ顔を向けてふっと微笑んだ。まもなくして、車は南江ホテルの車寄せに到着した。真琴は拓真の後ろに続き、足並みを揃えて上の階へと向かう。二人が貸し切りの個室に足を踏み入れた瞬間、パンッという甲高い音と共に、色鮮やかなクラッカーのテープが真琴に向かって舞い散った。「真琴、論文の大成功おめでとう!このままノーベル賞まで一直線ね!」紗友里と良一が満面の笑みで手荒い祝福を浴びせてくる。真琴は両手を広げて紗友里を抱きしめ返し、くすっと笑った。「ありがとう、紗友里」「真琴、本当におめでとう」「いやあ、凄すぎるって。俺たちまで鼻が高いよ」「おめでとう、真琴ちゃん」「ありがとう」「皆さん、本当にありがとうございます」次々と飛び交うお祝いの言葉に、真琴は笑顔で感謝を返していった。一通り皆との挨拶が落ち着いた頃。信行が真琴の目の前へと歩み寄り、綺麗に包装された小さなギフトボックスを差し出した。「……おめでとう」たった一言。それでも、信行の声音はひどく優しく、耳の奥を心地よく震わせた。目の前に差し出された箱を見下ろし、真琴は静かに口を開く。「ありがとう。でも、気持ちだけ受け取っておくね。他の人たちからも、贈り物はもらってないから」2年前、信行に対してはっきりと告げている。もう二度と贈り物はしないでほしい、決して受け取ることはない、と。だからこそ、今ここで彼の贈り物を受け取る理由などどこにもない。たかが論文を一つ発表しただけだ。大袈裟なプレゼントなど必要なかった。それに、贈り物を受け取らないのは真琴の確固たる意思表示でもあった。彼に、これ以上の無駄な希望を持たせるつもりは毛頭ない。その時、ふと真琴の視線が信行の左手に落ちた。薬指に嵌められていた、由美とお揃いのペアリングが外されていることに気づく。だが、今の真琴にとって、そんなことはもはや何の意味も持たない。きっぱりと線を引く真琴の態
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