真美の瞳孔がきゅっと縮み、背中に冷や汗がにじんだ。彼女はおびえた声で顔を上げる。「瑛司さん、な、なにを言ってるの?かれんさんがどこへ行ったかなんて、私が知るわけない。このドレス、瑛司さんがくれたんじゃないの?」瑛司はもう考えることすらできなかった。彼は真美の腕を強くつかみ、目に嵐のような怒りを浮かべた。「いつ俺がお前にウェディングドレスをやった?もう一度だけ聞く。かれんはどこだ?」真美はこんな瑛司を見たことがない。止まらないほど首を振り、そのまま力が抜けて床にへたり込んだ。胸を締めつける不安が一気に押し寄せ、瑛司の理性は崩れ落ちた。一歩踏み出し、真美の喉をわしづかみにする。だが力を込める前に、背後から悲しい葬送曲が響いてきた。黒い喪服の一団が、白い棺を担いでまっすぐこちらへ。先頭の男が深く一礼する。「藤原さん、かれんさんはここにいます」瑛司の血の気が引き、体が固まる。次の瞬間、先頭の男の顔面に拳を叩き込んだ。「俺の結婚式なのに、自分が何を言ってるか分かってるのか!?もう一言でもふざけたことを言ったら、全員まとめてあの世送りにしてやる!」それでも男は怯まず、静かに続けた。「信じないなら、ご自分でご確認を」怒りに震える瑛司は、人垣を押し分けて棺へと突き進む。棺の中を見た瞬間、全身の力が抜け、膝から崩れ落ちた。「かれん……かれん」男は襟を直し、低く告げた。「かれんさんは昨日、海に身を投げて亡くなられました。収容の依頼を受け、こちらへ参りました。異議がなければ、死亡証明にご署名をお願いします」その一言で、海辺はどよめきに包まれた。「どういうこと!?」「かれんさんが突然亡くなったなんて!」記者のフラッシュが乱れ、ざわめきが広がる。だが瑛司の耳には何も入らない。うなりだけが残った。彼は棺の中を凝視する。震える手は宙で固まり、触れることさえできない。長く海に沈んでいたせいで、遺体は膨れ上がり、見るに堪えない姿。全身に傷とあざ広がり、薄黄色の液が白い布をじわりと濡らしていた。「ありえない……」後ずさりしながら、必死に首を振る。「そんなわけがない。昨日の朝、玄関で謝って、昨日……」昨日、俺は何をしていた――深く考えるのが怖くて、棺の縁をつかむ
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